上 下
28 / 56
第1章

石化するのは、男性陣。

しおりを挟む







 パーティー、当日。


普段はスザンヌが、私にドレスを着せてくれたり、髪を結ってくれたりするのだけれど、今日ばかりは、ウィンストン公爵家に仕えて長い侍女達が私の身なりを整えてくれた。


ほんのりと施されたメイクに、器用に結い上げられた髪。青空を想像させる程、鮮やかで明るい色をした水色のドレスと、キラキラと輝く小ぶりのアクセサリーは、デビュタントに相応しい。


本来、デビュタントとはもう少し遅いらしいのだが、私の場合は、ウィンストン公爵家の養女ムスメして他の貴族に顔を覚えてもらう必要があったことに加え、既にアリソン殿下と顔見知りだったということもあり、この歳での社交界デビューとなった。


 「お嬢様…!なんてお美しい…!」

 「ありがとう。」

 「今宵のパーティーで最も美しいと賞賛される女性は、お嬢様で間違いないかと思われます!」

 「大袈裟。」

スザンヌは、私のことを過大評価し過ぎなのだ。“馬子にも衣装”とは、よく言うだろう。


 「王宮でのパーティー、楽しんできてくださいね!」

 「別に楽しみではないんだけど…とりあえず行ってくる。」

 「はいっ!行ってらっしゃいませ!」


スザンヌに見送られて、部屋を出た私。


ドレスに足を引っ掛けないよう気をつけながら玄関ホールへと向かえば、正装に身を包んだヒューゴ、エイダン、カーシーの3人が既に待っていた。見送りなのか、公爵様と奥様も居る。


 「お待たせ致しました。」


声を掛けたことにより、5人の視線が、一斉にこちらを向く。


 「……。」

 「……。」

 「……。」

 「……。」


そして何故か、訪れる沈黙。


皆が私に視線を向けたまま固まるものだから、どこか変なのだろうかと心配になるも、唯一石化していない奥様が、私の心情を察して、『どこも変じゃないから安心して』と言ってくれる。


ならば何故、彼等は動かないのだろうか。


怪訝な顔をする私に対して、奥様はクスクスと面白そう笑っている。


 「…おい、どうすんだよ、これ。」


沈黙を破ったのは、エイダンだった。


 「う~ん…、どうしようか。これはちょっとまずいかも?」


 「まずいかも?…じゃないよ、兄さん!どうしてあの性悪王太子とお義姉ちゃんを会わせちゃったのさ!」


もう!とヒューゴに対して怒りを見せるカーシー。そんなカーシーに、ヒューゴは『ごめん…』と素直に謝る。


カーシーが怒っている理由はいまいち分からないけれど、これだけは言える。


私もあの性悪王太子とは会いたくはなかった。


それはそうと、さっきからこの兄弟3人は、いったい何の話をしているのだろうか。


状況が全く理解出来ずに怪訝な顔を深める私に、さらなる追い打ちをかけたのは、公爵様だった。







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄の次は爵位剥奪ですか? 構いませんよ、金の力で取り戻しますから

ひじり
恋愛
「エナ、僕は真実の愛を見つけたんだ。その相手はもちろん、きみじゃない。だから僕が何を言いたいのか分かるよね?」  男爵令嬢のエナ・ローリアは、幼い頃にリック・ティーレンスからのプロポーズを受けた。  将来を誓い合った二人は両家公認の仲になったが、ティーレンス家が子爵に陞爵した日を境に、すれ違う日が増えていった。  そして結婚式を前日に控えたある日、エナはリックから婚約を一方的に破棄されてしまう。  リックの新しい相手――カルデ・リスタは伯爵令嬢だ。しかし注目すべきはそこじゃない。カルデは異世界転生者であった。地位や名誉はもちろんのこと、財産や魔力の差においても、男爵令嬢のエナとは格が違う。  エナはリックの気持ちを尊重するつもりだったが、追い打ちをかける出来事がローリア家を襲う。  カルデからリックを横取りしようとした背信行為で、ローリア家は爵位を剥奪されることになったのだ。  事実無根だと訴えるが、王国は聞く耳を持たず。異世界転生者と男爵家の人間では、言葉の重みが違う。貴族の地位を失った父――ロド・ローリアは投獄され、エナ自身は国外追放処分となった。 「悪いわね~、エナ? あんたが持ってたもの、ぜーんぶあたしが貰っちゃった♪」  荷物をまとめて王都を発つ日、リックとカルデが見送りにくる。リックに婚約破棄されたことも、爵位剥奪されたことも、全てはこいつのしわざか、と確信する。  だからエナは宣言することにした。 「婚約破棄の次は爵位剥奪ですか? 構いませんよ、金の力で取り戻しますから」 ※異世界転生者有り、魔法有りの世界観になります。

お兄ちゃんが私にぐいぐいエッチな事を迫って来て困るんですけど!?

さいとう みさき
恋愛
私は琴吹(ことぶき)、高校生一年生。 私には再婚して血の繋がらない 二つ年上の兄がいる。 見た目は、まあ正直、好みなんだけど…… 「好きな人が出来た! すまんが琴吹、練習台になってくれ!!」 そう言ってお兄ちゃんは私に協力を要請するのだけど、何処で仕入れた知識だかエッチな事ばかりしてこようとする。 「お兄ちゃんのばかぁっ! 女の子にいきなりそんな事しちゃダメだってばッ!!」 はぁ、見た目は好みなのにこのバカ兄は目的の為に偏った知識で女の子に接して来ようとする。 こんなんじゃ絶対にフラれる! 仕方ない、この私がお兄ちゃんを教育してやろーじゃないの! 実はお兄ちゃん好きな義妹が奮闘する物語です。 

虐げられた第一王女は隣国王室の至宝となる

珊瑚
恋愛
王族女性に聖なる力を持って産まれる者がいるイングステン王国。『聖女』と呼ばれるその王族女性は、『神獣』を操る事が出来るという。生まれた時から可愛がられる双子の妹とは違い、忌み嫌われてきた王女・セレナが追放された先は隣国・アバーヴェルド帝国。そこで彼女は才能を開花させ、大切に庇護される。一方、セレナを追放した後のイングステン王国では国土が荒れ始めて…… ゆっくり更新になるかと思います。 ですが、最後までプロットを完成させておりますので意地でも完結させますのでそこについては御安心下さいm(_ _)m

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

もう我慢する気はないので出て行きます〜陰から私が国を支えていた事実を彼らは知らない〜

おしゃれスナイプ
恋愛
公爵令嬢として生を受けたセフィリア・アインベルクは己の前世の記憶を持った稀有な存在であった。 それは『精霊姫』と呼ばれた前世の記憶。 精霊と意思疎通の出来る唯一の存在であったが故に、かつての私は精霊の力を借りて国を加護する役目を負っていた。 だからこそ、人知れず私は精霊の力を借りて今生も『精霊姫』としての役目を果たしていたのだが————

生まれ変わってでも結ばれたいっ!〜前世を覚えていませんけどっ!?〜

宮沖杏
恋愛
家を追い出され冒険者になって早2年。 見た目がトラブルの原因になり安定したパーティが組めない日々に心挫けず、いつかはのんびりと暮らす事を目標にロティ・キャンベルは毎日を生きる。 今回もパーティを追い出されてしまい、仕方が無いので他のパーティを探そうとギルドで依頼書を見ていると、困っていた冒険者を発見し放っておけず、その人の依頼を受ける事にした。 依頼の為一緒に森に行くとギルドの掲示板に目撃情報が上がっていた魔物に襲われしまった。 戦闘中に魔物に噛まれるし、不気味な事があるしで私は意識を失ってしまった。 依頼者共々絶体絶命のピンチに、間一髪助けてくれたのはメルニア王国の勇者パーティの1人、不老不死の呪いにかかった魔導師のルーク・ロイヴァだった。 助けてくれた理由もわからないのに彼は何故か私を知っていて、更には抱きしめてきて離してくれない。 「……離すのは嫌だ。もう絶対嫌。無理。」 「ロティは前世、俺に呪いをかけたんだ。」 覚えてないけど、私は前世にこの人を呪っちゃった? なのにこの溺愛っぷりは何…どういう事? なんで呪っちゃったの?? 前世の記憶…今すぐに戻ってこないかなぁ。 貴方との思い出を夢の中でじわじわと思い出していく。 ファンタジー要素強め×甘々。   4月19日タイトル変更しました。 最強魔導師に溺愛されてます。 ↓ 前世で彼に不老不死の呪いをかけてしまったけど覚えてなくて、今世では最強魔導師になっていて私を溺愛してくる。 ↓ 生まれ変わってでも結ばれたいっ! 〜前世を覚えていませんけどっ!?〜 何度もタイトル変更申し訳ないです…。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

亡国の大聖女 追い出されたので辺境伯領で農業を始めます

夜桜
恋愛
 共和国の大聖女フィセルは、国を安定させる為に魔力を使い続け支えていた。だが、婚約を交わしていたウィリアム将軍が一方的に婚約破棄。しかも大聖女を『大魔女』認定し、両親を目の前で殺された。フィセルだけは国から追い出され、孤独の身となる。そんな絶望の雨天の中――ヒューズ辺境伯が現れ、フィセルを救う。  一週間後、大聖女を失った共和国はモンスターの大規模襲来で甚大な被害を受け……滅びの道を辿っていた。フィセルの力は“本物”だったのだ。戻って下さいと土下座され懇願されるが、もう全てが遅かった。フィセルは辺境伯と共に農業を始めていた。

家に代々伝わる髪色を受け継いでいないからとずっと虐げられてきていたのですが……。

四季
恋愛
メリア・オフトレスは三姉妹の真ん中。 しかしオフトレス家に代々伝わる緑髪を受け継がず生まれたために母や姉妹らから虐げられていた。 だがある時、トレットという青年が現れて……?

処理中です...