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六章 戦争

31 初夜

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 さて、初夜である。
 すでに、かなりきわどい事をしているけれど、間違いなく初夜なのだ。
 お風呂に入って奇麗にして、薄い夜着を着て寝室で待っていると、夜着に軽いローブを羽織ったクリスティアン殿下がノックして入って来た。
 寝室で待っていた梨奈の手を取り口づけを贈る。

「リナと結婚出来てとても嬉しいよ。愛してる梨奈、末永く幸せになろうね」
「私もクリスティアン殿下が好きです。不束者ですが、末永くよろしくお願いします」

 向かい合って抱き合ってキスをする。
 殿下は梨奈を抱き上げて、寝室のベッドに横たえた。
 覆いかぶさってキスをしながら、梨奈の服を剥いでゆく。すぐに自分も服を脱いで、本格的に事が始まった。

 ええと、いや、だから、ここまではセオリー通りというか、本で読んだのと同じ流れだったんだけど。

 ディープなキスをして、それを身体中にされて、恥ずかしい所にもされて、ぐちゃぐちゃでドロドロになったところで、くったりと弛緩した梨奈の身体に乗り上がって、殿下が事に及ぼうとする。

 ああ、いよいよなんだ……、と思って見た天井にソレがいた。
 緑の手というか触手を伸ばして、それが何本もあって、うねうねと蠢いて、ポタリと落ちそうな程に伸ばして、おいでおいでという感じで動いて──。

 何かもう唖然として口を開いたまま声も出ず、ただただソレを見ている内に、殿下はことを進めていった。
 なんか太いモノがミシミシと押し入って来る。
 あまりの容量に息が詰まる。意識が天井から引き戻された。

 殿下は大きな手でガッチリと押さえ付けて、さらに腰を進める。
 痛い、痛くて腰が逃げる。
 殿下が宥めるようにキスをする。
 舌を絡めて、体の力が抜けたすきに、ぐんと腰を進められる。
「やっ、い、痛いっ」
 逃げようとする身体を掻き抱いて、逃がすまいとする。
 痛い。痛いけれど、殿下も苦しそう。

 汗がしたたり落ちる。梨奈も汗でぐちゃぐちゃだ。
「やっ、痛いっ、痛いのよ!」
「もうちょっと、リナ」
 これはもう、全然ロマンチックとかじゃなくて、二人の共同作業であろうか。
「入った?」「まだ」と声かけあって、時々目に入る天井のスライムも、伸びたり縮んだりして応援するような、踊るような感じで忙しそうだ。

 トライ何回目とかでやっと一つになった時は、もうぐったりだった。
「リナ、動くから」
「え、や、い……」
 まだあるの?
 殿下が動く。動くと痛い、痛いけどちょっとだけ快感みたいなものがある。あるけどやっぱし痛い。
 痛くてちょっと感じて、また痛くて、やっと殿下が吐き出すと、沢山キスしてきて、しばらくくったりと抱き合った。
 そのまま、内部に入ったままで、出て行ってくれない。
 コレ、出て行ってくれないかな。
 ココにあるっていうか、あるのを、感じちゃうっていうか。
「リナ、どうしたんだい。下のお口で催促するなんて」
「え、いや、そんなんじゃない」
 あ、内部でむくむくと大きくなった。
「リナの内部がとても気持ちがいいんだけど、辛そうだったから、どうしようかと迷っていたんだ。頑張るよ」
「そうじゃなくて、あん……」
「可愛いな」
 キスしながら突き上げないで。
「とてもいいよリナの中、私を感じてくれているのがよく分かる。動くね」
「うん」

 ああ、どうしたんだろう。身体が熱い。さっきよりもっと熱い。
「凄いよ、リナの中、熱い、蕩けそう」
「ああ、クリス、クリス……わたし、わたし……ああ」
「素敵だ、なかも私を求めて、感じて」
「ああん……、どこもかしこもヘン……、ああいっちゃう」
「いって、何度でも、リナ」
「い、一緒に……」
「ああ、一緒に」
 熱くて熱くて燃え上がりそう。手を伸ばしたら、つかんで恋人つなぎ。
 死んじゃう、幸せで。

 梨奈はよれよれでドロドロになって、終わった後は、天井にいた何かも忘れ去って気絶するように眠った。

  * * *

 朝、機嫌よく起きて、梨奈にキスをしたクリス殿下は、ベッドの惨状に青くなった。
「身体、大丈夫か」と、梨奈の下半身を見て、ジェリーを呼ぶ。
「ダメ、そんなとこに入れないで」
『おいらー、はいれないー』
 二人が同時に遮った。

「ジェリーはオスなのか?」
『おいらー、どっちでもない―』
「どういう事ですか? 殿下」
 目のつり上がった梨奈がクリス王子を睨む。もはや、こちらも惨状である。

「すまん、君に誰も触れないよう結界を」
「……」
 なんて言っていいのか分からない。昨日の今日であれば、ヤキモチ焼かれて嬉しいだろうか? チョロイン過ぎないか、自分。

 さらに殿下がついでとばかりに言う。
「君の美貌が分からないように、認識阻害もかけている」
「ええと、何でそんなことを。私は普通の女子高生ですよ」
 何だろうコレ。こういうのを何て言ったっけ。偏執狂? 変質者? ヤンデレだったっけ?

「そのジョシコウセイというのが分からないが」
「殿下の学校に通っていた女の子達の事です」
「君が普通である筈がない。美しい均整の取れた肢体、白い肌、顔。誰にも見せられない」
 誰かと比べているような、そんな感じの言葉だわ。

「殿下って色んな人を知っているみたい」
 梨奈が疑い深そうな顔で見ると、王子は焦ったように言う。
「誓って、私には君だけだ。ただ、夢で見た男はどちらも遊び人で、何人もの女性と関係を持っていて、私はかなり女性恐怖症になっていた」
 五年前って十三歳か。思春期だよね。
「触れるのも嫌で、それを表に出さない様に苦労した」

「君が現れて、私の呪縛は解けた。君は幾重にも私を救ってくれたんだ。分かって欲しい、失いたくないもののすべてなんだ」
 殿下は跪いて梨奈の手を取りキスをする。
 思うんだけど、これって後の祭りって言わないか。
 すでに結婚しているし、すでに初夜も済ませちゃったし。

「それで、身体は大丈夫なのか」
 結局元に戻った。
「ちょっと何か挟まってる感じがしますけど、多分大丈夫」
「そうか」
 ベッドから降りようと立ち上がると、身体の内から昨夜の残滓が太ももを伝って落ちてゆく。
「あ……」
 口元を押さえて赤くなった。
 その仕草を見て、殿下も口元を押さえて赤くなる。

 洗ってやろうと言い出す前に、さっさと浴室に逃げようとしたけれど、捕まってしまった。
 誰か止めてくれないの? 盛り上がってもいいの?
 流されてしまうけどいいの?



「殿下、奥様にあまりご無体は」
「すまん、よろしく頼む」
 結局ミランダに怒られてしまった。
 奥様って? 汚れたシーツがない。
「ジェリー、お掃除してくれた?」
『してないー』
 無常なジェリーの声。
 うわああーーー、バレバレ過ぎる。恥ずかしいよう。
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