推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん

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8歳

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観客も入ってきてザワつく中終わらない挨拶参り。僕も練習したいんだけど無下にする訳にもいかないし。

テオ様を見つけても終わらない挨拶回りのせいで手を振ることも許されない。この挨拶回りが終わったのは皇帝陛下、皇后陛下、第1皇子殿下、第2皇子殿下入場の声がかかった時だった。

長めの皇帝陛下の挨拶が終わり出る順番に呼ばれていく。
ルディは相変わらずつまらなさそう。どっちかと言えば自分で魔法打ちたいタイプだもんね。

僕の座ってる方面にテオ様が座ったからテオ様を眺めるって言う楽しみもない。
つまんないなぁ。見慣れた魔法見てもって感じ。

今回僕はギリギリまで無詠唱でやるつもり。ちゃんと詠唱する方が威力が上がるけど噛んだりしたら終わりだからね。僕は剣術も魔法も妥協するつもりないから走りながらでも戦えるようにしたい。
それでこそテオ様に好かれる完璧超人クラウスだ。全部全部手に入れてみせる。テオ様に好かれるためならなんでもやるんだから。


「クラウス・フォン・シルヴェスター公子様!!」

あ、呼ばれた。行くか。

ルディがあくびしてるのが見えた。僕の出番でそんな態度取れるのはルディだけだよ。皇帝陛下ですら話をやめてこっちを見てくれたのに。


相手は魔法塔推薦の男爵家のおじさん。
魔法塔推薦ってだけあって魔力は多い。技はどうだろ。生半可な技なら無詠唱で防げるけど。少しは手応えある人がいいな。先生以上じゃないと僕に詠唱させることは出来ないから頑張って欲しい。

『はじめ!!』

審判役の合図に合わせて防御魔法と空間魔法を組み合わせたものを張る。これはめっちゃ簡単。闇魔法で作ったプロテクションに闇魔法で作った異空間を合わせるだけだもん。
同じ属性だし簡単だよ。面倒だけど使い勝手がプロテクションよりいい。似たような魔法で反射魔法もあるけど反射魔法は確率ゲーだからあまりしたくない。失敗したらプロテクション張る前にか当たっちゃうし。
もちろんこれも無詠唱でやるよ。どんだけ練習したと思ってんの。

向こうが先に風魔法で気円斬みたいなのいっぱい出してぶつけてきた。
『ウィンドゥカッター』っていう初級魔法。まぁいっぱいだしたらメチャ強なんだけどね。切られるかもしんないし、全部避けるのは至難の業。だから防御魔法が必要になるんだけどけど。


僕の場合全部放った本人に転送されるけど。

魔法で強化された石畳の上に魔法が落ちていく。僕の周りにはひとつも落ちないけど。

さっきこの日と驚きすぎてなんの魔法も言えてなかった。だから代わりに防御魔法をかけてあげる。
ホントにもう。大人なんだからしっかりして欲しい。

「大丈夫ですか?」

「あ、は、へ?」

大丈夫かな?手を差し出したら握り返してくれたけど言葉喋ってないよ。

「まだやりますか?もう1回魔法放つ?」

今度はビクンっと体を揺らして座り込んじゃった。

「ちょ、本当に大丈夫?」

「ま、参りました!!!許してください!!!!!」

その腰抜かしたようなポーズのまま泣かれた。

え、僕が悪いの?プロテクション張って手を差し伸べたよ?僕が悪いの?

「え、泣かないでください。」

「申し訳ありません!!!!調子に乗りました!!」

ちょっと。今度は頭を抱えるようなポーズで喚く喚く。本当に僕が悪いみたいじゃん。やめてってば。テオ様も見てるんだから!!

「シルヴェスター公子、少し離れなさい。」

起こそうと肩に手を置いたところで皇帝に窘められた。僕本気で何もしてないってば!

皇宮に言われたからには下がらないわけもなく、一礼して相手から離れる。

そしたら審判に向かって皇帝陛下が頷いて審判も頷き返した。

「シルヴェスター公子様の勝利!!」

そりゃそうだけどさ。
相手の人2人に担がれて舞台から降りてった。

え?僕が悪いの?
ルディを見たら爆笑するの堪えてんのか下向いて震えてる。まじかよ。周りの観客を見回しても誰も目を合わせてくれない。

僕が悪いらしい。
え?なんにもしてないじゃん。さすがに理不尽すぎる。自分の投げた玉が帰ってきて受け取れなかったのあっちだよ?そんで僕は守ってあげたんだよ?僕が悪いの?







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