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【ざまぁ回】第52話 美少女ゴーレム、大人げなく本気を出して黒幕のプライドを徹底的に叩き潰してしまう

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「見るがいい、これが我がゴーレム研究院のナンバー2である俺の技術力だ」

 ステージの上で、ボイルは改造ゴーレムにホウキを手渡す。

 改造ゴーレムはそれを使って、掃き掃除を始めた。

「どうしたナット。驚きのあまり、声も出ないか?」

 もしかして、掃き掃除ができるだけ……?

「驚くのはまだ早い。なんと、チリトリを使える機能の実装も考えている。まぁ、1カ月は掛かるだろうが。完成を楽しみにしておくといい」

 インスタントゴーレムはそんなに長期使用を想定して作っていないのだが。

 見た感じだと、耐久性関連の部分はまるで改造していない。今この瞬間動かなくなってもおかしくないのだが、ボイルはその点を分かっているのだろうか。

「くくく、驚きのあまり声も出ないようだな」

 当のボイルは何故か誇らしげな顔をしていた。

『では続いて、ナットさんのゴーレムのパフォーマンスです!」

「頼むぞ、アルカ」

「お任せください。マスターを罠にかけたあの男は、完膚なきまでに叩き潰します」

 アルカが空高く飛び上がり、宙返りする。同時に、形態変更モードチェンジ

 家事形態ハウスワークモード(メイド服に着替えただけ。機能は一切変わっていない)になったアルカがステージ上に着地する。

「すげぇ、宙返りしたぞ!」
「一瞬で着替えた? どういうこと!?」
「メイド服可愛い!」

 アルカのパフォーマンスで観客席が湧く。当のアルカは用意していたホウキとチリトリで、掃き掃除を始めた。

「アルカちゃんの方が、手際がいいし丁寧だぜ」
「しかも、チリトリもキッチリ使ってる」
「ていうかボイルのゴーレムは、大きすぎて部屋の中じゃ使えないなじゃいか アルカちゃんの方が絶対役に立つ!」

 観客の反応を見る限り、既にアルカが優勢のようだ。

「馬鹿な……戦闘以外のこともできるのか」

 ボイルは目を見開いていた。

「まだこれだけではありませんよ」

 続いてアルカが取り出したのは、フライパン。あらかじめ用意していたホットケーキが乗っている。

 そして

「ほいっ」

 フライ返しを使わず、右手だけでホットケーキをひっくり返した。

「すげぇ!」
「料理慣れしてないと出来ないぞ、あれは」
「人間でも難しいのに!」

 観客は大興奮だ。

「まだです、行きますよ」

 今度は、準備していた机と椅子をステージ中央に運ぶ。

 そして、そこで書類を書き始める。その様子をリエルさんが覗き込む。

『何の書類を書いているのでしょうか……ああ、これは! なんとアルカさん、【確定申告】の書類を作成しています!!』

「確定申告だって!?」
「あの難しいのをやれるのか! 俺のもやってほしい!」
「人間でも難しいのに!」

 今日一番の衝撃が、観客席を襲っていた。

 ――【確定申告】。税金を納めるために、必要な書類だ。

 この国の税金は、国民1人1人がその年に稼いだ額によって変わる。

 そして国民は『私は今年いくら稼ぎましたよ』という書類を提出する。これが確定申告だ。

 単純に入ってきた金額を合計すればいいというものではなく、そのお金を得るためにいくら使ったか、も申告しなければならない。

 そしてこの確定申告、とにかくめんどくさい!!

 冒険者は特に確定申告に手間がかかるので、確定申告がイヤで冒険者を辞めてしまう者もいるらしい。

 しかしアルカはこの作業を、本を読みながら1晩のうちに習得してしまった。

「馬鹿な、確定申告だと……!? 俺自身ですら毎年苦労しながらやっている作業を、ゴーレムがやれるというのか……!」

 ボイルは膝をついていた。

『これは勝負ありましたかね? ”掃き掃除ができる巨大ゴーレム”VS”掃き掃除と料理と確定申告できてしかもすんごい可愛いゴーレム”。 それでは、観客の投票に移りたいと――』

「がっかりだなぁ。せっかくゴーレムを他に作れる人がいるっていうから、どんなゴーレムを作れるか楽しみだったのに。僕のゴーレムを改造して、この程度かぁ……」

「が、がっかりだとぉ!」

 僕のつぶやきを聞きつけて、ボイルが顔を真っ赤にして怒る。

「そこまで言うなら仕方ない! このゴーレムは試作品だ! 我がゴーレム研究院の、本当の力を見せてやる。こんな使い捨てゴーレムを改造しただけではない、0から作った本物のゴーレムだ!」

「あれ、さっき『我々では0からゴーレムを作れない』って言ってませんでしたっけ?」

「最近作れるようになったのだ! 待っていろ、『宙返りしながらホットケーキをひっくり返せてしかもイケメンなゴーレム』をすぐに持ってきてやるからな! 見ていろよクソガキ!」

 ――10分後。

「俺がゴーレム研究院の最高傑作であるゴーレムだ」

 ボイルの代わりに、全身甲冑に身を包んだ、自称ゴーレムが現れた。

 しかも、声が全くボイルと同じなんだけど……。

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