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第32話 ゴーレム技師、疫病から街を救い感謝される&災害級モンスターの討伐隊リーダーに任命される
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僕とアルカは、冒険者ギルドに捕獲したレインボーリザードを持ち込んでいた。
またレインボーリザードを詰め込んだ袋を馬車に乗せて持ち込んだのだが、今回は前回ほど驚かれなかった。
「まぁ、ナットさんですからね。これくらいのことはするんじゃないかと心の準備をしていましたよ」
と、若干呆れ気味の対応をされてしまったが。
納品専用カウンターで、アルカと一緒にレインボーリザードの角を斬り落として1つ1つ受付のお姉さんに手渡ししていく。
「ナットさん、レインボーリザード本体はどうされますか? 角以外の部位にはあまり価値がないので高くはないですが、素材として買取できますよ?」
「いえ、レインボーリザード本体の素材は自分で使おうかと思っています。この素材をつかってやりたいことがあるんです」
「マスター、また新しい#形態_モード_#を追加してくれるのですか!?」
アルカが目を輝かせて僕の方を見る。
「うん。難しい改造になりそうだから今回の討伐作戦には間に合わないけど、アルカがまたこれまでと違う戦術を使えるようにしたいんだ」
「楽しみです、マスター!」
そんな話をしながら、レインボーリザードの角を斬り落としていく。
――そしてようやく、全ての角を取り終えた。
「ありがとうございます、確かに受領しました」
角の入った袋を抱えて、受付のお姉さんが御礼をいう。
――その時、お姉さんの目から一筋の涙が零れ落ちる。
「ど、どうしました!?」
「すみません、実は……年の離れた私の弟も疫病に感染していまして。薬が無ければ1週間と言われていたのですが、これで弟は助かります……! 良かった、本当によかった!」
一度こぼれると、後はとどまることなく涙があふれる。
「ありがとうございますナットさん! ナットさんのおかげで、弟は助かります!」
袋を抱えて、受付のお姉さんは泣きじゃくる。
僕とアルカは、お姉さんの方を見ないようにしつつお姉さんが落ち着くのを待った。
「……すみません、もう大丈夫です。お恥ずかしいところをお見せしました」
お姉さんがカウンターの奥へ袋を運んでいく。戻って来た時には、すっかり普段の調子に戻っていた。流石プロだなぁ、と僕は感心した。
「ところで1つ、報告しないといけないことがあります。ダンジョンの中で、僕とアルカが不思議なものを見つけました」
「不思議な場所、ですか?」
僕は、レインボーリザードを探す途中で見つけた不思議な場所の話をする。
一見すると、その場所は他の場所と全く変わりない。しかし、その一帯だけ異常にモンスターが少ないのだ。
――まるで、何かを避けているかのように。
そして、その中心には、深い穴が空いていた。その奥から、1つの大きなモンスターの鼓動が聞こえてくる。
時々、穴の奥から何か巨大なものが動くような音が聞こえるのだ。
「……待ってください、直ちに調べます」
切り替わった受付のお姉さんが、カウンターの奥から分厚い本を持ってくる。
真剣な顔でページをめくっていく。
「……恐らく、そのモンスターは【ブロンズアームグリズリー】ではないかと思います。
「ブロンズアームグリズリーですか!? あの有名な!?」
この街の冒険者で、その名前を知らない者はいない。
1年前、街を襲撃したモンスターだ。
超巨大な熊のモンスターなのだが、青銅のような強固な装甲を纏っていて、あらゆる攻撃を弾き返すという。
当時ギルドに運よくプラチナ級冒険者が3人いたので迎撃したが、敗北。一方のブロンズアームグリズリーは、手傷を負った程度だったという。
冒険者ギルドは迎撃を諦め、市民を避難させることにした。
ブロンズアームグリズリーは商店エリアを我がもの顔で歩き回り、建物を壊しまくり、大量の食料を平らげたという。
正確な金額は分からないが、この支部の冒険者ギルドに所属する冒険者全員の1カ月分の収入に匹敵する被害が出たらしい。
「前回の襲撃も、丁度今くらいの季節でした。もしかすると、冬眠から覚めて腹を空かせて街を襲ったのかもしれません」
「私が聴いた音では、穴の奥にいるモンスターはいつ目覚めてもおかしくない状態でした」
「分かりました。一刻も早く戦力を整えて、討伐する必要があります」
受付のお姉さんが覚悟を決めたような目で宣言する。
「只今より、新たな緊急クエスト『アームグリズリーの討伐作戦』を発令します! そして、この作戦のリーダーとして、この場にいる最も信頼のおける冒険者、ナット=ソイルレットさんを指名します!!」
「ええ、僕がリーダーですか!?」
またレインボーリザードを詰め込んだ袋を馬車に乗せて持ち込んだのだが、今回は前回ほど驚かれなかった。
「まぁ、ナットさんですからね。これくらいのことはするんじゃないかと心の準備をしていましたよ」
と、若干呆れ気味の対応をされてしまったが。
納品専用カウンターで、アルカと一緒にレインボーリザードの角を斬り落として1つ1つ受付のお姉さんに手渡ししていく。
「ナットさん、レインボーリザード本体はどうされますか? 角以外の部位にはあまり価値がないので高くはないですが、素材として買取できますよ?」
「いえ、レインボーリザード本体の素材は自分で使おうかと思っています。この素材をつかってやりたいことがあるんです」
「マスター、また新しい#形態_モード_#を追加してくれるのですか!?」
アルカが目を輝かせて僕の方を見る。
「うん。難しい改造になりそうだから今回の討伐作戦には間に合わないけど、アルカがまたこれまでと違う戦術を使えるようにしたいんだ」
「楽しみです、マスター!」
そんな話をしながら、レインボーリザードの角を斬り落としていく。
――そしてようやく、全ての角を取り終えた。
「ありがとうございます、確かに受領しました」
角の入った袋を抱えて、受付のお姉さんが御礼をいう。
――その時、お姉さんの目から一筋の涙が零れ落ちる。
「ど、どうしました!?」
「すみません、実は……年の離れた私の弟も疫病に感染していまして。薬が無ければ1週間と言われていたのですが、これで弟は助かります……! 良かった、本当によかった!」
一度こぼれると、後はとどまることなく涙があふれる。
「ありがとうございますナットさん! ナットさんのおかげで、弟は助かります!」
袋を抱えて、受付のお姉さんは泣きじゃくる。
僕とアルカは、お姉さんの方を見ないようにしつつお姉さんが落ち着くのを待った。
「……すみません、もう大丈夫です。お恥ずかしいところをお見せしました」
お姉さんがカウンターの奥へ袋を運んでいく。戻って来た時には、すっかり普段の調子に戻っていた。流石プロだなぁ、と僕は感心した。
「ところで1つ、報告しないといけないことがあります。ダンジョンの中で、僕とアルカが不思議なものを見つけました」
「不思議な場所、ですか?」
僕は、レインボーリザードを探す途中で見つけた不思議な場所の話をする。
一見すると、その場所は他の場所と全く変わりない。しかし、その一帯だけ異常にモンスターが少ないのだ。
――まるで、何かを避けているかのように。
そして、その中心には、深い穴が空いていた。その奥から、1つの大きなモンスターの鼓動が聞こえてくる。
時々、穴の奥から何か巨大なものが動くような音が聞こえるのだ。
「……待ってください、直ちに調べます」
切り替わった受付のお姉さんが、カウンターの奥から分厚い本を持ってくる。
真剣な顔でページをめくっていく。
「……恐らく、そのモンスターは【ブロンズアームグリズリー】ではないかと思います。
「ブロンズアームグリズリーですか!? あの有名な!?」
この街の冒険者で、その名前を知らない者はいない。
1年前、街を襲撃したモンスターだ。
超巨大な熊のモンスターなのだが、青銅のような強固な装甲を纏っていて、あらゆる攻撃を弾き返すという。
当時ギルドに運よくプラチナ級冒険者が3人いたので迎撃したが、敗北。一方のブロンズアームグリズリーは、手傷を負った程度だったという。
冒険者ギルドは迎撃を諦め、市民を避難させることにした。
ブロンズアームグリズリーは商店エリアを我がもの顔で歩き回り、建物を壊しまくり、大量の食料を平らげたという。
正確な金額は分からないが、この支部の冒険者ギルドに所属する冒険者全員の1カ月分の収入に匹敵する被害が出たらしい。
「前回の襲撃も、丁度今くらいの季節でした。もしかすると、冬眠から覚めて腹を空かせて街を襲ったのかもしれません」
「私が聴いた音では、穴の奥にいるモンスターはいつ目覚めてもおかしくない状態でした」
「分かりました。一刻も早く戦力を整えて、討伐する必要があります」
受付のお姉さんが覚悟を決めたような目で宣言する。
「只今より、新たな緊急クエスト『アームグリズリーの討伐作戦』を発令します! そして、この作戦のリーダーとして、この場にいる最も信頼のおける冒険者、ナット=ソイルレットさんを指名します!!」
「ええ、僕がリーダーですか!?」
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