召喚されない神子と不機嫌な騎士

拓海のり

文字の大きさ
上 下
14 / 44

14 薬のせい

しおりを挟む

 離宮を出ると、辺りは夕暮れ時だった。馬車を先導してしばらく走ると、左手に男の言った船着き場が見えた。

 エール川河畔の船着き場に着いた。川幅は広く靄っていて、遠くに黒々とした森が横たわっている。丁度、競売に来ていた商人が乗って来た大型船がいる。
「おーい、乗せてくれないかー!!」
 川船の船長にお金の入った革袋を見せると、あっけなく乗船させてくれた。

 ユベールは競売場の舞台にあった奴隷の売上代金を、すべて奪って逃げたのだ。
「オレの売上代金が、その中に入っていなくて悔しい」と言うと「貰った」とずっしりと重い袋を見せた。
 オレ達は顔を見合わせて悪い笑顔で笑ったのだ。

「よし、祈ろうか」
「はーい」
「はい」
「『クリーン』『浄化』」
 船に乗ってから、神殿の見習い神官みんなで祈ると船がキラキラと輝いて、乗組員たちは跪いて涙を流した。
 船の代金を払って、残りの金は船の上でみんなで山分けにする。
 川船の船長は、テゥアラン王国に行く予定で、船に乗ったオレ達を途中の帝国やビエンヌ公国の船着き場まで運んでくれるという。

「いやあ、あいつら行きだけの約束で乗せたんだが、まだ金を払って貰ってなかったんだ。待ってろと言っていたけどよ、あの様子じゃあ料金値切られるか踏み倒されそうだし、どうするかなと思ってたんだ」
 船長が言うと、船員たちも次々に言う。
「そしたら離宮の方で青白い光が見えてよ」
「あいつら愛想悪いし、ケチだしよ、何か悪い事したんだぜ」
「そのくせ偉そうに命令しやがって」
 そういや、あのオヤジ、オレを買った代金も踏み倒しそうだったな。


 個室を貰って、しけ込んだオレ達は盛っている。これは仕方がないんだ。媚薬のせいだし、ローランとレスリーも頑張っているらしいし、他にも急造カップルが何組か出来たようだ。

「はあ……、ユベール何とかして!」
「エルヴェ様」
「あふん、苦しい……」
 身体中の熱が出口が無くてぐるぐる回る。出せと。
「エルヴェ様、この薬の中和薬はここにはございません。なので、まぐわって解毒するしかありません」
「まぐわうって……、何?」
「ここに」ユベールの手がオレの尻を触って、指がその奥に触れる。
「私のモノを入れます」
「んあっ……」
 触られただけで声が漏れる。

 もしかして、もしかしなくてもそうなのか?
「お前……、オレに勃つの?」
 半信半疑で聞くと、男は真面目腐った顔で答える。
「はい」
 オレはもう限界だ。
「何でもいいから、何とかして!」
「分かりました。途中で止められませんから、そのおつもりで」

 ユベールはオレの服をすべて脱がして、べッドに横たえる。冷たいシーツが熱を孕んだ身体に気持ちいい。ユベールの金茶色の髪を両手でかき混ぜると、ユベールの薄青い瞳が近付いて来てオレの唇にキスをする。

 襲いかかる身体の熱と、ここで越えてしまうのかという不安を紛らわすように、自分の上に覆いかぶさる男に聞く。
「んん……、この船は何処に行くんだ?」
「はい、テゥアラン王国と言っていました」
 耳元でそんな事を囁きながらも、ユベールの手はオレの後孔に伸びる。そこはもうトロトロに溶けて、指を迎え入れようとするがきつい。
「このままエール川を南下してシェデト湿原に入ります。まず湿原の東のジンスハイム帝国の船着き場に行って、それから西のビエンヌ公国の船着き場に着いて、その後南下してテゥアラン王国に行きます」
「そっか……、後で地図をみ……たいなっ、あぅ……」
 ユベールが指を抜いたので声が裏返る。

「狭いですね」
 ユベールはオレのモノを手で包みゆっくりと動かす。
「あああ」
 すでに勃ち上がって蜜を零していたオレのモノは、あっさりと降参して欲望を吐き出した。ユベールはそれを受け止めて後ろに塗り付ける。
 オレの放ったもので滑りが良くなって、ユベールの指を迎え入れる。

「ああん……、ユ、ユベール、ユベールっん」
 ユベールの指が増やされて、オレはユベールにしがみ付く。腰が揺れて催促しているようだ。指が増やされてゆく。身体が熱い。辛い。腰が動く。
「ユベール……はやくっ……う……」
「エルヴェさま……、くっ! もうどうなっても──」

 ユベールは身を起こして、手早く自分の衣服を脱ぐと、オレの足を抱える。
 立派な屹立したモノがオレの溶けた後孔に当てられる。クイッと突き入れるとオレは甘い声を上げて仰け反るしかない。
 欲しい、早くそれが全部。
「あああん、ユベール」
 みちみちと押し入ってくる熱い塊。オレの身体を押し開き、知らぬ感覚を連れて来る。なんか大きすぎて入らない?
「エルヴェ様、力を抜いて──」
 いや、大きくて無理。いっぱいいっぱいだ。

 でもユベール、こんな時でも様かよと、どこかで考えたら、グイッと押し進められた。
「ああん……一杯だあ……」
 ユベールがいい子いい子という風に頭を撫でてキスをする。
 その後は猛然と動き出した。止まれと言っても、やめてと叫んでも、聞きはしない。ガツガツと食らうように貪るように食らいつくす。ぐったりしたオレをひっくり返してまた挑まれる。
 死ぬ、オレこいつに殺される運命だったのか──。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

転生した気がするけど、たぶん意味はない。(完結)

exact
BL
11/6〜番外編更新【完結済】 転生してきたのかなーと思いつつも普通に暮らしていた主人公が、本物の主人公と思われる人物と出会い、元の世界に帰りたがっている彼を手伝う事こそ転生の意味だったんだと勝手に確信して地道に頑張る話。元同級生✕主人公(受け)。ゆるーっと話が進みます。全50話。 表紙は1233様からいただきました。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

熱しやすく冷めやすく、軽くて重い夫婦です。

七賀ごふん
BL
【何度失っても、日常は彼と創り出せる。】 ────────── 身の回りのものの温度をめちゃくちゃにしてしまう力を持って生まれた白希は、集落の屋敷に閉じ込められて育った。二十歳の誕生日に火事で家を失うが、彼の未来の夫を名乗る美青年、宗一が現れる。 力のコントロールを身につけながら、愛が重い宗一による花嫁修業が始まって……。 ※シリアス 溺愛御曹司×世間知らず。現代ファンタジー。 表紙:七賀

今世はメシウマ召喚獣

片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。 最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。 ※女の子もゴリゴリ出てきます。 ※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。 ※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。 ※なるべくさくさく更新したい。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

乙女ゲームが俺のせいでバグだらけになった件について

はかまる
BL
異世界転生配属係の神様に間違えて何の関係もない乙女ゲームの悪役令状ポジションに転生させられた元男子高校生が、世界がバグだらけになった世界で頑張る話。

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

処理中です...