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コミカライズお礼+完結お祝い企画ss
リク03 イシュドーラとの戦い直後。結衣とアレク、ソラでの会話。
しおりを挟む二巻の終わり、戦い直後のみんなでの会話です。
こちらで企画ssは終わりです。
アイデアくださった皆様、ありがとうございました(^ ^)
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祭壇の間に入ってきた皆と、結衣は無事の再会を喜びあった。
『大丈夫か、ユイ! 怪我をしてはいないか?』
心配そうにソラが問うので、結衣は両腕を広げてみせる。
「全然平気! ほら」
『良かった。盟友が、結衣が危ないと言い出した時は肝が冷えたぞ』
ソラはそう言って、フンフンと結衣のにおいをかいでくる。結衣は破顔して、ソラの鼻面をぽんと軽く叩いた。
「ソラ達は大丈夫だったの?」
『まあ、なんとかな』
頷いたソラだが、ちょっと歯切れの悪い返事だ。
「神殿の入口前で、番竜や衛兵とともにアスラ兵を防いでいたんです、大変でしたでしょう」
アレクがそう言うと、駆けつけた若い番竜のオスがゆるりと頭を下げる。
『長が倒れた時はどうなることかと思いましたが、聖竜様のお陰で、皆、助かりました』
「ビャッ!?」
その時、フィアががばっと跳ね起きた。
太陽の女神シャリアに褒められて、驚きのあまり失神していたが、話し声で目が覚めたらしい。
「ピィアー!」
甲高い鳥の声のような悲鳴を上げ、フィアは祭壇の間を走り出してしまう。
『フィア、そなたの父は我が癒したから大丈夫だぞ……。行ってしまったな』
ソラが困ったように言った。
寝起きにこんなことを聞いてはパニックにもなるだろう。
結衣はフィアを追いかけようかと思ったが、ソラがずいっと頭を突きだして質問してきた。
『なにやら忽然とアスラ兵が全て消えてしまったが、いったい何があったのだ?』
「うん、実はね」
結衣はその場にいる面々に、事の顛末を説明した。
「なんと、太陽の女神様がご降臨くださったのですか!」
神殿を守る衛兵が、感極まった様子で叫ぶ。
『聖なるものの一部で、夜闇の神の封印が解けるのか。我も知らなかったぞ。今後はユイの護りをしっかり固めねばなるまいな!』
「私も初めて知りましたよ。祖父の代で、人間側はなんとかここまで領土を取り返しましたが、一度、アスラに壊滅まで追い込まれた時期があるせいか、文献資料は少ないですから。――ユイ、こちらをどうぞ」
そういえばと、アレクが床に落ちている聖竜の鱗を拾ってきた。
「あ、ありがとうございます」
結衣は受け取ったものの、お守り袋はイシュドーラに取り上げられた時に、客室に捨てられたままだ。
『そうだな。人間達はこの国だけは死守しておったのだったか? 平和になってきて、気持ちが緩んでいるのだろう、改めて警備を強化してもらわねばな』
「ええ……。この国といえば、ユイ、リディア姫はどうなさったんですか? 一緒でしたよね」
アレクの問いに、結衣は慌てた。
「あ、そうだった! お姫様、イシュドーラに驚いて気絶しちゃったんでした。神官さん、あの!」
「医師とともに向かいますわ。ご安心下さい」
お医者さんをと結衣が言う前に、察した女性神官は頷いて、衛兵とともに祭壇の間を飛び出していった。
ひとまず場が一段落したので、結衣はアレクとソラに声をかける。
「私もフィアのお父さんに会いに行ってもいいですか? フィアが心配なので」
「ええ、行きましょう。私も気になります」
そして、ソラの背に乗って、結衣とアレクが神殿の外に出ると、シムドとフィアをすぐに見つけた。
シムドの頭に乗ったフィアが、ピアピアと鳴いて嬉しそうにしている。シムドも目尻を緩めて、我が子との再会を喜んでいた。
その微笑ましい光景に、結衣達はしばらく声をかけるのを遠慮して、笑みを浮かべて見守っていた。
……終わり。
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