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第二章~ヒューマンの国~

54話 ヒヒイロカネの加工法

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 鍛冶場に行き配信をつける。ここ最近ずっと同じ配信しかしてないが作業配信ってこんなもんだし大丈夫か。タイトルは『配信の勉強しながら作業パート3』にしよう。そのうち見て盗むのにも限界が来るだろうし質問募集の配信でもしてみてもいいかもな。

〔ドワルフ:おはよう〕

〔今日ははえぇじゃねぇか!〕

〔ようドワルフ〕

 やっぱり挨拶をしてすぐ返事が来るのはいいな。これでこそ配信って感じがする。

 今日はどの配信を見ようかな? まずは冒険カテゴリっとあー勇者が荒らしながら帰ってる。見るのはよそう。こういうのは見るだけでも心が荒んでくるものだからな。他の冒険者配信を見てもいいが先にゾルギンがやってるしそっちを見ようかな。

おぉ!! 配信タイトル『ヒヒイロカネ加工』だと!? これは冒険配信より見ないといけない配信だ。早速配信を開く。ゾルギンの朝は早いなーもう鍛冶場で作業を始めてる。不思議なんだが今日は前にいた奥さんの1人も一緒だ。炉の炎は一緒なのにヒヒイロカネが赤く叩ける状態になっている。

〔今日はヒヒイロカネ配信だって!?〕
〔あの数年に一度しかない奴を見れるなんてラッキーだー〕
〔いやーそれにしても見事な連携作業だなー〕
〔さっすがの夫婦連携だぜ〕
〔俺もヒヒイロカネを扱える様に立派な魔法使いの奥さんが欲しいぜー〕
〔そんな発想をしてる奴には奥さんすら出来ねぇよ〕
〔何だとコラ!〕

〔ゾルギン:見ているもの同士での喧嘩は!〕

〔〔〔絶対禁止〕〕〕

〔ゾルギン:忘れるんじゃないぞ〕

 いい配信じゃないか。いきなりBANするわけでもなくしっかりとルールを決めてやっている。これこそ配信だな。

 それにしても連携作業か。そういえば奥さんがずっとゾルギンに触れているな。もしかしてそこから魔法を送り込んでいるのかもしれない。聞いて見たいがあんまりにも質問ばかりしていてもウザいだろうし黙って見ておこう。またコメントで何かヒントが流れるかもしれない。叩く時間に入ったな。

〔流石だなードワーフ鋼よりも作業が早くしっかりと伸ばしてる〕
〔俺は奥さんの魔法調整に驚きだぜ〕
〔確か叩く時の強さに応じて魔法量を変えるんだろ?〕
〔いやーまさしく共同作業だなー〕

 叩く時にも魔法の調節がいるのか。それにしてもいちいちそれに合わせて魔法量を変えるなんて、しかも一言も喋らず。まさしく阿吽の呼吸だな。魔法使いとのタッグでもいいとドーコは言ってたが夫婦でもないとここまでのレベルのものを作ることはできないだろうな。

 どんどんとヒヒイロカネは剣の形へとみるみるうちに変わっていった。ドワーフ鋼より作業が早いのはやはりヒヒイロカネがそれだけヒューマンに適した金属だからだろうか?

 俺もここまでの完成度にはならないだろうが1人でやるより誰か魔法使いとタッグを組んだほうがいいんじゃないだろうか?いやまだ試していないのにウダウダいうのはやめよう。

〔ゾルギン:それでは昼休憩に入る〕

〔了解です〕
〔お疲れ様です〕
〔何を食べるんだろうなー〕

 気づけばもう昼だった。今日は昼ご飯を作ってないし、家に帰って食べよう。

「おーいドーコ! 昼休憩にしよう!」

「わかったー」

 そう言って俺たちも昼ご飯を取ることにした。



★   ★   ★



 ふぅー美味しかった。ゾルギンは少し早く食べ終わったらしくもう作業に取り掛かっていて剣の形が仕上がっていた。

 剣ということは魔法剣士に向けた武器を作っているんだろうか。そんなことを考えていると奥からもう1人の奥さんが出てきた。すると今まで付き添っていた奥さんが奥に行き、今度はその奥さんが魔法を送っている。もしかして、

〔形作りと装飾で分けてるからゾルギンさんのヒヒイロカネ装備は出来が違うんだよなぁ〕
〔本当にすごいぜ。ヒヒイロカネってだけで魔法効率が違うっていうのに更に装飾をして効果を上げちまうんだからなー〕
〔あぁ世界広しと言えどヒヒイロカネに装飾まで施せるのはこのゾルギンさん一家だけだぜ〕

 そうかやはりヒヒイロカネに装飾するにはより繊細な魔法操作が必要なんだな。それにしてもドワーフ鋼より手早く作業が進んでいくなー。

 それほどまでにドワーフ鋼はヒューマンにあってないんだろうな。それでも扱えるゾルギンは化け物ってことか。オリハルコンは流石に無理だろうけどな! ってこんなことで意地を張っても仕方ない。素直にゾルギンの技術の高さを尊敬しよう。

〔なぁドワルフ、お前の作業を見て俺もかなり作業速度は上がったんだがまだ全然追いつけなくてな。何かコツみたいなのはないか?〕

〔ドワルフ:そうそう俺も言おうと思ってたんだ。どうにも壁って奴にぶつかってしまってな〕

 おっと俺の配信の方にもコメントが。

〔ドワルフ:それなんだが俺ももうそろそろそんな時期じゃないかと思って講習会を開こうかなと考えてはいたんだ〕

〔おぉそりゃ楽しみだ!〕

〔で? 明日か〕

〔ドワルフ:いや具体的にいつやるかまでは決まっていないが、いつかやるから期待して待っておいてくれ!〕

〔楽しみだなぁー〕

〔今日は宴会するか〕

〔そりゃいいな俺もそうしよう〕

 喜んでくれてるみたいだしいつか頃合いを見て開かないとな。ゾルギンの配信に戻るともう大方の装飾が終わった様だった。ただゾルギンよりも奥さんの方の疲弊が激しく疲れている様子だった。

〔やっぱり装飾するとなると魔法操作が難しいからなー〕
〔確かに奥さんもうぐったりだな〕
〔だけど後もう少しだ!がんばれ奥さんにゾルギン!〕

 そう言われて奥さんはニコリと微笑み最後の仕上げに付き添う。

 ようやく完成したそのヒヒイロカネの剣は綺麗な光沢をしておりドワーフ鋼の時よりも数倍装飾が細かく素晴らしい出来だった。

〔おぉー〕
〔流石です。ゾルギンさん〕
〔それに奥さんも〕

〔ゾルギン:それでは今日は配信を終わろうと思う。それではまた〕

〔お疲れ様です〕
〔お疲れ様でした!〕
〔奥さんもしっかり休んでください〕

 そう言ってゾルギンは奥さんに肩を貸しながら配信を切った。

 俺も配信を見ながらの作業に慣れたのか鉄と銅で合わせて10作品できた。忘れずに魔法印を押して今日の作業を終了する。

〔ドワルフ:じゃあ今日の配信終わるよ。見てくれてありがとう〕

〔講習会期待してるからなー〕

〔エマ:お疲れ様〕

〔おつかれー〕

 俺も配信を切ろうとした時、

〔シュド:タイミングが悪くて申し訳ありません〕

〔ドワルフ:どうしたシュドさん?〕

〔シュド:いえ私もようやくシュリガイムに到着致しまして、明日の昼ごろに一度お尋ねしてもよろしいでしょうか?〕

〔ドワルフ:いや俺たちも自分が作った商品がどれくらいで売れるのか気になるしそっちに向かうよ〕

〔シュド:そうでございますか。それでは明日お待ちしております。受付に私のカードを見せてください〕

〔ドワルフ:わかった〕

 今度こそ配信を切る

「ドーコー聞いてたか?」

「うん明日売りにいくんでしょ? ついでに魔法鞄を連名にできるしちょうどいいね」

「だな。じゃあ家に帰って水浴びするか」

「うん!」

 今日はヒヒイロカネのいい勉強になったな。
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