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五章 離宮にて

幕間 ランツベルク将軍

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 ランツベルク将軍は、回廊から騎士団の鍛錬場を見ていた。
 今朝方までジョサイアが駆けずり回っていた。大型の魔獣が暴れまわるようで手が付けられなくて、騎士団の連中は遠巻きにしていたが、今はジョサイアが抜けて普通に鍛錬をこなしている。


 三年前に嫁いだこの国の姫君は、武芸事が好きで、よくこの鍛錬場で稽古をしていた。弟のクリスティアン王子は魔法の方が得意だったが、姉に引き摺られて一緒に稽古をしていた。

 クリス王子が変わったのは、姉姫の訃報が入った時からか、いやそれ以前からか。
 それまでの遊び半分といった様子が無くなり、必死の形相になり、鍛錬場で誰も勝てるものが居なくなったのは。
 しばらくクリス王子とジョサイアの鍛錬が話題になっていたが、それが失われてひと月余りが過ぎた。

 一昨日、公爵邸で王子は襲われた。魔族の女による襲撃で、女は逃げ去った。
 そして、離宮に行く途中で、またも襲撃され、男爵令嬢は見事に攫われた。
 攫われた男爵令嬢は何処に行ったのか?
 この時に、もう一人の女性も攫われ、王子はその女性の元に単身転移した。

 この女性というのは何者なのか。魔法省では、すでにマリアと一緒に居た。
 名前はリナ。メイドの装いをしていたが、王子が親密にしていたという。
 何故男爵令嬢のマリアではない女と親密にしているのだ。マリアだからこそ、親のシェルツ男爵が迎えに来ても、男爵家に帰さずに放置したのに。
 そんな女がどこから湧いたのだ?

 昨日王子はそのリナという女性と離宮に帰って来た。王子は何処に行っていたのか。その女性を異国から来たと説明した。
 異国とは──。


 その夜またしても、今度は毒殺騒ぎだ。
 ジョサイアは従騎と伴に離宮に向かい、警護に当たっている。
 今朝の報告で、王子もリナも無事であるという。
 おかしい。何もかも気に入らない。

 魔法省だ。魔法省で何があったのか、ダールグレン教授に聞かなければ。
 ランツベルク将軍は魔法省に行ってダールグレン教授に説明を求めようと思ったが、副長官はすでに離宮に出発した後だった。
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