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五章 離宮にて

25 どこかでスライム音頭が

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 梨奈が部屋に戻って湯あみも済ませて、部屋着に着替えてのんびり寛いでいると、クリスティアン王子が戻って来た。
 自分も湯あみを済ませ、梨奈を抱き上げて、ベッドルームまで運ぶ。
 昨夜はあの騒ぎで、二人はこの部屋でくっ付いて眠っただけだ。


 ベッドに下ろされて「リナ……」と引き寄せる。
 いきなり押し倒す気だろうか。
「殿下、何か忘れていませんか」
 梨奈の身体に手を回したまま、クリス王子が目を瞬く。
「すまない」
 素直に謝られてしまうと、何故か梨奈の方が申し訳ないような気持になる。
「いいんです、別に……」
(うっ、拗ねている口調になった)

 殿下はベッドから身を起こして、梨奈を目の前に座らせる。
「愛しているよ、リナ。あの服はとても似合っていた。私は魔王様に焼きもちを焼いたんだ」
(うひゃ、真っ直ぐ正面から来た。これ、言われる方はくすぐったくて背中がモゾモゾするっていうか、物凄く恥ずかしい)
 梨奈の思考はゴリラ寄りになる。
「私はリナ一人だけを生涯愛すると誓う。リナが私一人だけの女性だと感じさせて欲しい、信じさせて欲しい」
 梨奈は顔を真っ赤に染めて「は、は、はい!」と上ずった声で返事をした。

 クリス王子は嬉しそうに笑って、じっと梨奈の顔を見る。余計に顔が染まる。身の置き所もないとはこの事か。逃げ出したい。裸足で走って逃げ出したい。今すぐクマかゴリラになりたい。

「顔が真っ赤だ」手を取って囁く。
「うっ、殿下が悪いんです」焦らし王子か。
「そうか、どんな風に?」くっ、わざとやっている。
「だって……」耐えられない。手を振り払って逃げると決めた。

 しかし、あっさり捕まって、ベッドの上に押し倒される。顔が近い。口角が上がっているのが歯痒い。結わえていないサラサラの金の髪が流れ落ちている。
 すぐ顔の、すぐ側に。

 髪を掴んで、胸に手を置いて、梨奈は自分から唇を寄せる。
(殿下の勝ち、殿下が上、殿下が大将)
 梨奈は潔く敗北を認めた。

「私のただひとり──」

 それはどちらの言葉だろう。梨奈が言ったような気がするけれど、クリス王子が言ったような気もする。どちらでもいいのかもしれない。

 少し痛いような顔をして、王子は梨奈の身体に手を回し抱きしめる。


 そう言えばこういう事をするのは、異世界に来て初めての日以来だった。ずっと殿下と一緒に居たけれど、バタバタしていて。

 舌を絡めた濃厚な口づけに息が上がる。
「ああ……、リナ、私のただひとり……」
 抱きしめて、囁く吐息が熱い。
「口づけを体中にして、私だけのリナだと──」
 本当に身体中にキスをされて、追い上げられる。
「殿下ぁ……やんっ……」
「名前で呼べ」
「あんっ……クリス様……」
「様などいらん。呼び捨てに、リナ……」
 梨奈の花園の突起をクリス王子の舌がツンツンとノックしてチロチロと舐める。そして長い指が花園の中に侵入して来て暴く。しっとりと濡れそぼったそこを。
「ああん……、クリス……、やっ、もう……」
 指が二本になって梨奈の体の中で暴れる。
「やっやっやっ……あん、あああん……」
 梨奈の身体が仰け反って頭が白くなる。身体が痙攣して訳が分からなくなる。
 くったりとベッドに倒れ込む梨奈を優しく抱きしめて、肩や胸に口づけを散らす殿下。
 梨奈は揺蕩うような意識の中で、お腹の辺りにツンツンと当たるナニかに気付いた。

 ゴリ兄貴の部屋で見たエロ漫画を思い出す。どこもかしこもぽよんぽよんのお姉さんが年下の男の子にあんなことやこんなことをしている。『ふふっ、我慢しなくていいのよ』なんて言って美味しそうにぱっくんと。
 途中で漫画を放り投げて部屋から逃げ出したけど、きっちり勉強しとけばよかっただろうか。

「あの、殿下。私もご奉仕させていただきたいな、と」
「え、リナ……」
 クリス殿下は手で口元を覆って、期待に染まった目で梨奈を見ている。
 殿下のソコにキスを。
 殿下のモノと思えば、きっと可愛いはずだ。
 こういうことは勢いで……。

 夜着のズボンの中からソレを出してみる。かなり元気になっている。うっ、やっぱり可愛くないというか大きい。何で、こんなモノが付いているんだろう。
(どうするの? コレ)
 チラリと殿下を見たが、まだそのまんまだ。
 女は度胸だ。
「えいっ」
 パクッ。

 たまに内緒で読んだ十八禁では、あんまりこれの描写はなかったけれど。
(な、舐めたらいいのかな)
 口に咥えたまま、先っちょを舐めてみる。
 ペロリン。
 なんか変な味。ペロペロ。犬みたいだな。猫の方がいいんじゃないかな。猫みたいに丁寧に舐めてみよう。ぺちゃぺちゃ。ぴちゃぴちゃ。
「くっ……、……リナ……」
 殿下の吐息が聞こえる。
 そういえば唇も動かすんだっけ。動かしてみる。大きくて口が怠い。噛んだらダメだよね。

 あ、殿下が腰を動かしてくる。頭を押さえて、逃げられない。
 鬼畜だわ、泣きそう、苦しい、奥まで来ちゃうし。
 出した──。
 うっ、咽そう。飲み込むしかないの?
 不味いし。
 しばらく荒い息の殿下の上でくったりする。大きな手が梨奈の頭を撫でる。


「物凄い顔をしているな、ほら」
 殿下が起き上がって、ベッドの側のお水を汲んで寄越した。
 本で読んだのは、もっと甘い風に書いてあったんだけど。

「リナの百面相は面白かった」
 ひどい、頑張ったのに。ブッと脹れて横を向く。
 でも胸の中に抱き込まれると、気持ちがぐずぐずに蕩けてしまう。
 殿下はタラシ王子だ。梨奈はチョロインだ。きっと。

  * * *

 どこかでウィンウィン踊りをしているスライムがいる──。
 クリス王子は薄暗いベッド周りを見回す。
 見当たらなかった。ホッと息を吐いてリナを抱き込んで、眠ろうとすると間に緑のスライムがウネウネと蠢いていた。クリス王子はスライムを掴んで投げ捨てた。
『ひどいー、王子ー』
 今度こそ梨奈を抱込んで眠る。スライムはこそこそとベッドに這い上がって、梨奈の背中側にそろりと広がった。
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