82 / 212
8歳
79 テオside
しおりを挟む朝食が終わり背を向ける兄上とアルフレートに声をかける。さっきので聞きたいことがあるんだ。
「アルフレート。」
兄上に付き添っていたアルフレートを呼び止める。兄上が手を後ろに振ったことで一礼してこっちに来た。
その道中でメイドを兄上の後ろにつかせてたのは流石だと思う。兄上が信頼してるだけある。
「如何しましたか。テオ様。」
「単刀直入に言うが、兄上は自分の母親を大事だとは思っていないのか?」
今まで気を使ってきたがそこまで使わなくていいのか?兄上は気を使われるのがあまり好きではなさそうだし。かと言って自分の母親が兄上の母親を殺したようなものだ。
気を使わないわけがない。なのに母上は気を使わないし最近じゃ兄上までなにか母上を気に入ってるように見える。
あの人に事業を任せるとか...いくら兄上でもやめた方がいいと思う。言っていいのか分からないが。
「クラウス様ですから。そういった感情を表に出す人ではありませんよ。」
無難な答えだな。
別に本当の事を言われても俺が兄上を嫌うはずがないのに。
「軽くないか?俺も母を尊敬はしていないが亡くなってしまったら悲しいぞ。」
眉を下げてふぅと息をついたアルフレート。
「正直、私にも分かりません。感情はありますし理解しようと努力されています。ご容赦ください。」
怒っているわけでも失望している訳でもない。気になっただけだ。俺も捨て駒扱いなのかとか。期待に応えられなければ捨てられるのか...とか。
「アルフレートは兄上のことをどう思っているんだ?」
「...奥様が最後まで心配していたので守るべき人物だと認識しています。なにを守るのかは模索中です。」
分かるぞ。兄上を守るって何をだってなる。心?母親が死んでもしれっと新しい母親を受け入れた人だぞ?守るところがない。身体だって皇宮の魔法大会で最年少優勝してしまった。下手したら護衛の方が弱いぞ。
そんな兄上を心配していた?どんな女性なんだか。ムキムキで魔法をルディ様のようにバカスカ打ってくるとか?
それは確かに怖い。
そんな人が心労?有り得るのか?
「死因は本当に心労なのか?」
「侯爵の毒殺です。医者も侯爵家から来ていましたからいくらでも捏造できます。」
「兄上は?」
「クラウス様ですからご存知でしょう。」
本当に?でも兄上なら築いてるかも知らない。
でも抜けているところもあるからな、あの人は。
前に庭で花を摘んでいたからなんの花を摘んでいるのか聞いたら得意げな顔でヨヨギ草だと言う。全然違うものだったが。
怪我の手当とかで使う草。裏が白ければヨヨギ草。そうじゃなければただの草。
祖父母の領地でこれを集めて売っていたこともある。まぁ兄上は帝都生まれだからな。分からないのも仕方ない。
ただ堂々としすぎてこっちが間違えているのかと思った。
俺がそう思ったことを言えば「へぇ。そうなの?」とだけ言って草を捨てて裏が白い方を取り始めた。
言ったら聞いてくれる。でも堂々としすぎてこっちが間違えている気になってしまう。たまにこう言うことがある。
でも知っているかもしれない。本当に分からない人だ。
でもずっと兄上と共にいたアルフレートが言うならそうなのだろう。
「兄上はそんな奴と手を組んでいるのか?」
「クラウス様が頼れる人は侯爵か皇家ですから。」
「父様は?」
「あてになりません。あのお方は領地経営の才能は皆無で人徳もありませんから。」
そうか?
前に母上に会う前の父上が皇帝陛下と会っているのを見たことがある。今回のパーティで初めて陛下を見たからその時まで知らなかったがアレは陛下だった。
なにをしていたのかは知らないが最後は父上が跪いていた。あれを見ているからか仲は悪くないと思ってしまう。
「...なにか知っているのですか?」
顔に出ていたのだろうか。
「いや。以前、祖父母の領地で親しげに会っているのを見たことがある。だから父上は皇帝陛下から信頼されていると思っていたんだ。」
「これをクラウス様には?」
珍しく少し早口なアルフレート。
「兄上は父上を嫌っているだろ?言えるわけがない。」
「クラウス様は旦那様を嫌っている訳ではありません。伝えに行きましょう。今すぐに。」
183
お気に入りに追加
2,352
あなたにおすすめの小説

嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード
中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。
目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。
しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。
転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。
だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。
そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。
弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。
そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。
颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。
「お前といると、楽だ」
次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。
「お前、俺から逃げるな」
颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。
転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。
これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。
胸キュンシチュの相手はおれじゃないだろ?
一ノ瀬麻紀
BL
今まで好きな人どころか、女の子にも興味をしめさなかった幼馴染の東雲律 (しののめりつ)から、恋愛相談を受けた月島湊 (つきしま みなと)と弟の月島湧 (つきしまゆう)
湊が提案したのは「少女漫画みたいな胸キュンシチュで、あの子のハートをGETしちゃおう作戦!」
なのに、なぜか律は湊の前にばかり現れる。
そして湊のまわりに起こるのは、湊の提案した「胸キュンシチュエーション」
え?ちょっとまって?実践する相手、間違ってないか?
戸惑う湊に打ち明けられた真実とは……。
DKの青春BL✨️
2万弱の短編です。よろしくお願いします。
ノベマさん、エブリスタさんにも投稿しています。
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編をはじめましたー!
他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる