上 下
30 / 65

【ざまぁ回】第30話 勇者パーティーメンバー、借金を取り立てられる&強制労働施設【裏冒険者ギルド】へ連行される

しおりを挟む
 夜、とある酒場。

 店の真ん中にある一番大きいテーブルで、キキとカカが飲んだくれていた。

「クソッ! 本当は今日からマイホーム暮らしのはずだったのに宿暮らしに逆戻りだぜ! それもこれも、多分全部ナットが悪い!」
「兄者の言うとおりだ、きっと全部ナットのせいだ!」

 わめきながら2人は酒を飲む。

 勇者ハロンに頼み込んでお金を借りているのだが、早速無計画に使っている。

「すみませーん☆ お兄さんたち、隣良いですかぁ?」
「失礼します……」

 キキとカカの隣の席に、若い女性2人が座ってきた。

 1人は背の高い赤髪の女。背中には大剣を背負っている。

 1人は黒髪の背の小さい女。手には黒い鎖を握っている。

「ども、私の名前はゲッキー。【大剣使い】やってます~!」

「私は妹のメルツです……。【呪術師】です……」

 対極的な姉妹が自己紹介する。

(弟よ、もしかしてこれは――)
(間違いないぞ、兄者。これは――)
((逆ナンパというやつだ!!))

 キキとカカがアイコンタクトする。

(こんなに強くてカッコイイのにどうして俺たちモテないんだろうと思っていたが、ついにこの時が来たか!)
(俺たちの日頃の努力がついに認められる時が来たぞ、兄者!)

 キキとカカは有頂天になっていた。

(俺は背の高いほうを狙うぞ、弟よ!)
(兄者、俺は小さいほうが好みだ!)

「さぁ、お嬢さんたち、好きなものを注文するといいぜ」
「兄者の言うとおりだぜ。今日は俺たちのおごりだぜ」

 キキとカカは普段よりもキリッとした顔と声を作る。

「いえ、結構です。私達、あなた達兄弟の借金を取り立てに来ただけなので☆」

 ゲッキーが明るく言うと、キキとカカの表情が固まる。

「私達姉妹は、冒険者ギルド本部の借金取り立て部門みたいなところに所属してます」
「よろしくお願いします……。支払ってください……」

「しゃ、借金だと!? 俺たちがいつ借金したっていうんだよ!」
「兄者の言うとおりだ、金貨130枚とマイホームの権利書なら渡しただろうが!」

「いえ、それとは別件の。勇者パーティーで使っていたゴーレムを壊した弁償金です」

「「あっ」」

 キキとカカは、完全に弁償金のことを忘れていた。

「2人合わせて金貨2000枚。払って下さい……」

 呪術師メルツが囁くように催促する。

「「へっへっへ……」」

 キキとカカは、不敵に笑い始める。

「残念ながら、そんな金は払えないぜ!」
「なぜなら俺たちは今、金貨1枚も持っていないからだ!」

 歯茎が見えるほどの笑顔でキキとカカは笑う。

「あの決闘立会人と同じ冒険者ギルド本部所属だろうが何だろうが、怖くないぜ! 取り立てられるもんなら取り立てて見やがれ!」
「兄者の言うとおりだ、払えないものは払えないんだぜ!」

「良いですよ、払わなくて☆」

「「えっ」」

 ゲッキーの突然の申し出に、キキとカカは硬直する。

「払いたくないですよね~、お金。分かりますよその気持ち! だから払わなくっても良いです! 私も困ってる人からお金取り立てるの好きじゃないので、お互いハッピーですね!」

「「な、何だって~~!?」」

 キキとカカが飛び上がって喜ぶ。

「やったぜ弟よ! 借金なんて払わなくっていいんだ!」
「嬉しいぜ兄者! 借金返済に追われる日々は嫌だからな!」

 キキとカカが手を取り合って踊り出す。

 ――その時、2つのことが同時に起きた。

 1つ目。調子に乗ったキキとカカが転んだ。

 2つ目。ゲッキーか大剣を抜き、目にもとまらぬ速度で横なぎの一撃を放った。

 結果、一瞬前までキキとカカの首があった空間を大剣が通過していった。

「「……え?」」

 たまたま転ばなければ、キキとカカは首を斬り落とされていた。

「実は私達、ボスから『借金を払わないやつは、殺して内臓を持ってこい。頑丈な冒険者の内臓は色々と使い道がある』って言われてます。あと私、抵抗する人の首を斬り落とすのめっちゃ好きです☆」

「「ひえええええええぇ!! 殺されるうううううううううぅ!」」
 
「借金払うつもり、ないんですよね? ということは首斬ってもボスに怒られない! 最高ー☆」

 メルツが大剣を持ってキキとカカに迫る。

「「ややややややややヤバい奴だーーー!!」」

 キキとカカが一目散に酒場から逃げ出す。

 が、何もない地面で転ぶ。

「「いってええええええぇ!!」」

 キキとカカの足首には、黒い鎖が巻きついていた。

「逃がしません……」

 メルツの使った呪術【カースバインド】によって、キキとカカの足首に黒い鎖が巻きついていた。

 逃げられなくなったキキとカカに、ゆっくりとゲッキーが近づいていく。

「で、最後にもう一回聞きますけど、借金払いますー? 私的には払わないって言って首を斬らせて欲しいです☆」

「「払います払います!! 一生かかってでも払います! だから殺さないでえええええぇぇぇ!」」

「分かりました、では……これからキキさんとカカさんには強制労働施設【裏冒険者ギルド】に来て、働いて借金を返してもらいます」

 メルツが囁くような声でキキとカカに告げる。

 これが、キキとカカのさらなる人生どん底への旅の始まりだった。
しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。 貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。

捨てられた転生幼女は無自重無双する

紅 蓮也
ファンタジー
スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けた三歳になるアイリス・フォン・アリステラは、次期当主である年の離れた兄以外の家族と兄がつけたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士以外の使用人から疎まれていた。 アイリスを疎ましく思っている者たちや一部の者以外は知らないがアイリスは転生者でもあった。 ある日、寝ているとアイリスの部屋に誰かが入ってきて、アイリスは連れ去られた。 アイリスは、肌寒さを感じ目を覚ますと近くにその場から去ろうとしている人の声が聞こえた。 去ろうとしている人物は父と母だった。 ここで声を出し、起きていることがバレると最悪、殺されてしまう可能性があるので、寝たふりをして二人が去るのを待っていたが、そのまま本当に寝てしまい二人が去った後に近づいて来た者に気づくことが出来ず、また何処かに連れていかれた。 朝になり起こしに来た専属メイドが、アイリスがいない事を当主に報告し、疎ましく思っていたくせに当主と夫人は騒ぎたて、当主はアイリスを探そうともせずに、その場でアイリスが誘拐された責任として、専属メイドと専属騎士にクビを言い渡した。 クビを言い渡された専属メイドと専属騎士は、何も言わず食堂を出て行き身支度をして、公爵家から出ていった。 しばらく歩いていると、次期当主であるカイルが後を追ってきて、カイルの腕にはいなくなったはずのアイリスが抱かれていた。 アイリスの無事に安心した二人は、カイルの話を聞き、三人は王城に向かった。 王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。 アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。 ※諸事情によりしばらく連載休止致します。 ※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。

あなたの冒険者資格は失効しました〜最強パーティが最下級から成り上がるお話

此寺 美津己
ファンタジー
祖国が田舎だってわかってた。 電車もねえ、駅もねえ、騎士さま馬でぐーるぐる。 信号ねえ、あるわけねえ、おらの国には電気がねえ。 そうだ。西へ行こう。 西域の大国、別名冒険者の国ランゴバルドへ、ぼくらはやってきた。迷宮内で知り合った仲間は強者ぞろい。 ここで、ぼくらは名をあげる! ランゴバルドを皮切りに世界中を冒険してまわるんだ。 と、思ってた時期がぼくにもありました…

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

落ちこぼれの烙印を押された少年、唯一無二のスキルを開花させ世界に裁きの鉄槌を!

酒井 曳野
ファンタジー
この世界ニードにはスキルと呼ばれる物がある。 スキルは、生まれた時に全員が神から授けられ 個人差はあるが5〜8歳で開花する。 そのスキルによって今後の人生が決まる。 しかし、極めて稀にスキルが開花しない者がいる。 世界はその者たちを、ドロップアウト(落ちこぼれ)と呼んで差別し、見下した。 カイアスもスキルは開花しなかった。 しかし、それは気付いていないだけだった。 遅咲きで開花したスキルは唯一無二の特異であり最強のもの!! それを使い、自分を蔑んだ世界に裁きを降す!

(完)聖女様は頑張らない

青空一夏
ファンタジー
私は大聖女様だった。歴史上最強の聖女だった私はそのあまりに強すぎる力から、悪魔? 魔女?と疑われ追放された。 それも命を救ってやったカール王太子の命令により追放されたのだ。あの恩知らずめ! 侯爵令嬢の色香に負けやがって。本物の聖女より偽物美女の侯爵令嬢を選びやがった。 私は逃亡中に足をすべらせ死んだ? と思ったら聖女認定の最初の日に巻き戻っていた!! もう全力でこの国の為になんか働くもんか! 異世界ゆるふわ設定ご都合主義ファンタジー。よくあるパターンの聖女もの。ラブコメ要素ありです。楽しく笑えるお話です。(多分😅)

処理中です...