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十話 媚薬

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 聞き捨てならない言葉だ。藤崎はシーヴに問おうとしたけれど、シーヴがオバールの埋め込まれた左の耳朶を舌で転がした。
「あっ……」
 くすぐったくて、それ以上に別の感覚が襲ってきて身を捩る。手が藤崎の身体を弄りながら、ゆっくりと下りてゆく。じんわりとした熱がシーヴの手と一緒に下りてゆく。
 嫌だと思う気持ちよりも、快感の方が強いのは何故だ。訳の分からないエイリアンの男に触られているというのに。
「やっ……」
 前を握られて腰を引こうとしたけれど、がっちりと身体を押さえつけられていて逃げられない。
 シーヴの長い指が藤崎のものを優しく扱き上げる。すぐに身体が熱くなって、すでに半勃ちだった藤崎は、あっという間にイッてしまった。
「はう……」
 ぐったりと草のベッドに沈んだ藤崎の身体をうつ伏せにして、シーヴは藤崎の放ったものをせっせと後ろに塗りつける。
 長い指が藤崎の身体の中に入って来た。どういう訳か身体の力が抜けて、男の指を気持ちいいとさえ思ってしまう。
「ああ……、何でだよ……」
 思わず声に出して聞いてしまった。いくらなんでも、イッたばかりでこれはおかしい。藤崎は残り少ない理性を総動員して考える。

 ぼやけた頭で考え付くのは、直前に飲んだ赤紫の飲み物だ。喉が渇いていたから一息に飲んでしまった。ぷりぷりと喉越しがよくて、甘くてすっぱくて美味しくて……。
 しかし、金髪の男は少し口をつけただけだった。

「あ…れ…、何か入って…、うっ……」
 シーヴが背後から藤崎の身体を抱きしめて、ぬけぬけと囁いた。
「多少、興奮するという副作用はあるな」
 このヤロウと藤崎は思った。だが身体の中に入った長い指で掻き回されると、痺れに似た甘い感覚がジーンと押し寄せてきて、訳が分からなくなった。

 身体が熱い。もっと掻き回されたい。ぐちゃぐちゃにされたい。他の事なんか考えられない。考えたくない。
「ああ……、何とかして……」
 ベッドの草を掻き毟って、自分をこんなにした男に頼む。
 シーヴの指が出て行って、藤崎の身体がそれを追って揺れる。
「欲しがっている」
 低い美声が焦らす。
「やっ……、早くっ……」
 思わず催促していた。シーヴは軽く含み笑いを漏らして、藤崎の身体を抱える。
 美丈夫の立派なものが藤崎の後孔に押し当てられる。グイと押し込んできた。
「うっ……」
 やはり痛い。痛くてきつい。
 それなのに藤崎の身体はやはりそれが欲しくて、シーヴの楔を受け入れるべく力を抜き、腰を突き出して、シーヴに精一杯協力する。藤崎の協力を得て、シーヴは悠々と藤崎の中に自分のものを捩じ込んだ。
 藤崎の秘所は、シーヴのものに貫かれて一杯に押し広げられた。
 苦しい。しかしそれが段々と馴染んでゆく。

 シーヴは藤崎の身体を抱えてゆっくりと動き始める。シーヴのものが藤崎の身体を抉るたびに、快感が押し寄せる。
 昨日の比ではない。何度も何度も突き上げられる。頭の中が真っ白になる。深く深く抉られてシーヴが藤崎の中に吐き出した。藤崎もまたイカされてしまう。

 ぐったりと草のベッドに沈んだ。藤崎を抱き締めたままシーヴもベッドに沈む。
「お前とは相性がよい。私の恋人にしてやってもよい」
 藤崎の少し伸びた前髪を手で弄んで、金髪男は何様な言葉を囁く。
「男同士じゃないか……」
 書いた話通りに進むのが怖くて、一応の抵抗を試みる。だが、身体の方は完全に陥落していた。
「性別は関係ない」
「な…ぜだ……」

 訳の分からないエイリアンが藤崎を攫って、恋人にしてやるという。
 だが二人の未来には、藤崎の書いた話によれば決別が待っているのだ。この金髪美形のエイリアンがトカゲだろうが、寄生植物だろうが、アメーバだろうが、幸せなんかはありはしない。

 しかし、聞きかけた藤崎の唇をシーヴの唇が塞ぐ。キスをされている内に、藤崎の身体にスイッチが入って、あっという間にエロモードに突入する。
 頭にぼうっと霧がかかる。身体が熱くなって、まるで女みたいに男のものが欲しくなるのだ。貫かれて揉みくちゃにされたくなるのだ。
 藤崎はシーヴの身体に腕を絡めて、潤んだ瞳で見上げる。シーヴがフッと笑う。
「欲しいか」
 長い指が藤崎の股間のものを撫で上げる。
「ああっ……、欲し…い……」
 藤崎は女のような声を上げて腰を押し付ける。どうしても欲しいのだ。そこが熱を持って疼いている。爛れたように。
 早く男のものに貫かれて、この熱をどうにかして欲しい。
 シーヴは藤崎の身体を押し開き、ゆっくりと己のもので貫いた。
「はあっ……」
 一杯に押し広げられた身体の最奥に、藤崎の身体を満たすものが深々と突き立てられる。藤崎は息を吐いて、シーヴの身体に腕を回してしがみ付いた。
 熱がまだ収まらない。藤崎の身体はどんどん貪欲になっていく。
「んね……」
 催促をするように見上げると、シーヴは藤崎の唇に軽く口付けをして動き始める。シーヴに突き上げられるたびに、快感の波が押し寄せる。
「ああっ…んん……」
 藤崎の唇から喘ぎ声が転がり落ちる。
「シーヴと呼べ」
「シーヴ……」
 最早、藤崎の頭は何も考えられない。シーヴの名を叫びながら揺さぶられ続けた。


  ◇◇

 朝早く、藤崎はまたアパートの前に下ろされた。
身体のあちこちが痛い。しかし、身体を癒す薬はもちろん飲んでいない。あんな副作用があっては飲めない。シーヴがどこかに触る度に、藤崎の身体にスイッチが入ってシーヴを求める。あのままでは身がもたない。

 肝心なことは何も聞いていなかった。シーヴに連れ去られて、殆んどシーヴの部屋で交合して過した。
 シーヴはトカゲではないと言っていた。ならば何だろう。自分の書いた話とどんな風に若干違うのか。

 書き換えた方がいいのかもしれない。しかし、そうすれば自分はシーヴとは恋人同士にはもうしないだろう。
 もう少し、もう少しこのままで様子を見てもいいのではないのか。何故かこの期に及んで未練が出た。決して、あの俺様なエイリアンを好きになった訳ではない、筈だ。

 藤崎は首を横に振って溜め息を吐く。だるい身体を引き摺って、階段を上がった。

 部屋に鍵は掛かっていなかった。昨日シーヴが部屋に居て、すぐに藤崎の腕を掴んで船に引きずり込んだ。鍵をかける暇など無かったのだ。ベランダも開けっ放しになって、レースのカーテンがはためいている。

 部屋に入って違和感に叫びそうになった。
 テーブルに置いてあったパソコンが無くなっているのだ。誰が、何の為に、藤崎のパソコンを持って行ってしまったのか。

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