推しの完璧超人お兄様になっちゃった

12歳《中等部》

24

｢クラウス様、起きてください。公爵夫人達が動きました。｣

うるさい。こんな夜中に？…はぁ。わかってたけど明け方とかにして欲しかったなぁ。熟睡前の1番気持ちいい時間じゃん。

｢わかった…。カーディガンちょうだい。｣

アルが僕の肩に掛けてくれたのか少し重みが加わった。
はぁ…寝たい。
正直1週間くらい前に言い合いしたことよりも睡眠時間を削ってくる方を謝って欲しい。

｢わんちゃんは？｣

｢庭で待ち伏せしています。｣

｢ん～。じゃあ安心かな。ちょうどいい人選だったね。｣

｢今日だという目星は着いていたのによく言いますね。｣

少しは褒めてよ。そのためにアルには昼間休ませてあげたんだから。

義母様はいつも放置の宝石をテオ様から貰った空間魔法付きの巾着に詰め込んで。上等なドレスは売りに出して金を集めてた。お金も準備できたようだからそろそろかなって思ってたら見事的中。義母様、分かりやすすぎて心配になるよ。

音を立てないようにロビーに出るとテオ様の手を無理やり引いている義母様。小声で抗議してるテオ様がいた。本気で抵抗すれば逃げられるのに…情はあるのかなぁ。テオ様はどうにかして義母様を止めようとしてるみたい。

｢母上！やめましょう。見つかって兄上に怒られます！｣

｢見つからなければいいだけよ。他国に逃げればどうにかなるわ。｣

｢やめてください！兄上をこれ以上怒らせないでください！！｣

グイッと思いっきりテオ様が手を引いたせいで義母様の足が止まる。

｢～っ！！お前はいつもいつも兄上兄上って！！少しは血の繋がった親のことは考えられないの！？やってみなきゃ分からないでしょう！？｣

義母様は男前だね。
この裕福な生活を捨てて逃亡犯になるのにやってみなきゃ分からないなんて中々言えないでしょ。

少し見てようかな。テオ様が一緒に逃げるなら、領地か別荘に療養って目的で行かせてあげてもいいし。さすがに他国とかに逃げられたら殺しとか戦争とか物騒なことになるから逃がしてあげられないけど。

言い合いをしてる2人を闇魔法で隠れて気配を消して見てる。外に出ても獣人が。内にいても僕とアルフレートが。逃げ場はないのに必死だね。

｢母上。観念して部屋に戻ってください。兄上には言いませんから。｣

僕そんなに怖いかな。一応、シルヴェスターとしての在り方はテオ様にも義母様にも教えたけど。破られたら法律によって裁かれるからこっちも必死だよ。
幸せになってもらいたいのに監禁生活とか笑えない。

テオ様の手に剣が握られたところで僕も姿を現す。テオ様に親に向かって刃物を突き出すなんてさせられない。なんだかんだ義母様はテオ様のこと思っての行動みたいだし。
噛み合ってないよね。


｢義母様、テオ。こんな夜中にどこへ行くつもりなのかな？｣