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第1章
アリソン・ラクリスタル。
しおりを挟む「それよりも、早くお前の義妹に俺の紹介をしてよ。」
「それよりもって…。俺にとっては、アリソンの紹介をすることよりもアイヴィの体に怪我がないかを確かめることの方が優先事項だよ。」
「お前はいつからシスコンになったわけ?」
「家族を大事にするのは当然のことだろ。」
「美徳だな。」
「アイヴィ。彼は、アリソン・ラクリスタル。この国の王太子だよ。俺とアリソンは、同い年ということもあって、仲が良いんだ。」
ヒューゴが私に対して、あまりにもフランクにこの国の王太子を紹介するものだから、ついこちらも『はじめまして』と馴れ馴れしい挨拶をしてしまいそうになる。
危ない。ヒューゴと同じノリで行っていたら、礼儀知らずの非常識な令嬢だと思われるところだった。
「お初お目にかかります。アリソン・ラクリスタル殿下。先日よりウィンストン家の養女となりました。アイヴィ・ウィンストンにございます。この度はお会い出来て光栄にございます。」
つらつらと堅苦しい言葉を並べ、カーテシーの姿勢を取る。
ウィンストン公爵家の恥にならないよう、私が思い描く“淑女”を精一杯に演じてみたけれど、よくよく考えてみれば、思い切り転ぶところをしっかりと見られたのだった。
若干居た堪れない気持ちになりながらも、淑女としての演技は続ける。
アリソン殿下は、『ふ~ん…』と言いながら、値踏みするようような視線を私へと向けた。
決して気分のいいものではないけれど、相手は王太子だ。貴族として相応しいかどうかを見定めるのも仕事の内なのだろう。特にウィンストン公爵家は、王家からの信頼も厚いと聞く。養女を迎え入れたと聞けば、どんな娘か気になるのは当然のことだ。
「70点ってところかな。コレと同じでね。」
トントン、と足で床を叩いたアリソン殿下の足元には、右上に“70点”と書かれたテスト用紙が落ちていた。
アリソン殿下は、それを拾うなり、『こんな簡単な問題も満足に解けないなんて、公爵令嬢としてはまだまだだね』と私を馬鹿にする。
確かに満点ではないけれど、70点という点数は自分なりに頑張って出した結果だった。それなのに何故、バーサ先生ひもこの人にも、公爵令嬢としてはどうのこうのと、馬鹿にされなればいけないのだろうか。
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