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第1章
エイダンの気がかり。
しおりを挟む「よし。」
食事も湯浴みも終えた私は、今日も字の練習と授業の復習をするべく机へと向かっていた。
正直、眠たくて仕方ないけれど、このままの状態では、6日後の確認テストの結果は散々なものになるに違いない。
バーサ先生に馬鹿にされる未来が目に見えていた私は、『目指せ、高得点!』と自分を奮い立たせ、ノートにペンを走らせていく。
しかし、襲ってくる睡魔という悪魔は中々に強敵で、つい、こくりこくりと舟を漕いでしまう。
ぷつり、と意識が夢の世界へと手放されそうになったとき。部屋の扉が叩かれて、ハッ!と現実の世界へと戻ってくる。
私、今寝てた…?ていうか、誰かノックした?気のせい?
しょぼしょぼする目を擦りながら、多分叩かれたであろう扉を見る。もう一度叩かれる気配も無ければ、開かれる様子もない扉。やっぱり気のせい?なんて思いつつも、気になった私は、扉を開ける。
「エイダン?」
「よぉ。」
扉を開けた先にいたのは、寝間着に着替えたエイダンだった。
いったいこんな時間にどうしたのだろうか。私に何か用でもあるのだろうか。
「悪い。寝てたか?」
「起きてたよ。」
「なら、いいんだけど…。」
「何か用?」
「あー…その…。」
エイダンは、何故か気まずそうに目をキョロキョロとさせる。言いづらいのか、暫く『あー…』と言うだけだったが、意を決したのか、口を開いた。
「まだ気にしてるか?俺が夕食のときに言ったこと。」
「夕食のとき?」
何か言われただろうか?と考えた時点で、大して気にしていないことが分かった私は、何のことだか分からないながらも、首を横に振った。
そんな私の反応を見て、安心した表情を浮かべるエイダン。
「別に、お前のその体型が気持ちが悪いから太れとか言ったわけじゃないから、勘違いするなよ。」
そう言われて、初めて『ああ、あのことか』と気づく。
体型の発言について気にしていたのは、言われた側の私ではなく、言った側のエイダンだったようだ。
勘違いするも何も、そもそも勘違いなどしていない。
構わないと言いつつも本当は私が気にしているのではないかと思い、わざわざ私の部屋にまで確認しに来たらしいエイダン。けれど、私が本当に気にしていないことを知ると、『ちゃんと寝ろよ』とだけ言い残し、自分の部屋へと戻って行った。
そんな彼の後ろ姿を見ながら、私は、ふわぁあ…と欠伸をこぼす。
これ以上、勉強したところで頭には入ってこないだろうと判断した私は、今日はもう寝てしまうことに決めた。
ふかふかとしたベッドに身を沈めると、そのまま目を瞑る。
意識が夢の世界へと手放されたのは、それからすぐのことだった。
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