推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん

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12歳《中等部》

58 ルディside

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「マジでテオ置いてくのかよ。」

「置いてっていいって言ったじゃん。それに宮廷なら医療も完璧だし、移動でテオを起こさないで済むじゃない。ちゃんと少し足止めしてから帰ってくるように言っといてね。」


「へぇへぇ。すれ違っても知らねぇからな。」


「テオのプレゼント買いに行かないといけないの。ちゃんと足止めしてよ。」


「分かってるよ。早く行け。」


最後までぎゃあぎゃあと俺に言いつけて馬車に乗り込んだクラウス。少しくらい落ち込むかと思えば元気なことで。

にしてもだなぁ。
テオは絶対にクラウスが置いていったこと気にするだろ。機嫌を損ねたと思いかねない。

フォローするのは俺か…嫌な役回りだな。上手くいかなきゃクラウスに嫌味言われるだろうし。テオは落ち込むだろうし。

どうして俺の友人はこうも厄介なことを置いてくんだろう。


「はぁ。テオの好きな菓子を用意させとけ。」

「かしこまりました。」

専属のメイドに言いつけて俺はテオの部屋に向かうことにする。
クラウスの部屋にいたのはアイツの方が俺にとって有益だから。いくらテオが最年少の剣技使いだろうとシルヴェスターの権力には敵わなねぇし、クラウスの頭の回転の速さは貴族連中を手玉に取るのに便利だからな。



もっとクラウスは落ち込むかと思ってたが…そうでもないのか。面白くねぇの。









テオは結局日が沈んだ頃に目を覚ました。足止めするまでも無かったな。

「おはよう。」

「…でんか?」


いつもははっきりくっきりとしてるのに、今日はほやほやした話し方。めっずらし。
まだ魔力酔いが残ってんのかもな。
あんだけバカスカ打ってたクラウスはめっちゃ嬉しそうに帰ってったけど。

「気分はどうだ?」

「問題ありません。」

あ、喋り方治った。
少し左手を確認してまた強い目を向けてきた。

「兄上は大丈夫でしょうか?」

「兄弟揃って同じこと聞くんだな。あいつならもう帰ったぞ。お前のお祝いの準備するんだと。」


「お祝い…。あぁ。大会、俺が勝ったんですね。」


「覚えてねぇのか?」

「左腕を切り飛ばされてからあまり覚えてません。ただ勝てたのなら良かったです。」

へぇ。クラウスの言う通りじゃねぇの。
これは剣技使ったこと言わねぇ方がいいのか?クラウスの口から聞いた方がこいつも素直に喜ぶだろうし黙っててやるか。


「早く帰ってやれよ。クラウス、喜んでたからな。」

「嘘ですよね。兄上は俺に勝たせる気はなかった。戦ったおかげでよく分かりました。」

あー。んー。確かにあん時のクラウス、ニコリともしねぇで淡々と魔法打ち込んでたからなぁ。いつもの微笑みがなかったらあんな顔になるんだと感心したもんだ。

正直戦闘用の人形みてぇで気味が悪かった。
これ、テオに言ったら《そんなことありませんっ!!》って怒られるんだろうが。

「俺がお前に嘘ついて得なんてねぇだろ。さっさと帰れ。おい!シルヴェスター公子様のお帰りだ。」

そう使用人を呼び付けて、テオに手を差し出す。立てるか?テオは下を向いたままだが見事な一礼で帰って行った。

あの兄弟大丈夫かよ。











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