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8歳

48伯父上side

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相変わらず妹の生まれ変わりのような甥だ。
いや、妹よりも表情筋が動いて笑顔を貼り付けているから私の分身のようなというのが正しいのかもしれない。

この子が我が子ならばと思わなくもない。もしそうなれば侯爵家も安泰なのに。

いや、ないものねだりか。
私の子供だって頭が悪いわけではない。クラウスが異常なだけだ。
妹は私が止めるほどクラウスに厳しく接していた。あの育て方が成功するとは思えなかったがある意味成功はしている。

あの子は完璧な貴族で領主だ。これはあの子に接しているものなら皆感じているだろう。
あの家の使用人を買収しようとしても1言目には【クラウス様を裏切ることはできません。】だ。
やっと手に入れた情報だって取るに足らない。魔力を流せば暖かくなる?北に領地のない我が家には関係の無いこと。寒ければ魔道具もある。

完璧な貴族。
けれど人としては作り物みたいな子供だ。

精密に作られた子供型のゴーレムに大人の人間の魂を入れたような。あの妹ならやりかねない、か…。

これが大人ならば尊敬もあるだろう。でもあの子はまだ子供。正直言って気味が悪い。

妹は領地経営が致命的なシルヴェスター公爵の補佐のためにこの家に嫁いだ。これはシルヴェスターの闇魔法を手放せなかった皇家とシルヴェスターの港を狙った侯爵家の策略のせいだった。



だから才能のある妹を嫁がせたのに…妹は我が家を裏切った。港は手に入らない。侯爵家の販売ルートをかすめ取る。逆に公爵家は繁栄に向かい始めた。

だから殺したのに今度は妹のような忘れ形見。

甥は着実に妹の作りかけたものを作り上げている。
魔法大会だってクラウスには推薦してやると言ったが実際の会議では反対した。なのに通ったのは皇帝陛下のせいだ。何故か皇帝陛下が推挙した。

もしかしたら察してクラウスが動いたのかもしれない。
かと言ってもう殺せない。シルヴェスターの中で侯爵家の血筋はクラウスだけだ。港や販路を取り返すためにもどうにか抱き込まなければ。

そもそも初めの予定では才能のないシルヴェスター公爵に変わってクラウスが取り仕切る。それはまともにできないだろうから侯爵家が手を貸す。

そういう手筈だったのに。

だから万が一の身内の争いをなくすために新しく連れ込んだ次男を見に来てみればクラウスはすぐに帰ってくるし牽制された。手は回してたはずなんだがな。

あれだけの砂糖を手に入れる余裕はないはずなのに。一体、どこから手に入れた?

妹の時はまだ情報が入ってきたのにクラウスが送り込んだ全員をこちらに返すか取り込んだせいで何もわからない。

シルヴェスターお得意の洗脳魔法を使ってるんじゃないかと考えてしまう。まぉあれは闇魔法の中でも上位。まだ子供のクラウスにできるはずがないが。

はぁ。イライラしたら負けだ。
考えを変えよう。

クラウスは弟を可愛がっていたな。あの噂は本当だったのかもしれない。

シルヴェスター公爵家の公子様は腹違いの弟を愛してる。

どこからそんなデマがと思ったが随分とまぁ手なずけているようだ。
クラウスを知らないやつが見たら愛だと思うのも仕方がない。
私はあの子にそんな感情がないことを知っているから惑わされたりしないがな。

そういえば妹もシルヴェスター公爵家に嫁いで言っていたな。
「この世で最も信用できるのは愛だ」、と。
結婚して腑抜けたかと思っていたがアレを見たらあながち間違っていないのかもしれない。

あそこまで可愛がられれば元々男爵家だったテオは今の立場をなくしたくないと願うだろう。そのためにテオという弟はクラウスに尽くす。

完璧で尊敬できるクラウスにんげんに特別扱いを受けて優越感に浸らないわけがない。

今は優しいだけの自分の兄という認識かもしれないがそのうち実感する時がくる。クラウスは冷たい人形のような人間だと。その時にあの愛とやらは完成するんだろう。

もし。もしそこまで考えてテオ・フォン・シルヴェスターを手なずけているなら末恐ろしい。
クラウスのことだから考えていないと言いきれない。

それにしても、テオ・フォン・シルヴェスターもクラウスに負けず劣らずの黒髪だった。

少しでもクラウスが失敗したなら今の地位を取り替えられる可能性は大いにある。そうなる前に私から手を下すか迷うところだな。

隠しもしないクラウスの帰れという圧と「先触れをくださればもてなしましたのに侯爵ともあろうお方が貴族のマナーを知らないのですか」という圧に負けて公爵家を出てきた。

馬車の中から流れてく景色を見て何故か私が殺した妹を思い出した。

とんでもないものを残してくれたな。ミラよ。

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