推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん

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8歳

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《皇帝陛下、皇后陛下、第1皇子殿下、第2皇子殿下のご入場です》

今まで話していた貴族も黙って様子見していた貴族も慣れたように頭を下げる。一瞬だけ義母を見たけど完璧な礼。
大丈夫そうだね。

「面をあげよ。」

皇帝陛下のその言葉に皆で頭をあげる。

「クラウス・フォン・シルヴェスター公子。こちらへ。」

呼ばれたので陛下が立つ階段の前で次の言葉を待つ。

「此度の優勝、おめでとう。」

「ありがとうございます。」

「最年少だったな。素晴らしい功績だ。そなたを推した私の顔も立つというものだ。今宵は公子が主役だ。私から特に言うこともなかろう。おめでとう、シルヴェスター公子。」

拍手が巻き起こる。それが弱まった頃に皇帝陛下が口を開いた。

「では望むものを言ってみよ。」

「次代公爵への確約をお願い致します。」

「よかろう。まぁそれも決まりきっていたことだ。他にないのか?」

「ございません。」

「公爵はこの場にはいないが認印も貰っている。心配することはない。では、シルヴェスター公子が12歳の誕生日に公爵へとなることをこの場で認める。」

「そうだな…。であれば賞金に色をつけよう。賞金は公爵邸に送る。良いか?」

「ありがとうございます。」

「それでは皆の者、楽しんでくれ。」

その言葉と共に鳴り響く音楽。次はダンスか。男の僕は誘わない限り誘われないだろうけど義母様大丈夫かな。
マナーは教えたから問題ないと言いたいけど…あの美貌だからなぁ。

1番初めのダンスは夫か身内。その他を選ぶならそれは恋人だ。…覚えてるよね?


案の定もう人だかりができている。一人が勇気を出してその後に続いたって感じだろう。

勇気と無謀って紙一重だよね。おぉ怖。

義母はどう見てもイライラしている。十何センチか知らないけどそのヒールで踏みつけないでくださいよ。

「兄上、俺が止めて来ます。」

いつの間にか僕の隣に来ていたテオ様がそう言ってあの人混みに入ろうとする。テオ様みたいに可愛い子が言ったら踏み潰されちゃうよ。

「巻き込まれるからやめときなよ。どうするんだろうね。また踏みつけるのかな?」

「否定できないのが母ですから…。」

それもそうかも。
多分笑顔を維持できなくなったんだろう。扇で顔を隠した。風魔法で義母の周りの声を聞く。テオにも同期して。めっちゃビクッて隣で揺れてた。可愛い。ずっと見てられる。

「兄上、一言あっても良かったんじゃないですか?」

「可愛いね。」

「…もう。話を聞いてください。」


かっわいい。義母はそれどころじゃなさそうだけど。

何度断わっても次の男が待ってるし。周りの女は冷めたような目で見ている。公爵夫人ってこと忘れてないかな。

『申し訳ありません。私には夫がいますので…。』

声が震えてるけどあれブチギレてるよね。男たちは顔が見えないから怖がってるとか思いそう。
小動物みがある。僕のタイプではないけれど。

「母上、そろそろ爆発しませんか?大丈夫ですか?」

「するだろうね。」

案の定パチンと扇を閉じてヒールを鳴らす。どこの女王様だよって態度。真っ赤な髪も揺らした。あーあ。教えたのに。

『うっる…』


そこまで言って僕と目が合う。もしかしたら勘違いでテオ様と目が合ったのかも。
ちゃんと言い直した。言い直したと言っても…まぁうん。まだ許容範囲かなくらい。態度や所作が丁寧だからまだ大丈夫。

『騒がしいわね!!私の手を握るのも、私を誘えるのも許されるのは公爵様だけよ!せめて私を誘える最低限の誇れるものを持ってから話しかけなさい!そしたら考えてあげないでもないわ。』

あーあー。怒鳴ってはないけど声を張ってるせいでフロア全体に聞こえたんじゃないのかな。

しんっとなるフロアで義母のヒールが鳴り響く。ヒールとは真逆で静かにソファに座った。足をゆっくりと組んだせいでスタイルが分かりやすく現われる。
ちょっとはしたないはずなのに義母の顔と所作のせいで当たり前のように見えるのがすごい。参考になるな。
閉じた扇をそのまま口元に持っていく。


『何度も伝えておりますが私は公爵夫人。身の程をわきまえてください。』


かっこいいね。すっご。
ヒールで足を踏み付けるよりも牽制になるだろう。

僕が誘っても断られるだろう。でもテオ様なら…。


「テオ、ダンス誘ってみな。」

「え…。断られたら…」

「大丈夫だよ。テオ、行ってみな。」

「分かりました。」

渋々と言った表情をしたけど次に義母の方を向いた時はいつものテオ様だった。
凛々しくて可愛くて愛らしくてかっこいい。

キッとした目付きは義母譲りかな。


義母の前に行ったテオ様は跪いて義母に手を差し出す。
かっこいい♡♡♡
僕もして欲しい。いや、僕がしてあげたい♡♡♡♡♡♡

「母上、私とファーストダンスを踊っていただけますか?」

「…まぁ合格点ね。いいわよ。もう少し身長があれば文句はないのだけれど。」

「では、優勝者からのプレゼントとということで。」

ふるりと左手を揺らして魔法をかける。ただの幻影魔法だけどね。

「光魔法の幻覚、感触などは闇魔法で錯覚させております。」

「褒めてあげるわ。」

僕、これでもこの国で偉い部類に入るんだよ。少なくとも義母よりは偉い。

「誰目線なんですか貴女は。」

「シルヴェスター公爵夫人。テオの母で貴方の義母よ。それでいてわたしブラザ・フォン・シルヴェスターなの。」

本当にすごいな。こんなシンっとしたフロアで全員の目を釘付けにしてるのにこんなふうに言えるなんて…。皇帝ですら言ってないよ。
ここまで皇族や貴族の前で吹っ切れられると尊敬してしまう。









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