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第1章
自己紹介。
しおりを挟む「私、娘という存在に憧れを抱いててね?ほら、うちって3人とも男の子だから。一緒にドレス選んだり、お茶したり。そういうことがしたかったのだけれど出来なかったから、貴方がウィンストン家に来てくれて嬉しいわ。危うく、カーシーを女の子に仕立て上げるところだったわ。」
「母さん、それはちょっと勘弁してほしいかも…。」
「私のことは、遠慮なくお義母様って読んでね。アイヴィ。」
エルズバーグ伯爵家には、奥様が居なかった。だから、誰のことも“お義母様”と呼ばずに済んだ。頑なに避けてきたその呼び名。もはや意固地になっているだけという自覚はあるが、私はエヴィと違ってそう簡単には割り切れない。
「…アイヴィ。まずは自己紹介をしよう。私はこの公爵家の当主であるイーサン・ウィンストンだ。これから宜しく頼む。」
公爵様は、オスカーと同じ金髪に碧眼だった。兄弟なだけあって、顔はそこそこ似ていると思う。
オスカーからもそれなりの威厳を感じるが、公爵様のソレは桁違いだ。なんというか…ずっしりと重たい感じがする。
お父様にもエルズバーグにも、これ程までの威厳はなかった。同じ貴族でも、こうも違うものかと思わずにはいられない。恐らく、背負ってきたものの大きさが違うのだろう。
「そして、こっちが妻のフレデリカだ。」
「フレデリカよ。改めて宜しくね、アイヴィ。」
穏やかな笑みを浮かべる奥様。
ふわりと巻かれた長い髪は公爵様と同じ金色だけれど、瞳は緑玉にも負けを取らない綺麗な緑色だ。
品のある美しい女性だが、公爵様の選んだ女性なだけあって、美しさの中に凛とした強さを感じる。
出会って数分なのにもかかわらず、10歳の子供を相手にこれだけの印象を与えるだなんて流石は高名な公爵家を背負う夫婦なだけはある。
「そして、長男のヒューゴだ。歳は、アイヴィの2つ上だ。」
「はじめまして。アイヴィ。こんなに可愛い妹が出来るだなんて思ってなかったから嬉しいよ。何か困ったことがあったら、いつでも相談してね。」
公爵様譲りの金髪と碧眼。ふわりと笑う柔らかい笑みは、社交界で“女神の片割れ”と称される奥様にそっくりだ。“優美”。そんな言葉が彼には似合う。
「次に、次男のエイダン。歳は、アイヴィの1つ上だ。」
「…よぉ。」
金髪と碧眼なのはヒューゴと同じだけれど、顔はあまり似ていない。奥様似のヒューゴに対し、エイダンは公爵様に似ており、成長したら公爵様のような大人になるのだろうと容易に想像が出来た。
「最後に、三男のカーシーだ。歳は、アイヴィの1つ下だから、弟になるな。」
「宜しくね、お義姉ちゃん!まさか妹じゃなくて、お義姉ちゃんが出来るだなんて驚いたけど、家族が増えるのは嬉しいことだから!仲良くしようね!」
三兄弟の中で、唯一カーシーだけが奥様譲りの緑色の瞳をしている。顔はどちらかというと、奥様似だろうか。公爵様やエイダンのような鋭さはない。
それにしても、突然出来た姉に対して、家族が増えるのは嬉しいことだから仲良くしよう…だなんて、よく言える。
家族の形が変わることに何の抵抗も見せず、私のことを簡単に“お義姉ちゃん”と呼んでしまうカーシーは、私とまるで正反対だ。人懐こさは末っ子特有のものなのだろう。
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