52 / 65
【ざまぁ回】第52話 美少女ゴーレム、大人げなく本気を出して黒幕のプライドを徹底的に叩き潰してしまう
しおりを挟む
「見るがいい、これが我がゴーレム研究院のナンバー2である俺の技術力だ」
ステージの上で、ボイルは改造ゴーレムにホウキを手渡す。
改造ゴーレムはそれを使って、掃き掃除を始めた。
「どうしたナット。驚きのあまり、声も出ないか?」
もしかして、掃き掃除ができるだけ……?
「驚くのはまだ早い。なんと、チリトリを使える機能の実装も考えている。まぁ、1カ月は掛かるだろうが。完成を楽しみにしておくといい」
インスタントゴーレムはそんなに長期使用を想定して作っていないのだが。
見た感じだと、耐久性関連の部分はまるで改造していない。今この瞬間動かなくなってもおかしくないのだが、ボイルはその点を分かっているのだろうか。
「くくく、驚きのあまり声も出ないようだな」
当のボイルは何故か誇らしげな顔をしていた。
『では続いて、ナットさんのゴーレムのパフォーマンスです!」
「頼むぞ、アルカ」
「お任せください。マスターを罠にかけたあの男は、完膚なきまでに叩き潰します」
アルカが空高く飛び上がり、宙返りする。同時に、形態変更。
家事形態(メイド服に着替えただけ。機能は一切変わっていない)になったアルカがステージ上に着地する。
「すげぇ、宙返りしたぞ!」
「一瞬で着替えた? どういうこと!?」
「メイド服可愛い!」
アルカのパフォーマンスで観客席が湧く。当のアルカは用意していたホウキとチリトリで、掃き掃除を始めた。
「アルカちゃんの方が、手際がいいし丁寧だぜ」
「しかも、チリトリもキッチリ使ってる」
「ていうかボイルのゴーレムは、大きすぎて部屋の中じゃ使えないなじゃいか アルカちゃんの方が絶対役に立つ!」
観客の反応を見る限り、既にアルカが優勢のようだ。
「馬鹿な……戦闘以外のこともできるのか」
ボイルは目を見開いていた。
「まだこれだけではありませんよ」
続いてアルカが取り出したのは、フライパン。あらかじめ用意していたホットケーキが乗っている。
そして
「ほいっ」
フライ返しを使わず、右手だけでホットケーキをひっくり返した。
「すげぇ!」
「料理慣れしてないと出来ないぞ、あれは」
「人間でも難しいのに!」
観客は大興奮だ。
「まだです、行きますよ」
今度は、準備していた机と椅子をステージ中央に運ぶ。
そして、そこで書類を書き始める。その様子をリエルさんが覗き込む。
『何の書類を書いているのでしょうか……ああ、これは! なんとアルカさん、【確定申告】の書類を作成しています!!』
「確定申告だって!?」
「あの難しいのをやれるのか! 俺のもやってほしい!」
「人間でも難しいのに!」
今日一番の衝撃が、観客席を襲っていた。
――【確定申告】。税金を納めるために、必要な書類だ。
この国の税金は、国民1人1人がその年に稼いだ額によって変わる。
そして国民は『私は今年いくら稼ぎましたよ』という書類を提出する。これが確定申告だ。
単純に入ってきた金額を合計すればいいというものではなく、そのお金を得るためにいくら使ったか、も申告しなければならない。
そしてこの確定申告、とにかくめんどくさい!!
冒険者は特に確定申告に手間がかかるので、確定申告がイヤで冒険者を辞めてしまう者もいるらしい。
しかしアルカはこの作業を、本を読みながら1晩のうちに習得してしまった。
「馬鹿な、確定申告だと……!? 俺自身ですら毎年苦労しながらやっている作業を、ゴーレムがやれるというのか……!」
ボイルは膝をついていた。
『これは勝負ありましたかね? ”掃き掃除ができる巨大ゴーレム”VS”掃き掃除と料理と確定申告できてしかもすんごい可愛いゴーレム”。 それでは、観客の投票に移りたいと――』
「がっかりだなぁ。せっかくゴーレムを他に作れる人がいるっていうから、どんなゴーレムを作れるか楽しみだったのに。僕のゴーレムを改造して、この程度かぁ……」
「が、がっかりだとぉ!」
僕のつぶやきを聞きつけて、ボイルが顔を真っ赤にして怒る。
「そこまで言うなら仕方ない! このゴーレムは試作品だ! 我がゴーレム研究院の、本当の力を見せてやる。こんな使い捨てゴーレムを改造しただけではない、0から作った本物のゴーレムだ!」
「あれ、さっき『我々では0からゴーレムを作れない』って言ってませんでしたっけ?」
「最近作れるようになったのだ! 待っていろ、『宙返りしながらホットケーキをひっくり返せてしかもイケメンなゴーレム』をすぐに持ってきてやるからな! 見ていろよクソガキ!」
――10分後。
「俺がゴーレム研究院の最高傑作であるゴーレムだ」
ボイルの代わりに、全身甲冑に身を包んだ、自称ゴーレムが現れた。
しかも、声が全くボイルと同じなんだけど……。
ステージの上で、ボイルは改造ゴーレムにホウキを手渡す。
改造ゴーレムはそれを使って、掃き掃除を始めた。
「どうしたナット。驚きのあまり、声も出ないか?」
もしかして、掃き掃除ができるだけ……?
「驚くのはまだ早い。なんと、チリトリを使える機能の実装も考えている。まぁ、1カ月は掛かるだろうが。完成を楽しみにしておくといい」
インスタントゴーレムはそんなに長期使用を想定して作っていないのだが。
見た感じだと、耐久性関連の部分はまるで改造していない。今この瞬間動かなくなってもおかしくないのだが、ボイルはその点を分かっているのだろうか。
「くくく、驚きのあまり声も出ないようだな」
当のボイルは何故か誇らしげな顔をしていた。
『では続いて、ナットさんのゴーレムのパフォーマンスです!」
「頼むぞ、アルカ」
「お任せください。マスターを罠にかけたあの男は、完膚なきまでに叩き潰します」
アルカが空高く飛び上がり、宙返りする。同時に、形態変更。
家事形態(メイド服に着替えただけ。機能は一切変わっていない)になったアルカがステージ上に着地する。
「すげぇ、宙返りしたぞ!」
「一瞬で着替えた? どういうこと!?」
「メイド服可愛い!」
アルカのパフォーマンスで観客席が湧く。当のアルカは用意していたホウキとチリトリで、掃き掃除を始めた。
「アルカちゃんの方が、手際がいいし丁寧だぜ」
「しかも、チリトリもキッチリ使ってる」
「ていうかボイルのゴーレムは、大きすぎて部屋の中じゃ使えないなじゃいか アルカちゃんの方が絶対役に立つ!」
観客の反応を見る限り、既にアルカが優勢のようだ。
「馬鹿な……戦闘以外のこともできるのか」
ボイルは目を見開いていた。
「まだこれだけではありませんよ」
続いてアルカが取り出したのは、フライパン。あらかじめ用意していたホットケーキが乗っている。
そして
「ほいっ」
フライ返しを使わず、右手だけでホットケーキをひっくり返した。
「すげぇ!」
「料理慣れしてないと出来ないぞ、あれは」
「人間でも難しいのに!」
観客は大興奮だ。
「まだです、行きますよ」
今度は、準備していた机と椅子をステージ中央に運ぶ。
そして、そこで書類を書き始める。その様子をリエルさんが覗き込む。
『何の書類を書いているのでしょうか……ああ、これは! なんとアルカさん、【確定申告】の書類を作成しています!!』
「確定申告だって!?」
「あの難しいのをやれるのか! 俺のもやってほしい!」
「人間でも難しいのに!」
今日一番の衝撃が、観客席を襲っていた。
――【確定申告】。税金を納めるために、必要な書類だ。
この国の税金は、国民1人1人がその年に稼いだ額によって変わる。
そして国民は『私は今年いくら稼ぎましたよ』という書類を提出する。これが確定申告だ。
単純に入ってきた金額を合計すればいいというものではなく、そのお金を得るためにいくら使ったか、も申告しなければならない。
そしてこの確定申告、とにかくめんどくさい!!
冒険者は特に確定申告に手間がかかるので、確定申告がイヤで冒険者を辞めてしまう者もいるらしい。
しかしアルカはこの作業を、本を読みながら1晩のうちに習得してしまった。
「馬鹿な、確定申告だと……!? 俺自身ですら毎年苦労しながらやっている作業を、ゴーレムがやれるというのか……!」
ボイルは膝をついていた。
『これは勝負ありましたかね? ”掃き掃除ができる巨大ゴーレム”VS”掃き掃除と料理と確定申告できてしかもすんごい可愛いゴーレム”。 それでは、観客の投票に移りたいと――』
「がっかりだなぁ。せっかくゴーレムを他に作れる人がいるっていうから、どんなゴーレムを作れるか楽しみだったのに。僕のゴーレムを改造して、この程度かぁ……」
「が、がっかりだとぉ!」
僕のつぶやきを聞きつけて、ボイルが顔を真っ赤にして怒る。
「そこまで言うなら仕方ない! このゴーレムは試作品だ! 我がゴーレム研究院の、本当の力を見せてやる。こんな使い捨てゴーレムを改造しただけではない、0から作った本物のゴーレムだ!」
「あれ、さっき『我々では0からゴーレムを作れない』って言ってませんでしたっけ?」
「最近作れるようになったのだ! 待っていろ、『宙返りしながらホットケーキをひっくり返せてしかもイケメンなゴーレム』をすぐに持ってきてやるからな! 見ていろよクソガキ!」
――10分後。
「俺がゴーレム研究院の最高傑作であるゴーレムだ」
ボイルの代わりに、全身甲冑に身を包んだ、自称ゴーレムが現れた。
しかも、声が全くボイルと同じなんだけど……。
0
お気に入りに追加
1,801
あなたにおすすめの小説
魔鬼祓いのグラディウス
紅灯空呼
ファンタジー
魔の邪気が体に憑くことで狂ってしまう動物や人間――それが魔鬼だ。少年セブルは魔鬼を祓う特別な能力を身につけた数少ない勇士である。セブルは、願い巫女の血を受け継いだ少女リルカと八年ぶりに再会する。この春からセブルとリルカは一緒にブルセル村の学問所へ通うことになる。だがそこには、何と魔鬼らしき少女と女性が待ち構えていた。セブルはグラディウスを現出させて立ち向かう。しかし二匹を相手に苦戦を強いられ、ついには分身してケリをつけようとする。果たして勝てるか? リルカを守れるか? ――これは、自由と平等と博愛を謳うフランセ国の平和を背負った少年セブルと個性豊かな少女たちが織りなす勇気と希望と恋の物語である。
【完結】彼女以外、みんな思い出す。
❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。
幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。
異世界にタワマンを! 奴隷少年の下剋上な国づくり ~宇宙最強娘と純真少年の奇想天外な挑戦~
月城 友麻
ファンタジー
奴隷で過酷な労働を強いられていた少年は、ある日、天から降りてきた自称『宇宙最強』の青い髪の少女に助けられ、奴隷から解放されることとなった。
喜ぶ少年は、奴隷や貧困のない『自由の国』を作ろうと決心する。少年は不思議な力を持つ少女に助力を願ったが、少女は国づくりを手伝う代わりに、「失敗したら世界そのものを消去する」という条件を突きつけた。
少年は悩みながらも理想郷づくりに全てをかける決断をする――――。
襲われる王女を助け、王宮で大暴れする少女……。彼女は圧倒的すぎる戦闘力は持つものの、雑なのが玉にきず。少年はほんろうされながらも、理想を説いて『自由の国』創りの仲間を増やしていく。
絶世の美女である王女、厳ついウロコに覆われた巨大なドラゴンを引き連れ、国づくりの参考にしたのは日本だった。
渋谷のスクランブル交差点に降り立った一行、果たして国づくりは上手くいくのか?
奇想天外なファンタジーが、読む者を世界の深淵へと引き込んでいく問題作。
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。
私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
召喚アラサー女~ 自由に生きています!
マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。
牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子
信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。
初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった
***
異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います
かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います
自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜
ねっとり
ファンタジー
世界一強いと言われているSSSランクの冒険者パーティ。
その一員であるケイド。
スーパーサブとしてずっと同行していたが、パーティメンバーからはただのパシリとして使われていた。
戦闘は役立たず。荷物持ちにしかならないお荷物だと。
それでも彼はこのパーティでやって来ていた。
彼がスカウトしたメンバーと一緒に冒険をしたかったからだ。
ある日仲間のミスをケイドのせいにされ、そのままパーティを追い出される。
途方にくれ、なんの目的も持たずにふらふらする日々。
だが、彼自身が気付いていない能力があった。
ずっと荷物持ちやパシリをして来たケイドは、筋力も敏捷も凄まじく成長していた。
その事実をとあるきっかけで知り、喜んだ。
自分は戦闘もできる。
もう荷物持ちだけではないのだと。
見捨てられたパーティがどうなろうと知ったこっちゃない。
むしろもう自分を卑下する必要もない。
我慢しなくていいのだ。
ケイドは自分の幸せを探すために旅へと出る。
※小説家になろう様でも連載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる