上 下
8 / 56
第1章

自己紹介。

しおりを挟む




 「私、娘という存在に憧れを抱いててね?ほら、うちって3人とも男の子だから。一緒にドレス選んだり、お茶したり。そういうことがしたかったのだけれど出来なかったから、貴方がウィンストン家うちに来てくれて嬉しいわ。危うく、カーシーを女の子に仕立て上げるところだったわ。」

 「母さん、それはちょっと勘弁してほしいかも…。」

 「私のことは、遠慮なくお義母様って読んでね。アイヴィ。」


エルズバーグ伯爵家には、奥様が居なかった。だから、誰のことも“お義母様”と呼ばずに済んだ。頑なに避けてきたその呼び名。もはや意固地になっているだけという自覚はあるが、私はエヴィと違ってそう簡単には割り切れない。


 「…アイヴィ。まずは自己紹介をしよう。私はこの公爵家の当主であるイーサン・ウィンストンだ。これから宜しく頼む。」


公爵様は、オスカーと同じ金髪に碧眼だった。兄弟なだけあって、顔はそこそこ似ていると思う。


オスカーからもそれなりの威厳を感じるが、公爵様のソレは桁違いだ。なんというか…ずっしりと重たい感じがする。


お父様にもエルズバーグにも、これ程までの威厳はなかった。同じ貴族でも、こうも違うものかと思わずにはいられない。恐らく、背負ってきたものの大きさが違うのだろう。 


 「そして、こっちが妻のフレデリカだ。」

 「フレデリカよ。改めて宜しくね、アイヴィ。」


穏やかな笑みを浮かべる奥様。


ふわりと巻かれた長い髪は公爵様と同じ金色だけれど、瞳は緑玉エメラルドにも負けを取らない綺麗な緑色だ。


品のある美しい女性だが、公爵様の選んだ女性なだけあって、美しさの中に凛とした強さを感じる。


出会って数分なのにもかかわらず、10歳の子供を相手にこれだけの印象を与えるだなんて流石は高名な公爵家を背負う夫婦なだけはある。


 「そして、長男のヒューゴだ。歳は、アイヴィの2つ上だ。」

 「はじめまして。アイヴィ。こんなに可愛い妹が出来るだなんて思ってなかったから嬉しいよ。何か困ったことがあったら、いつでも相談してね。」


公爵様譲りの金髪と碧眼。ふわりと笑う柔らかい笑みは、社交界で“女神の片割れ”と称される奥様にそっくりだ。“優美”。そんな言葉が彼には似合う。


 「次に、次男のエイダン。歳は、アイヴィの1つ上だ。」

 「…よぉ。」


金髪と碧眼なのはヒューゴと同じだけれど、顔はあまり似ていない。奥様似のヒューゴに対し、エイダンは公爵様に似ており、成長したら公爵様のような大人になるのだろうと容易に想像が出来た。


 「最後に、三男のカーシーだ。歳は、アイヴィの1つ下だから、弟になるな。」

 「宜しくね、お義姉ちゃん!まさか妹じゃなくて、お義姉ちゃんが出来るだなんて驚いたけど、家族が増えるのは嬉しいことだから!仲良くしようね!」


三兄弟の中で、唯一カーシーだけが奥様譲りの緑色の瞳をしている。顔はどちらかというと、奥様似だろうか。公爵様やエイダンのような鋭さはない。


それにしても、突然出来た姉に対して、家族が増えるのは嬉しいことだから仲良くしよう…だなんて、よく言える。


家族の形が変わることに何の抵抗も見せず、私のことを簡単に“お義姉ちゃん”と呼んでしまうカーシーは、私とまるで正反対だ。人懐こさは末っ子特有のものなのだろう。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄の次は爵位剥奪ですか? 構いませんよ、金の力で取り戻しますから

ひじり
恋愛
「エナ、僕は真実の愛を見つけたんだ。その相手はもちろん、きみじゃない。だから僕が何を言いたいのか分かるよね?」  男爵令嬢のエナ・ローリアは、幼い頃にリック・ティーレンスからのプロポーズを受けた。  将来を誓い合った二人は両家公認の仲になったが、ティーレンス家が子爵に陞爵した日を境に、すれ違う日が増えていった。  そして結婚式を前日に控えたある日、エナはリックから婚約を一方的に破棄されてしまう。  リックの新しい相手――カルデ・リスタは伯爵令嬢だ。しかし注目すべきはそこじゃない。カルデは異世界転生者であった。地位や名誉はもちろんのこと、財産や魔力の差においても、男爵令嬢のエナとは格が違う。  エナはリックの気持ちを尊重するつもりだったが、追い打ちをかける出来事がローリア家を襲う。  カルデからリックを横取りしようとした背信行為で、ローリア家は爵位を剥奪されることになったのだ。  事実無根だと訴えるが、王国は聞く耳を持たず。異世界転生者と男爵家の人間では、言葉の重みが違う。貴族の地位を失った父――ロド・ローリアは投獄され、エナ自身は国外追放処分となった。 「悪いわね~、エナ? あんたが持ってたもの、ぜーんぶあたしが貰っちゃった♪」  荷物をまとめて王都を発つ日、リックとカルデが見送りにくる。リックに婚約破棄されたことも、爵位剥奪されたことも、全てはこいつのしわざか、と確信する。  だからエナは宣言することにした。 「婚約破棄の次は爵位剥奪ですか? 構いませんよ、金の力で取り戻しますから」 ※異世界転生者有り、魔法有りの世界観になります。

お兄ちゃんが私にぐいぐいエッチな事を迫って来て困るんですけど!?

さいとう みさき
恋愛
私は琴吹(ことぶき)、高校生一年生。 私には再婚して血の繋がらない 二つ年上の兄がいる。 見た目は、まあ正直、好みなんだけど…… 「好きな人が出来た! すまんが琴吹、練習台になってくれ!!」 そう言ってお兄ちゃんは私に協力を要請するのだけど、何処で仕入れた知識だかエッチな事ばかりしてこようとする。 「お兄ちゃんのばかぁっ! 女の子にいきなりそんな事しちゃダメだってばッ!!」 はぁ、見た目は好みなのにこのバカ兄は目的の為に偏った知識で女の子に接して来ようとする。 こんなんじゃ絶対にフラれる! 仕方ない、この私がお兄ちゃんを教育してやろーじゃないの! 実はお兄ちゃん好きな義妹が奮闘する物語です。 

虐げられた第一王女は隣国王室の至宝となる

珊瑚
恋愛
王族女性に聖なる力を持って産まれる者がいるイングステン王国。『聖女』と呼ばれるその王族女性は、『神獣』を操る事が出来るという。生まれた時から可愛がられる双子の妹とは違い、忌み嫌われてきた王女・セレナが追放された先は隣国・アバーヴェルド帝国。そこで彼女は才能を開花させ、大切に庇護される。一方、セレナを追放した後のイングステン王国では国土が荒れ始めて…… ゆっくり更新になるかと思います。 ですが、最後までプロットを完成させておりますので意地でも完結させますのでそこについては御安心下さいm(_ _)m

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

もう我慢する気はないので出て行きます〜陰から私が国を支えていた事実を彼らは知らない〜

おしゃれスナイプ
恋愛
公爵令嬢として生を受けたセフィリア・アインベルクは己の前世の記憶を持った稀有な存在であった。 それは『精霊姫』と呼ばれた前世の記憶。 精霊と意思疎通の出来る唯一の存在であったが故に、かつての私は精霊の力を借りて国を加護する役目を負っていた。 だからこそ、人知れず私は精霊の力を借りて今生も『精霊姫』としての役目を果たしていたのだが————

私がいなくなっても、あなたは探しにも来ないのでしょうね

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族家の生まれではありながらも、父の素行の悪さによって貧しい立場にあったエリス。そんな彼女は気づいた時、周囲から強引に決められる形で婚約をすることとなった。その相手は大金持ちの御曹司、リーウェル。エリスの母は貧しい暮らしと別れを告げられることに喜び、エリスが内心では快く思っていない婚約を受け入れるよう、大いに圧力をかける。さらには相手からの圧力もあり、断ることなどできなくなったエリスは嫌々リーウェルとの婚約を受け入れることとしたが、リーウェルは非常にプライドが高く自分勝手な性格で、エリスは婚約を結んでしまったことを心から後悔する…。何一つ輝きのない婚約生活を送る中、次第に鬱の海に沈んでいくエリスは、ある日その身を屋敷の最上階から投げてしまうのだった…。

亡国の大聖女 追い出されたので辺境伯領で農業を始めます

夜桜
恋愛
 共和国の大聖女フィセルは、国を安定させる為に魔力を使い続け支えていた。だが、婚約を交わしていたウィリアム将軍が一方的に婚約破棄。しかも大聖女を『大魔女』認定し、両親を目の前で殺された。フィセルだけは国から追い出され、孤独の身となる。そんな絶望の雨天の中――ヒューズ辺境伯が現れ、フィセルを救う。  一週間後、大聖女を失った共和国はモンスターの大規模襲来で甚大な被害を受け……滅びの道を辿っていた。フィセルの力は“本物”だったのだ。戻って下さいと土下座され懇願されるが、もう全てが遅かった。フィセルは辺境伯と共に農業を始めていた。

家に代々伝わる髪色を受け継いでいないからとずっと虐げられてきていたのですが……。

四季
恋愛
メリア・オフトレスは三姉妹の真ん中。 しかしオフトレス家に代々伝わる緑髪を受け継がず生まれたために母や姉妹らから虐げられていた。 だがある時、トレットという青年が現れて……?

処理中です...