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8歳
49
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少しだけ華美な運動着に着替えて手袋をつける。
最後に魔力補正をしてくれる指輪をつけて完成。赤い宝石が少しだけ煌めいた。ルビーはテオ様の目に似てて好きなんだよね。だからコレにしたわけだし。
この宝石。母様の残してったものだから他人には形見って通すことにしてる。いいもの持ってたよね。母様。
アルフレートに上着を持たせて玄関に向かう。魔法大会の前だから少し早めに皇宮に向かって体を慣らすのだ。
テオは後から来てルディと合流するらしい。無様なところは見せらんない。
少しだけ早足に玄関に向かうと使用人とすれ違うわすれ違うわ。この時間は色々忙しくしてるから玄関にたむろってるのは珍しい。
でもまぁ聞くほどでもないか。メイド達にだって理由はあるはずだし。僕は早いから皆で挨拶とかいらないとは伝えてあるから僕のためではない。
なにかあるのかと玄関の方を見たら背筋を伸ばし手綺麗に立ってるテオ様がいた。なるほど。テオ様付きの使用人があちゃこっちゃしてたのか。
僕が割り振ったせいでテオ様の使用人多いもんな。
テオ様を眺めてたら視線を感じたのかただの予感か僕の方を振り向いてくれた。ほんとにもう振り向くだけでも可愛くて困る。
「兄上!」
「早起きだね。なにかあった?」
かっわいい。癒し。天使だ。
「えと、お見送りをしようと思ったんです。あとこれを良ければつけて行ってください。」
そう言って取りだしたのは紐。テオ様からじゃなかったら貰って捨てるような下手くそな編み方をされた紐。
「紐?」
「故郷で有名なおまじないです。この紐が切れたら願い事が叶うというものなんです。」
そう見せられたのは黒と金が交互に編まれた紐。
「へぇ。黒と金、ね。テオが着けてよ。願い事は魔法大会での優勝でいいよ。」
「~!!はい!」
嬉しすぎる。宝石よりもお金よりも愛なんかよりも嬉しい。
保護魔法かけとこ。本当はどこかに閉まっておきたいけどテオ様が着けてくれたからね。
保護魔法かけて絶対切れないようにしておこう。
みすぼらしいけどとっても嬉しい。絶対に勝たないと。
嬉しくて愛おしくて結んでくれた紐を撫でた。
…あれ?この紐。手触りがすこぶるいいんだが。
「テオ、この紐どこで手に入れたの?」
「紐を探しているとアルフレートに伝えたら貰えました。」
「使わないからとクラウス様から頂いた紐です。」
ふぅん。
なんかテオ様がゴミを渡そうとしたわけじゃないって1人で焦ってるけどそんなことはどうでもいい。
テオ様から貰えるなら窓の際のゴミでも宝物だ。
でもこれめっちゃ手触りがいい。染めてこれなら十分だ。
「色は?」
「俺が庭師に習って付けました。」
え。すごいじゃん。
お小遣いで誰かにやらせたのかと思ってた。
「すごいね…。ありがとう、テオ。これのおかげで今日は優勝できるよ。」
嬉しい。テオ様が染めて編んでくれた紐。嬉しくないわけがない。お返しに保護魔法でもかけてあげようかな。
「切れないと願いは叶いませんよ?」
テオは真面目だね。そもそも叶うなんて思ってないし。気持ちだよ。頑張れって好きな子に言われたら頑張れるじゃん。あとは努力の問題だ。
「どうだろう。思いっていうのは案外強い効力があるものだよ。」
分からないというふうに首を傾げたテオ様。
お返しあげよ。万が一僕が魔法を失敗した時用の結界魔法。僕が失敗した時はテオ様と僕だけが残るんだろうな。それはそれで素敵。
「テオ、こっちにおいで。」
【闇の神よ 闇の精霊よ この者に守りを与え給え 】
【光の神よ 光の精霊よ この者に守りを与え給え】
上級魔法のひとつ上。神級魔法。
僕も無詠唱では発動できない。なんなら完璧にできる魔法でもない。使い勝手もコストも悪いし。今かけた魔法だってここまで詠唱しても効果は中級防御魔法くらいの強度。
本来ならもっとすごい防御魔法になるんだよ。国を守る結界とかはコレだもん。
ただカッコつけたかったからテオ様の前で詠唱したただけ。見る人が見たらできてねぇじゃん。ってなるやつ。
「クラウス様、それは神級魔法ではないですか。いつの間に…」
ほら、精通してるアルフレートですらこの状態。
詠唱で魔力は集まるし一応発動はしてるからバレないと思ったけど…こんなもんだよね。
「元々できるけど詠唱がないとできないってだけだよ。」
「本来の詠唱はもっと長いでしょうに。」
「戦場に行くわけじゃないし簡易でいいんだよ。」
話を早く切り上げたい。ボロが出たらダサすぎる。
「じゃあ行ってくるね。」
アルフレートに上着を着せてもらって出ていく。メイド達はみな揃って頭を下げる。
そして最後にテオ様の声が響いた。もう様になってる。とっても可愛い。
「行ってらっしゃいませ。兄上。」
あぁ。今日もこれで頑張れる。
最後に魔力補正をしてくれる指輪をつけて完成。赤い宝石が少しだけ煌めいた。ルビーはテオ様の目に似てて好きなんだよね。だからコレにしたわけだし。
この宝石。母様の残してったものだから他人には形見って通すことにしてる。いいもの持ってたよね。母様。
アルフレートに上着を持たせて玄関に向かう。魔法大会の前だから少し早めに皇宮に向かって体を慣らすのだ。
テオは後から来てルディと合流するらしい。無様なところは見せらんない。
少しだけ早足に玄関に向かうと使用人とすれ違うわすれ違うわ。この時間は色々忙しくしてるから玄関にたむろってるのは珍しい。
でもまぁ聞くほどでもないか。メイド達にだって理由はあるはずだし。僕は早いから皆で挨拶とかいらないとは伝えてあるから僕のためではない。
なにかあるのかと玄関の方を見たら背筋を伸ばし手綺麗に立ってるテオ様がいた。なるほど。テオ様付きの使用人があちゃこっちゃしてたのか。
僕が割り振ったせいでテオ様の使用人多いもんな。
テオ様を眺めてたら視線を感じたのかただの予感か僕の方を振り向いてくれた。ほんとにもう振り向くだけでも可愛くて困る。
「兄上!」
「早起きだね。なにかあった?」
かっわいい。癒し。天使だ。
「えと、お見送りをしようと思ったんです。あとこれを良ければつけて行ってください。」
そう言って取りだしたのは紐。テオ様からじゃなかったら貰って捨てるような下手くそな編み方をされた紐。
「紐?」
「故郷で有名なおまじないです。この紐が切れたら願い事が叶うというものなんです。」
そう見せられたのは黒と金が交互に編まれた紐。
「へぇ。黒と金、ね。テオが着けてよ。願い事は魔法大会での優勝でいいよ。」
「~!!はい!」
嬉しすぎる。宝石よりもお金よりも愛なんかよりも嬉しい。
保護魔法かけとこ。本当はどこかに閉まっておきたいけどテオ様が着けてくれたからね。
保護魔法かけて絶対切れないようにしておこう。
みすぼらしいけどとっても嬉しい。絶対に勝たないと。
嬉しくて愛おしくて結んでくれた紐を撫でた。
…あれ?この紐。手触りがすこぶるいいんだが。
「テオ、この紐どこで手に入れたの?」
「紐を探しているとアルフレートに伝えたら貰えました。」
「使わないからとクラウス様から頂いた紐です。」
ふぅん。
なんかテオ様がゴミを渡そうとしたわけじゃないって1人で焦ってるけどそんなことはどうでもいい。
テオ様から貰えるなら窓の際のゴミでも宝物だ。
でもこれめっちゃ手触りがいい。染めてこれなら十分だ。
「色は?」
「俺が庭師に習って付けました。」
え。すごいじゃん。
お小遣いで誰かにやらせたのかと思ってた。
「すごいね…。ありがとう、テオ。これのおかげで今日は優勝できるよ。」
嬉しい。テオ様が染めて編んでくれた紐。嬉しくないわけがない。お返しに保護魔法でもかけてあげようかな。
「切れないと願いは叶いませんよ?」
テオは真面目だね。そもそも叶うなんて思ってないし。気持ちだよ。頑張れって好きな子に言われたら頑張れるじゃん。あとは努力の問題だ。
「どうだろう。思いっていうのは案外強い効力があるものだよ。」
分からないというふうに首を傾げたテオ様。
お返しあげよ。万が一僕が魔法を失敗した時用の結界魔法。僕が失敗した時はテオ様と僕だけが残るんだろうな。それはそれで素敵。
「テオ、こっちにおいで。」
【闇の神よ 闇の精霊よ この者に守りを与え給え 】
【光の神よ 光の精霊よ この者に守りを与え給え】
上級魔法のひとつ上。神級魔法。
僕も無詠唱では発動できない。なんなら完璧にできる魔法でもない。使い勝手もコストも悪いし。今かけた魔法だってここまで詠唱しても効果は中級防御魔法くらいの強度。
本来ならもっとすごい防御魔法になるんだよ。国を守る結界とかはコレだもん。
ただカッコつけたかったからテオ様の前で詠唱したただけ。見る人が見たらできてねぇじゃん。ってなるやつ。
「クラウス様、それは神級魔法ではないですか。いつの間に…」
ほら、精通してるアルフレートですらこの状態。
詠唱で魔力は集まるし一応発動はしてるからバレないと思ったけど…こんなもんだよね。
「元々できるけど詠唱がないとできないってだけだよ。」
「本来の詠唱はもっと長いでしょうに。」
「戦場に行くわけじゃないし簡易でいいんだよ。」
話を早く切り上げたい。ボロが出たらダサすぎる。
「じゃあ行ってくるね。」
アルフレートに上着を着せてもらって出ていく。メイド達はみな揃って頭を下げる。
そして最後にテオ様の声が響いた。もう様になってる。とっても可愛い。
「行ってらっしゃいませ。兄上。」
あぁ。今日もこれで頑張れる。
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