愛なんかなかった

拓海のり

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三話

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「服を脱げ」と磯崎は当たり前のように直樹に命令した。磯崎も立ち上がって服を脱ぎはじめた。

 まだベッドの下に膝を付いたまま、呆然と見上げる直樹を見て、その形の良い眉を顰めた。顰めた顔までが絵になるが、見惚れている場合ではなかった。

「何をしている、俺に脱がして欲しいのか。服を引き裂かれたり、無理矢理乱暴にされるのが好きなのか」と低い寂びた声で直樹を見下すようにそう問うた。

 直樹は首を振って慌てて立ち上がった。どうやら男はヤルまで帰りそうにない。自分にしても男とヤリたくて男漁りをしていた訳だし、思っていたのと随分違う形だが、他の男とヤリたいと思わなかった訳だから、この男で我慢するしかない。自分がこの横柄で傲慢な自己中心男をアパートに引き入れた訳だし……。

 そう心を決めると直樹は急いで服を脱ぎ捨てた。磯崎が直樹の脱ぎっぷりに「ほう」と唇の端を歪めた。
 磯崎は均整の取れた神話の彫刻のような身体をしていた。直樹の痩身を見て首を傾けて少し目を細めた。

「ベッドに上れ」と容赦なく命令する。命令し慣れた男のようだ。
 直樹がベッドに上ると「四つん這いになれ」と容赦なく言った。
 もうヤケクソだった。直樹は男を睨みつけてから、男に背を向けて四つん這いになった。

 男は直樹の腰をグイッと掴んで持ち上げて、指を直樹の蕾に宛がった。男の指に蕾を押し開かれて直樹の腰が逃げる。
「どうした」
「痛いんだ」
「フン、あまり使ってないようだな」
 男はそう言って直樹の部屋の中を見回した。ラックの上によくある軟膏のチューブを見つけてそれを持ってくる。指にそれを取って直樹の蕾に塗り付けはじめた。
 直樹の背中を押さえて指がゆっくり抽挿される。直樹はおかしな感覚を必死になって耐えた。

 磯崎は片手を直樹の前に回して、直樹のモノを掴みゆっくりと扱き始めた。後ろに入っている指が直樹の感じるところを探し当てたらしく、直樹の身体がピクンと跳ねた。
「あっ……」
「ふうん」
 磯崎は重点的にソコを責めながら、前に絡めた指で直樹のモノを煽った。直樹の身体はピンクに染まり肌はしっとりと汗ばんだ。前はもう勃ち上って蜜を零し身体が揺れている。

「なかなか感度は良さそうだな」
 男の笑いを含んだ声が耳元で囁いた。
「内部はどうかな、味見をしてやろう」
 磯崎の勃ち上がったモノが直樹の尻にあたった。すぐに圧倒的な質量を持ったモノが直樹の蕾をこじ開けてきた。

(い、痛い……)
 直樹は逃げようとしたが、男は直樹の腰を捕まえて「どうした、お前の好物だろう。上手く飲み込まないか」と直樹の尻を二三度ペチペチと平手で叩いた。そのまままたゆっくりと腰を勧める。

 全くといっていいほど初心者の直樹には、どうすればいいかよく分からない。
「力を抜け」と磯崎の命令が飛んだ。
 直樹はその命令にしがみ付くように、身体の力を抜いた。男の手が前に絡んで直樹の気を逸らせる。質量のあるモノがゆっくりと直樹の身体を貫いていった。

 痛かったしきつかったし辛かった。
 入ったモノが直樹の身体を突き上げ始めると、腹がいっぱいいっぱいで張って胃を押し上げて戻しそうになった。

「ま、まだか……」
「我慢しろ」
 男とヤルということはこんな事なのか。快感なんか欠片もなかった。あの時感じた快感は幻だったのだろうか。
 磯崎は直樹の身体を深く突き上げて、直樹の身体に精を迸らせやっと果てた。男の迸りが自分の身体を変えていくようで直樹は背を震わせて身動ぎした。

 男は直樹の横に横たわり、お前もイカせてやろうと直樹の身体を抱き寄せ、手を絡めてきた。乳首や耳朶を愛撫され、直樹の分身を絶妙に扱かれて、直樹はアッという間に弾けた。
「洗ってやろう」
 男が直樹を風呂に連れてゆく。
「いいよ……」と断ったけれど自己中な男が直樹の言葉を聞く訳がなかった。

 そのまま風呂に連れ込まれ、蕾を開かれシャワーで洗い流された。ヨロヨロの直樹は男に身体を拭われてベッドに転がされた。ぐったりとした直樹はそのままベッドに身を沈める。

 磯崎の方を見ると服を身に着けている。
「帰るの?」
「ああ」
 磯崎とはもうこれっきりだろうと直樹は訳もなく思った。自分には芸がないし、磯崎が楽しんだとも思えない。
(俺も当分男はいいや……)

 目を閉じて暫らくベッドに沈んでいたが、男が帰った様子がないことに気付いて目を開けた。
 磯崎は直樹の部屋を物色していた。目的のものが見つかったらしく直樹の方を向いた。その手でプラプラと直樹に見せ付けたものは、直樹の部屋の合鍵だった。
「これから毎週金曜日に来てやる」
 男はそう言って唇の端を歪めた。

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