推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん

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8歳

85

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「断れば?」

腰を浮かして店主が聞いてくる。

「逃げられないよ。君はこの家を捨てられないでしょ?」

店主は思いっきり椅子を僕めがけて蹴り飛ばして裏口に向かって走る。

馬鹿だなぁ。まぁ分かってたけど。
こんな怪しいやつが来たら僕でも逃げるよ。


僕も影魔法を発動させて店主を…いや、これから仲良くなるんだもん。
ハーロルトの足首を引っ捕まえて店中で吊り下げる。抵抗したいんだろう。足に向かってなにか投げたけど届いてない。
体づくりも健康の元だよ。ずっと座って研究してたんじゃないの?ダメだよ。

「話くらいは静かに聞いてよ。僕だって無理矢理なんてしたくないんだよ?」

「錬金術の排除か。」

信用ないな。もしそうだったら国お抱えの近衛兵でもあてがってくれるよ。

「まさか。本当に座って話さない?ハーロルトを傷つけるつもりはないし。本当にただの商談だよ。僕だけ利益を奪うつもりもないしね。」

「嘘を判断する錬金術具を使用してもいい…ですか?」

「へぇ。いいもの持ってるね。いいよ。」

棚の奥から出されたのはなんかやたら機械みたいななにか。
錬金術って魔法の類だよね。そんなネジみたいなのとか歯車見えてていいの?

でも性能はいいらしくて魔力で測定するんだって。魔力が濃くなれば嘘と判断するらしい。興奮しても鳴るから現代の嘘発見器と同じように信ぴょう性はないみたい。
今度僕も作り方とか考えてみようかな。



「まずは自己紹介から行こうか。僕はクラウス・フォン・シルヴェスター。実は錬金術師なんだ。君の才能を買って商談に来たよ。…どうぞ。」

「ハーロルト。性は…捨てました。錬金術を広めるためにこの店を開いてます。本当に錬金術師をやっているの…ですか?」


捨てた?ってことは元は貴族か金持ちか。嫡男かなんかで反対されて飛び出たって感じかな。
信用させるにはまずは手札を見せないとね。僕の弱みでもあるから出したくないけどここで中途半端なもの出して侮られるのも癪だ。


「簡単なものだけどね。手持ちの錬金術具はこの指輪。見てみる?」

「…魔力が吸い取られますね。」

「魔力の循環を良くして魔力の放出も属性にこっちが合わせなくても同じ感覚でできるの。」

唇を噛んで僕に返してくるハーロルト。僕のとっておきだからね。宝石だって最高級だもん。

「まぁそれでだよ。今困ってることがあってね、シルヴェスターは南北に広い土地を持ってる。でも北の方がね凍死者や凍傷で末端の切断とかが毎年多い。農作物も育ちにくい。正直に言えば魅力は少ない土地なんだ。」

本当に厄介な土地。1回の冬が長いせいで冬に育つはずの作物が育たないどころか凍るんだもん。
鉱山とかがあればいいんだけど夏しか人を動かさないせいで見つからない。

「でもね、モノづくりならあの土地でも栄えると思うんだ。モノづくりで僕が1番可能性を秘めてると思ってるのが錬金術。錬金術を僕が後押ししてあげる。国からも民からも認めさせてあげる。その代わり北で錬金術を広めてくれない?仕事の内容はこの仕事を受けてくれてから。どう?」

嘘かどうかを探るように僕の目をじっと見つめてたのにスっと目を逸らされた。なにが不満なの?結構譲渡してると思うよ。

「研究ができません。」

「北に研究棟を作ってあげるよ。どんな研究したいかは僕に報告してね。危険なものじゃなきゃ許可するよ。それに僕も一緒に研究したいから数人はこっちに残ってもらうかもしれないね。」

「国に俺たちを売り渡すかもしれない。どうやって保護できると断言する。」

「北に受け入れられた時に僕も錬金術師だと公表するよ。北で受け入れられる準備もできてる。」

「給金は?」

「売上が出るまではあまり払えないけど…衣食住は保証する。もちろん過酷なところじゃない。1年くらいは冷暖房完備、ご飯も柔らかいパンとおかずでどう?衣食住の分少ないけど給料はだす。辞める場合手切れ金もだす。」

「はっ。至れり尽くせりだな。」


よし。悪い提案ではなかったらしい。
この人が錬金術師をしてるのは錬金術を認めさせるためだもん。高位貴族が後ろ盾になるなら断る手はないだろう。めちゃくちゃ怪しいだろうけどね。

だからこそ自分達の利益のためじゃなく…他人のためにと言えば受けはいいだろう。


「シルヴェスターの民のためだからね。そこまで北は終わってるんだよ。ゆっくりと終わりに向かってると言えばわかるかな。」

「1週間後答えを聞きに来てください。仲間と話し合いたい。」

まぁいいけど。お金も受けてくれないなら渡すつもりはない。だから持ち逃げなんてことはないはず。

「うーん。面倒だけど…いいよ。じゃあ全く別の話なんだけどさ、錬金術具の改良頼んでいい?出来高で払うから。」

「どんなものでしょう?」

信じ切るわけじゃないけど手をさらけ出しましたよっていうポーズは必要だ。

持ち逃げられても問題ないやつだし。どうせこの冬までにはシルヴェスターから出るものだし。

空間魔法に入れて置いたカイロとチョコレートを作る過程で使う粉砕機と混ぜる機械を取り出す。

もうしばらく時間も取れないし。お手並み拝見といこうかな。


先に粉砕機と混ぜるものから。

「詳しくは言えないけど高いものを粉砕するもの、それと均等に早く混ぜる錬金術具だよ。コレをもっと細かく粉砕して丁寧に混ぜられるようにしたいの。最悪壊してもいいから改良して欲しい。」

「出来高と言いましたが望み通りのものを作ればいくらになりますか?」

うーん。どのくらい。確かに数量的に決めた方がいいか。

「字は読める?」

「はい。計算もできます。」

「じゃあもう1つの方も一緒に説明してからお金の話をしようか。」








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