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8歳
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「クラウス様。魔法大会の服はどうされますか?」
あー。もう一週間後だもんね。急がないとなぁ。一応技はできたけど精密さに欠ける。
貴族が求める美しさには程遠い。けれどシルヴェスターの闇魔法に華やかさなんて皆無だから。内に秘めた光魔法が漏れ出すイメージの洗練された魔法を打ちたい。
あと少し。あと少しあれば、もっと魔力を絞って流れ星みたいにスっと通り過ぎる派手な魔法が打てる気がする。
今だって剣術をほっぽり出して魔法の先生とあーだこーだ言い合ってるもん。
だからさ、身につけるものとかほんと今は興味無い。その後のパーティで着飾るんだからいらないよ。
「いつものでいいよ。」
「貴族は華美なものが好まれますが。」
「それは大会の後の皇宮主催のパーティでやるでしょ。戦うのにヒラヒラきらきらしてたら気が散るし。それに今回は本気で魔法撃つからボロボロになるよ。」
「ですが貴族としてのメンツが。」
馬鹿にされないくらい圧倒的に勝つから大丈夫。
「実力でねじ伏せるから問題ない。テオは着飾らせといてね。」
「…はぁ。仰せの通りに。」
不服そう。でも本気だし?
僕が1番になってテオ様に凄いってかっこいいって、大好きだって言ってもらうんだから。
「それに一週間後に魔法大会だよ?準備できないんだから諦めなよ。」
「シルヴェスターの名前を出せばできなくもありませんから。せっかくの晴れ舞台を…奥様が墓から這い出てきますよ。」
「怖いこと言わないでよ。本当に出てきそうじゃん。」
怖すぎでしょ。
それに母様だから本当に出てきそう。
まだ納得はしてないみたいだけどアルフレートは今日のおやつを静かに僕の前に差し出してくる。ちゃっかり自分のところにも置いてるし。いいけどね?
今日はパンケーキと付け合せにチョコレート。
テオ様のために毎日毎日チョコレート食べてる。ニキビできないようにポーションもガブ飲み。
だって完璧超人のクラウスの肌にニキビとか解釈違いも甚だしい。テオ様に失望されないためにもこれは必須。
「前よりマシになったね。ザラザラ感もないし。…味も深みがあっていい。なにやったの?」
「今回はクラウス様が準備された道具を使ったらしいです。少々洋酒を混ぜたらしいですがここまで変わりますか。あの機械、一体どこから手に入れたんですか?」
「秘密。」
作ったなんて言うわけないじゃん。
アルフレートだって僕が錬金術に傾倒してるって知らないし。
「お酒って食べてもいい量なの?害ないよね?」
「アルコールは熱で飛びますから大丈夫でしょう。」
「ならいいけど。」
本当に大丈夫だよね?テオ様にもしもがあったら発狂する自信しかない。
「及第点をあげてもいいんじゃないですか?」
「まだ時間はあるしダメ。もっと洗練されたものにしないと。貴族向けに売り出すのに少しでも荒があれば足元を見られる。」
テオ様に食べさせるもので妥協したくない。
もっと良くなるなら良くすべきだし、至高のテオ様なんだからこんなもんか。なんてものをあげたくない。
お金さえあれば全部僕が見初めた物でテオ様を囲むのに。
「それにテオがここに来て初めての誕生日だからね。お金が無いなりに祝ってあげなくちゃ。」
「あまりテオ様に肩入れしない方が良いのでは?テオ様が可哀想です。」
「…なんで?僕はこんなに愛してるのに。」
なに?伝わってないの?僕こんなにテオ様に尽くしてるよ?もちろんテオ様にそんなところ見せないけど。テオ様はいい子だから引け目に思うかもしれない。それでプレゼント貰ってくれなくなったら泣くしかない。
「ただの戯れでしょうに。そういえばあの獣人どうしますか?執事の真似事をさせていますがそれなりに器用ですよ。」
あー。あのわんちゃん。
まず言葉覚えてもらわないとどうにもなんないしな。
「帝国の言葉とあの島国の言葉覚えさせて。リヴァーズ帝国の言葉。」
アルフレートはなんか言いにくそうに口をもにょっとさせた。
「獣人を特攻隊にして戦争でもやつもりですか?」
「僕をなんだと思ってるの。文法が似てるでしょ。覚えやすいかなって。」
本当はあの島国に僕の腹違いの弟がいる。
その弟がシルヴェスター公爵家に入って殺されることから物語が始まるんだ。
ずっとリヴァーズ帝国に行ってる父様はそれに気づいて探してるんだろう。
始まっちゃうなぁ。
実際始まるのは16歳のときのはず。だからまだ大丈夫。
それにこの世界はBLゲームの中だけあって男性カップルも女性カップルも多い。神殿に行けば同性同士でも子供を作れるようにしてくれる。それで大儲けしてるのが神殿。
やっぱりどんな世界になっても神様は金の上に立ってるらしい。
なによりこのBLゲームは見る分にはいいけど当事者にはなりたくないからなぁ。
だから絶対に弟たちは殺させない。
少しでもテオ様が死ぬ未来があるなんて許さない。
あー。もう一週間後だもんね。急がないとなぁ。一応技はできたけど精密さに欠ける。
貴族が求める美しさには程遠い。けれどシルヴェスターの闇魔法に華やかさなんて皆無だから。内に秘めた光魔法が漏れ出すイメージの洗練された魔法を打ちたい。
あと少し。あと少しあれば、もっと魔力を絞って流れ星みたいにスっと通り過ぎる派手な魔法が打てる気がする。
今だって剣術をほっぽり出して魔法の先生とあーだこーだ言い合ってるもん。
だからさ、身につけるものとかほんと今は興味無い。その後のパーティで着飾るんだからいらないよ。
「いつものでいいよ。」
「貴族は華美なものが好まれますが。」
「それは大会の後の皇宮主催のパーティでやるでしょ。戦うのにヒラヒラきらきらしてたら気が散るし。それに今回は本気で魔法撃つからボロボロになるよ。」
「ですが貴族としてのメンツが。」
馬鹿にされないくらい圧倒的に勝つから大丈夫。
「実力でねじ伏せるから問題ない。テオは着飾らせといてね。」
「…はぁ。仰せの通りに。」
不服そう。でも本気だし?
僕が1番になってテオ様に凄いってかっこいいって、大好きだって言ってもらうんだから。
「それに一週間後に魔法大会だよ?準備できないんだから諦めなよ。」
「シルヴェスターの名前を出せばできなくもありませんから。せっかくの晴れ舞台を…奥様が墓から這い出てきますよ。」
「怖いこと言わないでよ。本当に出てきそうじゃん。」
怖すぎでしょ。
それに母様だから本当に出てきそう。
まだ納得はしてないみたいだけどアルフレートは今日のおやつを静かに僕の前に差し出してくる。ちゃっかり自分のところにも置いてるし。いいけどね?
今日はパンケーキと付け合せにチョコレート。
テオ様のために毎日毎日チョコレート食べてる。ニキビできないようにポーションもガブ飲み。
だって完璧超人のクラウスの肌にニキビとか解釈違いも甚だしい。テオ様に失望されないためにもこれは必須。
「前よりマシになったね。ザラザラ感もないし。…味も深みがあっていい。なにやったの?」
「今回はクラウス様が準備された道具を使ったらしいです。少々洋酒を混ぜたらしいですがここまで変わりますか。あの機械、一体どこから手に入れたんですか?」
「秘密。」
作ったなんて言うわけないじゃん。
アルフレートだって僕が錬金術に傾倒してるって知らないし。
「お酒って食べてもいい量なの?害ないよね?」
「アルコールは熱で飛びますから大丈夫でしょう。」
「ならいいけど。」
本当に大丈夫だよね?テオ様にもしもがあったら発狂する自信しかない。
「及第点をあげてもいいんじゃないですか?」
「まだ時間はあるしダメ。もっと洗練されたものにしないと。貴族向けに売り出すのに少しでも荒があれば足元を見られる。」
テオ様に食べさせるもので妥協したくない。
もっと良くなるなら良くすべきだし、至高のテオ様なんだからこんなもんか。なんてものをあげたくない。
お金さえあれば全部僕が見初めた物でテオ様を囲むのに。
「それにテオがここに来て初めての誕生日だからね。お金が無いなりに祝ってあげなくちゃ。」
「あまりテオ様に肩入れしない方が良いのでは?テオ様が可哀想です。」
「…なんで?僕はこんなに愛してるのに。」
なに?伝わってないの?僕こんなにテオ様に尽くしてるよ?もちろんテオ様にそんなところ見せないけど。テオ様はいい子だから引け目に思うかもしれない。それでプレゼント貰ってくれなくなったら泣くしかない。
「ただの戯れでしょうに。そういえばあの獣人どうしますか?執事の真似事をさせていますがそれなりに器用ですよ。」
あー。あのわんちゃん。
まず言葉覚えてもらわないとどうにもなんないしな。
「帝国の言葉とあの島国の言葉覚えさせて。リヴァーズ帝国の言葉。」
アルフレートはなんか言いにくそうに口をもにょっとさせた。
「獣人を特攻隊にして戦争でもやつもりですか?」
「僕をなんだと思ってるの。文法が似てるでしょ。覚えやすいかなって。」
本当はあの島国に僕の腹違いの弟がいる。
その弟がシルヴェスター公爵家に入って殺されることから物語が始まるんだ。
ずっとリヴァーズ帝国に行ってる父様はそれに気づいて探してるんだろう。
始まっちゃうなぁ。
実際始まるのは16歳のときのはず。だからまだ大丈夫。
それにこの世界はBLゲームの中だけあって男性カップルも女性カップルも多い。神殿に行けば同性同士でも子供を作れるようにしてくれる。それで大儲けしてるのが神殿。
やっぱりどんな世界になっても神様は金の上に立ってるらしい。
なによりこのBLゲームは見る分にはいいけど当事者にはなりたくないからなぁ。
だから絶対に弟たちは殺させない。
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