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37 色事師(2)

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 さて、葵である。
 迎えに来た車に乗り込んで、まずは最初の邪魔をして、してやったりとほくそ笑んだ。屋敷に着いたらどういう邪魔をしてやろうとアレコレ考えているうちに、車が義純の屋敷とは違う方向に走っていることに気が付いた。

「オイ、何処に向かってるんだよ」
 このまま義純との待ち合わせ場所に向かっているんだろうか。しかし、車の前の座席に座った二人の男は返事をしない。それどころか前の座席と後ろの座席を遮るようにスルスルと透明なシャッターのようなものが下りてきた。さすがに葵は慌ててそれをドンドンと叩いた。
「オイ、どうなっているんだ。何をする気だ」
 その葵の座っているシートの足元からシューシューと白っぽい煙が出て来た。
「うっ、何だ、これは」
 口を押さえて慌ててシャッターを叩いたが、煙に巻かれて段々と意識が遠くなっていった。


 気が付くとベッドにうつ伏せになって寝ていた。頭にまだ白い靄がかかったようである。身体が少々熱くて股間の辺りが熱っぽい。それに、尻の間に何かが挟まっているような……。

 体を動かそうとしたが動かない。手も足も大の字に広がったまま何かで縛られている。ベッドの感触がやけにリアルに肌に感じられた。
 股間が熱くても、そこに手を持っていけないので葵はもぞもぞと腰を動かした。すると後ろから男の声が──。

「おーや、暖斗クン。お薬が効いてきたようですネ」
 変な外国人訛りのある声だった。
(クスリとは一体)
 葵は声のした方に首を向けた。

 黒い髪がくるくると渦を巻いて額に落ちている。少々タレ気味の瞳は黒く、唇は紅い。白い肌と高い鼻梁の、顔のいい男がニヤリと笑って葵を見ていた。
 男は丈の短い筒袖のガウン姿である。義純と同じ位のいい体格をしていて胸元からチラリと胸毛が覗いていた。その紅い唇を歪めて男は言った。

「義純がまさか男に走るとは思いませんデシタ。でも走ったからには仕方がない。その身体に私のテクニックを披露して、アナタにドチラがよかったか選んでもらいます」
 葵は男の顔をまじまじと見ながら、靄のかかった頭で男の言った言葉を理解しようとした。

 しかし、男は葵の理解を待ってはいなかったのだ。シュルとガウンの紐を解き、パッと闘牛士のようにガウンを葵と男の間に翻らせたと思ったら、もう葵の背後に回っていた。

「まっ、まっ、まっ、待て!!」
 男の手が葵の身体を甚振り始める。じかに身体を触られて、自分が何も身につけていないということが分った。葵は慌てたが手も足もベッドに縫い付けられて身動きできない。男は葵に覆い被さり、手を前に回して胸の乳首を指で転がしながら耳に息を吹きかける。

「くっ……、ん」
 ぞわっと身体が総毛だって思わず声が漏れる。男は耳元でクククと笑った。
「待ったなしネ。なかなか感度いいよ、暖斗クン」
 耳に囁き舌を入れる。耳を嘗め回されて葵の身体が跳ねた。

「うっ! やっ、止め……、ちが……違うっ」
 葵の声が裏返る。自慢じゃないが男にいい寄られたことは一度もない。もちろん葵の周りにいた男達は葵の出自を知っていたが、それにしても何かが違う。

「私、義純の為にたくさん勉強しました。それ全部、暖斗クンに教えてあげます」
「だから、俺は、暖斗じゃなーーい!!」
 葵は肩でゼイゼイと息をしながら叫んだ。男の手が一瞬止まる。
「嘘を言ってはいけませんネ」

 人差し指でツツツと背中をなぞりながら言った。なにやら知らない感覚がゾワゾワと湧き上がってくる。葵はその感触に身を捩って喚いた。
「くっ、嘘じゃないっ!!」
「では、君は誰ですか」
 男はまだ余裕のある素振りで、葵の太股から尻の辺りをサワサワと撫で上げながらながら聞く。
「俺は葵だっ」
「私、知りません」
 男が失望したように答えたので葵はムッとした。
(あのチビを知ってて、俺を知らんとは)
 それで、言わでもなことまで喋った。

「俺は如月葵だ。俺こそが義純の真の跡継ぎなんだ」
 男は義純の跡継ぎという言葉に反応した。
「義純の跡継ぎ」
「そうだ。あのチビは、ただの義純の慰み物に過ぎん」
 男は葵の背中に乗りあがったまましばらく考えていたようだが、やおら葵への攻撃を再開した。
(なっ、何でこう来る!? ここで友情こそが芽生える筈じゃあないのか?)
 ただでさえ暖斗の事になると、妙なライバル心が湧き起こってまともな思考が停止する上に、今の葵の頭には半分靄がかかっていて思考能力そのものが危うい。そして葵はそのことに気が付いていなかった。

「俺こそが義純とともに手を取って……」
 と、義純に妙な敵愾心を持っている男を更に煽るような言葉を吐いた。
 男は葵の位置を認識したようだ。白皙の顔をニヤリと歪めて言った。
「そうですか。では、君に私のテクニックの全てを注ぎ込みましょう」
(だ、だから、何でこう来る!?)
「ま、ま、まてっ……」
 しかし、待つような男ではなかったのだ。

 男の手が葵の身体をまるで楽器でも弾くように上下する。その度に葵の身体は煽られて、中心から小波が湧き起こり身体中へと広がって行った。
「あっ……、くっ……、や、やめろって……ば……」
 背中から脇腹、腰から太股へと羽のようなキスをされて、ベッドに縫い付けられたまま藻掻いた。
 男が耳に唇を寄せて囁く。
「君は葵?」
「そ、そうだ。俺は葵だ……」
「そう、葵。あの巨根に可愛がられているにしてはキツイと思いました」
 男はそう言って含み笑いをした。その手が葵の分身を柔らかく揉み上げながら、もう一方の手が葵の尻へと伸びる。そこには何かが挟まっている。葵はそう感じたけれど、ソレは男性用の張り型で、葵の体内奥深くまで装着されていたのだ。男はその張り型をゆっくりと抽挿しはじめた。

「ああっ!!」
 葵の身体が跳ねる。男がそれを動かす度に、ものすごい感覚が襲い掛かって葵の身体は瘧を患ったように震えた。
 男は唇を耳に寄せ、舌で舐め上げながら更に囁く。
「義純の跡取り?」
「あ……あ、そうだ。だから、止めっ……」
 男が葵の体内に入っていた張り型で、葵の体内の感じるところを擦り上げた。葵の身体が跳ね上がった。
「では、義純の跡取りは私の楽器になりなさい」
「なっ、何を……い……う……」
「私に弾かれて、私の思い通りの歌を歌う楽器に」
「そんな……、ああっ……」
 男は葵の蕾を張り型で、なぞったり突き上げたり押し広げたりして好きなように蹂躙した。どういう訳か葵の身体はそれに反応して跳ね回り、男に甚振られて勃ち上がっていた葵の分身はあっさり弾けた。
「はあ……」
 脱力する葵の背中に向かって男が言う。
「よかったですか。でも、お楽しみはこれからネ」

 そのお楽しみは、次の日の早朝、義純の家の玄関前に置き去られるまで続いたのだった。

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