推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん

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12歳《中等部》

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「おはようございます。殿下。」

「はよ。お前らも大変だな。」

「そのようなことございません。」

ほんと大変だよ。ルディがいなきゃもう少しゆっくり寝れるしゆっくり来れるのに。だからお優しいテオ様みたいに大丈夫だなんて言わないよ。

ルディは僕をチラって見てニヤってしただけ。咎めも文句も言わなかった。珍しいの。
テオ様には不服そうな視線向けられたけど。
その視線を遮るように。それともいつも通りなのか真ん中に陣どる第1皇子様。

僕もだまって着いてく。考えたいこともあるし。もしかしたら学校の景色でなにかゲームのこと思い出すかもしれない。


周りを見ても相変わらずチラチラとウザったい視線。クラウスなら気にしないかもね。僕は気にしちゃう。

下の身分の人から話しかけるなんてマナー知らずはいないからいつもこんな感じだ。そのうちお茶会でも開いて知り合いくらいにはなりたいんだけどなぁ。やるなら早いうちがいいか。

「クラウス、アレ見てみろよ。」

うるさいなぁ。なに?

ルディが顎で指したのはなんか囲まれてる騎士団長の次男。確か…名前はヴェルナー・フォン・アーノルト。アーノルト侯爵の次男坊。テオの2つ上の先輩でモブなのにやたら設定がしっかりしてる子。

前世ではテオの恋人相手としてよく見た人。印象は普通。でも今はあまり好きじゃない。今は僕のテオ様なのにとっちゃうんだもん。テオ様の幸せの1部だから意地悪とかはしないけどさ。
僕の方が早く顔を合わせたのに僕は嫌われてる不思議。意味わかんない。あんなにニコニコ接したのになぁ。

そんなヴェルナーがお嬢様方に囲まれてらっしゃる。モテモテじゃんね。ヴェルナーはテオ様と教室が近いんだよ。
他学年同士でも仲良くしようねって言う学園の試みで3学年それぞれどこかのクラスが近くなるんだ。それに加えて同じ授業とか魔法の授業で組んだりとかできるんだよ。なんなら学園内の魔法大会では3学年3人組で組んで魔法大会に出場したりもする。羨ましい以外の言葉がない。

「どうしたの。モテモテじゃない。」

「テオとお近ずきになるためだとよ。そんでそれを足がかりに俺とクラウスを狙ってるらしい。」

えげつな。僕はテオ様の恋人を寝とるようなやつじゃない。
…それにそんな僕が誘ったくらいでホイホイ着いてくるやつはテオ様には似つかわしくないよ。

「どこ情報?」

「俺の部活の先輩情報。婚約者いねぇんだから気をつけろよって言われた。」

確かにそれはそう。
ルディともなると普通幼い頃に後ろ盾として高貴な婚約者がいるはずなんだよね。
皇帝になった時は皇后となるように。皇帝になれなかった時は臣籍降嫁という形が取れるように。
それがルディにはない。僕とテオ様にないのは繋いでくれる人がいなかったからに過ぎないけど。ルディは違う。狙ってる人は多いだろうね。


「婚約者作りなよ。皇后になるための勉強だって大変だよ?」

「いい相手がいねぇんだよ。今の宰相の娘狙ってるけどどうだかなぁ。」

たぬき親父の宰相様か。伯爵だけど悪くないな。あの人の娘ってどんな人だっけ。お茶会にでも呼ぶか?

「学園にいた?」

「一回り年上。俺が学園を出る時は30手前じゃね?」

「無理だよ。遅すぎる。向こうが待ってくれないでしょ。」

貴族のお嬢様は大体が学園を出て1年以内に婚約者と結婚することが多い。それでも平民と比べたら遅いもんだよ。18歳とか19歳だもん。それのプラス10。待ってくれたらそれは愛でしょ。
周りの貴族に嫌みやら陰口やらをたたかれ続けて10年待ってくれるんだよ。しかもまだ12歳の若造を待ってくれるんだよ。有り得ない。いつルディから用無しだと言われるか分からないのにさ。無理だ。

「無理かー。打診はしてるんだけどな。保留だってよ。」

「皇帝陛下も中立だって言ってるし、宰相がどっちかの皇子の後ろ盾になるわけにもいかないだろうしね。」

「まぁなぁ。でもそれ以上の家格と有能な親を持ったやつお前の伯父の家系くらいだぞ。」

「すぐに裏切るからやめといた方がいいよ。ソレに結婚しなくてもあそこは言いなりにできるし意味ないよ。」

「そうなんだよなぁ。ほかの侯爵家は弟一派か中立貫いてるかだし。」

「伯爵家も最近じゃ頭打ちだもんね。意外と子爵とか男爵の三男とかが有能だったりするんだよね。」

「家督継げねぇから必死なんだろ。さすがにそこら辺のやつを娶るわけにもなぁ。」

まぁそうだね。できなくはないけど反発は大きそう。
ゲームでは他国の平民と結婚してたしてたしね。ウケる。よくクラウスが許したな。なんか利益でもあったとかしか考えられない。

「他国は?」

「考えとくかぁ。男でも顔良けりゃどうにかなるだろうしな。」

「男の皇后は何代ぶりだろうね。」

「さぁな。」

ヴェルナーは一旦無視して教室に向かった。テオ様に助けを求めるように視線を送ってたけど僕が手を振って邪魔してやった。あんな中にテオ様を入れられない。今回ばかりはルディの護衛役という名の雑用係に感謝だね。


「兄上、殿下、俺はそろそろ。」

「変な輩に気をつけろよ。」

「またあとで。」

綺麗な一礼で返してくれるテオ様。
ほんと真面目。今までの会話全部聞き役に徹してた。騎士の鏡だよね。本気で騎士目指してんのかな。皇室に魔法騎士団はないんだけど、騎士団に入るのかな。ゲームではその後とか書かれないから将来テオ様がどうなるかとか分かんないんだよね。



だからゲームの話が終わってからが僕の人生になると思ってる。


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