【2章完結】超古代技術【ゴーレム】を扱える世界唯一の少年、不当に勇者パーティを追放されるが、戦闘も農業も全自動化し、世界最強に成りあがる!!

音速炒飯

文字の大きさ
上 下
38 / 65

【ざまぁ回】第38話 勇者、ゴーレム技師と美少女ゴーレムのタッグに完全敗北し聖剣を失う

しおりを挟む
「まさかこの私が、魔法の打ち合いで後れを取るとはな……」

 勇者ハロンが立ち上がる。

 相手に撃ち込まれた攻撃魔法は、魔力でガードすることができる。

 勇者ハロンには、そこまで大きなダメージはないだろう。

「こうなれば、近接戦闘に持ち込むしかないな」

「そうはさせない!」

 僕は土属性魔法を発動し、勇者ハロンの足元の地面から大型インスタントゴーレムを5体作り出す。

 魔力をかなり多めに投入した、戦闘特化のゴーレムだ。

 インスタントゴーレムが勇者ハロンに掴みかかる。

「ぐっ……!」

 勇者ハロンが剣でゴーレム達の腕をさばく。

 だが、いくら勇者と言えど5体のゴーレムを一度に相手にできない。

 わずかだが、ゴーレム達が押している。

「甘いぞナット! この程度で私に勝てると思ったか!」

 その瞬間、勇者ハロンが握る聖剣バーレスクが深紅に輝いた。

 矢のような速度で、勇者ハロンがゴーレム達のわずかな隙間から飛び出してくる。

 そのまま勇者ハロンは、異常な速度でアルカに迫る。そして、剣を振り下ろす。

”ギイイイイイィン!”

 勇者ハロンの一撃を受け止めたアルカの剣が、真ん中で折れた。

「大丈夫ですマスター、まだ戦えます!」

 アルカと勇者ハロンが剣で打ち合う。

 勇者ハロンには、最初の一撃のような異常な勢いはない。アルカは、折れた剣でもパワーとスピードにまかせて勇者ハロンの攻撃をさばき切っている。

「見せてやろう、ナット。これがお前に見せたことのない、私の切り札だ」

 再び勇者ハロンの聖剣バーレスクが深紅に輝く。

「アルカ、危ない!」

 僕はとっさにインスタントゴーレムを作りだす。そしてインスタントゴーレムに命令して、アルカを突き飛ばさせる。

「必殺、【サウザンドスラスト】!」

”ガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!”

 何が起こったのか、僕の動体視力では捉えることができなかった。

 一瞬のうちに深紅の光が何度も勇者ハロンの手元から放たれたようにしか見えなかった。

 アルカをかばって攻撃を受けたゴーレムは、バラバラに切り刻まれていた。

 もしアルカに直撃していれば、戦闘不能にはならずとも大ダメージを受けていただろう。

「我が聖剣バーレスクは、魔力を推進力に変換する特殊能力を持っている。そして【サウザンドスラスト】は、剣の推進力を利用して超高速で10連撃を叩き込む技だ」

 そうか、最初にゴーレムの包囲を抜け出してアルカに切りかかった時の異常なスピードは、聖剣の力だったのか。

 聖剣に魔力を流し、剣の推進力を利用して自分ごと高速で移動する。

 単純ながら、なんて恐ろしい能力だ……。

 だが、問題はない。

「間近で見て、【サウザンドスラスト】の軌道を学習しました。その技は、もう私には当たりません」

「ほう? 面白い、では防いでみろ!」

 聖剣バーレスクが再び深紅の光を纏う。

「【サウザンドスラスト】!」

 勇者ハロンが目視不可能の10連撃を放つ。

 迎え撃つのは、アルカの折れた剣。

”キキキキキキキキキキキキキキキキキキキキン!!”

 甲高い金属音が闘技場中に響く。 

 ――アルカには、傷一つ無かった。

「……馬鹿な。折れた剣で、私の斬撃を全て防御しただと……!?」

 勇者ハロンは、呆然としていた。

「ま、まぐれに決まっている! 私の【サウザンドスラスト】が、破れるはずがない!」

 勇者ハロンがもう一度、サウザンドスラストの発動体勢に入る。

「「【サウザンドスラスト】!!」」

”キキキキキキキキキキキキキキキキキキキキン!!”

 勇者ハロンと同時に、アルカも【サウザンドスラスト】を放つ。

 衝撃で、勇者ハロンとアルカが一歩ずつ後ずさる。

「嘘だろう? 聖剣バーレスクの能力なしで、それどころか、折れた剣でサウザンドスラストを再現するなど」

 勇者ハロンの手は震えていた。

「そんなことが、あってたまるか!」

 勇者ハロンが叫び、アルカに突撃してくる。

「「【サウザンドスラスト】!」」

 またも、互角。

「「【サウザンドスラスト】!」」

 何度も【サウザンドスラスト】同士が激突する。

 そしてぶつかり合いを繰り返す度に、徐々に勇者ハロンが押されていく。

 勇者ハロンは戦いが長引けば疲労するが、アルカに疲労はない。長引けばこちらが有利だ。

「こんなことが……!」

 勇者ハロンが歯ぎしりする。

「こんなことがあっていいわけない! 私は、勇者にして、誇り高きモルナック家の長女だぞ!!」

 激怒して剣を構える勇者ハロンに、アルカが

「私に構うのもよいですが、何か忘れていませんか?」

 と声をかけて、勇者ハロンの後ろを指さす。

 ――そこには、僕が最初に作ったインスタントゴーレム達があつまっていた。

「あっ」

 一瞬フリーズする勇者ハロン。ゴーレムが、加減したチョップを勇者ハロンの頭に見舞う。

「ぐえっ」

 勇者ハロンがよろめく。その一瞬の隙を、アルカが見逃すはずがない。

「――勝負あり、ですね」

 ピタリ、と。アルカが折れた剣の刃の部分を、勇者ハロンの首に突きつける。

『決まりましたー! 勝ったのは、ナット&アルカ!!』

「「「ワアアアアアアアアァ!!」」」

「やったなアルカ!」

「はい! ついに私達、勇者に勝ちましたよ!」

 僕とアルカはハイタッチをきめる。

「――まだだ、まだ私は負けていない!」

 勇者ハロンが再び剣を構えて、アルカに背後から襲い掛かる。

「サウザンドスラ――」

「勇者ハロンさん。あなたの行動パターンも、もう学習済です」

”キキキキキキキキキキン!!”

 アルカは振り向かないまま、右腕を背中側に回して、折れた剣で全ての攻撃を弾いた。

 衝撃で、聖剣バーレスクが勇者ハロンの手を離れ、宙に舞う。

 そして聖剣バーレスクは、アルカの手に柄がすっぽりと収まるように落ちてきた。

 アルカがそのまま聖剣バーレスクを自分の腰の鞘に納める。

『今度こそ決着ー! 圧倒的! 圧倒的です! 序盤の素人のような剣さばきが嘘のような見事な剣術! 流石ナットさんの作ったゴーレム、ハイスペック過ぎますね♪』

 闘技場が拍手で溢れる。

『ところでここに、この決闘でもし勇者ハロンさんが負けた場合に読むようにと言われた、冒険者ギルド長からの手紙がありまーす!』

 リエルさんが、一通の赤い手紙を懐から出した。

 すると、ぼうぜんとしていた勇者ハロンが凛々しい表情に戻る。

「フフ、分かっているぞ手紙の内容は。ずばり、勇者の序列アップだろう?

 私は今最下位の13番勇者だが、12番勇者と交代というわけだな?

 そろそろ勇者としての私の活躍がもっと評価される頃だと思っていたさ」

 一体、どこからその自信が湧いてくるのだろう。

『それでは、読み上げますね♪』

 リエルさんの口元には、とても楽しそうな笑みが浮かんでいた。
しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

亡霊剣士の肉体強奪リベンジ!~倒した敵の身体を乗っ取って、最強へと到る物語。

円城寺正市
ファンタジー
勇者が行方不明になって数年。 魔物が勢力圏を拡大し、滅亡の危機に瀕する国、ソルブルグ王国。 洞窟の中で目覚めた主人公は、自分が亡霊になっていることに気が付いた。 身動きもとれず、記憶も無い。 ある日、身動きできない彼の前に、ゴブリンの群れに追いかけられてエルフの少女が転がり込んできた。 亡霊を見つけたエルフの少女ミーシャは、死体に乗り移る方法を教え、身体を得た彼は、圧倒的な剣技を披露して、ゴブリンの群れを撃退した。 そして、「旅の目的は言えない」というミーシャに同行することになった亡霊は、次々に倒した敵の身体に乗り換えながら、復讐すべき相手へと辿り着く。 ※この作品は「小説家になろう」からの転載です。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

婚約破棄を目撃したら国家運営が破綻しました

ダイスケ
ファンタジー
「もう遅い」テンプレが流行っているので書いてみました。 王子の婚約破棄と醜聞を目撃した魔術師ビギナは王国から追放されてしまいます。 しかし王国首脳陣も本人も自覚はなかったのですが、彼女は王国の国家運営を左右する存在であったのです。

放置された公爵令嬢が幸せになるまで

こうじ
ファンタジー
アイネス・カンラダは物心ついた時から家族に放置されていた。両親の顔も知らないし兄や妹がいる事は知っているが顔も話した事もない。ずっと離れで暮らし自分の事は自分でやっている。そんな日々を過ごしていた彼女が幸せになる話。

ここは貴方の国ではありませんよ

水姫
ファンタジー
傲慢な王子は自分の置かれている状況も理解出来ませんでした。 厄介ごとが多いですね。 裏を司る一族は見極めてから調整に働くようです。…まぁ、手遅れでしたけど。 ※過去に投稿したモノを手直し後再度投稿しています。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

処理中です...