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最終話 『マコ』 3/4
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「いやぁバレちゃったかぁ。ううん、やっとバレたか、かな」
私の指摘にマコちゃん────ううん、マコはあちゃーとゆるく笑った。
そこには後ろめたさのようなものはやっぱりなくって、いたずらがバレたような気軽さすら感じた。
「それで、どこで気付いたの? あんなにずっと気付かなかったのに」
本当にマコは冷静なもので、ゆっくりと飲み物を飲みながら普通の調子で訪ねてくる。
「馬鹿な話だとは思ってるよ。今思えば変なところは色々あったから。その中で私が明確に引っかかったのは二つかな」
私は努めて冷静にその質問へと答える。
カバンから以前お揃いで買って私がプレゼントをした、ヒョロ長い亀のストラップを取り出す。
「これを選んでくれた時、私のウサギを見て言ったんだよ。『今度はアリサちゃんがピンクね』って。どうして『マコちゃん』があの子に片割れがいて、それがピンクだって知ってるの?」
「なるほど、確かに。全然気付かなかったよ」
マコはやっぱり特に動揺は見せず、うっかりミスを指摘されたくらいの軽いリアクションのまま。
もうそれに何かを思うことなく私は続けた。
「もう一つはこの間の時。『マコちゃん』は私に、『高校のころの親友さん』って言ったけど、それはおかしいんだよ」
「どうして? 私たち、高校の同級生じゃん」
「うん。でも私、『マコちゃん』にはそこまで言ってないから。あえてぼかして、『昔の親友』としか」
「おっと……」
これには流石に少しの驚きを見せたマコ。それでも余裕は全く崩れていない。
『マコちゃん』にマコの存在を打ち明けはしたけれど、進んで詳しく話したいことではなかったから、最小限のことしか伝えなかった。
なのに私たちが高校時代の関係だと知っているとなれば、それは私たちの当時を知っている人間でしかあり得ない。
「なるほどねぇ。それはうっかりしてたよ。でも、よくそれだけで答えが出たね。あんなに『マコちゃん』を信じ切ってたのに」
「まぁ、正直それだけじゃ断定はできなかったし、答えには辿り着かなかったよ。でも疑う気持ちは明確になったから。だから私、マコの妹ちゃんに連絡とったの」
「え?」
そこでようやくマコの表情が揺らいだ。
笑顔が薄れ、少しだけれど眉が寄る。
「アリサ、あの子と会ったことなかったよね?」
「うん。直接の面識はなかったんだけどね、昔SNSの知り合い候補に出てきて、お互い存在は認識してたから何となく繋がってたんだよ。もちろん、今までやり取りはしたことなかったんだけど」
「あー。そういうルートがあったかぁ」
やってしまったというふうに肩をすくめるマコ。
正直私としても、その方法を使うことを思いついたのは本当に奇跡的な閃きだった。
世代の割に時流に疎い私は、SNSなんかを全然使いこなせていなかったから。
でも思い切ってメッセージを送ってみたら案外あっさりと返信があって。
それから電話で話をさせてもらって、マコの近況を知ることができた。
そしてそのSNSの妹ちゃんの投稿写真を見て、妹ちゃんと『マコちゃん』の風貌が似ていることに気づいて。
お姉ちゃんがいたり、実年齢より三つ年下の設定の『マコちゃん』が、誰をモデルにしているのかを察したんだ。
「妹ちゃんがね、お店の名前こそ知らなかったけど、マコがこういうところで働いてることを教えてくれてね。それでやっと、私は現実を受け入れたよ」
「そういうことか。なるほど。それは私の完敗だ」
降参と手を挙げるマコだけれど、完敗なのは私の方だ。
当の本人に他人を演じられて、全く気付くことができなかったんだから。
本当に馬鹿で愚かだ、私は。
でもそれで打ちひしがれている場合じゃない。
私は大きく息を吐いていから続けた。
「それで、どうしてなの? どうして、こんなことをしたの?」
「それは、私がどうしてこういう仕事してるかってこと?」
「そう、じゃなくて……どうして、他人のふりなんかしたのかってこと」
「あぁ……」
私がそう追求すると、マコはようやく少し気まずそうな顔をした。
「だってほら、身体売りに行ったら知り合いがいたわけでしょ? 他人の振りもしたくなるよ」
「それは、そうかもしれないけど。でも、最初の一回はともかく、どうしてそれからも私と会い続けたの? NGできるでしょ」
「そうだけど。でもなんていうかな……」
マコは言葉を選ぶように口ごもってから、けれど私のことまっすぐ見つめた。
昔から変わらない愛らしい顔で、とても真面目に。
「アリサなら、気付かないんじゃないかなって思って」
「は、はぁ……?」
「でも実際、気付かなかったでしょ?」
痛いところをつかれて、私は何も言い返せなかった。
マコは目を細め、ゆっくりと続ける。
「アリサは絶対気付かない。それを一回目で確信したの。だから、アリサがまた『私』と会いたいなら、付き合ってあげようかなって思って」
「それで、『マコちゃん』を演じ続けてたって、そういうこと……? でも、なんていうかその、流石にリスキーすぎるでしょ。バレたら揉めることくらい……」
現にこうして揉めている。
からかうにしても度が過ぎているように思った。
でもマコは首を横に振る。
「言ったでしょ? 絶対に気付かれないって確信したの。一回目でバレなかったっていうのもあるけど。でもさ、私ってアリサの親友だから、知ってるんだよね。アリサは、私のことなんて見てなかったって」
「そ、そんなこと……。確かに気付かなかったけど、でも私はあの頃誰よりもマコのことを見て────」
「うん。確かに私たちはずっと一緒にいたから、アリサは私のこと見てはいたけど。でもアリサが見てたのは、私の好きなところだけでしょ? アリサは、私の嫌なとこは見なかった。自分の好きな私しか見てなかったよ」
「っ────」
何も言い返せなかった。
今ままでそういう自覚はなかったけれど、思い返せばその通りだった。
一番顕著なのが、進学後変わってしまったマコのことを受け入れられなかったこと。
私の知っている、私が好きなマコのことしか、私は受け入れられなかった。
『マコちゃん』のことだってそうだ。
マコを感じられ、見出せるところは好きだったけれど、私の想定を大きく逸脱するところには拒否反応が出た。
私がマコらしくないと思ったこと、マコにして欲しくない思ったこと、それらを『マコちゃん』がすることを受け入れられなかった。
それはひとえに、私がマコを自分の都合のいいようにしか見てない証だった。
「それは、確かにそうかもしれない。本当にごめんなさい。でもやっぱり納得いかない。例えバレない確証があったとしても、私と会い続けて、あそこまでした理由が、私には────」
「アリサが私のこと好きなのは知ってたから」
私の訴えを、マコはこともなげにそう言い捨てて返した。
わかり切っていることだと、そう言うように。
頭が真っ白になった。
「高校生の時から知ってたの。アリサの好きが、友達以上だってこと。だからせっかくだし、アリサの願いを叶えてあげようと思って。もちろんプロとしてだけど」
「ッ────!」
気がつけば、私はマコの頬を思いっきり叩いていた。
悲しいからなのか、怒りからなのか、自分でもよくわからない。
でももう、我慢できなかった。
「やめて、もうやめて……」
「……でも、それが現実だよ。まだ現実逃避するの? また、自分の都合のいい私だけを見る?」
「違う! そういうことじゃない!」
マコは私の平手に憤ることもなく、冷静な瞳で見つめてくる。
その冷ややかな視線に惑わされそうになりながら、それでも私は心を決めた。
「嘘だから。そんなの、嘘だから!」
「嘘じゃないよ。この期に及んで嘘なんてつかないって」
「ううん、嘘だよ。別にこれは都合のいいように解釈してるわけじゃない。現実逃避で言ってるわけじゃないから」
「何それ」
震える手を握りしめることで押さえ込む。
息巻く私に、マコは眉をひそめた。
見たこともないマコの冷ややかな態度に気押されそうになりながら、でも負けないと奮い立たせる。
「私は信じてるの、マコのこと。今だってずっと。変わって、私の知ってるマコじゃなくなっても。それでも、私が好きだったマコがいなくなったわけじゃないって、そう信じてる」
「だから、それは現実逃避だよ。私はもう昔とは違う。私はただ、私を好きって引きずりながら、私だって気付かないアリサをからかってただけ!」
「違う! マコ、それは違うよ!」
「違わないよ! 私自身がそう言ってるじゃん! 何言っての!? だからアリサはわかってないんだよ!」
いつの間にか、二人とも昔のように声を張り上げていた。
他のお客さんが何事かとざわついていたけれど、私たちに気にする余裕はなくて。
「違う、私は信じてる! だって、例えどんなに変わっても、昔がなかったことになるわけじゃないんだから。今のマコにも、どんなマコにも、私の好きなマコはいるって、私はそう信じるって決めたの!」
だって、そうじゃなければあの『マコちゃん』はできなかっただろうから。
マコが本当にかつてのマコを失っていたら、あんな風に笑うことはできなかっただろうから。
だから私は、マコを信じる。
今も尚、私のことを『親友』だと言ったマコのことを、信じる。
例え、マコ自身が自分を何て言おうとも。
「何それ……意味、わかんない……」
私の叫びに、マコはくてっと体の力を抜いた。
冷め切った表情が揺らぎ、戸惑いの色が浮かぶ。
「なんでよ。アリサは変わった私のことなんて、嫌いなくせに……なんで……」
「だって、私たちは親友だから。ずっと、何があっても親友だから。喧嘩したって、嫌いになったって、ずっと会わなくなったって。それは変わらないんだよ」
過去のものにして気持ちに蓋をしようとしても、でも私はマコのことが忘れられなくて。
それはやっぱり、好きという気持ちを除いてもマコのことを大切に思っていたからだ。
だから私は、嘘をついて偽ってでも私のそばにいてくれた、このマコのことも信じる。
「ひどいよ、アリサ。今更、今更私に向き合おうとするなんて。気持ちを言わせようとするなんて」
気がつけばマコは泣いていた。私も泣いていた。
でももう止まらない。止められない。
お互い、現実を見る時だった。
「言えるわけないじゃん、そんなの……。私が、私が……」
嗚咽混じりの言葉は、けれど私にしっかりと届いた。
「私だって、アリサのことがずっと好きだったなんて、今更言えるわけないじゃん!!!」
私の指摘にマコちゃん────ううん、マコはあちゃーとゆるく笑った。
そこには後ろめたさのようなものはやっぱりなくって、いたずらがバレたような気軽さすら感じた。
「それで、どこで気付いたの? あんなにずっと気付かなかったのに」
本当にマコは冷静なもので、ゆっくりと飲み物を飲みながら普通の調子で訪ねてくる。
「馬鹿な話だとは思ってるよ。今思えば変なところは色々あったから。その中で私が明確に引っかかったのは二つかな」
私は努めて冷静にその質問へと答える。
カバンから以前お揃いで買って私がプレゼントをした、ヒョロ長い亀のストラップを取り出す。
「これを選んでくれた時、私のウサギを見て言ったんだよ。『今度はアリサちゃんがピンクね』って。どうして『マコちゃん』があの子に片割れがいて、それがピンクだって知ってるの?」
「なるほど、確かに。全然気付かなかったよ」
マコはやっぱり特に動揺は見せず、うっかりミスを指摘されたくらいの軽いリアクションのまま。
もうそれに何かを思うことなく私は続けた。
「もう一つはこの間の時。『マコちゃん』は私に、『高校のころの親友さん』って言ったけど、それはおかしいんだよ」
「どうして? 私たち、高校の同級生じゃん」
「うん。でも私、『マコちゃん』にはそこまで言ってないから。あえてぼかして、『昔の親友』としか」
「おっと……」
これには流石に少しの驚きを見せたマコ。それでも余裕は全く崩れていない。
『マコちゃん』にマコの存在を打ち明けはしたけれど、進んで詳しく話したいことではなかったから、最小限のことしか伝えなかった。
なのに私たちが高校時代の関係だと知っているとなれば、それは私たちの当時を知っている人間でしかあり得ない。
「なるほどねぇ。それはうっかりしてたよ。でも、よくそれだけで答えが出たね。あんなに『マコちゃん』を信じ切ってたのに」
「まぁ、正直それだけじゃ断定はできなかったし、答えには辿り着かなかったよ。でも疑う気持ちは明確になったから。だから私、マコの妹ちゃんに連絡とったの」
「え?」
そこでようやくマコの表情が揺らいだ。
笑顔が薄れ、少しだけれど眉が寄る。
「アリサ、あの子と会ったことなかったよね?」
「うん。直接の面識はなかったんだけどね、昔SNSの知り合い候補に出てきて、お互い存在は認識してたから何となく繋がってたんだよ。もちろん、今までやり取りはしたことなかったんだけど」
「あー。そういうルートがあったかぁ」
やってしまったというふうに肩をすくめるマコ。
正直私としても、その方法を使うことを思いついたのは本当に奇跡的な閃きだった。
世代の割に時流に疎い私は、SNSなんかを全然使いこなせていなかったから。
でも思い切ってメッセージを送ってみたら案外あっさりと返信があって。
それから電話で話をさせてもらって、マコの近況を知ることができた。
そしてそのSNSの妹ちゃんの投稿写真を見て、妹ちゃんと『マコちゃん』の風貌が似ていることに気づいて。
お姉ちゃんがいたり、実年齢より三つ年下の設定の『マコちゃん』が、誰をモデルにしているのかを察したんだ。
「妹ちゃんがね、お店の名前こそ知らなかったけど、マコがこういうところで働いてることを教えてくれてね。それでやっと、私は現実を受け入れたよ」
「そういうことか。なるほど。それは私の完敗だ」
降参と手を挙げるマコだけれど、完敗なのは私の方だ。
当の本人に他人を演じられて、全く気付くことができなかったんだから。
本当に馬鹿で愚かだ、私は。
でもそれで打ちひしがれている場合じゃない。
私は大きく息を吐いていから続けた。
「それで、どうしてなの? どうして、こんなことをしたの?」
「それは、私がどうしてこういう仕事してるかってこと?」
「そう、じゃなくて……どうして、他人のふりなんかしたのかってこと」
「あぁ……」
私がそう追求すると、マコはようやく少し気まずそうな顔をした。
「だってほら、身体売りに行ったら知り合いがいたわけでしょ? 他人の振りもしたくなるよ」
「それは、そうかもしれないけど。でも、最初の一回はともかく、どうしてそれからも私と会い続けたの? NGできるでしょ」
「そうだけど。でもなんていうかな……」
マコは言葉を選ぶように口ごもってから、けれど私のことまっすぐ見つめた。
昔から変わらない愛らしい顔で、とても真面目に。
「アリサなら、気付かないんじゃないかなって思って」
「は、はぁ……?」
「でも実際、気付かなかったでしょ?」
痛いところをつかれて、私は何も言い返せなかった。
マコは目を細め、ゆっくりと続ける。
「アリサは絶対気付かない。それを一回目で確信したの。だから、アリサがまた『私』と会いたいなら、付き合ってあげようかなって思って」
「それで、『マコちゃん』を演じ続けてたって、そういうこと……? でも、なんていうかその、流石にリスキーすぎるでしょ。バレたら揉めることくらい……」
現にこうして揉めている。
からかうにしても度が過ぎているように思った。
でもマコは首を横に振る。
「言ったでしょ? 絶対に気付かれないって確信したの。一回目でバレなかったっていうのもあるけど。でもさ、私ってアリサの親友だから、知ってるんだよね。アリサは、私のことなんて見てなかったって」
「そ、そんなこと……。確かに気付かなかったけど、でも私はあの頃誰よりもマコのことを見て────」
「うん。確かに私たちはずっと一緒にいたから、アリサは私のこと見てはいたけど。でもアリサが見てたのは、私の好きなところだけでしょ? アリサは、私の嫌なとこは見なかった。自分の好きな私しか見てなかったよ」
「っ────」
何も言い返せなかった。
今ままでそういう自覚はなかったけれど、思い返せばその通りだった。
一番顕著なのが、進学後変わってしまったマコのことを受け入れられなかったこと。
私の知っている、私が好きなマコのことしか、私は受け入れられなかった。
『マコちゃん』のことだってそうだ。
マコを感じられ、見出せるところは好きだったけれど、私の想定を大きく逸脱するところには拒否反応が出た。
私がマコらしくないと思ったこと、マコにして欲しくない思ったこと、それらを『マコちゃん』がすることを受け入れられなかった。
それはひとえに、私がマコを自分の都合のいいようにしか見てない証だった。
「それは、確かにそうかもしれない。本当にごめんなさい。でもやっぱり納得いかない。例えバレない確証があったとしても、私と会い続けて、あそこまでした理由が、私には────」
「アリサが私のこと好きなのは知ってたから」
私の訴えを、マコはこともなげにそう言い捨てて返した。
わかり切っていることだと、そう言うように。
頭が真っ白になった。
「高校生の時から知ってたの。アリサの好きが、友達以上だってこと。だからせっかくだし、アリサの願いを叶えてあげようと思って。もちろんプロとしてだけど」
「ッ────!」
気がつけば、私はマコの頬を思いっきり叩いていた。
悲しいからなのか、怒りからなのか、自分でもよくわからない。
でももう、我慢できなかった。
「やめて、もうやめて……」
「……でも、それが現実だよ。まだ現実逃避するの? また、自分の都合のいい私だけを見る?」
「違う! そういうことじゃない!」
マコは私の平手に憤ることもなく、冷静な瞳で見つめてくる。
その冷ややかな視線に惑わされそうになりながら、それでも私は心を決めた。
「嘘だから。そんなの、嘘だから!」
「嘘じゃないよ。この期に及んで嘘なんてつかないって」
「ううん、嘘だよ。別にこれは都合のいいように解釈してるわけじゃない。現実逃避で言ってるわけじゃないから」
「何それ」
震える手を握りしめることで押さえ込む。
息巻く私に、マコは眉をひそめた。
見たこともないマコの冷ややかな態度に気押されそうになりながら、でも負けないと奮い立たせる。
「私は信じてるの、マコのこと。今だってずっと。変わって、私の知ってるマコじゃなくなっても。それでも、私が好きだったマコがいなくなったわけじゃないって、そう信じてる」
「だから、それは現実逃避だよ。私はもう昔とは違う。私はただ、私を好きって引きずりながら、私だって気付かないアリサをからかってただけ!」
「違う! マコ、それは違うよ!」
「違わないよ! 私自身がそう言ってるじゃん! 何言っての!? だからアリサはわかってないんだよ!」
いつの間にか、二人とも昔のように声を張り上げていた。
他のお客さんが何事かとざわついていたけれど、私たちに気にする余裕はなくて。
「違う、私は信じてる! だって、例えどんなに変わっても、昔がなかったことになるわけじゃないんだから。今のマコにも、どんなマコにも、私の好きなマコはいるって、私はそう信じるって決めたの!」
だって、そうじゃなければあの『マコちゃん』はできなかっただろうから。
マコが本当にかつてのマコを失っていたら、あんな風に笑うことはできなかっただろうから。
だから私は、マコを信じる。
今も尚、私のことを『親友』だと言ったマコのことを、信じる。
例え、マコ自身が自分を何て言おうとも。
「何それ……意味、わかんない……」
私の叫びに、マコはくてっと体の力を抜いた。
冷め切った表情が揺らぎ、戸惑いの色が浮かぶ。
「なんでよ。アリサは変わった私のことなんて、嫌いなくせに……なんで……」
「だって、私たちは親友だから。ずっと、何があっても親友だから。喧嘩したって、嫌いになったって、ずっと会わなくなったって。それは変わらないんだよ」
過去のものにして気持ちに蓋をしようとしても、でも私はマコのことが忘れられなくて。
それはやっぱり、好きという気持ちを除いてもマコのことを大切に思っていたからだ。
だから私は、嘘をついて偽ってでも私のそばにいてくれた、このマコのことも信じる。
「ひどいよ、アリサ。今更、今更私に向き合おうとするなんて。気持ちを言わせようとするなんて」
気がつけばマコは泣いていた。私も泣いていた。
でももう止まらない。止められない。
お互い、現実を見る時だった。
「言えるわけないじゃん、そんなの……。私が、私が……」
嗚咽混じりの言葉は、けれど私にしっかりと届いた。
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