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12歳《中等部》

30 ネヴィルside

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「お帰りなさいませ。父様。お待ちしておりました。」

薄笑いを貼り付けた青年に見るからに不機嫌そうな青年。
その後ろには真っ赤な女。その周りを囲む使用人たち。金持ちそうな貴族だな。


俺の父と名乗る男はその3人を無視して中に入ろうとした。

「あ、父様!」

そう呼びかける薄笑いの男を無視して。

「勝手をされますと死にますよ。」

そういうや否や玄関の扉が部屋の中に倒れた。俺は何が起きたのか分からなかった。でも父と名乗るあの人とこの兄弟は分かったらしい。

兄の方は薄笑いを浮かべながら俺を守るように後ろに下げた。
不機嫌そうな方が右の口角を上げたのが見えた。

「玄関はただの脅しですから。もっと中に入れば父様の防御魔法では役に立ちませんよ。」

「私の屋敷に何をした。」

キッと肉食獣のようにこっちを睨む父親。

「人より役に立ちますでしょう?」

それを笑顔で交わす兄らしき人。

「そもそも帰ってこない、苦労しかかけない人をどうやって屋敷の主と認めろと。どれだけ兄上が苦労したか知らずにその減らず口はやめて頂きたい。」

相当この不機嫌そうな兄は父親のことが嫌いらしい。薄笑いの兄がポケットの中から手のひらサイズの水晶?のようなものがはめ込められた箱を出した。

「どうぞ。手をかざすだけで大丈夫です。」

父が手をかざせば透明の玉が青く光った。

「はい。もう大丈夫ですよ。どうぞ中へ。」

ニコッと微笑んだ薄笑いの方の兄。
そしてじっと目を合わせてきた父にもう一度笑みを深めて聞いた。

「ところで父様、この子供は僕らの血の繋がった弟ですか?」

「そうだ。鑑定書もある。」

「そうですか。」
「…。」

父が中に入り、真っ赤な母となる人と思われる人もそれに続いて入っていった。あの女、一言も話さなかったな。

それを見届けて薄ら笑いの兄の方が、俺にも道具を差し出して「手を触れて。」と言ってくる。俺と目を合わせるように中腰にしてくれるところが腹立つ。別にそんな子供じゃない。

「名前を聞いてもいいかな?」

「ネヴィル。」

「ネヴィル・フォン・シルヴェスターね。」

クラウスが微笑んで俺の手を取る。腹立つからそれを叩き落とした。ゾッとするような寒気が背筋を通る。なんだ。スラムでチンピラに囲まれた時よりゾッとした。

手を叩き落とされたのにクラウスは薄笑いを崩さずに俺を見てくる。それどころか自己紹介を始めた。

「僕はクラウス・フォン・シルヴェスター。あっちは弟のテオ・フォン・シルヴェスターだよ。よろしくね。」

テオの方はよろしくするつもりはないらしいけどな。
親の仇かと思うほど睨んでくる。

そんなことを気にせずにクラウスは説明を続ける。

「あそこにいる銀髪の男、あとの夕食の席で改めて説明するけどネヴィルの従者になるラージャだよ。」

ぺこりと頭を下げた銀髪の男。顔は見えなかったが特徴的な髪だけで覚えられそう。

「ラージャ、ネヴィルを部屋まで案内して。ネヴィル、夕食までゆっくりしてね。」

「分かりました。」

ニコッともう一度薄笑いを浮かべてクラウスは立ち上がって振り向きもせずに屋敷の中に入っていった。その後に続くテオ。

俺はお呼びではないらしい。







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