姉が結婚式から逃げ出したので、身代わりにヤクザの嫁になりました

拓海のり

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8 新妻の務め(3)

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 体が重かった──。
 朝、脩二が起こしに来ても暖斗は起き上がれなかった。
「まあ今日はいいさ」
 義純は上機嫌で出て行った。
 暖斗が起き上がったのはもう昼頃だった。喉はひりひりするし体は倦怠感で一杯。腰から下はまるで他人の体のようだ。脩二に昼ご飯をよそわれて黙々と食べながら、
(俺、体持つかしらん)と不安に駆られる暖斗だった。

 食事の後、脩二が暖斗の前に畏まって切り出した。
「姐さん、学校を変わっていただきやす」
「え? 何でだよ。俺、頑張って勉強してやっと今の学校に入ったんだぞ」
「姐さんは学校でヤクザだと仰いましたね。確かにうちは江戸時代から続いた由緒正しいヤクザの家柄です。しかし、世間様にはかたぎで通っているんです。我が如月工務店は表向きは宮大工を擁し、律儀で真面目な仕事をしています。土地ころがし、売りぬけ、談合、その他もろもろは水面下で行う事で、表立っては決していたしません。姐さんにもそこんところはよーく理解していただかねえと」
(どういう意味だよ……)
「つまり、ここは由緒正しいヤクザだけど、世間ではかたぎで通しているからヤクザだって言っちゃいけないのか?」
「その通りでござんす。よくお分かりのようで」
(こいつに褒められてもな)
 暖斗は憮然としたまま脩二の顔を見た。相変わらずにこりともしないごつごつの怖い顔が目の前にある。
「早く言えよ、それを」
 もう口から出てしまった言葉は元に戻らない。怖がって逃げて行った友人達が目に浮かんだ。
「そういう訳で転校して頂きます」
 脩二にそう言い渡されて暖斗はため息を吐いた。否も応も無いようだ。
「明日はお客さんがありますので、今日はゆっくりお休みくだせえ。明後日、新しい学校にお連れします」
 どうやらもうお膳立ては整っているようだ。掴む藁もなく流されて行く自分は一体何処に行くのか。
 暖斗は脩二の言葉に今日は義純との事は休みかと思った。
 しかし、甘かった──。


 夕飯の後、また脩二に連れられて風呂場に行った。昨日と同じように体を綺麗にされて風呂から上がった後、風呂場に敷いてある薄い布団の上に横たえられた。
「く、薬は嫌だ……」
「これは姐さんの体が楽になる薬ですぜ」
「興奮するんだろ?」
「あれは昨日のウーロン茶の中です」
 脩二はしれっとそう言って暖斗の蕾の中に薬を塗りつけた。
(くっそー!)
 暖斗は歯噛みするばかりである。
 脩二は暖斗の体の中に昨日と同じ玩具を挿入して拘束具をした。その上から着物を着せてまた手錠を嵌められる。
「何でまた手錠なんだよ!」
「今日一日辛抱しておくんなさい」
 体の中に入ったものに違和感を覚えながら、部屋でジタバタしていると昨日と同じ時刻に義純が現れた。
「何をやっているんだ、そんなしどけない格好で。俺が来るのがそんなに待てなかったか?」と、拘束具と格闘して諸肌脱ぎになっている暖斗を見下ろして言った。
「こんなもんつけんなよっ!!」
 後ろ手に手錠をされたままで暖斗は義純を睨み上げる。義純はにやりと笑って暖斗の顎をクイッと人差し指で上向かせた。
「なかなかそそる顔だが、お前が牙を剥くのは俺じゃなくて他の奴にしな。俺には可愛い顔をして見せろ」
 そのまま暖斗の唇にキスをする。暖斗が唇をぎゅっと閉じたままなので顔を離して、首を傾け暖斗の顔を覗き込んだ。
「お前、キスの仕方も知らねえのか」
「知らないやいっ!」
 もう破れかぶれで強がってみせる暖斗だった。淡い色の大きな瞳が義純を見上げて小動物のように揺れている。必死になって強がっている様子がありありと見て取れて義純は内心『くー! 可愛いっ!!』とか思っているが素知らぬ顔で耳に唇を寄せて囁く。
「よしよし、順番が後先になったがそんなことはどうって事ねえ。降り積もれば先も後もわからねえや」
 暖斗を抱き寄せて胸に手を入れ悪戯をしながら、暖斗の顎を掴んで唇を合わせ深く舌を絡めてきた。
(ぎゃぁぁ──!! そんなモン入れるな──!!)
 暖斗は義純の腕の中で藻掻いた。
 ディープなキスをしながら義純の手が好き勝手に暖斗の体を弄くり回る。昨日の熱がまだ残っているかのように暖斗の体にすぐに火がついた。
「なかなか感度がいいようだ。これは俺に反応しているんだろうな」
「はう……」
 義純に唇を解放されて暖斗は吐息を吐いた。義純は暖斗の耳に唇を寄せて息を吹きかけた。
「あうっ……」
 暖斗の唇から声が転がり落ちる。体がピクンと跳ね上がる。義純はクククと笑って耳朶を舐めあげ、噛み、耳の中に舌を入れて舐め、息を吹きかけた。手が暖斗の太股をサワサワと撫でる。
「ひぃ……! ああ……ん……」
 暖斗は義純の腕の中で何度も仰け反って声を上げた。
「さあて、そろそろ今日のお勉強をしようか」
 そう言って義純は腕の中の暖斗を見やる。


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