逃げるオタク、恋するリア充

桔梗楓

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アフター編

30.わたしが愛する(※R18)

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 ばふっと音がして、笹塚と私の体がベッドに沈む。まだニヤニヤとしている彼の顔を少し睨んで、観察するように押し倒した男の上半身を眺め見た。

 引き締まって、たるみ1つない体。
 カッコイイなぁ。なんであんなに食べてて太らないんだろう。
 胸の筋肉とかすごく固い。それにお腹の所も少し割れてて…何だか今更のように私とは全然違う体なんだなぁと思う。

「ゆ、由里。それはくすぐったい」
「え?」

 おかしそうな声で我にかえる。無意識のうちに笹塚の体を撫でたりなぞったりしていたらしい。
 慌てて笹塚を愛撫する事に専念する。彼の肩に両手を這わせ、固い胸の頂をちろちろ舐めると、くすくすと笑われた。

「っ……あー」
「さ、さっきから何? 私のやり方って、へん?」
「変じゃねえけど。なんかおかしくて……」

 くっくっと肩を震わせ、笹塚は優しく私の髪を撫でると、そのまま頬に大きな手を這わせる。そして、涼しげな黒い目を細めた。

「なんかお前がやってるの見てると、犬か猫みたいだからさ。ぺろぺろ舐めてきて」
「こ、浩太さんだってぺろぺろ舐めるじゃん、いつも!」
「そうだけど。俺はこうやって舐めるから?」

 そう言って笹塚は私の腰をぐっと掴み、クルンと体勢を変えてきた。形勢逆転。ベッドの上で笹塚が私を見下ろす。
 そしてニヤリと笑みを深めると、私の首から胸にかけてをぞろりと舐め、まるでのたくるようにゆっくりと舌を這わせ始めた。

「んんっ」

 ふ、と鼻で笑って、胸の頂に吸い付く。ちゅ、と音がして甘い刺激が頭に響く。そのまま彼は胸の尖りに何度も音を立てて唇をつけては口腔に納め、ころころと転がすように舐めてくる。
 びく、びく、と体が悦んで反応する。
 笹塚の指がねっとりと動き、胸をなぞり、頂を摘む。

「はぁっ……あ、……って、ちがーう!」

 慌てて目を見開き、笹塚の肩を掴んで抵抗した。
 危ない危ない。つい笹塚のやってくる愛撫に気持ちよくなって、そのまま委ねようとしてしまった。
 そうじゃなくて、今日は私が笹塚を愛する日なのだ。なんでこんな意固地になってるのだと私も思うけど、そう決めたんだから仕方が無い。
 初志貫徹を守りたいのだ!

「もうっ! 浩太さんずるい! 今日は私がやるって言ってるでしょ!」
「フフ……。もうちょっとだったのになぁ」
「もうちょっとって、もー! 駄目ったら駄目! 浩太さんはおとなしくしててっ!」

 思わず怒った口をきくと笹塚は「ハイハイ」とおかしそうに笑って私の上からどいてくれる。
 ムクッと起き上がった私は余裕綽々な彼をムッと睨んだ。
 ……今度こそ、そんな顔できないようにしてやる。

 ずりずりと少し後ろに移動すると、のんびり座る笹塚のスウェットに手を伸ばした。そして、えいやっとソレを下にずり降ろす。
 そこで目をパッと開けると、目の前に彼のものが顔を出していた。
 うう、何回かやってるのに、何度見ても恥ずかしい。でも、私もいい加減積極的にならなければ!
 手をぐわっと開いて、それをぎゅっと掴むと笹塚が体をくの字にして呻いた。

「いっ! お前、力強すぎ!」
「えっ!? あ、ご、ごめん」

 慌てて力をゆるめて掴み直す。笹塚がホッとしたようなため息をついた。
 そうだよね、デリケートゾーンだもんね。取り扱いには注意しなければ。
 気を取り直して、私は改めて彼のものに手を添え、上下にぐいぐいと擦る。
 しかし気持ち良さそうな声も反応も全くなくて、不安になってしまった私はおずおずと笹塚の顔を伺うと、彼は何故か神妙な顔をして、私のやってる所を眺めていた。

「な、なんでしょう」
「……いや? 続けろよ」
「えっと……じゃあ、遠慮なく」

 笹塚の妙な反応が気になるところだが、彼のものをぱくっと口に含む。
 何度かやってるし、その度笹塚が教えてくれるから、今日こそ何も言われなくてもできるはずだ。
 くるくる、と舌を回すように先端を舐め、ちゅーっと吸いつく。

「っ……た。……由里」
「ん?」
「まだまだ練習不足。いちからやり直し」
「ふぬ!?」

 あんまりな言葉に目が見開く。しかし笹塚は胡乱気な目で私を睨むと軽くデコピンしてきた。
 思わず口から彼のものが外れて、額を抑える。

「い、いたい」
「全く。何を意識しているのか知らんが、肩に力が入りすぎだ。そうじゃなくて、いつもみたいにしてくれたらいい。上手にしようなんて、考えなくていいんだ」
「うっ。もしかして、いつもより……下手だった?」

 私の問いに大きく頷かれる。
 うう……。だって今日は、笹塚にたくさん気持ち良くなってもらいたかったんだ。教えられている通りに、舐めたり吸ったり擦ったりすれば、絶対気持ち良くなってくれると思ったのに、現実は厳しい。
 何だか全然思ったようにできない。デートではもっとご馳走して、色々なものを買ってあげるつもりだった。この情事は私がいっぱい彼を愛して、気持ちよくしてあげるつもりだった。
 ……でも私は、本当に鈍くさくて不器用だ。全然、思ったようにできない。笹塚を労わるという簡単な事すらできないなんて…ちょっだけ凹んでしまう。
 しょんぼりとしていると、頭を撫でられた。顔を上げれば、笹塚が笑っている。

「由里の頑張りは、見ててすごく分かるよ」
「え……?」
「何でか知らねえけど、今日は俺の為にって、一生懸命俺を喜ばせようと、頑張ってただろ。そういうのを見てて、すごく楽しくて面白くて、可愛かった」
「浩太さん……。……面白くて、は余計だと思う」
「はははっ! そうだな。じゃあ、もう一度。俺が言う通りにやってくれるか?」

 うん、と頷くと、笹塚は私のおでこにキスをしてくれた。
 優しく彼のものを手で包み、ゆっくりと口付ける。歯が当たらないようにと言われて、丁寧に口腔に含め、なぞるように舌で舐めながらあまり強くない力で扱く。
 教えられる通りにやってみたら、笹塚のそれが熱を帯びたように熱くなって、クッと硬くなる。はぁと溜息をついた笹塚のそれはとても甘ったるくて、感じてるんだ、と嬉しくなった。

「由里、こっち見て」
「ん?」
「フフ……、可愛い顔」

 愛おしそうに頭を、頬を撫でる。
 艶のある目を細めると、そっと頭を撫でられた。

「上手だよ。まだ慣れてないんだから、ゆっくりでいい」
「うん」
「少しずつ俺の好きなやり方を学んで、もっと上手くなろうな?」
「うん!」

 こくこくと頷くと、笹塚は嬉しそうに笑う。
 そうして彼はそっと私の顔を手にとって熱くなった杭を外させると、背中を撫でて私に座るよう促す。
 再びベッドの上で向かい合った私達。笹塚が楽しそうに聞いて来た。

「なぁ、今日は俺の日なんだろ? 我が儘もおねだりも全部聞いてくれるのか?」
「ん? うん、そうだよ」

 勿論そのつもりだと同意すると、「そうか」とニッコリ微笑む。
 そうして笹塚は、優しく私に「おねだり」した。
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