推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん

文字の大きさ
上 下
141 / 212
12歳《中等部》

38

しおりを挟む

面倒な挨拶回りとレディ達への媚へつらい。それも終わって周りの噂話に耳を傾ける。

レディ達はオシャレに美味しいものに。色々お金を湯水の如く費やしてくれるから僕たちのお得意様♡仲良くして損はない。

それに黙って壁の花をしてる訳じゃない。風魔法で色んな場所から情報収集してるよ。
地獄耳って名づけてる魔法。誰にも言えないね。

どこもかしこも魔獣の被害が増えてるらしいけど…そんな話ゲームであったっけ。

義母様のとこは相変わらず人がいない。父様が離れてる時にたまに声掛けてる男がいるけど玉砕してるし。
父様はちらほら人が近寄ってる。ネヴィルはつまんなそうに父様に張り付いてる。
テオ様は騎士団長と話したり、学園で仲良くしてるらしい子供や親とよく話してる。ほんと偉い。もう撫で回してあげたい。
騎士団長の次男に僕はなんか距離置かれてるからテオ様の存在はありがたい。多分跡継ぎは長男だろうけど才能や強さは次男の方が上だ。テオ様ありがとう。


「シルヴェスター公子様。お時間よろしいですか?」

ぽぽぽと頬を桃色にした同い年くらいの女の子。同級生にこんな子いたかな?
少し離れたところでチラチラ見てくる少女軍団で色々察した。
あー。そういうことか。
ダンス1つでも踊ればどっか行ってくれるかな。

「ちょうど休憩していたところですから。」

本当に誰だろう。本気であったことないと思うんだけどなぁ。

少しだけ世間話…世間話という程でもないけど。前の大会の優勝おめでとうって話とテオ様の話。この子テオ様と同じクラスなんだって。僕はテオ様の話を聞けてルンルン。テオ様、教室では寡黙な真面目くんらしい。いつもと変わんないね。

曲が終盤になった。
この子と1回踊ってテオ様と合流しようかな。

「良かったら1曲踊って下さいませんか?」

僕が手を差し出せば、ぽぽっと少し収まった頬をまた染めて手を取ってくれた。
テオ様の手と違って柔らかい。ふにふにしてる。剣なんて握ったことないんだろうなぁ。まぁお嬢様だもんね。扇が人生で1番重いものって言われても頷いちゃう。

こんだけネヴィルにも可愛げがあれば…いや。なくてもあっても一緒か。ただ扱いやすさが上がるくらい。

クルクルと回るダンス。何が楽しいんだろう。
会話かな。なんかどうでもいい話聞かされてる。でもこの子の親は官僚らしい。陛下が今なんか困ってるらしい。
「詳しくは教えて下さりませんが、皇后陛下がなにか困るお願いごとをしていると聞いています。」だって。

困ること?
たっかい宝石?なんだろ。調べてみようか。
もしかしたら陛下に恩を売れるかもしれない。

父様みたいになりたくはないけどこんなに簡単に話が手に入るなんて恋って感情はすっごく便利だね。
僕もテオ様にこんな可愛い反応されたらなんでも答える自信ある。多分ハニートラップってわかっててもテオ様にならペラペラ話しちゃうな。愛って偉大。

そう考えるとこの子にとって僕はテオ様並の価値があるのか…。ふぅん。実感無いけどそれって凄いことだ。父様は諜報の才能があるのかも。テオ様以外の種さえ残さなければ優秀だったのにね。


1曲分のダンスが終わったらダンスの輪からはなれて女の子に別れを告げる。これ以上いても有益な話ないもんね。テオ様と合流したいな。

「クラウス。」

「お久しぶりです。伯父上。」

今度は伯父上か。はぁツイてない。
そういえば伯父上と話してなかったな。他の人は挨拶回りと銘打ってワラワラ虫みたいに集ってきた。挨拶回りが終われば仲のいい人同士が集まるんだよ。僕そういう人少ないからいつもぼっち。

ルディもぼっちのはずなのに父親である皇帝について回るから話せないし。テオ以外のシルヴェスターはみんなぼっちだよ。


「本当に久しぶりですね。最近逢いに来て下さらなくて寂しかったところです。このような場でも話しかけてくれませんし。僕の従兄弟ヨハンはお元気ですか?」

思ってもないけど。
さすがにこの人が侯爵から退いたら今の嫌がらせはやめたげるよ。だってコイツ、僕の資金源の貿易ができる街を母様が亡くなったのをいいことに踏んだくろうとしてたんだよ。許せるわけない。
アルフレートから聞いたけど母様を殺したのもこの人らしいし。まぁそこは証拠ももう残ってないから不問にしてあげるけどさ。
街の横取りはダメでしょ。許せない。テオ様にひもじい思いをさせる気?許せない。絶対に許さない。

でも表向きじゃ無いし失敗してるからこれで私刑を下してるのがバレたらシルヴェスターが悪く言われる。
だから、僕との約束を反故にしたってことを理由に仲が悪いように振舞ってる。別に僕としてはそれは少し許せないくらいだけど理由がないと弱いものいじめだからね。

「クラウス。もういいだろう。」

この人…やつれたなぁ。3年前は活き活きというか…邪魔者が現れたら排除する。みたいな雰囲気持ってたのに。
もうその覇気がない。これが母方の身内か。情けないなぁ。まだ父様みたいに汚名を被っても我関せずみたいに生きて行けたら楽だろうに。

「なんのことですか?家は今まで通り裕福なはずですが。」

僕にかかわらなきゃ伯父上の家系は繁栄の一途だったろうにね。それだけこの人は優秀だもん。僕がめちゃくちゃ手を回しまくってそれを止めてるだけ。
新しく始めた事業を奪ったりしてるだけ。
今までの暮らしは維持できてるはずだよ。


「悪かった。」

「なにが、ですか?」

「……。」

伯父上はなんにも言わない。
探ってるのか心当たりがないのか。的はずれなこと言われたらイラつくだけだし何も言わない方がいいけど。
それに僕の気持ちを分かるとも思えない。《港を取り上げて、テオに不憫な思いをさせそうになりましたごめんなさい。》って言わないと許せないかな。

「またお話しましょう。伯父上。」

ほんとこんなことのためにテオ様との時間を取らないで欲しい。










しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

ヒロイン不在の異世界ハーレム

藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。 神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。 飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。 ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?

その男、有能につき……

大和撫子
BL
 俺はその日最高に落ち込んでいた。このまま死んで異世界に転生。チート能力を手に入れて最高にリア充な人生を……なんてことが現実に起こる筈もなく。奇しくもその日は俺の二十歳の誕生日だった。初めて飲む酒はヤケ酒で。簡単に酒に呑まれちまった俺はフラフラと渋谷の繁華街を彷徨い歩いた。ふと気づいたら、全く知らない路地(?)に立っていたんだ。そうだな、辺りの建物や雰囲気でいったら……ビクトリア調時代風? て、まさかなぁ。俺、さっきいつもの道を歩いていた筈だよな? どこだよ、ここ。酔いつぶれて寝ちまったのか? 「君、どうかしたのかい?」  その時、背後にフルートみたいに澄んだ柔らかい声が響いた。突然、そう話しかけてくる声に振り向いた。そこにいたのは……。  黄金の髪、真珠の肌、ピンクサファイアの唇、そして光の加減によって深紅からロイヤルブルーに変化する瞳を持った、まるで全身が宝石で出来ているような超絶美形男子だった。えーと、確か電気の光と太陽光で色が変わって見える宝石、あったような……。後で聞いたら、そんな風に光によって赤から青に変化する宝石は『ベキリーブルーガーネット』と言うらしい。何でも、翠から赤に変化するアレキサンドライトよりも非常に希少な代物だそうだ。  彼は|Radius《ラディウス》~ラテン語で「光源」の意味を持つ、|Eternal《エターナル》王家の次男らしい。何だか分からない内に彼に気に入られた俺は、エターナル王家第二王子の専属侍従として仕える事になっちまったんだ! しかもゆくゆくは執事になって欲しいんだとか。  だけど彼は第二王子。専属についている秘書を始め護衛役や美容師、マッサージ師などなど。数多く王子と密に接する男たちは沢山いる。そんな訳で、まずは見習いから、と彼らの指導のもと、仕事を覚えていく訳だけど……。皆、王子の寵愛を独占しようと日々蹴落としあって熾烈な争いは日常茶飯事だった。そんな中、得体の知れない俺が王子直々で専属侍従にする、なんていうもんだから、そいつらから様々な嫌がらせを受けたりするようになっちまって。それは日増しにエスカレートしていく。  大丈夫か? こんな「ムササビの五能」な俺……果たしてこのまま皇子の寵愛を受け続ける事が出来るんだろうか?  更には、第一王子も登場。まるで第二王子に対抗するかのように俺を引き抜こうとしてみたり、波乱の予感しかしない。どうなる? 俺?!

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。 ※(3/14)ストック更新終わりました!幕間を挟みます。また本筋練り終わりましたら再開します。待っててくださいね♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

処理中です...