召喚されない神子と不機嫌な騎士

拓海のり

文字の大きさ
上 下
25 / 44

25 温泉で再会

しおりを挟む

 エデッサの街からのんびり馬車で2日。途中は宿も無く野営だったが、エール川の船着き場から馬車で移動した時と違って、テントもあるし装備も整っているし楽だ。
 リシアの町はエデッサの半分も無い小さな町だったが、冒険者で溢れていた。

 ユベールの説明では、5、6人いて装備が質実剛健で強そうなのが帝国から来た人々で、2、3人で手練れな感じの装備もきっちりしているのはテゥアラン王国。魔術師風のローブを着た人が多いのはハッセルト王国で、様々な格好をしたちぐはぐなのがヴィラーニ王国だという。
「なるべく離れないで下さい。この国の警備はきっちりしていますが、ダンジョンに入ると危険ですから」
「分かった」
 魔物だけでなく冒険者も危険なんだそうだ。ダンジョンで魔物ではなく冒険者に襲われるってどうよ。
 取り敢えず物見遊山気分でテントの他に食料やら何やらたくさん仕入れた。ユベールも何やかやと仕入れていたし、ハナコもポケットからアレコレ注文を出していたし、ダンジョンに潜っても大丈夫だろう。
 さて待望の温泉だ。どこの温泉宿がいいかな。


 のんびり温泉街を見ていると後ろからポンと背中をたたかれた。
 振り向くと金髪碧眼の美青年がいる。
 どこかで見た事がある気がするが、こんな奴どこで見たっけ。
「私だ、サン=シモン神殿のイポリットだ」
 あ、思い出した。こいつ白豚だ。すっかり痩せているから分からなかった。
「お前、どうしたんだ?」
「どうにもヴィラーニ王国が住み辛くて、ビエンヌ公国に移住してきたんだ」

 このビエンヌ公国に入るには、エール川と海からの他は、ヴィラーニ王国の南西に広がるベアサイン森林を通らなければならない。そこがまた魔物の棲まう恐ろしい土地で、普通の人は近付かないという。
「うちは昔から代々語り継がれた抜け道を知っているが、それでもやせ細るぐらいは厳しい道だった」
 馬車も通らぬ獣道に近い一筋の道を、重い荷物を背負い夜通しかけて歩く。
 ものすごくハードだ。
「何で宿屋をやっている者がそんな道を知っているんだ」
「うちの家系は元々は冒険者で、宿では商売もするからな」
 そうか、冒険に必要なものを宿で提供してくれれば助かるな。
「家業が厳しくて逃げ出したが、生温い神殿で根性も腐っていった。お前のお陰で抜け出せたよ」
 神殿はぬるま湯のような所だった。

「まあ、うちには屈強な奴らがいるからな。ずいぶん鍛えられたわ」
 彼が振り返ると後ろに3人ほど強げな冒険者にも見劣りしない男たちがいた。
「公都にうちの昔からの宿があるんだが、公国の東側のこっちにも作ろうという話になってな。エデッサよりこっちの方がいいだろう? 温泉もあるし」
 もちろんだ。オレにとって温泉は何より優先される。
「そうだな、エデッサは成熟した感じでライバルも多いだろうな」
 こいつに聞けば、いい宿を世話してくれるかな。
「オレ達、宿を探しているんだが」
「じゃあこっちにしろ」と案内してくれる。


 白豚ことイポリットが案内してくれたのは老舗の宿でディーガン亭という。
「ここは昔からウチがよく利用している宿だ。私たちは温泉候補地に仮屋を建てて、そっちに寝泊まりしているんだ。また明日にでも寄るわ」
 そう言って帰って行った。
 ディーガン亭は隅々まできれいに掃除され、食事もきれいに盛り付けられ、肉も魚も美味しかった。

 リシアの町の温泉はモール温泉で黄褐色をしており、泉質がしっとりとして柔らかい。湯温は高くて水で薄めているという。宿の湯舟は広々として、オレ達は温泉を堪能したのだ。

 部屋に戻って部屋着に着替え、ソファでのんびりほてりを冷ましていると、ハナコがハーブティーを入れてくれた。
「ありがとう、ハナコ。気が利くな」
 温いお茶が喉に心地よい。ユベールも向かいのソファで寛いでいる。
「先程の方は神殿の方ですか?」
「ああ、見習い神官だった。ハナコを拾うきっかけになった奴だ」
「そうですか、神殿にあのような方がおられましたか?」
「前は凄く太っていたからな。オレも見違えたわ」
 笑って言うと、ちょっと目を眇めたユベールが立ち上がってオレの腕を取る。

「それより少し頑張りましょうか」
「お前の少しって長いじゃん」
「短く濃厚にいたしましょうか」
「う」
「やはり、このお身体に私のモノを全部覚え込ませてしまわないと、いけないような気がします。あなたは無鉄砲ですから」
「何で無鉄砲だとそうなるんだ」
「お行儀良くなります」
 あっさり抱き上げられてベッドに運ばれる。オレ行儀悪い事したっけ?


「さあ、キスからいたしましょうか」
「む……んんっ……」
 唇を軽く啄ばむように何度もキスをして、唇を啄ばまれて舌が口腔に入ってくる。口腔内を犯すように蹂躙され、歯列をなぞり舌を絡め息が上がる。
 この手練手管どこで覚えたんだろう。キスしているだけで気持ちよくなるとか、経験者としてレベルが高いだろう。

「んふっ…あふう……」
「とてもお上手ですよ、本当に淫乱になられて」
 濡れた唇がいやらしい。細めた瞳がオレの息の上がった顔をじっと見る。
「さあ、こちらももっと感じるようになりましょうね」
 何で胸に舌を這わされて指で捏ね繰り回されて感じるんだろう。もう胸だけでイキそうなんだけど、イカしてくれないし。
「もうちょっと頑張りましょうね」
 ああ、手取り足取り教えこまれる。

 神子にこんな事を教えていいのか
「神子は何でも知っていなければいけません。後ろからとか、前からとか、乗り上がってとか、対面とか、まだまだこれからですね」
 あっさり引き寄せられて、訳の分からない格好で絡んで、胸の粒を好きなだけ弄られて、すっかりそこも敏感になった。
 後孔に入った長い指がオレのいい所を暴く。
「はあ……ダメんっ……違うの、もっと……んんっ」
 もっと容積のあるモノが欲しい。
「ああ、こんなに欲しがって、すっかり淫乱になられましたね」
 腰を揺らして強請ると、うっすらと笑う気配がして、待ちかねたソレが入り口に当たる。ユベールの屹立した凶器が、オレを焦らすようにゆっくりと侵入してくる。
「やあ……ん、ああ、そんなとこもう……、あふう、ああ……もっとゆべー……る……」
 大きなモノがみちみちとオレの身体を一杯に押し開いて入ってくる。
「本当にあなたが素直で、可愛らしくて、いくらでも可愛がって差し上げられます」
 奥の奥まで押し入ってくる熱い楔。
「やっ……、淫乱だって言ったっ……、ああっ……」
「私の前でだけ淫乱であればそれでいいのです。お返事は?」
 グイと腰を回して突き上げられる。ああ、ダメそれ、もう……。
「……ああんっ、あ……い……」
 あ……、ダメ。こいつに躾けられている。
「本当に素直で可愛い方ですね。愛していますよ」
「ん……ふっ……、そ、そうな……の?」
 ちょっと言われただけで顔が緩んでる。オレ、チョロ過ぎる。
 おかしい。オレの方が犬になっているような気がする。
「はい。行く末まで幸せになりましょうね」
「……あい」

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

転生した気がするけど、たぶん意味はない。(完結)

exact
BL
11/6〜番外編更新【完結済】 転生してきたのかなーと思いつつも普通に暮らしていた主人公が、本物の主人公と思われる人物と出会い、元の世界に帰りたがっている彼を手伝う事こそ転生の意味だったんだと勝手に確信して地道に頑張る話。元同級生✕主人公(受け)。ゆるーっと話が進みます。全50話。 表紙は1233様からいただきました。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~

ma-no
ファンタジー
 神様のミスで森に住む猫に転生させられた元人間。猫として第二の人生を歩むがこの世界は何かがおかしい。引っ掛かりはあるものの、猫家族と楽しく過ごしていた主人公は、ミスに気付いた神様に詫びの品を受け取る。  その品とは、全世界で使われた魔法が載っている魔法書。元人間の性からか、魔法書で変身魔法を探した主人公は、立って歩く猫へと変身する。  世界でただ一匹の歩く猫は、人間の住む街に行けば騒動勃発。  そして何故かハンターになって、王様に即位!?  この物語りは、歩く猫となった主人公がやらかしながら異世界を自由気ままに生きるドタバタコメディである。 注:イラストはイメージであって、登場猫物と異なります。   R指定は念の為です。   登場人物紹介は「11、15、19章」の手前にあります。   「小説家になろう」「カクヨム」にて、同時掲載しております。   一番最後にも登場人物紹介がありますので、途中でキャラを忘れている方はそちらをお読みください。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

【完結】守護霊さん、それは余計なお世話です。

N2O
BL
番のことが好きすぎる第二王子(熊の獣人/実は割と可愛い) × 期間限定で心の声が聞こえるようになった黒髪青年(人間/番/実は割と逞しい) Special thanks illustration by 白鯨堂こち ※ご都合主義です。 ※素人作品です。温かな目で見ていただけると助かります。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

某国の皇子、冒険者となる

くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。 転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。 俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために…… 異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。 主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。 ※ BL要素は控えめです。 2020年1月30日(木)完結しました。

異世界転移で、俺と僕とのほっこり溺愛スローライフ~間に挟まる・もふもふ神の言うこと聞いて珍道中~

兎森りんこ
BL
主人公のアユムは料理や家事が好きな、地味な平凡男子だ。 そんな彼が突然、半年前に異世界に転移した。 そこで出逢った美青年エイシオに助けられ、同居生活をしている。 あまりにモテすぎ、トラブルばかりで、人間不信になっていたエイシオ。 自分に自信が全く無くて、自己肯定感の低いアユム。 エイシオは優しいアユムの料理や家事に癒やされ、アユムもエイシオの包容力で癒やされる。 お互いがかけがえのない存在になっていくが……ある日、エイシオが怪我をして!? 無自覚両片思いのほっこりBL。 前半~当て馬女の出現 後半~もふもふ神を連れたおもしろ珍道中とエイシオの実家話 予想できないクスッと笑える、ほっこりBLです。 サンドイッチ、じゃがいも、トマト、コーヒーなんでもでてきますので許せる方のみお読みください。 アユム視点、エイシオ視点と、交互に視点が変わります。 完結保証! このお話は、小説家になろう様、エブリスタ様でも掲載中です。 ※表紙絵はミドリ/緑虫様(@cklEIJx82utuuqd)からのいただきものです。

処理中です...