推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん

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12歳《中等部》

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ガタゴトと揺れる馬車。
泊まりがけだから馬車だけどさっさと馬借りて一人で行ったほうがおしりも痛くないし、魔獣の偵察もできるのに。

シルヴェスターの私兵達は先に行かせて家族に合わせてる。最後になるかもしれないからね。荷物は僕とテオがいるなら問題ない。

むしろこの2人で守れないなら私兵達でも守れないよ。皇室の騎士くらい強くないと意味ないね。

でもおしり痛くならないように錬金術具持ってきてるんだ。テオ様にも渡した。さすがに馬車を改造する時間がなかったよ。お金ももったいないしね。
ずっと馬車の改造はしようと思ってたんだよ。後回しにし続けてできてないけど。


「兄上、心配ですか?」

別にアルもいるから気にしてないけど…。
外見てたからそう見えたのかな。それならテオ様を肯定する方がいいかも。帝都以外の景色なんて生まれて初めてみたし。


「まぁね。魔獣もだけど家の方も心配だよ。」

「ネヴィルのことですか?」

「いや。ネヴィルはいいよ。ラージャも付けてるし。アルもラージャごと監視してる。ネヴィルは逃げられないよ。」

「ネヴィルも頭が悪いですね。逃げられると思っているとは…。嘆かわしい。」

ネヴィル。頭は悪くないんだよね。テオ様はあまり好きじゃないみたいだから僕が緩衝材してるけどほんとあの子の頭の回転は速いと思う。


「ネヴィルは権力に興味無いだろうからね。さぞかしシルヴェスターは窮屈だろう。今回はラージャとネヴィルのテストも兼ねてる。ラージャも人がいいからね。僕らに必要なのはネヴィルだけだよ。あとはいらないし代わりはいる。ラージャをなくすのは惜しいけど…そうなれば仕方ないね。」

「兄上はネヴィルに目をかけていると思っていました。」

「可愛い弟だよ。頭もいいし、シルヴェスターの子供として十分な教育は施してあげたい。僕ができることなら可能な限り手伝うよ。そのくらいは可愛いと思ってる。」

でもテオ様にならできる限り、可能な限りじゃなくて命の限り尽くすよ。欲しいものがあるのなら国だって取ってきてあげる。

それに比べたらネヴィルへの愛なんて小指の爪くらいしかないかも。

「でも、あの貧乏な時を一緒に乗り越えたテオに比べたら微々たるものかもね。」

「少しでも兄上の役に立てるのなら良かったです。」

うん。そうだね。とっても役に立つよ。
テオ様が生きているだけで僕が生きてけるんだもん。
息してるだけで価値がある。

テオ様の幸せのために働いてるんだよ。そのおかげで領民は幸せ。ルディも幸せ。この国の平和はテオ様によって成り立ってるようなものだ。

みんなテオ様に感謝するべきだよ。


1度だけテオ様に微笑みかけてからまた外を眺める。帝都の周辺には出るけどここまでは初めてだな。
バシャおっそいけどもっと早く動かないのかな。街中ならいいけど遠出するならドラゴンでも縛り付けて走られた方が早い。
ドラゴン飼い慣らせたら補給線が太くなって周辺国も侵略できるだろう。

そんな面倒なことできないな。ドラゴンは却下。キメラでも使う?


「テオ、キメラの引く馬車に乗りたい?」

「嫌です。気味が悪い。」

うーん。キメラも却下か…。


「でもこの馬車遅いよ。」

「見栄えが悪いのでダメです。それなら魔法具を使った方が良いと思います。」


そっか。
そっかー。じゃあ帰ったら錬金術具作ろ。

「転移魔法できるの作ったから今から行く村で試してみようか。」

「それなら良いと思います。さすが兄上です。」


え。テオ様に褒められた。
嬉しい。表情筋が溶けちゃいそう。





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