上 下
8 / 211
8歳

6

しおりを挟む
テオ様が来て生活に気力が湧いた。まぁ忙しいから淡々とこなしてはいるけど気持ち的にはめっちゃ頑張れる状態よ?

テオ様は1日1回僕の前に現れてくれる。ご飯を呼びに来たり、散歩いこうと誘ってくれたり。
どれだけ疲れてて忙しくてもテオ様が顔を見せてくれるだけで頑張れる。


毎日朝ごはんをテオ様と食べて。領地から送られてくる紙を決裁して。変な所あれば使用人を領地に走らせたり、領地を任せてるやつを呼びつける手紙を送ったりする。
昼過ぎに皇宮に行って魔法と、もしくは剣の訓練。ヘトヘトになって帰ってくるから一度お昼寝。
お昼寝が終わればまた決裁か勉強。夕食前に剣の自主練習。夕食をテオ様とたまに義母様と食って、寝る前まで錬金術の勉強。
この流れに空いた時間で言語とか歴史の勉強。
ほとんど母様が生きてた時に学ばされたから家庭教師は週一。最近は雑談という名の論文論議してる。僕はあまり論文読む時間ないからそこから情報得られてラッキー。

ただ10歳から貴族の学校に通わないといけないのが最近の悩み。行かなくても理解してるしね。だから寮に入るつもりはないんだよ。高等部はそうもいかないから手を打たないと…。

…考えることが多すぎる。

まだ母が連れてきた執事のアルフレートがいるから決裁とかは任せられるけど。でも領地や商いの全体像は把握しておきたい。

切実に信用出来る事務係が欲しい。でも今から育てるとなると僕の高等部入学に追いつかない。それなら育てない方がマシだ。…いや将来に向けて育てるべきか?

それにゲームのこと考えないと。どうせ主人公の初恋相手はシルヴェスター家に来る。それなら先に考えておくのも悪くない。初恋相手を殺すのか。生かすのか。飼い殺しにするのか。テオ様のように使える人材にするのか。なんなら第1皇子に売りつけるのもあり。

大変だな。
今日は決裁書類もないから勉強しないと。神聖言語と…あぁ新しい紅茶が手に入ったから試し飲みしてどこに卸すか考えないとね。いい茶葉なら貴族街に店舗を出すのもありかな。最近香辛料も多く下ろされてるからそっち方面のお店作る案も出てる。


それとテオ様の誕生日…。チョコレート作ろうかと思ったんだけど砂糖が高い。錬金術で作れないかなぁ。作れそうではあるんだよね。サトウキビの代わりになりそうなもの見つけたし。
この世界じゃ砂糖も魔法で作るんだよ。逆に意味がわからない。
…テオ様のためにやってみるか。



静かに置かれたティカップ。
はぁ。1度落ち着くか。思考を切り替えよう。


「ありがとう。アル。」
「いえいえ。仕事ですので。」

そういうとこ良くないよ。善意で持ってくれればいいのに。そういうとこも好きだけど。

「飢饉対策で北の領地に芋という植物を植えて。」

そう決済された書類と領主代理に向けた手紙を渡す。

「北ですか?冬は凍りついてしまいますが。」

「家にでも入れてたら家庭で食べられるでしょ。早々に腐るものでもなさそうだし、今よりかはマシになると思う。」

食料対策は一旦これでいいか。あとは例年通り他の領地から余った食料を移動させる。
残りは寒さ対策だけど…。この世界の体を温める方法が魔法石とかなんだよね。魔法石なんてバカ高くて領民に分け与えられる量を用意できない。どうにかできないものか。

カイロの原理使ってみる?あれに錬金術で魔法陣でも付与できれば永久に使えるかも。

「アル。今日のうちに砂鉄1袋買ってきて。」

「砂鉄、ですか?」

「凍傷対策にね。さすがにいつまでも毛皮で耐え忍ぶのは無理あるし。北の方は出生率はあっても大人に成長できる子が少ないからね。成長しても皇都に出稼ぎにくる数が多すぎる。どうにかしないとジリ貧だ。」

「砂鉄で解決できますか?」

分かんないけど試さないとなにも進歩しないじゃん。

「今回は試験的に1番寒い街で試すつもり。本当はもっと使用人を増やしたいんだけどね。今ギリギリでしょ?あの若いメイドたちも入れ替えたいところなのに…総入れ替えにはあと3年はかかるね。」

「領主としての仕事は領民に還元してこそです。この屋敷のことは私とメラニーに任せてください。」

そこは信用してるよ。2人以上に信用して仕事を任せられる人はいない。メラニーの若いメイドへの愚痴は止まらないけど。

「もちろん信用してるよ。」

そういやさ。テオ様っていつもなにしてんだろ。僕を呼びに来てくれる時しかしてること知らない。

「テオはいつも何してるの?」

アルフレートは珍しく間をあけた。アルフレートに限って把握してないってことはないと思うけど。

「テオ様は大抵は素振りをしております。クラウス様のお古の木刀をお渡ししました。そういえば…魔法を打とうとして乳母に止められていましたね。」


魔法ねぇ。
そういやテオ様の魔力適正検査しないと。僕は攻略本で勝手に知ってるけど本来は神殿で検査してそれを皇宮に提出してやっと魔法士と認められる。

もし、前の家でしてるならこっちでしなくて済むんだけど…。聞いとかないと。


「まぁ火と闇の適性はあるだろうね。」

「奥様も綺麗な赤い髪ですから。」

ほんとそうだよね。髪や目に魔力が現れていると言ってもあそこまではっきりした色はなかなかない。それは僕やテオ様もだけど。
義母様は目も髪もペンキのように真っ赤な色をしている。色が濃い貴族は貴族連中の中でもモテるからね。それだけ才能があるんだ。一家繁栄には欠かせない才能。
なのに父様に嫁いだってことは人を見る目がないのか。公爵という後ろ盾がよく写ったのか。性格や趣味が貴族ウケしなかったのか。
本当に阿呆なら父様の見た目に惑わされたってだけだね。

あの人も鍛えれば宮廷魔法士くらいにはなれる才能はあるだろうに。勿体ない。

「神殿に魔力適性検査の依頼しといて。その結果を持って皇宮に行くから。」


「はい。クラウス様。」






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 本編完結しました。 おまけのお話を更新したりします。

【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成) エロなし。騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? いいねありがとうございます!励みになります。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

気付いたら囲われていたという話

空兎
BL
文武両道、才色兼備な俺の兄は意地悪だ。小さい頃から色んな物を取られたし最近だと好きな女の子まで取られるようになった。おかげで俺はぼっちですよ、ちくしょう。だけども俺は諦めないからな!俺のこと好きになってくれる可愛い女の子見つけて絶対に幸せになってやる! ※無自覚囲い込み系兄×恋に恋する弟の話です。

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

謎の死を遂げる予定の我儘悪役令息ですが、義兄が離してくれません

柴傘
BL
ミーシャ・ルリアン、4歳。 父が連れてきた僕の義兄になる人を見た瞬間、突然前世の記憶を思い出した。 あれ、僕ってばBL小説の悪役令息じゃない? 前世での愛読書だったBL小説の悪役令息であるミーシャは、義兄である主人公を出会った頃から蛇蝎のように嫌いイジメを繰り返し最終的には謎の死を遂げる。 そんなの絶対に嫌だ!そう思ったけれど、なぜか僕は理性が非常によわよわで直ぐにキレてしまう困った体質だった。 「おまえもクビ!おまえもだ!あしたから顔をみせるなー!」 今日も今日とて理不尽な理由で使用人を解雇しまくり。けれどそんな僕を見ても、主人公はずっとニコニコしている。 「おはようミーシャ、今日も元気だね」 あまつさえ僕を抱き上げ頬擦りして、可愛い可愛いと連呼する。あれれ?お兄様、全然キャラ違くない? 義弟が色々な意味で可愛くて仕方ない溺愛執着攻め×怒りの沸点ド底辺理性よわよわショタ受け 9/2以降不定期更新

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

処理中です...