推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん

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12歳《中等部》

20 テオside

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俺と兄上、ルディ殿下の混戦が終わって2人がいつものように話し始めてやっとチラホラと拍手が聞こえ始めた。

俺はまた負けた。兄上が努力をし続けていることも、ルディ様がそれに食らいつくように努力していることも知っている。俺だって2人に負けないように一生懸命訓練を重ねたつもりだった。

学園に入って数ヶ月。2人は趣味や部活に没頭していた分、俺は魔法騎士部に入って努力したつもりだった。

それでも追いつけなかった。学期末の試験でも当たり前のように兄上は1位。数点差でルディ様が2位。俺は8位。

今回もルディ様に助けて貰ってやっとの魔力操作。兄上ならもっとスマートにこなしただろうに。

俺はまだまだ努力が足りない。兄上より時間があるのに追いつけない。

「テオ、魔力大丈夫?分けようか?」

「いえ…問題ありません。」

「そう?」

微笑んで俺の手を掴んで魔力を分けてくれる。兄上だってルディ様に負けを認めるくらいには魔力がないだろうに。
でもこれが兄上以外なら同情かと叩き落としてる。
兄上だから許しているだけだ。いつ触れても兄上の手は暖かい。




まだ馬車が来るには早い時間。だけども部活に行くには遅すぎる。そんな微妙な時間。

兄上がボードゲーム部なら休めるよ。という言葉からその教室に向かうことにした。許可などいらないのだろうか。兄上がいいと言うならいいのだろうが。

というかもう動く体力がない。
魔力の急激な減りは本当に疲れる。ルディ様と兄上はあれだけ大技を繰り出してよく普通にしてられるな…。

訪れたボードゲーム部生は俺たちを見ても一礼だけでオドオドとゲームに戻った。入るまでワイワイとした声が聞こえたんだが…邪魔したか?


「クラウス様、1局お願いします!」

そう言ってあまり見ない型の番上を差し出してくる男。
兄上はちらっと見て俺か殿下くらいにしか聞こえないように息を吐いた。だいぶ疲れてらっしゃるな。
すぐになんでもないように微笑んで窓際の席に座る。

「いいよ。こっちおいで。」

兄上の対面側に兄上に挑んだ男が背筋を伸ばして座る。

「どういうルールだ?」

「チェスと似たようなものだよ。駒の動きと奪った駒は使えることくらいが違う点かな。」

「ふぅん。後で教えろよ。」

「仰せの通りに。」

本当に動きやルールはチェスと似ているが駒は平たく東方にある文字のような絵のような柄が書かれている。

兄上は淀みなく。相手はゆっくりとだが慎重に駒を動かしている。

ルールも勝ち負けもよく分からないが雰囲気で兄上が優勢なことが分かる。結局「王」と描かれた駒が同じ「王」と描かれた駒をとって兄上が勝利した。

兄上の癖なのかポリシーなのか兄上はキングの駒で勝ちたがる。恐らく「王」という駒もキングと同じ役割なんだろう。
相手は礼述べたあとすごすごと戻って仲間たちに慰められていた。

その後はルディ様と俺に兄上が教えてくれた。ルディ様と俺で打ったり他の部員と打ったりした。なかなか面白い。兄上が強すぎて兄上の時は瞬殺されたが部員はそれなりにしがみつけたと思う。



「クラウス、次はチェスしようぜ。」

「いいよ。ルディとは久しぶりだね。」

いつの間にか俺たちの周りに集まって来た部員たち。みんなでチェスの盤上を覗き込んでいる。

兄上が珍しくキングではなくビショップを主に動かし始めた。



「ねぇ。主の才能ってなんだと思う?」

「力だ。魔法も学力も全て手に入れてこそ王だろ。」

「テオは?」

「全てを任せられる方。小より大を。どんな険しい道だろうと勝利を選べる方だと思います。」

兄上のような人だと思う。
殿下は少し優しいところがある。きっと民を思いすぎて悩んでしまう。兄上は利益だけを追い求められる人だ。少人数で国を救えるなら。ひとつの街で国が勝つなら即決で小を街を捧げられる人だ。

人としてはどうかと思う。でも領主としては正しいだろう。

兄上はふわりと微笑む。

「僕はね。魔法も関係なく、人の心を掴める人だと思うんだ。優しさもその1つだよね。」

ルディ様がポーンを兄上のルークから守るように動かす。

「なにが言いてぇんだよ。」

「聖人と思える人なんて意外と役に立つかもって話。」

そう言ってカコンとビショップでキングを転がした。

「チェックメイト。これで一勝一敗だね。」

さすが兄上だ。
いつもの微笑みの中に少しだけ自慢げな雰囲気を残して笑った。

「さすが兄上です。」

「次はテオとやろうかな。」

「が、頑張ります。」

こういったゲームは苦手だ。凡人よりかはできるが兄上に勝てたことはない。










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