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【ざまぁ回】第21話 ゴーレム技師、勇者パーティーメンバーを軽んじられていたゴーレムの力でぶっ飛ばす

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 それは、一瞬の出来事だった。

 開幕からわずか1秒。流れるような動きでアーチャーのキキが弓を構え、矢をつがえ、放つ。

 矢は正確に僕の喉元を狙って飛来する。しかし、

”バシンッ!”

 アルカの左手が雷光のように閃き、矢を掴んで止める。

「なに!? あの女、俺様の矢を防いだだと!?」

 一瞬、闘技場内の空気が固まる。一般人には、いつの間にかアルカが矢を握っていたようにしか見えなかっただろう。

「マスターの予想した通りの展開になりましたね。流石です」

 そう、キキが開幕で僕の喉を狙ってくるということは予想出来ていた。

「作戦通り、アルカはキキを押さえてくれ! 僕はカカを倒す!」

 アルカがうなずき、猛然とキキの方へ駆けていく。キキも走り出す。

 そして、走ったままアルカへ向かって矢を放つ。走りながらでも矢の狙いの精度が落ちないのは、流石というべきだろう。

 アルカはキキを追いながら、飛んでくる矢を片っ端から素手ではたき落としていく。

「すげぇ、あの女の子、走りながら矢を全部弾いてる!」

「嘘だろ!? 動体視力が半端じゃない!」

 人間を遥かに超えるスペックの演算装置を搭載したアルカは、視覚からの情報1秒分を1000回に分割して処理を行っている。

 高速で飛来する矢であっても、後ろについた羽の羽毛1本1本まではっきりと見えているはずだ。

 動体視力が人間とは別次元だ。はっきり言って、矢を防ぎ損ねることはあり得ないだろう。

「オイ、よそ見してるんじゃねえぞナット! お前の相手はこの俺様だ!」

 僕の前に、ヒーラーのカカが立ちはだかっていた。

「クックック! ナット、お前は知らないだろうが、俺はヒーラーになる前は剣士のジョブをやってたんだぜ」

 いや、勇者パーティーにいたころ何度も聞いたぞ。

 ことあるごとに、僕に自慢していたじゃないか。

「ヒーラーの方が才能があったから乗り換えたけどな、剣士としてもゴールド級冒険者の実力があるんだぜ俺は!」

 得意げな顔でカカが剣を抜き、構える。

「どうしたナット、予想外の事態で計画が狂ってパニックか? ああ!?」

 いや、全く想定内なんだが。

「いいかよく聞けナット。お前が今からどうなるか、教えてやるよ。お前は今から俺になすすべもなくぶっ飛ばされて、間抜けな悲鳴を上げる羽目になるのさ! オラ行くぜ……ちょっと待て。なんだそのゴーレムは」

 僕は戦闘用のインスタントゴーレムを生み出していた。

 戦闘用に防御力と攻撃力を重視した、大型のインスタントゴーレムだ。身長はカカより遥かに高い。

「行け、インスタントゴーレム!」

 インスタントゴーレムが剛腕を振るい、カカを殴り飛ばす!

「ぽぎゃああああああああああぁ!?」

 なすすべなく殴り飛ばされたカカは、間抜けな悲鳴を上げてぶっ飛んでいった。
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