推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん

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12歳《中等部》

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完璧に張りつけた微笑みでテオ様と侯爵達に割り込む。
テオと仲のいい侯爵家の次男に避けられてるから仕方ない。僕らの2つ上の先輩だ。

「アーノルト騎士団長様、アーノルト小侯爵様、お久しぶりです。ヴェルナーも話すのは久しぶりだね。」

「シルヴェスター小公爵様にご挨拶申し上げます。お久しぶりです。いつも倅がお世話になっております。」

この家系は騎士の家系。礼も貴族じゃなくて拳を心臓の上に当てる騎士の礼。

「いつもテオからヴェルナーの話は聞いてるよ。教え方も上手くて剣術も1級だって。」

「まだまだな息子ですから。そういえばクラウス様はなんの部活に所属されているんですか?」

「園芸部とボードゲーム部だよ。」

シンっとなる僕らの空間。まぁね。この3人は真面目だから歴代剣術部出身だ。
次男のヴェルナーだけが魔法騎士部。よく許してくれたなって思う。
だから僕みたいに将来に役に立ちそうもない部活に入ることは理解できないんだろう。

「…あれだけ大会で優勝しておきながら…なぜ?」

「学生だからね。興味のあることをしようと思っただけだよ。」

別に嗜みとして。シルヴェスターとして学んでるだけ。負けることなんてできないし。無様に負けたりしたら、死んだあと母様にぶん殴られそう。扇でバチコンだと思う。想像しただけで痛い。

「いいご身分だな。」

「ヴェルナー先輩、それは兄上に対する侮辱です。」

「テオは本当に真面目だねぇ。」

仲が良さそうでなによりだ。
ヴェルナーの父と兄は顔周りに汗をかきまくってハンカチで拭いてた。

気にすることないのに。人に好き嫌いはあるよ。それを表に出すか出さないかの違いだけだ。

「気にすることないよ。久しぶりにのびのび暮らせてるしね。たしかにいい身分だよ。」

「兄上の努力も知らないで…。」

テオ様も不快を表に出すタイプ。
本当にその出世のできなさそうな性格可愛い♡
テオ様なら嫌われて塩対応でも可愛い♡

「テオ、僕はシルヴェスターの嫡男でテオの兄だ。できないことがあるなんてダメなんだよ。」

せっかく僕がフォローしたのに汗垂れ流してる騎士団長とその長男は冷や汗垂れ流し。
ヴェルナーもテオ様も機嫌が悪いのを隠そうともしない。
つまり誰も話さない。気まづいな。

「テオは部活ではどんな子なの?いつか努力のし過ぎで倒れちゃうんじゃないかって怖いよ。」

「兄上ほどではありません。」

「ヴェルナー、僕の弟は本当は可愛いでしょ?」

「お前の弟とは思えないほどだな。」

雰囲気わる。
そんな中、騎士団長様がヴェルナーを睨んだ。汗は止んだのかな?

「ヴェルナー、いくら幼なじみとはいえ身分が違う。分かるな。」

「騎士団長様、僕は構わないよ。母様が生きてた頃の話ができるのもヴェルナーと数人だけだからね。」

「クラウス様は将来は国の宰相ですか?」

騎士団長様の長男いい働きするじゃん。やっぱり騎士にもコミュ力いるよね。でも、宰相かぁ。そんなのする暇ないしなぁ。興味はないね。やれって言うならやるけどそうなったら本気でテオ様に爵位は移すかも。

「…?あぁ。今日のやつ?いやいや狙ってないよ。領地だけで精一杯さ。もちろん知恵とか力は貸すけどね。でもやっぱり僕も子供だね。やりたいことは沢山あって宰相をしろとか言われても困っちゃうよ。」

騎士団長は苦笑い。
嘘じゃないのにな。

「例えば?」

ヴェルナーは相変わらず僕を信用してないらしい。
つらいね。
それならこの答えはどうだろう。

「最強の部隊を作りたいとか。構想してる武器を実用化させたいとか。」

「戦争でもするつもりですか。」

まさか。そんなつもりないよ。個人的に利益があったとしても国としては損しかないし。
それならまだその資金を使ってインフラ整備した方がマシだ。

「魔獣が増えてるでしょ。今までと同じように狩ってるのに急に増えるなんて理由があるはずだよ。理由が分かるまでは魔獣を狩り続けるしかないし。手駒にしようかと魔花で試してるけど上手くいかないし。それなら短慮だろうと言われても手っ取り早く数を減らす方法が1番だからね。」

「どこからそれを聞いたんですか?」

ただのカマだったけど…やっぱり皇室も認知してたんだ。
軍を動かしてないってことはどうするかの話し合い中?それとも各領主に任せるつもりかな。

「あ。やっぱり?今日のパーティの話題が魔獣ばかりだからカマのつもりだったんだけど…認知してたんだね。良かったよ。」

少し微笑んだら苦笑いで返された。そんな重要機密だったかな。
でも人が多いほど秘密って漏れるものだよ。仕方ないよ。うん。


5人で黙ってニコニコしてたら…いやニコニコしてるの僕だけか。騎士団長様は引きつってる笑い。騎士団長様の長男は下向いてるし、ヴェルナーとテオ様は相変わらずの仏頂面。

帰りたくなってきた。
別に脅したかったわけじゃない。何かこういう話、軍人はすきかなって思ったの。対処法とかどうするとかさ。そう思っただけなのに。

そんななか救世主。もしかしたら気遣い屋さんだからいち早く気づいたのかもね。
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