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アフター編
1.四月・うららかな春、痴話げんか
しおりを挟む ザァッと葉が揺れる音がして、ふわふわとピンク色の花びらが風に乗って飛んでいく。季節は4月。満開の桜の木の下で我ら営業部はブルーシートに座り、酒を飲んでいた。
まごうことなき花見である。日本人というのは花をツマミに、月をツマミに飲める民族らしい。もちろん海をツマミにもできるし、雪をツマミにもできる。
ようするに飲む理由が欲しいだけなんだ。人によっては風流だと言うが、私は単に飲兵衛の言い訳だと思っている。
「しーがつーは花見ーで酒が飲めるぞー酒が飲める飲めるぞー酒がのめるぞー」
「あーそれ、何だっけ。しちがつーは七夕ーで酒が飲めるぞー?」
チューハイ缶のプルタブ部分に桜の花びらが乗るのを見ながら口ずさんでいると、ビールを片手に隣で座っていた笹塚が茶々を入れる。
だが、実のところ私も全歌詞が歌えるわけではない。うろ覚えだ。確か8月は海で酒が飲めるんだったか、暑いから飲めるんだったか。
すると、笹塚の隣でビールを飲んでいた課長がすっかり出来上がった顔で「じゅーいちがつーは何でも無いーけど酒がのめるぞー」と歌いだす。
そして一課の営業さんが手拍子を打ちながら歌合戦に入ってきた。
「じゅーにがつーはドサクサーで酒が飲めるぞー!酒が飲める飲めるぞー酒が飲めるぞー!」
「結局何でもいいんだよなぁー」
「あはは、羽坂ちゃん、そんな歌知ってるなんて意外だねー。実は飲兵衛なの?」
くすくすと笑いながら2課の営業さんも寄ってきて、私にチューハイ缶を渡してくる。……なんで空になったチューハイ缶を傾け、飲んだフリしてるのがバレているんだ。
この会社に入社してもう4年。私のお嬢様面というメッキは少しずつだけど、剥がれ始めていた。笹塚のおかげで「私の趣味は『普通』なんだ」と判り、過剰に猫を被るのをやめたのだ。だけど皆、自然に受け入れてくれていて、まことにありがたい話である。
父親は社長だけど実家は米農家、趣味はゲーム。今や誰でも知っている、私のパーソナリティデータだ。
「私は飲兵衛じゃないですけど、父がすっごくお酒好きなんです。それでよく歌ってて」
「へぇ~、なんか羽坂ちゃんのお父さんって、すごく豪快そう。農業してる人ってお酒強そうだし」
「豪快か解らないですけど。仕事しない日はずっとお酒飲んでますね」
礼を言いながらチューハイを受け取り、プシッと開ける。……グレープフルーツ味か。ちゃんとローカロリーのヤツを選んでくれるあたりがお優しい。
ごきゅごきゅと飲んでると、ブルーシートについていた手にふわりと暖かいものがおちる。何だと思ってちらりと下を見ると、笹塚の大きな手が自分の手の甲に重なっていた。
思わず顔が赤くなって彼の顔を伺うと、笹塚はそ知らぬ顔でビールを飲んでいる。あくまでさりげなく、人から見えないように触れてくるこの技術は何なのだろう。何気ないスキンシップ講座『これでアナタも触り魔だ!』なんて講習でもコッソリ受けてんじゃないだろうか。
まぁ、その、触れられるのは嬉しいからいいんですけど。
へへ、なんてにやつきながらチューハイを飲んでみたりして。そして我に返って凹む。
……まぁ、凹むほど、私は幸せである。
笹塚とつきあって一年と三ヵ月。私達の仲は順調に続いている。……順調、というのがどういう仲を指すのかは分からないけど、まぁお互いに幸せを感じていて、仲良ければ順調ではないだろうか。
毎週末に笹塚の住むマンションに泊まるのは恒例になっていて、私は毎回パソコンを持ち込んでいた。一緒にヘイムダルサーガをする為である。
これが、楽しい。二人で同じオンラインゲームを同室でプレイするのがこんなに楽しいとは思わなかった。思わず笹塚にもノーパソを持たせて悠真君ちにおしかけたくらいである。
三人で一緒のクエストをやって、モンスターを倒してたらもう楽しくて楽しくて。タイプ打ってチャットするよりずっとライブ感があるって言うか、ワクワク感が全然違うのだ。
三人でまたやりたいね~! って笹塚に話したら「三人でやるのはたまに……にしような? 悠真は悠真で大学生活があるんだし」と言ってきたので、それもそうだなと思い、三人で遊ぶのは時々にしている。でも、新たな楽しみを得られたのは確かで、今もよくパソコンを笹塚んちに持ち込んでは二人で遊んでいた。
ザァッと風で葉が揺れる音がする。
聞こえてくるのは、あたりで騒ぐ営業部と、少し離れた所でブルーシートを敷き、そちらで騒ぐ製造部の声。反対側では技術部がブルーシートの上で酒を飲んでいる。
今日は会社ぐるみのお花見だ。社長の鶴の一声で決まった毎年恒例イベントのひとつである。
この日は仕事も、営業も、何もかも忘れてひたすら騒ぐ。そんな日がうちの会社には年3回あって、忘年会と新年会と、花見がそれに該当する。更に言うと秋には運動会や社員旅行もある。うちの会社はイベントが多い方なのかな?他の会社に就職したことがないから比較しようもないが。
騒げる日はトコトン騒いで、仕事する日はトコトン仕事する、というのが社長の理念らしい。
ちなみに花見は2日間に分かれていて、今日は営業、製造、技術が花見、明日が総務、工場が花見だ。
くい、とチューハイ飲んで、ぷは、と息を吐きながら桜を見た。片方の手にはまだ笹塚の手がある。あったかくて気持ちよくて、離すのが勿体無くて。
このままでは目の前にある花見弁当が食べれないではないか、と笑ってしまった。
「あれー。酒なくなっちった。園部ークーラーボックスどこだー」
「園部いませんよ、部長」
「え? どこいったんだろ」
「さっき部長が園部パシったんじゃないですか。そこのコンビニでビール買い占めてこいって」
そうだっけ、と首を傾げる営業部長。ひどい、人をパシっておいてパシったこと忘れてるとか鬼畜すぎる。
「そういえば、荷物持ち要員に水沢連れていったみたいですけど、帰りが遅いですね」
横山主任も思い出したようにコンビニのある方向に目を向ける。むぅ、もしかしたら量が多すぎて持ち帰るのに時間がかかってるのかも……ってどんだけ買っているんだよ、ビール。
そこで笹塚がよっこらと言いながら立ち上がった。
「俺見てきますよ。羽坂もついて来い」
「へ? あ、はい」
よいしょ、と笹塚に続いて立ち上がる。と、ふらりと体がよろけて、慌てて足で踏ん張った。やばいやばい、久々にチューハイ4本目いっちゃったからだな。時々笹塚にバーとか連れていってもらっているが、なかなかお酒に強くなれない。
大丈夫か? と聞いてくる笹塚に「うん」と笑って、私達は靴をはいてコンビニの方に歩いていった。
わいわいがやがや。
今日は平日だというのに桜が綺麗なこの公園はいっぱいの人でにぎわっていた。私達と同じで会社で来ているような団体に、奥様たちのつどい、おじいちゃんおばあちゃんの集まり、時々家族連れ。
芝生のないレンガ敷きの道を歩くと、あちこちに並ぶ屋台。
人が集まれば屋台も集まる。自然の摂理である。
「あ、わたあめだ!」
「食いたいのか?」
「どうだろ。なんか久々に見た気がしたから。……そういえば小学生以来、お祭りとか行ってなかったなぁ」
わたあめに大判焼き、たこ焼き、やきそば。他にも初めて見るような屋台もある。なんだあれ、サーロインステーキ串……一本せんえん!? 高い! あれは何だろ……たこやきかと思ったら、おむたまだって。匂いと見た目からして、オムレツみたいに卵を丸型に焼いて、ケチャップつけて食べるようだ。色々あるんだなぁ。
「じゃあ、今年の夏は花火でも見にいくか」
「え?」
ふいに横から言われて、笹塚を見上げる。彼はにっこりと私を見下ろしていた。
「去年の夏はツーリングしか行かなかっただろ? 確か8月末ごろにどっかで花火大会やってたし。見にいこうぜ。多分そこならもっと沢山屋台が並んでると思うしな」
「花火かぁ。そういえば、最近はテレビでしか見てなかったな。うん、行きたい」
大きく頷くと、笹塚は目を細めてそっと私の手に指を絡ませてきた。きゅっと手を繋ぐ。……なんだかスーツ姿の笹塚と、事務服の私でこんな風に手を繋いだりするのは酷く恥ずかしい。なんだかちょっと悪いことしてる気もする。
でも、いいよね。今日は仕事じゃないんだし。少しくらいなら……。だ、誰も見てないんだしね?
へへへ。
ああいかんいかん、また顔がだらける。鏡を見たわけじゃないが、私が笹塚関係でうへへ、だの、うふふ、だの思っていると、そのまま顔に出てしまうのか水沢に「その顔きもいからやめて」と言われてしまうのだ。一体どんだけ酷い顔をしているんだろうと思うが、一応顔に出さないように気をつけている。……でもすぐ油断してしまってつい、うへへって思ってしまうんだけど。
そ、それより園部さんだ。あと水沢。確かにコンビニにビール買いに行くにしては遅すぎる気がする。
「あ、いた」
私より背が高いからそれだけ見渡せるのか、笹塚が遠くを見ながら声を上げる。私の視線からは見えないのでぴょんぴょんとジャンプしてみたら、確かに公園の入り口側に園部さんと水沢らしき人間がいるのが見えた。どちらも両手に白いビニール袋を提げているが、どうもこちらに来る気配がない。何だか二人で話し合っているように見える。
「何だろ。喧嘩してる……?」
「うん、何だろうな?」
てくてくと近づいてみる。するとやっぱり水沢がなんか園部さんに怒鳴ってるようだった。
「――から、何度も言ってるでしょうっ! 私はアナタみたいな人とつきあう気はないんですっ!」
「そこをなんとかって言ってるんじゃん!別に結婚を前提になんて言ってるわけじゃないんだしさぁ!」
……え?
なんだろうこの、男女のもつれ、という言葉が頭に思い浮かぶような言い争いは。
近づいた私達に水沢が気付き「あっ」と声を上げる。背中を向けていた園部さんも「ん?」と振り返ってきて、笹塚が呆れたように近づき小さく溜息をついた。
「何やってんだよお前ら…。もうビールぬるくなってんじゃないか?」
「あ、いえ……そこのコンビニ、もうビールが売り切れてたから少し遠いトコ行ってたんです」
少しばつが悪そうに水沢がそう答え、園部さんが頭を掻く。「そうか」と頷きながらも笹塚の顔もどこか浮かない。彼もまた、さっき交していた二人の会話が聞こえていたんだろう。気になるなら聞けばいいのに、なんで聞かないんだろう?
「あの、さっき何の話、してたんです? 結婚を前提にどうとか、つきあうとか」
「ゆ、……お前なー」
呆れたようにため息をついてべしっと頭を叩かれる。え、なんで? なんで叩かれたのかわからない。
「そういうのはな、聞かないのがルールってものだろ」
「え、何時の間にそんなルールが。どこルール?」
「……オトナのルールだよ。男女の話には首をつっこまないのが大人なの」
ぴしぴしと私に軽くでこぴんしながら説教してくる。なるほど……恋愛や結婚がらみの話は聞いちゃだめなんだな。
実は言うと、こんな感じで時折笹塚や水沢から大人の人付き合いについてを教えてもらっている。ホント、どんだけコミュニケーション能力に乏しかったんだ私は。
人生の半分以上をぼっちで過ごし、更にその後も上辺だけで人とつきあってきた私は、ずっと他人と深く関わることを避けてきた。その世界観が変わったのはまだ1年と3ヵ月前。だから人付き合いに関して私は初心者も初心者なのである。羽坂由里24歳。まったくもって情けないお話でございます。
デコピンしていた笹塚がついでに私の耳たぶをぴろぴろ揺らして触ってくる。すると「おいそこのバカップル」と低い声が……園部さんの怨嗟が聞こえてきた。
「お前らその、隙あらばイチャイチャするのやめろよ。まじ目の毒なんだよ!」
「そう言われても。ここには他に会社のヤツもいねーし、園部も水沢も俺らがつきあってるのは知ってるし」
「開き直るなああ! あーもう、こんな幸せ笹塚嫌だーっ! 二年前の毎日だるそーにラジオ体操してめんどそーに営業行って、疲れた顔で発注書持って帰って、煙草ぷっかーふかすくたびれ笹塚が好きだったのにー!」
「お前が今まで俺のことどう見てたのか、よーっく分かったよ」
ぴしっぺしっと音を立てて笹塚が園部さんにでこぴんして、額を抑えながら「事実だろーがっ!」と喚く園部さん。仲いいなぁこの二人……。
ところで、水沢がムスッとした顔をしたまま腕を組んで園部さんを睨んでいる。……珍しい。水沢はこれでも猫かぶりは完璧である。なのに、らしくなく大声まで上げて、どうしたのだろう。
「水沢どうしたの? 笹塚さんはああ言うけど、やっぱり気になるよ」
「フン、いい加減しつこいからちょっと強く言っただけ。何でもないわ」
「しつこいって酷い! ちょっと朝礼前とか昼休みとか仕事帰りとかに声かけたり、社メールで思いを伝えただけなのに!」
「園部さん、社メールで私用メールは禁止されてますが……」
さすがにぼそぼそと注意すると、園部さんは拗ねたように唇を尖らせて――ちなみに超可愛くない――だって水沢に何度聞いてもメール教えてくれないんだもん、と足元の石を蹴る。
「教える理由がないでしょう? 大体私は何度もお断りしているはずです」
「だからそこをなんとかって言ってるんじゃない!そこいらのスーパーでも試食できるのに、なんでお試し期間すら与えてくれないわけ!?」
「逆切れかよ! ああいや、だから、お試しするまでもないって言ってるんです!」
「試させもしないうちからなんでそう真っ向から断ってくる理由がわからない! 俺のこと知ってるわけでもないのに!」
「だから、それこそ何度も言ってるでしょ!? 仕事できない男は嫌なんですっ!」
「ひどっ! ひどー! 仕事してるし! 毎日会社来てるし! 営業してるしー!」
それは仕事できてるんじゃねえ当たり前のことだー! と水沢が敬語も忘れて吼えた時、笹塚がやっと間に入ってきた。
「お前ら……とりあえず、落ち着け」
「笹塚さんっ! 笹塚さんからも言って下さい。もう園部さん、しつこいったらないんです!」
「水沢がしつこくさせてるんでしょ!? 大体俺、笹塚に何言われても俺気にしないもん」
「気にしろよ!」
「どうどう、わかったから。続きは後にしよう。とりあえずビール持っていかないと部長の機嫌が悪くなるぞ」
ぴたりと二人の口が止まる。そういえば、ビールを買って来いと頼まれていたのだった。ぬるいビールなど溶けたカキ氷位価値がない。
私も水沢が持つビニール袋をひとつ受け取って、花見会場に向かって歩き出す。その最中、ぼそりと水沢が口を突いた。
「べつに、続きなんてないです。私は断ってるんですから」
「それでも。ずっと園部にしつこくされてんだろ?だったら少しは話し合わねえと、ずっとつきまとわれるぞ? コイツ、しつこさで数字取ってる位しつこさにかけては営業イチなんだから」
そう笹塚が言うと水沢が非常に微妙な顔をして黙る。園部さんは何故か誇らしげに「どうだ俺様すげえだろー」みたいなドヤ顔をして歩いていたが、決して笹塚の言葉は褒め言葉じゃねえと思う訳で、そこんとこどうなんでしょう…。
まごうことなき花見である。日本人というのは花をツマミに、月をツマミに飲める民族らしい。もちろん海をツマミにもできるし、雪をツマミにもできる。
ようするに飲む理由が欲しいだけなんだ。人によっては風流だと言うが、私は単に飲兵衛の言い訳だと思っている。
「しーがつーは花見ーで酒が飲めるぞー酒が飲める飲めるぞー酒がのめるぞー」
「あーそれ、何だっけ。しちがつーは七夕ーで酒が飲めるぞー?」
チューハイ缶のプルタブ部分に桜の花びらが乗るのを見ながら口ずさんでいると、ビールを片手に隣で座っていた笹塚が茶々を入れる。
だが、実のところ私も全歌詞が歌えるわけではない。うろ覚えだ。確か8月は海で酒が飲めるんだったか、暑いから飲めるんだったか。
すると、笹塚の隣でビールを飲んでいた課長がすっかり出来上がった顔で「じゅーいちがつーは何でも無いーけど酒がのめるぞー」と歌いだす。
そして一課の営業さんが手拍子を打ちながら歌合戦に入ってきた。
「じゅーにがつーはドサクサーで酒が飲めるぞー!酒が飲める飲めるぞー酒が飲めるぞー!」
「結局何でもいいんだよなぁー」
「あはは、羽坂ちゃん、そんな歌知ってるなんて意外だねー。実は飲兵衛なの?」
くすくすと笑いながら2課の営業さんも寄ってきて、私にチューハイ缶を渡してくる。……なんで空になったチューハイ缶を傾け、飲んだフリしてるのがバレているんだ。
この会社に入社してもう4年。私のお嬢様面というメッキは少しずつだけど、剥がれ始めていた。笹塚のおかげで「私の趣味は『普通』なんだ」と判り、過剰に猫を被るのをやめたのだ。だけど皆、自然に受け入れてくれていて、まことにありがたい話である。
父親は社長だけど実家は米農家、趣味はゲーム。今や誰でも知っている、私のパーソナリティデータだ。
「私は飲兵衛じゃないですけど、父がすっごくお酒好きなんです。それでよく歌ってて」
「へぇ~、なんか羽坂ちゃんのお父さんって、すごく豪快そう。農業してる人ってお酒強そうだし」
「豪快か解らないですけど。仕事しない日はずっとお酒飲んでますね」
礼を言いながらチューハイを受け取り、プシッと開ける。……グレープフルーツ味か。ちゃんとローカロリーのヤツを選んでくれるあたりがお優しい。
ごきゅごきゅと飲んでると、ブルーシートについていた手にふわりと暖かいものがおちる。何だと思ってちらりと下を見ると、笹塚の大きな手が自分の手の甲に重なっていた。
思わず顔が赤くなって彼の顔を伺うと、笹塚はそ知らぬ顔でビールを飲んでいる。あくまでさりげなく、人から見えないように触れてくるこの技術は何なのだろう。何気ないスキンシップ講座『これでアナタも触り魔だ!』なんて講習でもコッソリ受けてんじゃないだろうか。
まぁ、その、触れられるのは嬉しいからいいんですけど。
へへ、なんてにやつきながらチューハイを飲んでみたりして。そして我に返って凹む。
……まぁ、凹むほど、私は幸せである。
笹塚とつきあって一年と三ヵ月。私達の仲は順調に続いている。……順調、というのがどういう仲を指すのかは分からないけど、まぁお互いに幸せを感じていて、仲良ければ順調ではないだろうか。
毎週末に笹塚の住むマンションに泊まるのは恒例になっていて、私は毎回パソコンを持ち込んでいた。一緒にヘイムダルサーガをする為である。
これが、楽しい。二人で同じオンラインゲームを同室でプレイするのがこんなに楽しいとは思わなかった。思わず笹塚にもノーパソを持たせて悠真君ちにおしかけたくらいである。
三人で一緒のクエストをやって、モンスターを倒してたらもう楽しくて楽しくて。タイプ打ってチャットするよりずっとライブ感があるって言うか、ワクワク感が全然違うのだ。
三人でまたやりたいね~! って笹塚に話したら「三人でやるのはたまに……にしような? 悠真は悠真で大学生活があるんだし」と言ってきたので、それもそうだなと思い、三人で遊ぶのは時々にしている。でも、新たな楽しみを得られたのは確かで、今もよくパソコンを笹塚んちに持ち込んでは二人で遊んでいた。
ザァッと風で葉が揺れる音がする。
聞こえてくるのは、あたりで騒ぐ営業部と、少し離れた所でブルーシートを敷き、そちらで騒ぐ製造部の声。反対側では技術部がブルーシートの上で酒を飲んでいる。
今日は会社ぐるみのお花見だ。社長の鶴の一声で決まった毎年恒例イベントのひとつである。
この日は仕事も、営業も、何もかも忘れてひたすら騒ぐ。そんな日がうちの会社には年3回あって、忘年会と新年会と、花見がそれに該当する。更に言うと秋には運動会や社員旅行もある。うちの会社はイベントが多い方なのかな?他の会社に就職したことがないから比較しようもないが。
騒げる日はトコトン騒いで、仕事する日はトコトン仕事する、というのが社長の理念らしい。
ちなみに花見は2日間に分かれていて、今日は営業、製造、技術が花見、明日が総務、工場が花見だ。
くい、とチューハイ飲んで、ぷは、と息を吐きながら桜を見た。片方の手にはまだ笹塚の手がある。あったかくて気持ちよくて、離すのが勿体無くて。
このままでは目の前にある花見弁当が食べれないではないか、と笑ってしまった。
「あれー。酒なくなっちった。園部ークーラーボックスどこだー」
「園部いませんよ、部長」
「え? どこいったんだろ」
「さっき部長が園部パシったんじゃないですか。そこのコンビニでビール買い占めてこいって」
そうだっけ、と首を傾げる営業部長。ひどい、人をパシっておいてパシったこと忘れてるとか鬼畜すぎる。
「そういえば、荷物持ち要員に水沢連れていったみたいですけど、帰りが遅いですね」
横山主任も思い出したようにコンビニのある方向に目を向ける。むぅ、もしかしたら量が多すぎて持ち帰るのに時間がかかってるのかも……ってどんだけ買っているんだよ、ビール。
そこで笹塚がよっこらと言いながら立ち上がった。
「俺見てきますよ。羽坂もついて来い」
「へ? あ、はい」
よいしょ、と笹塚に続いて立ち上がる。と、ふらりと体がよろけて、慌てて足で踏ん張った。やばいやばい、久々にチューハイ4本目いっちゃったからだな。時々笹塚にバーとか連れていってもらっているが、なかなかお酒に強くなれない。
大丈夫か? と聞いてくる笹塚に「うん」と笑って、私達は靴をはいてコンビニの方に歩いていった。
わいわいがやがや。
今日は平日だというのに桜が綺麗なこの公園はいっぱいの人でにぎわっていた。私達と同じで会社で来ているような団体に、奥様たちのつどい、おじいちゃんおばあちゃんの集まり、時々家族連れ。
芝生のないレンガ敷きの道を歩くと、あちこちに並ぶ屋台。
人が集まれば屋台も集まる。自然の摂理である。
「あ、わたあめだ!」
「食いたいのか?」
「どうだろ。なんか久々に見た気がしたから。……そういえば小学生以来、お祭りとか行ってなかったなぁ」
わたあめに大判焼き、たこ焼き、やきそば。他にも初めて見るような屋台もある。なんだあれ、サーロインステーキ串……一本せんえん!? 高い! あれは何だろ……たこやきかと思ったら、おむたまだって。匂いと見た目からして、オムレツみたいに卵を丸型に焼いて、ケチャップつけて食べるようだ。色々あるんだなぁ。
「じゃあ、今年の夏は花火でも見にいくか」
「え?」
ふいに横から言われて、笹塚を見上げる。彼はにっこりと私を見下ろしていた。
「去年の夏はツーリングしか行かなかっただろ? 確か8月末ごろにどっかで花火大会やってたし。見にいこうぜ。多分そこならもっと沢山屋台が並んでると思うしな」
「花火かぁ。そういえば、最近はテレビでしか見てなかったな。うん、行きたい」
大きく頷くと、笹塚は目を細めてそっと私の手に指を絡ませてきた。きゅっと手を繋ぐ。……なんだかスーツ姿の笹塚と、事務服の私でこんな風に手を繋いだりするのは酷く恥ずかしい。なんだかちょっと悪いことしてる気もする。
でも、いいよね。今日は仕事じゃないんだし。少しくらいなら……。だ、誰も見てないんだしね?
へへへ。
ああいかんいかん、また顔がだらける。鏡を見たわけじゃないが、私が笹塚関係でうへへ、だの、うふふ、だの思っていると、そのまま顔に出てしまうのか水沢に「その顔きもいからやめて」と言われてしまうのだ。一体どんだけ酷い顔をしているんだろうと思うが、一応顔に出さないように気をつけている。……でもすぐ油断してしまってつい、うへへって思ってしまうんだけど。
そ、それより園部さんだ。あと水沢。確かにコンビニにビール買いに行くにしては遅すぎる気がする。
「あ、いた」
私より背が高いからそれだけ見渡せるのか、笹塚が遠くを見ながら声を上げる。私の視線からは見えないのでぴょんぴょんとジャンプしてみたら、確かに公園の入り口側に園部さんと水沢らしき人間がいるのが見えた。どちらも両手に白いビニール袋を提げているが、どうもこちらに来る気配がない。何だか二人で話し合っているように見える。
「何だろ。喧嘩してる……?」
「うん、何だろうな?」
てくてくと近づいてみる。するとやっぱり水沢がなんか園部さんに怒鳴ってるようだった。
「――から、何度も言ってるでしょうっ! 私はアナタみたいな人とつきあう気はないんですっ!」
「そこをなんとかって言ってるんじゃん!別に結婚を前提になんて言ってるわけじゃないんだしさぁ!」
……え?
なんだろうこの、男女のもつれ、という言葉が頭に思い浮かぶような言い争いは。
近づいた私達に水沢が気付き「あっ」と声を上げる。背中を向けていた園部さんも「ん?」と振り返ってきて、笹塚が呆れたように近づき小さく溜息をついた。
「何やってんだよお前ら…。もうビールぬるくなってんじゃないか?」
「あ、いえ……そこのコンビニ、もうビールが売り切れてたから少し遠いトコ行ってたんです」
少しばつが悪そうに水沢がそう答え、園部さんが頭を掻く。「そうか」と頷きながらも笹塚の顔もどこか浮かない。彼もまた、さっき交していた二人の会話が聞こえていたんだろう。気になるなら聞けばいいのに、なんで聞かないんだろう?
「あの、さっき何の話、してたんです? 結婚を前提にどうとか、つきあうとか」
「ゆ、……お前なー」
呆れたようにため息をついてべしっと頭を叩かれる。え、なんで? なんで叩かれたのかわからない。
「そういうのはな、聞かないのがルールってものだろ」
「え、何時の間にそんなルールが。どこルール?」
「……オトナのルールだよ。男女の話には首をつっこまないのが大人なの」
ぴしぴしと私に軽くでこぴんしながら説教してくる。なるほど……恋愛や結婚がらみの話は聞いちゃだめなんだな。
実は言うと、こんな感じで時折笹塚や水沢から大人の人付き合いについてを教えてもらっている。ホント、どんだけコミュニケーション能力に乏しかったんだ私は。
人生の半分以上をぼっちで過ごし、更にその後も上辺だけで人とつきあってきた私は、ずっと他人と深く関わることを避けてきた。その世界観が変わったのはまだ1年と3ヵ月前。だから人付き合いに関して私は初心者も初心者なのである。羽坂由里24歳。まったくもって情けないお話でございます。
デコピンしていた笹塚がついでに私の耳たぶをぴろぴろ揺らして触ってくる。すると「おいそこのバカップル」と低い声が……園部さんの怨嗟が聞こえてきた。
「お前らその、隙あらばイチャイチャするのやめろよ。まじ目の毒なんだよ!」
「そう言われても。ここには他に会社のヤツもいねーし、園部も水沢も俺らがつきあってるのは知ってるし」
「開き直るなああ! あーもう、こんな幸せ笹塚嫌だーっ! 二年前の毎日だるそーにラジオ体操してめんどそーに営業行って、疲れた顔で発注書持って帰って、煙草ぷっかーふかすくたびれ笹塚が好きだったのにー!」
「お前が今まで俺のことどう見てたのか、よーっく分かったよ」
ぴしっぺしっと音を立てて笹塚が園部さんにでこぴんして、額を抑えながら「事実だろーがっ!」と喚く園部さん。仲いいなぁこの二人……。
ところで、水沢がムスッとした顔をしたまま腕を組んで園部さんを睨んでいる。……珍しい。水沢はこれでも猫かぶりは完璧である。なのに、らしくなく大声まで上げて、どうしたのだろう。
「水沢どうしたの? 笹塚さんはああ言うけど、やっぱり気になるよ」
「フン、いい加減しつこいからちょっと強く言っただけ。何でもないわ」
「しつこいって酷い! ちょっと朝礼前とか昼休みとか仕事帰りとかに声かけたり、社メールで思いを伝えただけなのに!」
「園部さん、社メールで私用メールは禁止されてますが……」
さすがにぼそぼそと注意すると、園部さんは拗ねたように唇を尖らせて――ちなみに超可愛くない――だって水沢に何度聞いてもメール教えてくれないんだもん、と足元の石を蹴る。
「教える理由がないでしょう? 大体私は何度もお断りしているはずです」
「だからそこをなんとかって言ってるんじゃない!そこいらのスーパーでも試食できるのに、なんでお試し期間すら与えてくれないわけ!?」
「逆切れかよ! ああいや、だから、お試しするまでもないって言ってるんです!」
「試させもしないうちからなんでそう真っ向から断ってくる理由がわからない! 俺のこと知ってるわけでもないのに!」
「だから、それこそ何度も言ってるでしょ!? 仕事できない男は嫌なんですっ!」
「ひどっ! ひどー! 仕事してるし! 毎日会社来てるし! 営業してるしー!」
それは仕事できてるんじゃねえ当たり前のことだー! と水沢が敬語も忘れて吼えた時、笹塚がやっと間に入ってきた。
「お前ら……とりあえず、落ち着け」
「笹塚さんっ! 笹塚さんからも言って下さい。もう園部さん、しつこいったらないんです!」
「水沢がしつこくさせてるんでしょ!? 大体俺、笹塚に何言われても俺気にしないもん」
「気にしろよ!」
「どうどう、わかったから。続きは後にしよう。とりあえずビール持っていかないと部長の機嫌が悪くなるぞ」
ぴたりと二人の口が止まる。そういえば、ビールを買って来いと頼まれていたのだった。ぬるいビールなど溶けたカキ氷位価値がない。
私も水沢が持つビニール袋をひとつ受け取って、花見会場に向かって歩き出す。その最中、ぼそりと水沢が口を突いた。
「べつに、続きなんてないです。私は断ってるんですから」
「それでも。ずっと園部にしつこくされてんだろ?だったら少しは話し合わねえと、ずっとつきまとわれるぞ? コイツ、しつこさで数字取ってる位しつこさにかけては営業イチなんだから」
そう笹塚が言うと水沢が非常に微妙な顔をして黙る。園部さんは何故か誇らしげに「どうだ俺様すげえだろー」みたいなドヤ顔をして歩いていたが、決して笹塚の言葉は褒め言葉じゃねえと思う訳で、そこんとこどうなんでしょう…。
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夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
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すずなり。
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ーーーーーーーーーーーーーーーー
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※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
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