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12歳《中等部》

26 ルディside

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案の定、クラウスの読み通り公爵夫人はテオを連れて逃げようとしたらしい。ばっかだなぁ。
その話を聞いたのは首謀者のクラウスからじゃなくて被害者のテオからだが。

「おぉ。そんで?」

「それだけなんですが…。その。やっぱり俺は兄上に信用されていないのでしょうか?」

なんでそうなんだ?
クラウスは誰も信用してねぇよ。信用信頼なんて口だけだろ。それが欲しい訳じゃあるまいに。
そもそもアイツは俺が皇太子になれなかったらどうせ捨てるに決まってる。それを分かった上で俺はクラウスを骨の髄まで搾り取るつもりだからグダグダ言わねぇけど。

テオも変わってんなぁ。

「俺から見たら1番信用されてんのはお前だよ。」

「…ですが。」

ハキハキとしたこいつが珍しい。なにをそんなに弱気になってんだか。テオもクラウスに似て傲慢なところもあんのにな。

俺しか聞いてねぇのに気を使うこともないだろう。

「誰も聞いてねぇよ。なんだ?」

「あの。兄上はきっとルディ様には相談していたと思うんです。そうですよね。」

よく気づいたな…。
あのただただ無邪気に「すごいです!かっこいいです!」って言ってたテオが懐かしいわ。

「お前…クラウスに似てきたな。」

「ありがとうございます。兄上はルディ様に相談はしても俺にはしてくれません。それだけ実力が足りていないと分かってはいるんです。どうすれば…俺は兄上に信用されますか?」

「そうだなぁ。」

テオはクラウスの中じゃ信用度は上位だと思うが。
というか意外にめちゃめちゃに可愛がってるかんなぁ。テオが頼めばなんでもしそう。
ただどれだけ心を砕いても、裏切ったら容赦はしないのがクラウスだが。


「クラウスはチェス打ちながらうだうだ考えるのが好きだから付き合ってやれよ。1人でペラペラ喋ってるぞ。」

あいつはよく1人打ちをしてるからなぁ。張合いのある相手が俺くらいだからだと思ってるが…。それでもテオと打ってる時はテオが強くなることを喜んでいるようにも見える。

「なるほど…。さすがルディ様。参考になります!」

なるか?
まぁテオがなると言うならなるんだろう。

「そんで?公爵夫人はどうなるんだ?田舎に飛ばされんのか?離縁か?」

「部屋にいろと…。屋敷内を移動する時はメラニー…兄上の乳母と共に行動しろと言われております。」

随分温い対処だな。あいつなら動けないように足くらい切り落とすか足を不能にしてるかと思っていた。
家族には甘いのか?血が繋がってねぇのに?自分の母親の代わりに死んですぐに来た愛人なのに?
ほんとクラウスの考えることは分からねぇな。

「そんで?お前はどうしてぇの?」

逃げたいなんて言ったら明日には処刑台だな。

「公爵家に…兄上と共にいたいです。」

「クラウスにそのまま言えよ。あいつなら叶えてくれるだろ。」


意外だった。クラウスがなんだかんだと世話して執着してんのは知ってたが…まさかテオもか。
無理やり手を出すならテオなさを護衛として俺が引き取ってもいいと思っていたのに。

こりゃまた驚いたな。



この国というか他国も含めて貴族の間じゃ、魔力を薄めないために近親婚をしてるところもあるからな。まぁテオも負け戦ってわけじゃねぇだろ。クラウスは知らねぇけど。
あいつなら感情より利益を取りそうだ。聖皇国の第3皇子ともやり取りしてるからそこと婚姻させようかとも思っていたが…いやぁ、驚いた。


「テオ、クラウスとどうにかなりたいなら応援するぜ。」


テオは首を傾げたが曖昧に微笑んで「ありがとうございます。」と言った。
意味が分かってねぇんだろうな。
まぁ今はそれでいいか。

血の繋がった母親よりも公爵家を取るのはわかる。でもそれが身分やら金の話じゃなく兄がいるからなんて気色の悪いこと言ってるんだ。少なからずそういう感情はあるんだろ。愛と執着なんて紙一重だ。


クラウスもテオに執着しているようだし俺としても懐刀が増えるのは悪くねぇ。
俺が皇族じゃなきゃ色々考えたかもしんねぇけど。



どう足掻いても皇室にシルヴェスターは入れねぇしな。










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