断片の使徒

草野瀬津璃

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本編

第二十一話 片恋の君へ  【前編】 1 

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 ※我ながらぐろい表現がありますので注意。
  出来れば食後に読むことをオススメします。






「……よし」

 青年は小さく呟いて、右手に持っていたナイフをテーブルに置いた。
 左手には、複雑な紋様が刻み込まれた白木作りの腕輪があった。円形に窪んでいる台座に、あの方の目と同じ色をしたブルースピネルを嵌めこんだ。この石は、青年が魔力を宿らせた魔石だった。
 宝石をはめ込んだ部分の裏側には、守護の魔法陣を刻んでいる。
 青年は満足のいく出来の腕輪を、部屋の一画に設置していた簡易祭壇に置く。そして、その祭壇の真ん中にあるハンドベルに似た形の石像に、平伏すように祈りを捧げ始める。

「どうか、精霊様! あの方へのプロポーズが上手くいきますように! いえ、その前に、渡せますように!」

 熱心にぺこぺこ祈る様は、端から見ると滑稽だ。
 その様をたまたま目撃してしまった同僚は、神頼みしている時点で駄目な気がすると胸中でこっそり呟いて、可哀想なので見なかったことにした。

      *

 コポコポと泡が静かな音を立てて水泡木すいほうぼくの幹を上っていく。
 午後の日差しの中、ガラスのような木はキラリと光を反射して、地面に淡い青と水面の影を落とす。

 幻想的な光景は気持ちが落ち着く。
 けれど出てくる魚は巨大なものばかりなので気を抜いていられない。
 今朝も巨大なタコに襲われたばっかりだ。だが、タコはたまたま通りがかったカジキマグロに目標を変えたので、修太達はその隙に逃げたのだ。

「ここまで来たら一安心ね」

 トルファの家から南へと三日歩いた所で、やっと街道に戻ってきた。
 魔法の都ツェルンディエーラから周囲の森にかけられている魔法のせいで、方位磁石は使えない。日の光すら反射して見えるので、太陽の位置で方角を見ることも難しく、何度か迷いかけた。森にかけられている魔法は結界の一種のようで、修太が無意識に魔法を無効化していたお陰か、サーシャリオンやグレイの方向感覚までは狂わずに済んだので、二人の勘を信じて進んでいたのだ。ピアスがそう言ってほっと息を吐く気持ちはよく分かる。

「そうだね。魚に追いかけられるより、遭難の方が怖いもんな」

 啓介がのほほんと笑顔で頷いているが、その返答はどうだろう。修太としては、遭難で死ぬより魚に食われて死ぬ方が悲惨だと思うのだが。
 うろんに思っていると、足元でコウが「わふっ」と鳴いた。ちらりと見ると、「クゥン」と鳴いて、頭を振った。諦めろと言ってるのか、もしかして。
 コウの賢さに戦慄を覚えていると、コウの耳がピクリと動いた。

「オンッ!」

 先頭を歩くフランジェスカに吠え、その前へと飛び出すコウ。

「うわ、何だ?」

 ぎょっと足を止めるフランジェスカ。

「止まれと言っておるぞ」

 サーシャリオンが通訳し、ちらりと左、東の方を見る。東から西南へと続く街道を西南の方へ行けばセーセレティー精霊国の国境だ。
 目の上に手をかざし、遠くを見つめたサーシャリオンは振り返る。

「何やら軍団が駆けてくる。道の端に寄れ。踏みつぶされるぞ」

 そう言った頃には、ドドドドドと低い地鳴りのような音が聞こえていた。皆、急いで馬に踏まれないような位置まで下がる。

「あの青い旗、銀の縁取りがある。王族か!」

 馬を駆る兵士の旗を見て、フランジェスカが驚きの声を上げる。

「げっ。王族なんて面倒くせえ!」

 修太は水泡木の影に身を寄せた。レステファルテの第三王子にグレイごと燃やされかけた記憶は未だ新しい。修太の中では、王族イコール命の危機にひんする厄介事と変換されている。
 そして、それは遠からずも当たった。

「鮫に追われてるぞ!」

 啓介が緊迫のある声で叫んだ。
 思わず軍団の後方を見た修太は、ぐろい光景に口元を手で覆った。
 大人を一呑み出来る大きさの、体長五メートルはあるのではないかと思われるさめの口には、兵士らしきものがくわえられていた。鮫は頭を振り、その人間を引きちぎって臓物と血を撒き散らす。その光景を直視してしまったのだ。
 海賊船で見た死体は動かなかったから、まだ我慢出来た。でも、これは駄目だ。寸前まで生きていた人間が無残に殺される瞬間だったから。

「ぐぅ……無理……っ」

 結局、我慢出来なくて木陰に嘔吐してしまった。だが、修太を責める者は誰もいなかった。
 百戦錬磨のフランジェスカですら、その光景には血の気が引いていた。ピアスも目を反らし、修太の背中をさすって言う。

「駄目よ。見ちゃ駄目……っ」

 泣きそうな声だ。
 普通、こういう場では修太の方が庇うべきなのだろうが、どっちも余裕がなかったのでこの際仕方ないのかもしれない。
 その一方で、啓介は陰惨な光景に頭に血を昇らせていた。普段の温厚さはなりを潜め、純粋な怒りで表情を鋭くしている。
 鮫は尚も逃げる兵士を追いかけ、また一人に襲いかかろうとしていた。

「やめろぉぉっ!」

 右手の人差指を立て、啓介は腹の底から怒鳴る。
 視界が白く染まり、轟音が鳴り響いた。
 あまりの光に視界が戻らず、しかも耳もしばらく聞こえなかった。

(何だ? 何が起きた……?)

 身動きすら怖くて出来ず、視界と音が戻ってくるまでその場で呆然とする。
 そうしてようやく目が見えるようになった時、馬車と馬の小軍団はすぐ側で歩みを止めていた。
 鮫のいた場所には大きなクレーターが出来ていて、焦げくさいにおいが立ち込めている。そして、鮫は尾の一部を残して炭化していた。

「はぁはぁはぁ……」

 肩で荒い息をする啓介。信じられないものを見るような目で、自身の手の平を見ている。

「お前がやったのか……?」

 恐る恐る修太が問うと、啓介はびくっと肩を揺らした。

「……そうみたいだ」

 そして、眉尻を下げてうつむく。

「ごめん。ついカッとなっちゃって……」

 自分でも制御しきれないような大きな魔法を使ったことに、啓介は落ち込んでいた。あんなことをして、怪我人が出たのではないかと怖くなったのだ。

「何故、謝る? そなたは人助けをした。鮫は死んだが、見知らぬ者が殺されて怒るのは悪いことではない」

 サーシャリオンが不思議そうに言い、啓介の頭をぽんぽんと撫でる。

「でも、やりすぎたよ……」
「自覚して反省しているのだから、我から言うことは何も無い。次から気を付けよ」

 あっさりと言って、サーシャリオンは啓介の背中を軽く叩く。啓介は少し納得のいかなさそうな顔をして口を開きかけたが、結局、頷いた。

「うん。気を付ける」

 一方で、修太は吐いたのもあってケホケホ咳き込んでいた。まだ青い顔のまま、ピアスが心配そうに背中をさすってくれる。病人扱いされてる気分だ。

「大丈夫? シューター君……」
「うん。悪い、みっともねえとこ見せて……」

 女子に介抱されている時点で、修太は気まずくて仕方が無い。

「あれは私でもきついぞ。謝ることではない」

 珍しくフランジェスカが慰めるように言った。そのことにびっくりして、吐き気が消える。

「フラン……」
「ん?」
「ありがたいけど、どうした。今日は雪でも降るのか?」
「き、さ、ま……っ」

 フランジェスカは当然のように怒ってにらんできた。

「お前達はここにいろ。他に鮫がいないか見てくる。この血のにおいにつられる奴がいるかもしれん」

 グレイはトランクをその場に置いて、ハルバートを手にして駆けていってしまった。ワンワンと吠え、コウもグレイについて駆けていく。見回りに行ってくれるらしい。
 修太達がその場でそうして固まっていると、鉄製装甲のされた緑色に塗られた大型馬車一台とその次に続く黒塗りの馬車が一台、その周りを固める馬十数頭くらいの軍団から、騎士のような装飾の少ない鎧姿の男が、部下らしき者二人を伴って歩いてきた。

「旅のお方ですか? ご助力感謝致します。我が主も是非礼をしたいと仰せです」

 灰色の髪と赤茶色の目をした男は、身体の前で右の拳を左手で握り込み、慇懃に礼をした。三十代くらいで、水面を眺めている時のような、ほっとさせる空気を持つ男だ。代表で挨拶にきたのを見ると、兵士の中では偉い方なのかもしれない。

「いえ、感謝だなんて……。俺、ついカッとなってしまって。あれで怪我人が出ていないといいんですが」

 啓介が不安そうに問うと、男は目を丸くした。

「あなたがあの魔法を?」
「はい……」
「心配はいりません。怪我人は出ておりません。むしろ、鮫に食われかけていた者が助かりました。私の部下の命を救って頂いたこと、重ねてお礼申し上げます」

 再度礼をする男。
 啓介はその返事を聞いて、やっと笑顔になった。

「名乗り遅れました。私はあちらにおわします、セーセレティー精霊国が第二王女、専属護衛師団プルメリア団の団長を勤めております、ハジク・エンディオと申します」

 修太達は唖然と目を瞬いた。

「あ、あのぉ、失礼ですが、ハジク様。お忍びであらせられるのではないのですか?」

 素性を明かしていいのかと、恐る恐る問うピアスに、ハジクは頷く。

「問題ありません。お忍びではありますが、隠しているわけではありません。それに、第二王女殿下の旅行好きは有名ですから、隠しても意味がありませんので。それならばいっそのこと堂々と行こうというのが我が主のお考えです」

「はぁ……」

 何とも気の抜ける返事をするピアス。

「では、こちらにおいでなのも、ご旅行で?」

 フランジェスカの問いにもハジクは頷く。

「ええ。ミストレイン王国の国境の手前にある町・リストークにてご養生あそばされた帰りになります。途中、王女殿下を狙う盗賊と戦闘になりまして、そのせいで鮫を呼んだようです」

 ハジクは僅かに目を伏せる。

「鮫に立ち向かい、すでに十名が餌食になっていました。それでもあれほどの大物相手には敵わず、逃げることを選びました……。これ以上、犠牲者を出さずに済んで本当に良かった。ありがとうございます」

 そのハジクの後ろでは、部下二名が感に堪えないというように静かに涙を流している。仲間が死んで辛いのだろう。
 沈痛な空気に皆が顔を合わせたところで、グレイが戻ってきた。

「近場に鮫はいないようだ。だが、この血のにおい。また来る前に出立すべきだろう」

 そして、感情の薄い琥珀色の目で、ちらりとハジクを一瞥する。

「話など後でも出来るだろう。身の安全を優先しろ。また部下が死ぬぞ」

 静かだが痛烈な一言に、ハジクは緊張感を帯びた表情で頷く。

「ええ、その通りですね。念の為に確認したいのですが、皆様はどちら方面へ行かれるのです?」
「セーセレティーだから、方向は同じですよ」

 啓介の言葉に、それなら後でも礼が出来ると思ったのか、ハジクは礼を言ってから軍団の方に戻っていった。

「――では、行こう。シューター、きついのなら背負うが」
「平気。吐いたらすっきりした」

 気遣いの見えるグレイの短い問いに、修太は首を振って返し、移動を再開する啓介達について歩き出した。
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