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8歳
79 テオside
しおりを挟む朝食が終わり背を向ける兄上とアルフレートに声をかける。さっきので聞きたいことがあるんだ。
「アルフレート。」
兄上に付き添っていたアルフレートを呼び止める。兄上が手を後ろに振ったことで一礼してこっちに来た。
その道中でメイドを兄上の後ろにつかせてたのは流石だと思う。兄上が信頼してるだけある。
「如何しましたか。テオ様。」
「単刀直入に言うが、兄上は自分の母親を大事だとは思っていないのか?」
今まで気を使ってきたがそこまで使わなくていいのか?兄上は気を使われるのがあまり好きではなさそうだし。かと言って自分の母親が兄上の母親を殺したようなものだ。
気を使わないわけがない。なのに母上は気を使わないし最近じゃ兄上までなにか母上を気に入ってるように見える。
あの人に事業を任せるとか...いくら兄上でもやめた方がいいと思う。言っていいのか分からないが。
「クラウス様ですから。そういった感情を表に出す人ではありませんよ。」
無難な答えだな。
別に本当の事を言われても俺が兄上を嫌うはずがないのに。
「軽くないか?俺も母を尊敬はしていないが亡くなってしまったら悲しいぞ。」
眉を下げてふぅと息をついたアルフレート。
「正直、私にも分かりません。感情はありますし理解しようと努力されています。ご容赦ください。」
怒っているわけでも失望している訳でもない。気になっただけだ。俺も捨て駒扱いなのかとか。期待に応えられなければ捨てられるのか...とか。
「アルフレートは兄上のことをどう思っているんだ?」
「...奥様が最後まで心配していたので守るべき人物だと認識しています。なにを守るのかは模索中です。」
分かるぞ。兄上を守るって何をだってなる。心?母親が死んでもしれっと新しい母親を受け入れた人だぞ?守るところがない。身体だって皇宮の魔法大会で最年少優勝してしまった。下手したら護衛の方が弱いぞ。
そんな兄上を心配していた?どんな女性なんだか。ムキムキで魔法をルディ様のようにバカスカ打ってくるとか?
それは確かに怖い。
そんな人が心労?有り得るのか?
「死因は本当に心労なのか?」
「侯爵の毒殺です。医者も侯爵家から来ていましたからいくらでも捏造できます。」
「兄上は?」
「クラウス様ですからご存知でしょう。」
本当に?でも兄上なら築いてるかも知らない。
でも抜けているところもあるからな、あの人は。
前に庭で花を摘んでいたからなんの花を摘んでいるのか聞いたら得意げな顔でヨヨギ草だと言う。全然違うものだったが。
怪我の手当とかで使う草。裏が白ければヨヨギ草。そうじゃなければただの草。
祖父母の領地でこれを集めて売っていたこともある。まぁ兄上は帝都生まれだからな。分からないのも仕方ない。
ただ堂々としすぎてこっちが間違えているのかと思った。
俺がそう思ったことを言えば「へぇ。そうなの?」とだけ言って草を捨てて裏が白い方を取り始めた。
言ったら聞いてくれる。でも堂々としすぎてこっちが間違えている気になってしまう。たまにこう言うことがある。
でも知っているかもしれない。本当に分からない人だ。
でもずっと兄上と共にいたアルフレートが言うならそうなのだろう。
「兄上はそんな奴と手を組んでいるのか?」
「クラウス様が頼れる人は侯爵か皇家ですから。」
「父様は?」
「あてになりません。あのお方は領地経営の才能は皆無で人徳もありませんから。」
そうか?
前に母上に会う前の父上が皇帝陛下と会っているのを見たことがある。今回のパーティで初めて陛下を見たからその時まで知らなかったがアレは陛下だった。
なにをしていたのかは知らないが最後は父上が跪いていた。あれを見ているからか仲は悪くないと思ってしまう。
「...なにか知っているのですか?」
顔に出ていたのだろうか。
「いや。以前、祖父母の領地で親しげに会っているのを見たことがある。だから父上は皇帝陛下から信頼されていると思っていたんだ。」
「これをクラウス様には?」
珍しく少し早口なアルフレート。
「兄上は父上を嫌っているだろ?言えるわけがない。」
「クラウス様は旦那様を嫌っている訳ではありません。伝えに行きましょう。今すぐに。」
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