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8歳

62侯爵side

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「公子、侯爵は反対しておりました。誰かとお間違えではないですか?」

その言葉に場が凍りついた。
どれだけ周りで話していようとも高位貴族が集まって近くで話してる。しかも1人はこのパーティの主役をかっさらった最年少優勝者の公子。聞き耳を立てないはずがない。貴族とはそういう生き物だ。

伯爵はこれを狙っていたんだろう。忠義に厚い人だがそれと同じくらいの承認欲求の高い人だ。

利益があるから陛下側にいる邪魔な私と皇族に尽くすことが義務だとばかりに皇族に忠義を尽くす甥。どちらも承認欲求を満たす邪魔になるとはいえ、それならば向こうの味方だろう。


クラウスは微笑みを張りつけたままで感情が読み取れない。
ただスっと開いた目は僕を貫くような意志を持っていた。

いや。
でも。

クラウスが侯爵家を切れるわけがない。いくら皇族と仲が良くたってクラウスの大好きな商は貴族が投資して成り立つ。多くの金を出してる我が侯爵家を切れるはずがない。

その視線も一瞬で伯爵に視線を戻した時は相変わらずの仮面を被っていた。

「そうでしたか?私としたことがとんだ勘違いを…。侯爵様が約束してくれたとばかり…。勘違いしておりました。今後は契約書でも交わしましょうか。」

ニコッと完璧な笑顔を私に向けてくる。
そっちの方が怖い。まだ怒鳴るとか怒りを露にした子供の方が安心感がある。

いやだろ?
怒ってるのは分かるのにニコニコと丁寧に自分が悪いかのように振る舞う子供。

絶対にそんなこと思ってないのに。

「…あぁ。いや……侯爵様も年端もいかぬ公子様の身を案じてのことでしょう。公子様がが怪我などなされたらと思うと気が気ではなかったのかもしれませんな。」

「…はい。まさか優勝などと。」

ほらみろ。伯爵ですら私を庇った。怖いんだ。クラウスを怒らすのもその笑みを向けられるのも。
しかも今年の優勝者。どんな暴力装置だ。

「すると思わなかった。ですかな?」

やっぱりコイツは敵だ。庇ったのも咄嗟の事だったか振りだった。ニヤリと笑う姿は意地の悪いたぬきだ。

「伯爵、あまりいじめないであげてください。久しぶりのシルヴェスターからの参加ですから。無様な真似はできません。そうですよね?侯爵。」

「そう、ですね。」


庇うように私が言った言葉を復唱した。
周りの貴族はこの一言で気づいただろう。侯爵家が目上の公爵家のことに口出ししたと気づいたはずだ。

「いくら伯父とはいえ公爵家に無闇矢鱈と口を出すのはいかがですかな、侯爵様。」

うるさい私よりも身分が下の伯爵が口を出すな。

「父も外国に、母も神の元に召されましたから心配だったんでしょう。今では義母もいますから気にされる程でもありませんよ。」


私に対する牽制か。
ここで手を引く訳にはいかない。私は港を手に入れなければならないんだ。整備もされ始めていると聞く。早く。早く、関わって一部でも手に入れたい。



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