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12歳《中等部》

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「ここはお通夜見てぇだな。」

「「帝国の星、第1皇子殿下にご挨拶申し上げます。」」

みんな揃ってお辞儀。お遊戯会みたいってちょっと頭をよぎって張り付け笑いが本当に微笑んじゃった。

「どうも。で、何の話だ?」

「最近魔獣が増えてるねと言う話だよ。」

「そういやそうだな。」

知らなかったんだ。
僕よりそういう話出てきそうだけど。

「殿下は理由はなんだと思いますか?」

「そりゃあ周辺国での戦争じゃねぇの?」

あぁ。たしかに。有り得るな。
思いつかなかった。だって魔獣って人間食べるんだもん。したいなんてそこら中にあるから大きくなるだけだと思ってたけど…なるほどね。
こっちまで勢力伸ばしたって話にもなるのか。


「でも大きな魔獣が出たとは聞かないね。」

「単に量が増えただけか?」

「戦場じゃ食べ物には困らないし逃げて来た意味なくない?」

「狩場争い。」

「周辺の森で事足り……あ。動物たちも逃げてきた?」

「調べさせるか?」

「お願いしていい?」

ここまでほんといいテンポ。こうやって話が進むだけでストレス無くなるよね。幼なじみ様々だよ。


「あぁ、大丈夫だ。でもそれが確かなら戦争ももうすぐ終わんな。」

「そうだね。まずは食料かなぁ。どうする?合併しちゃう?支援する?属国にする?」

おすすめは支援して、僕らの食料に依存させるのが1番だね。特に主食となる穀物を依存させたい。これルディならわかってくれるかな。


「まずは支援だろうな。」

「だけど相手も人間だよ。恩を忘れちゃうかも。」

「そのための支援だろ?」

ほんとそういうところ王様だね。
育成ゲームも好きだったからルディみたいにポンポン成長してくれる子めっちゃ好き。
テオ様みたいに扱いずらい子はもっと好き。

「ほんとそういうとこ。じゃあ僕の方でも準備するよ。余った穀物はルディに回すね。」

「頼むわ。でもお前んとこも魔獣被害出てんだろ?大丈夫か?」

テオ様かな?
そもそも剣の持ち込みOKってところから違和感あったけど情報を対価にしたのか。頭いいじゃん。
それよりも少し肩を揺らしたテオ様が可愛い♡


「…誰から聞いたのか知らないけど大丈夫だよ。その分は引くし。それに僕も狩りに出るからね。多分大した被害は出ないよ。出た時は僕が死んだ時さ。」


はっはっはと笑い話にしようと思ってそう言ったけど騎士団長様もルディまでも引きつった顔をされた。


「…笑えねぇわ。」

「そう?まぁ領地を任されてるからね。危険だから領民に任せるねなんて腑抜けたこと言えないよ。弱いなら後方指揮官でいられるけど、僕それなりに戦えちゃうしさ。」

自慢みたいだけど事実だし。それに今回の魔獣退治はだれも死なせるつもりはない。
刻魔法があるし人間の蘇生はできるはず。
まぁ倒せたらだけど。

「お前がいなきゃシルヴェスターの領地が終わるぞ。それでもか?」

「あとを任せられる可愛い弟もいるしね。この4年で側近たちに領地の全てを叩き込んだし、テオが慣れるまでは持つさ。」

所詮人間。社会で見れば変わりはいる。
個人的に言えば代わりはいないかもだけど。でも僕の代わりはいるよ。テオ様もいるんだし心配ない。
テオ様を今回の魔獣退治に連れてく気は一切ない。

「ルディ。代わりはいくらでもいるんだよ。母様だっていなくなってどうなるかと思ったけど代わりは僕でもできた。それなら誰にだってできるよ。テオはあの時の僕より歳もとってるし、知識もある。なによりもテオは努力家で可愛い僕の弟だからね。」

「まぁたしかにな。」

「俺も行きます!」

「大会で僕に勝てたらね。」

「…はい。」

しゅんっとしちゃったテオ様。
可愛いなぁ。ずっと見てたい。この世界にはゴーストって存在?魔獣がいるから死んだらテオ様の守護霊になろ。

「良い子。まぁ今回の大会のおかげでテオもまっさらな人間じゃないって知れたのは収穫かな。その負けん気と判断力と執着心。大事だよ。」

「知ってたのかよ。」

テオ様のことならなんでも知ってたいし。
嫌がるようなことはしないつもりだし。
許して欲しい。

「まぁね。最後の試練ってとこかな。テオは合格!コレで僕に勝てたら百点満点!」

「そんときは小公爵の立場譲るか?」

ルディは冗談っぽいけど僕からしたら悪くないんだよね。爵位だって興味無いし。テオ様が楽に幸せに生きるようにしてあげたいから頑張ってるだけだもん。推しに貢ぐってファンの特権だし、ファンにとっての幸せだから。
しかもそれが仲介料なしでテオ様の手元に行く。幸せすぎる。
でもまだゲーム始まってないから死ぬわけにはいかない。絶対にテオ様だけは幸せにしてみせる。


「別にいいよ。爵位に執着があるわけじゃないし。テオ以外の身内はシルヴェスターを潰すだろうから譲らないけど、テオなら大丈夫だよ。」

「兄上よりシルヴェスターを繁栄できると思った時に譲ってもらいます。」

そんなの今すぐじゃん。譲るよ?


「いつになるんだかなぁ。」

今だよ?
そうなったら北に行って思う存分錬金術しよう。それを全部テオ様に還元するんだ。

「その時は北の領地で隠居生活かな。」

「北ぁ?」

「うん。あそこは面白いよ。隔離されてるから実験し放題だし、魔獣もいっぱいいるし。」

「つまんねぇの。」

楽しいって言ってるんだけど?

「僕が向こうに行ったら帝都までワープできるようにするからすぐだよ。」

「できんの?」

「まぁ。魔法の固定化が成功すればね。僕も手隙になるしできるんじゃない?」

ルディの目の色が変わってテオ様の方をバシバシ叩き始めた。怪我したらどうんの?テオ様が今1番入れ込んでるの剣術なんだから。怪我させたらルディの腕切り取ってやる。

「テオ、さっさと爵位貰え。クラウスを働かせまくって国で搾り取るぞ。」

「ルディ、ひどーい。」

そう言いながらテオ様をルディから離す。
マジやめて。貼り付けてる笑顔も引き攣りそう。

「お前はほんとに貴族向いてねぇよな。魔術師とかの専門職の方が向いてるわ。」

「そうかな?」

「兄上ならなんでもできます。」

「なんでもは無理かなぁ。」

「テオはコイツに夢見すぎだな。」

たしかに~。

「全くです。」

ヴェルナーに言われると腹立つな。
どの戦い出ても僕が勝ってるのに好き勝手言っちゃって。それでテオ様からの評価が下がったらどうしてくれんだろ。

「ヴェルナーはほんとクラウスのこと嫌いだな。」

「昔からだよね。」

「…シルヴェスター公子、息子が申し訳ありません。」

「だから大丈夫だよ。昔から知ってるしね。テオと仲良くしてもらってるし。」

仲良くなくてゲームに関わらないなら近寄らないけど。
自分を好きじゃない人にはあまり近寄りたくないのが心情じゃん?





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