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45 行軍途中で合流します
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出発は翌日の昼前になったので持って行く物を【アイテムボックス】に詰め込んだ。着替え各種、食料各種、鳥餌、鳥リボン用セット、リネン各種、地図。
時間にヴィリ様が迎えに来てくれて、お母様と執事、侍女らが見送る。
「行ってきます」
「気をつけてね、無理をしていけませんよ」
「はい」
まるでそこらにピクニックに行く雰囲気だ。
ヴィリ様が手を胸に当てて敬礼する。お義母様が丁寧に礼を返すと頷いてホールから外に出た。グイードとルパートが他の将校たちと一緒に迎えに来ている。
「今回、魔王討伐に当たり聖女エマ様に、ご同道願うことと相成った」
ヴィリ様が私を将校方に紹介してすぐに出発となった。私はヴィリ様と一緒の馬車に乗る。
馬車でヴィリ様がこれからの予定を説明して下さった。
「まず王都のすぐ近くにあるアウグスタ駐屯地で兵士達と合流する。そこまで二日半かかる」
早馬だと一日で着くそう。たくさんの兵士って見たことがないんだけど、あちこちの駐屯地に散らばっているという。
「そこから、マイヤンス駐屯地の兵士たちとドゥルラハで合流し、アルゲントラテ駐屯地に向け出発する」
マイヤンスは古くからの軍事基地のある街で、ガリアに奪われたり他の国に奪われたりして、この前の戦争で奪い返した所だという。ドゥルラハはガリアに破壊されたのを辺境伯が場所を移して新しく再建され、アルゲントラテはガリアに入って最初の町だ。
この世界の移動は大変だ。河川は南北に伸び、東西に移動する場合は馬車と馬あるいは徒歩である。道は整備されているようだが途中には山も森も大河もある。
それに治安はとても良くないらしい。帝国では森くらいだがガリアに行けば平地でも魔物が出るというし、盗賊はもちろん敗残兵や脱走兵、反乱軍などなど。
ゲートを使えばいいが魔力の無い人や少ない人は使えないし、少人数しか移動できない。何でそんなものがあるかといえば、先史の遺物なのだった。昔、普通に使われていた物が今は一部の人を除いて無用の長物となり果てている。
馬車でヴィリ様が尋問のように聴く。
「君が転移できるのは、モンロー将軍に攫われたガリア東部のゲートだったな」
「はい」
「どんな様子だった?」
「ええと、転移ゲートの外に着いたんですけど、すぐにガリアの兵士が来ました」
「よく無事に帰れたな」ヴィリ様が溜め息を吐く。
「そういえばそうですね。転移する人数を指定すればその人だけって感じですね」
「エマの魔法が規格外なんだな」
「その事なんですけど、転移ですぐにガリアまで行かないのですか?」
「転移ゲートには必ず見張り番の兵士がいる。あの時はモンロー将軍が居たし兵は攻撃をしなかっただろうが、次は真っ先に殺られるな。それに一隊を転移させるとなると君の身体が持たないだろう」
そりゃあ、七人一緒に転移しただけで疲れてる役立たずだけどさ、私を怖がらせて置いて行くつもりかしらと、少し拗ねた感じで見る。
「魔王に立ち向かうには、君の神気が必要なのだと聞いた。だから置いて行くことはないが、何かあったらすぐに君ひとりでも転移して帰ってくれ」
あっさりとヴィリ様は私を連れて行くと言った。
「そうなのですね」
「嬉しそうだな」
ヴィリ様はそう言ってツンツンと私の頬をつつくのだった。
そういう訳で、私は馬車で、ヴィリ様は馬に乗ったりするので、時々後ろに乗せて貰ったりして異世界見物をしている。魔王が沸いているのに長閑なのはまだ王都近辺だから。これが魔王の近くに行ったら風雲急を告げるんだわ。
魔王は移動しないで首都で魔力を溜め込んでいるという報告が来て、帝国傘下の各国や連合国各国は着々と軍備を整えている。こちらも粛々と毎日行軍する。
アウグスタ駐屯地でヨハンナ様が合流してきた。
「わたくしがエマ様の護衛を務めますのでよろしくお願いします」
「まあ、よろしくお願いしますね」
魔導士が他にも何人か参加するようで漸次護衛を増やすという。よかった、ひとりでどうやって時間を潰そうかと思ったわ。
「ガリアに近付くにつれて危険になりますので」
「まあ、そうなの」
ここには立派な兵舎があって何千人も宿泊できるというが、今回の兵士は相手が魔王なので、魔法防御、魔法耐性のある人が中心なのだ。
ヨハンナ様と一緒に馬車に乗って兵舎まで行く。街は広々とした平地にあって、二つの川の中州に建てられた古くからある街だという。
「立派な建物ですね」
「それに街も立派で」
物珍し気に街を見物する私にヨハンナ様が説明してくれる。
「ここに織物や香辛料の交易で莫大な財を成した一族がいて、鉱山やらの権利を独占し強制労働や奴隷を使って儲けに儲けたのですわ」
「奴隷がいるのですか」思わず低い声で聞き返したがヨハンナ様はいいえと返す。
「大分前の戦争で奴隷禁止派が勝って禁止になりましたの」
「あちらがその一族の屋敷と商会ですわ」
交易鉱山奴隷屋敷は大豪邸である。街路に面して大きくて何階建てもの立派な建物がドーンと建っているが、奥は入り組んでいて広いし、長屋のような建物が整然と並んでいる。それを囲んで大きな屋敷があるのだ。赤茶けた建物は派手だ。
まるで王宮が建ちそうな広い区画を通り過ぎてしばらく進むと、また豪華な建物に出くわした。
「こちらは大金持ちの銀行家が宮殿を建てたのですわ」
まるで舞踏会でも開けそうな宮殿だ。銀行家宮殿ね。
「そうなのですね」
そして立派な兵舎に着けば、玄関の上には羽根のある天使像が立っている。
「こちらではなく、エマ様は司教様の宮殿に御滞在いただくように申し付けられています」
「え、何で?」
「警備の関係かと思われます」
そして到着した司教の宮殿も大層広くて立派だった。
「ヨハンナ様も御一緒でしょうね」
「もちろんご一緒いたします」警護の意味で。
後の言葉は聞かなかったことにした。
「皇弟殿下もこちらに宿泊されます」
「あ、そうなの」少し安心した。
時間にヴィリ様が迎えに来てくれて、お母様と執事、侍女らが見送る。
「行ってきます」
「気をつけてね、無理をしていけませんよ」
「はい」
まるでそこらにピクニックに行く雰囲気だ。
ヴィリ様が手を胸に当てて敬礼する。お義母様が丁寧に礼を返すと頷いてホールから外に出た。グイードとルパートが他の将校たちと一緒に迎えに来ている。
「今回、魔王討伐に当たり聖女エマ様に、ご同道願うことと相成った」
ヴィリ様が私を将校方に紹介してすぐに出発となった。私はヴィリ様と一緒の馬車に乗る。
馬車でヴィリ様がこれからの予定を説明して下さった。
「まず王都のすぐ近くにあるアウグスタ駐屯地で兵士達と合流する。そこまで二日半かかる」
早馬だと一日で着くそう。たくさんの兵士って見たことがないんだけど、あちこちの駐屯地に散らばっているという。
「そこから、マイヤンス駐屯地の兵士たちとドゥルラハで合流し、アルゲントラテ駐屯地に向け出発する」
マイヤンスは古くからの軍事基地のある街で、ガリアに奪われたり他の国に奪われたりして、この前の戦争で奪い返した所だという。ドゥルラハはガリアに破壊されたのを辺境伯が場所を移して新しく再建され、アルゲントラテはガリアに入って最初の町だ。
この世界の移動は大変だ。河川は南北に伸び、東西に移動する場合は馬車と馬あるいは徒歩である。道は整備されているようだが途中には山も森も大河もある。
それに治安はとても良くないらしい。帝国では森くらいだがガリアに行けば平地でも魔物が出るというし、盗賊はもちろん敗残兵や脱走兵、反乱軍などなど。
ゲートを使えばいいが魔力の無い人や少ない人は使えないし、少人数しか移動できない。何でそんなものがあるかといえば、先史の遺物なのだった。昔、普通に使われていた物が今は一部の人を除いて無用の長物となり果てている。
馬車でヴィリ様が尋問のように聴く。
「君が転移できるのは、モンロー将軍に攫われたガリア東部のゲートだったな」
「はい」
「どんな様子だった?」
「ええと、転移ゲートの外に着いたんですけど、すぐにガリアの兵士が来ました」
「よく無事に帰れたな」ヴィリ様が溜め息を吐く。
「そういえばそうですね。転移する人数を指定すればその人だけって感じですね」
「エマの魔法が規格外なんだな」
「その事なんですけど、転移ですぐにガリアまで行かないのですか?」
「転移ゲートには必ず見張り番の兵士がいる。あの時はモンロー将軍が居たし兵は攻撃をしなかっただろうが、次は真っ先に殺られるな。それに一隊を転移させるとなると君の身体が持たないだろう」
そりゃあ、七人一緒に転移しただけで疲れてる役立たずだけどさ、私を怖がらせて置いて行くつもりかしらと、少し拗ねた感じで見る。
「魔王に立ち向かうには、君の神気が必要なのだと聞いた。だから置いて行くことはないが、何かあったらすぐに君ひとりでも転移して帰ってくれ」
あっさりとヴィリ様は私を連れて行くと言った。
「そうなのですね」
「嬉しそうだな」
ヴィリ様はそう言ってツンツンと私の頬をつつくのだった。
そういう訳で、私は馬車で、ヴィリ様は馬に乗ったりするので、時々後ろに乗せて貰ったりして異世界見物をしている。魔王が沸いているのに長閑なのはまだ王都近辺だから。これが魔王の近くに行ったら風雲急を告げるんだわ。
魔王は移動しないで首都で魔力を溜め込んでいるという報告が来て、帝国傘下の各国や連合国各国は着々と軍備を整えている。こちらも粛々と毎日行軍する。
アウグスタ駐屯地でヨハンナ様が合流してきた。
「わたくしがエマ様の護衛を務めますのでよろしくお願いします」
「まあ、よろしくお願いしますね」
魔導士が他にも何人か参加するようで漸次護衛を増やすという。よかった、ひとりでどうやって時間を潰そうかと思ったわ。
「ガリアに近付くにつれて危険になりますので」
「まあ、そうなの」
ここには立派な兵舎があって何千人も宿泊できるというが、今回の兵士は相手が魔王なので、魔法防御、魔法耐性のある人が中心なのだ。
ヨハンナ様と一緒に馬車に乗って兵舎まで行く。街は広々とした平地にあって、二つの川の中州に建てられた古くからある街だという。
「立派な建物ですね」
「それに街も立派で」
物珍し気に街を見物する私にヨハンナ様が説明してくれる。
「ここに織物や香辛料の交易で莫大な財を成した一族がいて、鉱山やらの権利を独占し強制労働や奴隷を使って儲けに儲けたのですわ」
「奴隷がいるのですか」思わず低い声で聞き返したがヨハンナ様はいいえと返す。
「大分前の戦争で奴隷禁止派が勝って禁止になりましたの」
「あちらがその一族の屋敷と商会ですわ」
交易鉱山奴隷屋敷は大豪邸である。街路に面して大きくて何階建てもの立派な建物がドーンと建っているが、奥は入り組んでいて広いし、長屋のような建物が整然と並んでいる。それを囲んで大きな屋敷があるのだ。赤茶けた建物は派手だ。
まるで王宮が建ちそうな広い区画を通り過ぎてしばらく進むと、また豪華な建物に出くわした。
「こちらは大金持ちの銀行家が宮殿を建てたのですわ」
まるで舞踏会でも開けそうな宮殿だ。銀行家宮殿ね。
「そうなのですね」
そして立派な兵舎に着けば、玄関の上には羽根のある天使像が立っている。
「こちらではなく、エマ様は司教様の宮殿に御滞在いただくように申し付けられています」
「え、何で?」
「警備の関係かと思われます」
そして到着した司教の宮殿も大層広くて立派だった。
「ヨハンナ様も御一緒でしょうね」
「もちろんご一緒いたします」警護の意味で。
後の言葉は聞かなかったことにした。
「皇弟殿下もこちらに宿泊されます」
「あ、そうなの」少し安心した。
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