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三話 シンデレラボーイは夜歩く
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広いベッドのシーツの海。男のモノを受け入れる苦痛に聖の顔が歪む。助けてと自分をこんな目に合わせている張本人に手を伸ばす。
「くっ…う…、大賀さ…ん…」
「力を抜いていただきますとお楽です。」
大賀の声はこんな時でも慇懃で丁寧だった。
「全て入りました。動かしますので、よい時には声を上げてくださればよろしいかと存じます」
聖は頷いて大賀にしがみ付いた。一旦聖の内に大賀の凶器を収めると、苦痛は薄れて大賀の律動で体の中に少しずつ快感が生まれる。
声を出すのが恥ずかしくて、歯を食いしばり男の背中にしがみ付く聖だった。
はじめはこんなコトをしていること自体が違和感があった。
しかし今、シーツの海の中、大男に抱かれて喘ぐ自分がいる。こんな環境にも慣れてしまう自分に聖は首を傾げた。
この男の所為だろうか。一緒に暮らしていると情が移るんだろうか。
聖は自分を貫いている大男の顔を見上げた。しかしこんな時でも大賀は取り澄ました顔をしていて喜怒哀楽など決して窺えない。
「お声を上げていただくのがお恥ずかしいようでしたら、うつ伏せになられたら良いかと存じます」
そう言って大賀は聖をうつ伏せにした。首筋や背中に唇を這わせ、性器に手を絡めて巧みに愛撫しながら、聖を激しく揺さぶった。
「くっ…あっ……」
大男に巧みに攻められて鼻から抜けたような声が出た。自分の声に戸惑うと大賀が背中から声をかけた。
「もっと声をお出しになった方がよろしいかと・・・」
大賀の声も掠れてきたが聖にはもう分らない。男の動きに自分の腰が揺れる。
「あっ…あ…おお…が…さん……」
自分の身体がおかしい。男に組み伏せられて何でこんなに熱くなる。熱くて自分が何処にいるか分からない。男の名を呼んで手を伸ばした。うつ伏せの身体では手はシーツを掴むだけだった。
二度もイカされて大賀も果てベッドに沈んだ後、聖は大賀が決して自分の唇にキスをしないことに気付いた。
大きな男は相変わらず慇懃無礼に聖を見下ろして指図する。
掃除ははじめの一週間で切り上げ、英会話だダンスだ一般教養だと聖を勉強に追い立てた。
聖はそれらの苦手な事に馴染めず、大賀が所用で出かけて居ないとサボって、部屋の掃除や靴磨き、そして決して大賀が教えてくれない自分の好きな田舎料理を作って時間を潰した。
そんなある日の事だった。
「嶋田様がおいでになりました」
大賀が聖をここに連れて来た美しい女を伴って現れた。
「しばらく、お元気でした?」
そう言ってにこやかに笑った女を、聖は恨んで詰ったらいいのか、感謝すればいいのか、それとも相談に乗ってもらったらいいのか分からなかった。曖昧に頷いた聖に女は言った。
「今日は私と一緒に息抜きしましょう。こんな人のお相手ばかりじゃあ肩が凝って疲れるでしょう」
女の言葉に殆んど表情の変わらない大賀が苦笑いしている。聖は自分の心にチリッとした痛みを覚えて、自分の感情に戸惑った。
その女は嶋田佳奈美と名乗った。聖は佳奈美が乗ってきたグレーのスポーツタイプの外車に乗せられてマンションを出た。
「あの……嶋田さん。何処に行くんですか?」
車に乗って少し走った所で聖は恐る恐る佳奈美に聞いた。
「佳奈美と呼んで頂戴。今日はね私とデート。まず美容院に行ってその後ブティックに行きましょう。それからあなたのライバル君たちを紹介するわ」
「ライバルって……?」
「あら、お金持ちの方はそれなりにモテるのよ。候補者が少しいるの」
「そ、そんな人がいるんだったら、ぼ…、僕はもういいです」聖はライバルと聞いて驚いた。
「じゃあもう止めてマンションを出る?」
佳奈美の返事はあっさりしたものだった。冷たく突き放すようなその言葉に、かえって聖の気持ちは揺れた。
引き止めるものがある。認めて欲しいと思う自分がいる。まだ途中だと聖は思い直した。
「いや、もう少しやってみます」
「遊びじゃないの。もっと真剣に取り組んで欲しいの」
そう言った佳奈美の横顔は少し厳しいものだった。
しかしすぐに笑顔を見せて「ほら、着いたわ。あなたはもう少し自信を持っていいのよ。その上で出来る事があると思うの」そう言って車を白亜の城のような美容院につけた。
『これが私……?』と変身シーンで鏡を見ながら女の子が言う台詞そのまんまな場面を聖は味わった。
「俺……」
「スーツを誂えればバッチリよ」
佳奈美はそう言ってウインクして見せた。聖は鏡の前で固まっている。
鏡の前には別人がいた。
美容院でまずエステを受けた。マッサージされパックされ綺麗に無駄毛処理された後、髪を聖の小さな顔に合わせて綺麗にカットされた。
中身だけで呆然と固まっている聖をまた車に乗せ、佳奈美はブティックに連れて行った。揉み手で現れたブティックの主人が、モデルを使って次々と並べる衣装を佳奈美は適当に選んで、その内の一つを聖に押し付ける。
「着替えてきて」
衣装を替えると完璧だった。何処のモデルかと思うような青年が、戸惑った顔をして鏡の前に立っている。
「うふふ、とてもお似合いよ」佳奈美がにっこり笑っった。
「じゃあ私をエスコートして下さる? パーティに行きましょう」
佳奈美に腕を取られギクシャクして聖は躓きそうになりながら歩いた。
地面に足が着かない。目の前にどんな景色が広がっているのかも見えない。頭が逆上せて何も考えられない。
「くっ…う…、大賀さ…ん…」
「力を抜いていただきますとお楽です。」
大賀の声はこんな時でも慇懃で丁寧だった。
「全て入りました。動かしますので、よい時には声を上げてくださればよろしいかと存じます」
聖は頷いて大賀にしがみ付いた。一旦聖の内に大賀の凶器を収めると、苦痛は薄れて大賀の律動で体の中に少しずつ快感が生まれる。
声を出すのが恥ずかしくて、歯を食いしばり男の背中にしがみ付く聖だった。
はじめはこんなコトをしていること自体が違和感があった。
しかし今、シーツの海の中、大男に抱かれて喘ぐ自分がいる。こんな環境にも慣れてしまう自分に聖は首を傾げた。
この男の所為だろうか。一緒に暮らしていると情が移るんだろうか。
聖は自分を貫いている大男の顔を見上げた。しかしこんな時でも大賀は取り澄ました顔をしていて喜怒哀楽など決して窺えない。
「お声を上げていただくのがお恥ずかしいようでしたら、うつ伏せになられたら良いかと存じます」
そう言って大賀は聖をうつ伏せにした。首筋や背中に唇を這わせ、性器に手を絡めて巧みに愛撫しながら、聖を激しく揺さぶった。
「くっ…あっ……」
大男に巧みに攻められて鼻から抜けたような声が出た。自分の声に戸惑うと大賀が背中から声をかけた。
「もっと声をお出しになった方がよろしいかと・・・」
大賀の声も掠れてきたが聖にはもう分らない。男の動きに自分の腰が揺れる。
「あっ…あ…おお…が…さん……」
自分の身体がおかしい。男に組み伏せられて何でこんなに熱くなる。熱くて自分が何処にいるか分からない。男の名を呼んで手を伸ばした。うつ伏せの身体では手はシーツを掴むだけだった。
二度もイカされて大賀も果てベッドに沈んだ後、聖は大賀が決して自分の唇にキスをしないことに気付いた。
大きな男は相変わらず慇懃無礼に聖を見下ろして指図する。
掃除ははじめの一週間で切り上げ、英会話だダンスだ一般教養だと聖を勉強に追い立てた。
聖はそれらの苦手な事に馴染めず、大賀が所用で出かけて居ないとサボって、部屋の掃除や靴磨き、そして決して大賀が教えてくれない自分の好きな田舎料理を作って時間を潰した。
そんなある日の事だった。
「嶋田様がおいでになりました」
大賀が聖をここに連れて来た美しい女を伴って現れた。
「しばらく、お元気でした?」
そう言ってにこやかに笑った女を、聖は恨んで詰ったらいいのか、感謝すればいいのか、それとも相談に乗ってもらったらいいのか分からなかった。曖昧に頷いた聖に女は言った。
「今日は私と一緒に息抜きしましょう。こんな人のお相手ばかりじゃあ肩が凝って疲れるでしょう」
女の言葉に殆んど表情の変わらない大賀が苦笑いしている。聖は自分の心にチリッとした痛みを覚えて、自分の感情に戸惑った。
その女は嶋田佳奈美と名乗った。聖は佳奈美が乗ってきたグレーのスポーツタイプの外車に乗せられてマンションを出た。
「あの……嶋田さん。何処に行くんですか?」
車に乗って少し走った所で聖は恐る恐る佳奈美に聞いた。
「佳奈美と呼んで頂戴。今日はね私とデート。まず美容院に行ってその後ブティックに行きましょう。それからあなたのライバル君たちを紹介するわ」
「ライバルって……?」
「あら、お金持ちの方はそれなりにモテるのよ。候補者が少しいるの」
「そ、そんな人がいるんだったら、ぼ…、僕はもういいです」聖はライバルと聞いて驚いた。
「じゃあもう止めてマンションを出る?」
佳奈美の返事はあっさりしたものだった。冷たく突き放すようなその言葉に、かえって聖の気持ちは揺れた。
引き止めるものがある。認めて欲しいと思う自分がいる。まだ途中だと聖は思い直した。
「いや、もう少しやってみます」
「遊びじゃないの。もっと真剣に取り組んで欲しいの」
そう言った佳奈美の横顔は少し厳しいものだった。
しかしすぐに笑顔を見せて「ほら、着いたわ。あなたはもう少し自信を持っていいのよ。その上で出来る事があると思うの」そう言って車を白亜の城のような美容院につけた。
『これが私……?』と変身シーンで鏡を見ながら女の子が言う台詞そのまんまな場面を聖は味わった。
「俺……」
「スーツを誂えればバッチリよ」
佳奈美はそう言ってウインクして見せた。聖は鏡の前で固まっている。
鏡の前には別人がいた。
美容院でまずエステを受けた。マッサージされパックされ綺麗に無駄毛処理された後、髪を聖の小さな顔に合わせて綺麗にカットされた。
中身だけで呆然と固まっている聖をまた車に乗せ、佳奈美はブティックに連れて行った。揉み手で現れたブティックの主人が、モデルを使って次々と並べる衣装を佳奈美は適当に選んで、その内の一つを聖に押し付ける。
「着替えてきて」
衣装を替えると完璧だった。何処のモデルかと思うような青年が、戸惑った顔をして鏡の前に立っている。
「うふふ、とてもお似合いよ」佳奈美がにっこり笑っった。
「じゃあ私をエスコートして下さる? パーティに行きましょう」
佳奈美に腕を取られギクシャクして聖は躓きそうになりながら歩いた。
地面に足が着かない。目の前にどんな景色が広がっているのかも見えない。頭が逆上せて何も考えられない。
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