57 / 125
第一部 邪神の神子と不遇な王子
7
しおりを挟むすさまじい揺れのせいで立っていられず、監視の神官が床にへたりこみ、呆然と有紗を見ている。書見台が倒れ、聖典がやわらかな絨毯の上へと落ちた。
有紗の心はぐちゃぐちゃで、怒りと悲しみと喪失感でごっちゃになっている。怒りが強すぎて涙がにじみ、どうして泣かねばならないのだとまた怒りがこみ上げる。
「嫌い! 嫌い! みんな、大っ嫌い!」
子どもみたいに叫び、有紗は神官をにらむ。
「これも全部、あんた達の仲間のせいよ。私に不幸を押し付けておいて、あんた達はのうのうとしてるつもりなの?」
「ひっ」
神官は息を飲み、後ろにじりじりと下がる。
「わ、私のせいでは……」
「だからなんなのよ。連帯責任に決まってるでしょ。あんた達が私を召喚したの。神子が理不尽な目にあっていいのに、あんた達がそんな目にあったら駄目なの?」
「……っ」
彼はまずいものを飲み込んだような顔をする。有紗の受けた仕打ちがどんなものか、この神官はやっと理解したのだ。その目から闇の神子への嫌悪が消え、代わりに畏怖と憐憫が浮かぶ。
「もう嫌! あんた達はまったく分かってないんだわ。それならみんな、私と一緒に死ねばいいのよ!」
全てに嫌気がさし、有紗は自暴自棄になっていた。目につくものを全て壊したくてしかたがない。その心につられるように、ぐらぐらと地震が起きる。
「アリサ」
「やめて、レグルス。止めないで」
レグルスに声をかけられると、良い人に戻りたくなる。そんなふうにこの怒りを押し込めたくない。
有紗はレグルスの手を払おうとしたが、レグルスは有紗の手を強くつかんだ。逃げられないと分かると、有紗は逆に挑むようにレグルスを見上げる。
「ねえ、私のこと、嫌いになったでしょう? 私は最低な人間なのよ。私だけが不幸なんて許せない。皆も道連れにしたくなる」
だから、手を離して。止めようとしないで。
有紗を否定して、うんざりした顔なんて、もっと見たくない。
怒りをばらまきながらも、有紗はレグルスの顔を見る勇気がなかった。しかしレグルスは有紗と目を合わせる。驚くくらいまっすぐで、静かな眼差しだった。
「いいえ、そうは思いません。アリサは普通のかただ。理不尽に怒って、何が悪いんです。気が済むようにすればいい。ただ、僕は傍にいたい。あなたを一人にしたくない!」
こんな醜い感情をあらわにしても、レグルスのしんしな目は変わらない。有紗の目から、次々に涙が零れ落ちる。安堵からくるものだった。
有紗はグスッと鼻をすする。
「レグルスって馬鹿なんだわ」
「ええ、知ってますよ」
少しだけ気持ちが凪いだ。だが、有紗の気は収まらない。
神官が這いつくばって頭を下げる。
「申し訳ございません、神子様。どうかお静まりを。あの三人には、必ず謝らせてみせます」
有紗はそれを鼻で笑う。
今更気付いたってもう遅い。
「いいのよ、あいつらも、あんた達も、チャンスを逃したの。あんた達のせいだから、謝ることないわ。――さようなら」
「神子様!」
悲鳴のような声が上がるが、有紗は無視して立ち上がる。震え続ける世界を歩き出す。よろけながら、レグルスもついてくる。有紗の左手をしっかりとつかむ彼の手から、離すものかという固い意思が伝わってきた。
有紗が客間の外に出ると、警備兵が座り込んで壁にしがみついていた。地揺れを気にせず、まるで幽霊のように軽やかに歩く有紗のほうへ、信じられないものを見る目を向けた。
有紗が廊下を歩くと、花瓶が落ちて割れ、シャンデリアからろうそくがはね落ちる。
あちらこちらで悲鳴が上がり、人々は有紗を畏怖の目で見つめるが、身動き一つとれずに壁や床にすがりついている。
謁見の間に入った瞬間、ガラスが粉々に砕け散った。
地震のせいで床から動けない人々を眺め、有紗は玉座にいるレジナルドのほうへ向かう。レジナルドはなんとか玉座にしがみつくようにして座っている様子だ。
有紗は玉座の少し手前で止まり、レジナルドに話しかける。
「陛下、私は帰れないそうです」
「……そうか」
「止めないんですか」
「滅亡が少し遅れただけのこと。あなたが崖から落とされた時に、すでにこの国の命運は決まっていたのでしょう」
覚悟を決めた顔をして、レジナルドは静かにひたりと有紗を見据えた。
有紗をののしるとか、無様に命乞いをしてくれたら、きっとなんの遠慮もなく怒りをぶつけた。
しかし、彼の態度は違った。
有紗は少しだけ冷静さを取り戻す。
そうだ。あくまであの神官達が悪いのであって、彼らは何も悪くない。
このまま怒りをぶつけて、国とともに心中したとして、それは有紗が神官に受けた仕打ちを他の人にすることと同じになる。
つまり、あのクズと有紗は同列になるということだ。
(あいつらと、私が?)
怒りがわいたが、それは自分自身へのものだった。へどが出る。そんなことになったら、全身の血を抜いて入れ替えたくなる。
気持ちを静めようと努力すると、地震がゆっくりと治まった。
謁見の間は、しんと静まり返った。
「あの人達は私から全てを奪ったの。故郷も、家族も友達も、便利さも、安全も……何もかもよ。召喚について、王が知らなかったで済むと思う? どうすればいいかしら」
「聖典を燃やします。二度と我が国で召喚されないように」
「当然よね。それから?」
慎重に返すレジナルドは、なるほど確かに賢王だ。そして思い切りが良い。
「国中を探して、類似の書物を全て焼きます。秘密を知っている神官は幽閉し、二度と外に出さない」
「そうね。殺すのは間違っていると思う。自由を奪うのもつらいことだけど、私のこうむった損害に比べればましよね」
有紗だけが不自由だなんて許せない。この国の人にも犠牲になってもらわなければ。
「次は?」
「あの神官達を謝らせ、崖から落として処刑しましょう。あなたがあったのと同じように。下賤なる重罪犯として、後世に名を刻みましょう」
「死んで終わりなんて許さない。崖から落とすのは、死んだ後にして。それまでずっと禁固刑よ。外が見える所がいいわ。あいつらはこれからずっと、すぐ外にある自由を見ながら、自分のしたことを後悔しながら生きていくの」
精神的により残酷なほうを、あの神官達に罰として与える。
「かしこまりました。そのようにいたしましょう」
レジナルドは静かに頷いた。
「神子様、あなたが望むなら、私の首も差し上げます」
「いらないわ。今、陛下が死んだら、王位争いが泥沼になる。私はこの国と心中しようかと思ったけど、それだとあのクソ野郎達と変わらないから我慢することにした。関係ない人達を混沌に落とすのはどうかと思うわ。――でも、約束して。私は、自分のことは自分で選ぶ。怪我や病気を治させるために私を脅したり、レグルスを人質にする真似は絶対にしない、誰にもさせないって」
「お約束します。神子様の自由を尊重します。王として、臣下にもそんな真似はさせません。そんなことをすれば、誰であろうと死罪になります。……神子様、あなたに賠償として、土地と地位をさしあげましょうか?」
レジナルドの問いかけに、有紗は首を振る。
「必要ないわ。そんな、私を縛るようなもの。私はレグルスの傍にいると決めた。彼、地獄までついてきてくれるんですって」
有紗はレグルスを見上げ、泣き笑いのような顔をする。
「私……レグルスの気持ちにこたえられないこと、ずっと気にしてた。帰れないのはつらいけど、私までレグルスを傷つけずに済むなら、それだけは良いことに思える。だからレグルス、私と生きて。この世界で」
「アリサ」
夢からさめたような顔をして、レグルスの目元が歪む。有紗をぎゅっと抱きしめた。
「……すみません」
嗚咽をこぼしながら、レグルスの体は震えている。
「どうして謝るの?」
脅したような形になったから、嫌になったのか。不安が少し顔をもたげる。
「あなたがこんなにつらいのに、アリサが僕と生きると言ってくれて、僕はうれしいと思ってしまった」
恥ずべきことだと思っているらしい。愚直で優しい人だ。
有紗もレグルスの背に手を回す。
「本当にしょうがない人ね。どれだけ私が好きなのよ。もう、負けたわ」
「何を言ってるんですか。僕は最初からアリサに負けっぱなしですよ。いつだってあなたの勝ちです、アリサ」
そんなふうに言われると、余計に負けた気分になるのだが、気持ちはうれしいのでもらっておく。
有紗はレグルスからそっと離れると、レジナルドを振り返る。
「王位争いは、これまで通り、公正に行って欲しいわ。私はレグルスを手伝うけれど、レグルスには堂々と王になってもらいたいから」
「……レグルスが負けた場合はどうするんです?」
レジナルドは困り顔で問う。
「私達は一緒にいる。引き離そうとしなければ、好きにすればいい。約束を忘れないで。約束違反をしたら、誰であろうと死罪よ」
次の王だろうが、王子だろうが、関係ない。有紗はきっぱりと返す。
「かしこまりました。王子にはそのように、誓約書にサインさせましょう」
「それなら問題ないわ」
話がまとまると、有紗の気持ちはだいぶ落ち着いた。
怒りを発散し、レグルスという拠り所を確かに手に入れた。あとのことはなるようになるだろう。
そんな謁見の間に、廊下から怒号が近づいてきた。
レグルスがさっと有紗を背後にかばい、地揺れが治まったことで立てるようになった騎士が、レジナルドと有紗、レグルスを守って壁を作る。
扉を押し開けて入ってきたのは、神官達だった。諸悪の根源である神官三人を乱暴に連れてきて、床へと突き飛ばす。
「謝れ!」
「神子様に謝れ!」
「お前達のせいで、国が滅びかけた。邪悪なのはどちらだ!」
仲間達の謝れと叫ぶ声に、神官三人はせき込みながら震えている。有紗が植えつけた疫病で、だいぶ体力を消耗しているようだ。
有紗には強気に出ていたが、神官仲間からの責めには耐えきれなかったみたいだ。
彼らは床に這いつくばって頭を下げる。
「闇の神子様、申し訳ございませんでした」
「召喚したにもかかわらず、放逐し、弁解のしようもございません」
「すみませんでした」
口々に謝る彼らの前に、有紗はレグルスと進み出る。
「そうね、謝罪は受け取ったわ」
期待を込めてこちらを見上げる彼らを、有紗は心底醜いと感じた。きっとこんな冷酷な笑い方をするのは、生きてきて初めてだ。
「でも、私には許さない権利がある。私は一生、あんた達を許さない。死ぬまで牢に幽閉して、死んだ後はあの崖から落とすの。そして、罪人として記録に残す。――それがあんた達への罰よ」
彼らはひっと息を飲む。自分達の末路を思ったのか、熱を帯びた顔から血の気が引いていった。
「あの時に謝っておけば良かったのに、残念ね。――そうよ、私はあんた達の言う通り、『邪神の神子』でもあるの。絶対に許さないわ」
謝れば許されると信じているのが、本当に憎たらしい。怒りがわき上がると、再びぐらぐらと弱い地震が起きた。神官達がひれ伏して、謝罪を叫ぶ。滑稽すぎてあくびが出そうだ。
そんな有紗の暗い気持ちに引き寄せられたのか、驚くほどの黒いもやが廊下の奥から飛んできた。
どす黒い雲のことが見えるようで、人々が悲鳴を上げて逃げる。
「レグルス、離れて」
「しかし」
「駄目よ、私と生きるんでしょ」
有紗の説得に、不本意だと言いたげに口を引き結び、レグルスがしぶしぶ後ろに下がる。
「なんですか、この黒いものは」
「これが私が食べているもやよ」
「神官の言っていた、邪気ですか?」
「こうなると、そう見えるわね。でも、なんでこんなに。――あ」
有紗はふと気づいた。
邪気を封じこめていたのは、ガラスの小瓶だ。さっきの地震で割れて、邪気が飛び出したのだろう。それが有紗の怒りにつられて集まったみたいだ。
「小瓶の邪気よ。疫病とかいろいろ……しかたないわね」
有紗は神官三人から疫病の邪気を取り除き、大きな黒いもやの塊に追加させる。彼らに早々に死なれては復讐にならない。それから黒いもやの雲を掴み、引っ張って移動する。
そのまま謁見の間を横切って、ガラス窓がなくなった扉から庭へと出る。
「アリサ……? どこに行くんですか」
「レグルス、近づかないで。それに触っちゃ駄目よ。大神殿ってどっち?」
「あちらですけど」
「道案内だけして。――陛下、私はもう行きます。レグルスの配下がルーエンス城に戻るのを嫌がったら、引き取って仕事の世話をしてあげてくださいね」
有紗の頼みが意外だったみたいで、レジナルドは目を丸くする。
「え? あ、ああ……」
あっけにとられているレジナルドや騎士を横目に、有紗は黒いもやを引きずって外へ運び出す。
それから大神殿のほうへ歩き、いつかの崖までやって来た。レグルスは距離をとり、けげんそうにこちらをうかがっている。
「アリサ、どうしてここに?」
「レグルス、私はたぶん、寿命が来るまで死なないと思うの」
「はあ、それがどうしたんでしょうか」
「あの日もね、ここから落ちても無傷だった。この黒いもやを置いておくわけにいかないから、先に迷いの森に行くわね。――だから後で迎えに来て。約束よ?」
「えっ。アリ……!」
ぎょっと手を伸ばすレグルスの手を避け、有紗は黒いもやをヴェールのようにまとい、崖からダイブした。
10
お気に入りに追加
963
あなたにおすすめの小説
私のことなど、ご放念くださいませ!
風見ゆうみ
恋愛
私の住む世界では、貴族は犬を飼うことが当たり前で、賢い犬がいる家に一目置くというしきたりがある。
幼い頃から犬と念話ができる私は、どんな暴れ犬でも良い子になると、国内では評判が良かった。
伯爵位を持つ夫、ノウルと大型犬のリリと共に新婚生活を始めようとしていたある日、剣の腕を買われた夫が出兵することになった。
旅立つ日の朝、彼は私にこう言った。
「オレは浮気をする人は嫌いだ。寂しいからといって絶対に浮気はしないでほしい」
1年後、私の国は敗戦したが、ノウル様は無事に戻って来た。
でも、彼の横には公爵令嬢が立っていた。その公爵令嬢は勝利国の王太子の妻として捧げられる予定の人。そんな彼女のお腹の中にはノウル様との子供がいるのだと言う。
ノウルは公爵令嬢を愛人にし、私との結婚生活を続けると言う。王家は私にノウル様が公爵令嬢を身ごもらせた責任を取らせると言い出し、公爵令嬢の代わりに冷酷で有名な王太子の嫁にいけという。
良いわよ、行きますとも!
私がいなくなれば、困るのはあなたたちですけどね!
※R15は保険です。誤字脱字、気を付けているつもりですが、やはりございます。教えていただけますと幸いです。
離れていても君を守りたい
jun
恋愛
前世の俺は最愛の妻を裏切り、その妻をズタズタに傷付けてしまった。不倫相手と再婚したが、家族からも周りからも軽蔑の視線を向けられ続けた。
死ぬ直前まで後悔し続けた俺の最後の言葉は「フローラに会いたい」と呟いて死んだ。
次に目が覚めた時、俺は第二王子になっていた。
今世の“アルトゥール・ガイエ”の中身は誰?
そして一番会いたかったフローラの側にはやっぱり“アルトゥール”がいた。
*子供を亡くす表現があります。
性行為の描写も軽くありますので気になる方は読み飛ばして下さい。
投稿は10時、初回のみ22時、2話投稿です。
いつから魔力がないと錯覚していた!?
犬丸まお
BL
婚約者に無理やり襲われそうになり、寮の二階の窓から飛び降りたサフィラスは、落下した衝撃で前世を思い出した。サフィラスの前世は、無詠唱の大魔法使いと言われた最強の魔法使いフォルティスだったのだ。今世では、魔法伯爵家に生れながら5歳の魔力判定で魔力なしと判じられてからというもの、ずっと家族から冷遇されていた大人しいサフィラス。ところが前世を思い出した途端、サフィラスの人格は前世のフォルティスの人格にほぼ飲み込まれてしまった。これまでの可哀想なサフィラスよ、さようなら。これからは我慢も自重もしない。転生する前に、女神から与えられた強運という祝福と無敵の魔法で、これまで虐げられてきたサフィラスは人生を謳歌することを決意する!主人公が1ミリもピンチに陥らないお気楽な話です。恋愛&ラブHは物語後半に予定。
とあるおっさんのVRMMO活動記
椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。
念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。
戦闘は生々しい表現も含みます。
のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。
また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり
一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が
お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。
また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や
無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が
テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという
事もございません。
また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。
魔力無しと虐げられた公爵令嬢が隣国で聖女と呼ばれるようになるまで
砂礫レキ
恋愛
ロゼリア・アシャール公爵令嬢は父の命令で魔法の使用を封じられている。
ディジェ魔法国では貴族は全員固有魔法を持ち、魔法が使えないロゼリアは無能令嬢と蔑まれていた。
一方、異母妹のナビーナは治癒魔法に優れ聖女と呼ばれていた。
だがアドリアン王太子の婚約者に選ばれたのはロゼリアだった。
ロゼリアは魔力量だけはどの貴族よりも多かったからだ。
嫉妬したナビーナはロゼリアに嫌がらせを繰り返す。
そして婚約者のアドリアン王太子も無能令嬢と呼ばれるロゼリアに不満を抱いていた。
しかし王はロゼリアの膨大な魔力を王家に取り入れる為婚約解消を絶対許さない。
二人の嫌がらせは日々加熱していき、とうとうロゼリアの身に危険が迫った
仕方なく魔法を発動させ窮地を脱したが封印を破ったことでロゼリアの身を激痛が襲う。
そんな彼女を救ったのは黒髪に紫の瞳を持つ美しい青年だった。
望まれない結婚〜相手は前妻を忘れられない初恋の人でした
結城芙由奈
恋愛
【忘れるな、憎い君と結婚するのは亡き妻の遺言だということを】
男爵家令嬢、ジェニファーは薄幸な少女だった。両親を早くに亡くし、意地悪な叔母と叔父に育てられた彼女には忘れられない初恋があった。それは少女時代、病弱な従姉妹の話し相手として滞在した避暑地で偶然出会った少年。年が近かった2人は頻繁に会っては楽しい日々を過ごしているうちに、ジェニファーは少年に好意を抱くようになっていった。
少年に恋したジェニファーは今の生活が長く続くことを祈った。
けれど従姉妹の体調が悪化し、遠くの病院に入院することになり、ジェニファーの役目は終わった。
少年に別れを告げる事もできずに、元の生活に戻ることになってしまったのだ。
それから十数年の時が流れ、音信不通になっていた従姉妹が自分の初恋の男性と結婚したことを知る。その事実にショックを受けたものの、ジェニファーは2人の結婚を心から祝うことにした。
その2年後、従姉妹は病で亡くなってしまう。それから1年の歳月が流れ、突然彼から求婚状が届けられた。ずっと彼のことが忘れられなかったジェニファーは、喜んで後妻に入ることにしたのだが……。
そこには残酷な現実が待っていた――
*他サイトでも投稿中
【短編】冤罪が判明した令嬢は
砂礫レキ
ファンタジー
王太子エルシドの婚約者として有名な公爵令嬢ジュスティーヌ。彼女はある日王太子の姉シルヴィアに冤罪で陥れられた。彼女と二人きりのお茶会、その密室空間の中でシルヴィアは突然フォークで自らを傷つけたのだ。そしてそれをジュスティーヌにやられたと大騒ぎした。ろくな調査もされず自白を強要されたジュスティーヌは実家に幽閉されることになった。彼女を公爵家の恥晒しと憎む父によって地下牢に監禁され暴行を受ける日々。しかしそれは二年後終わりを告げる、第一王女シルヴィアが嘘だと自白したのだ。けれど彼女はジュスティーヌがそれを知る頃には亡くなっていた。王家は醜聞を上書きする為再度ジュスティーヌを王太子の婚約者へ強引に戻す。
そして一年後、王太子とジュスティーヌの結婚式が盛大に行われた。
巻き戻り令息の脱・悪役計画
日村透
BL
※本編完結済。現在は番外後日談を連載中。
日本人男性だった『俺』は、目覚めたら赤い髪の美少年になっていた。
記憶を辿り、どうやらこれは乙女ゲームのキャラクターの子供時代だと気付く。
それも、自分が仕事で製作に関わっていたゲームの、個人的な不憫ランキングナンバー1に輝いていた悪役令息オルフェオ=ロッソだ。
しかしこの悪役、本当に悪だったのか? なんか違わない?
巻き戻って明らかになる真実に『俺』は激怒する。
表に出なかった裏設定の記憶を駆使し、ヒロインと元凶から何もかもを奪うべく、生まれ変わったオルフェオの脱・悪役計画が始まった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる