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最終章 氷室 霰のレクイエム
2 魔を絶つ剣で
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落胆と共に身体中の力が抜けて、氷室さんを背負っていられなくなる。
諦めるつもりは毛頭ないけれど、でも自分自身の疲労も凄まじくて、一旦氷室さんを下ろすことにした。
少しでも乱暴に扱ってしまえば、ガラス細工のように砕けてしまいそうな、そんな凍りついた身体。
慎重に床へと寝かせると余計に、そこに生気が感じられないことがわかってしまった。
元々白い肌は霜が降りて冷ややかで、体は骨まで凍りついたように軋んでいる。
なんとか真っ直ぐ寝かせることはできたけれど、それでも、少し気を抜けば砕けてしまいそうだ。
「…………」
静かに目を閉じている氷室さんは、意識を失っているだけなのか、はたまたもう二度と目を覚まさないのか。
普通に考えれば、どう見たって人が生きていられる状態ではなく、永遠の眠りのように思える。
でもこうして深く繋がっている私には、わかるんだ。わかる気がするんだ。
まだ、終わってはいないって。
そう思いたいだけだと言われれば、それまで。私にだって確信は持てない。
誰かにもうダメだよとは言われたら、そう納得しそうになるくらい、今の氷室さんは生気がない。
それでも受け入れたくなくて、認めたくなくて、許したくなくて。
まだなんとかなるって、自分に言い聞かせているんだ。
それでも、今どうすることが最善なのか、わからない。
一番なんとかできそうな私の力は、今は全く使えない。
向こうの世界に希望を持っても渡る手段が全くない。
世界の隔たりが不安定な今なら、魔法を使わなくても世界を移動できるかもしれないし、それに賭けてみるのもいいかもしれない。
ほんの僅かにでも可能性があるものは、全て試したい。最後の最後まで足掻き尽くしたい。
けれど、私の体も相当ガタがきていて、無茶をするのにも限界があるように思えた。
氷室さんを助けるためなら、自分なんてどうなっても構わないけれど。でも、私が倒れたら彼女を助けることができない。
一度はジャバウォックに屈した私の体は、混沌に蹂躙されていてボロボロで。
世界を破滅させる概念そのものである魔物を打倒するのに使った私の力は、文字通り全身全霊だった。
全てを賭した戦いを終えた今、私だってこうして動けることが嘘のように思える。
氷室さんを助けたいという一心で、限界を無理矢理越えているんだ。
「どうすれば、いいんだろう。どうすれば、あなたを助けられるんだろう。氷室さん……」
触れていられないくらいに冷たい、氷室さんの頬を撫でる。
閉じられた瞳は私を映してはくれなくて、ゆっくりと、でも確実にその体は凍結が進んでいる。
どんなに呼びかけても反応はなくて、物語にある奇跡のように、声に応えて目を覚ますこともない。
「…………あれ?」
どんどんと、果てしなく冷たくなっていく氷室さんを見つめていた時、私は今更ながら、自分の手の中のものに気がついた。
氷室さんのことで頭がいっぱいで、自分がこれをずっと握りしめていることに、今の今まで気づかなかった。
私の手には、刀身の折れた純白の剣が固く握られていた。
ジャバウォックを倒した時、これは私自身の力によって姿を変え、金色に輝いた。
けれど今は元々の『真理の剣』に戻っていて、砕けた姿もそもまま。
私の力が枯渇している今、あの時の剣もまた消えてしまったということだ。
ジャバウォックを打倒し得なかった、中途半端な力しか発揮できていなかった『真理の剣』。
でもそれは飽くまで、相反する強力な存在である混沌に押し負けただけであって、これはいつだって絶対的な能力を発揮してきた。
あらゆる魔法、魔力を有するものを破却して、幻想を打ち砕く力を持っていたんだ。
「────もしかして」
ハッと、思い至る。
『真理の剣』ならば、氷室さんのこの状況を打開することができるんじゃないかって。
魔法やそれに付随する現象、神秘を打ち消すこの剣ならば、氷室さんを蝕むものを砕くことができるんじゃないかって。
『魔女ウィルス』そのものをどうにかすることはできないと、今までの経験からもわかる。
それができたなら、これの力で全ての魔女を救うことができたはずだから。
アリアや千鳥ちゃんの反応から、今の氷室さんは魔力の過剰使用によって消耗し、そのせいで『魔女ウィルス』が体に害を与えている、といった感じだった。
本来の『魔女ウィルス』の侵食であれば、晴香の時のように体を激しく蝕んでいるはずだ。
でも今の氷室さんはそうではなく、過ぎた力のフィードバックを受けていることがメインで、ウィルスの侵食は副次的なもののように見える。
なら、その過剰な力の弊害を打ち砕くことができれば、完全に助けることはできなくても、状況を打開することができるんじゃないのかな。
「考えてる場合じゃない。やれることは、なんでもやるんだ……!」
正直、折れてしまったこの剣に、今までと同じような力を期待できるかはわからない。
けれどもはや、それすらも思案している場合じゃない。やってみてダメなら、また別の方法を考えるまでだ。
確証なんてなくても、氷室さんを助けられる可能性が一ミリでもあるんなら、全部やる。
私は短くなってしまった『真理の剣』を逆手に握りしめ、大きく掲げた。
大丈夫、きっと大丈夫だ。この剣は、体を貫かずに狙いの魔法だけを砕くことだってできる。
氷室さんを傷つけるような心配は、万に一つもありはしない。
そうわかってはいても、剣を突きつけるのは少し勇気が必要で。
でも躊躇っている余裕なんてないと、私は覚悟を決めた。
「お願い、氷室さん。帰って来て……!」
願いを込めて、折れた剣を振り下ろす。
なんの力も使えない今の私には、この剣に込められるものは気持ちしかない。
でも私は知っている。人を想う気持ちが、強い力を生み出すって。
だから、この心の全ての想いを、剣に込めた。
砕けた刀身の断面が氷室さんの胸に降りる。
それは何度か経験した時と同じように、肉体を無視してするりと中に沈んでいって。
半端な刃が、根本まで深く食い込んだ。
それだけで、『真理の剣』がその力をまだ有していることがわかった。
あとは、この力が氷室さんを救うになるものかどうかだけ────
「ッ…………!?」
パンッと、眩い光が氷室さんの胸元で弾けた。
それは明らかに、『真理の剣』がなんらかの魔法を打ち砕いた感触。
氷室さんの体を蝕んでいた魔法が、崩壊した霧散の輝きだった。
「氷室さん! 氷室さん……!」
成功したんだと、私は身を乗り出して呼びかけた。
この剣が氷室さんを苦しめているものを打ち消したのなら、彼女はこれ以上蝕まれなくなるかもしれない。
助かるかもしれない。息を吹き返すかもしれない。目を開いてくれるかもしれない。
私の呼びかけに、応えてくれるかもしれない。
剣を引き抜き、その体に縋りつきながら、何度も何度も名前を呼ぶ。
解けた魔法は赤い輝きを放って揺めき、小さな玉のような光が飛び出して、すぅっとどこかへいく。
霧散する魔法の輝きとは違うようなそれを、思わず目で追って。
けれど氷室さんの体が僅かにビクッと揺れたのを受けて、私は慌てて視線を下ろした。
「……! ねぇ、聞こえる!? 私だよ! お願い、返事をして……!」
今まで完全に止まってしまっていた氷室さんが、身を揺らした。
その現実に私は息が止まりそうになりながら、懸命に呼びかけた。
大丈夫、もう絶対大丈夫なんだと信じながら。
「お願い、私を一人にしないで! 返事をして! 目を覚ましてよぉ……!」
その胸に顔を埋めて、子供のように泣きつく。
何度も何度も、強く強く、心からの想いを込めて。
もう私には、そんなことしかできなかった。
「────アリスちゃん」
そして、私を呼ぶ声が一つ。
けれどそれは、氷室さんの口から溢れた言葉ではなかった。
声は、背後から。
混乱した頭で、恐る恐る振り返ると、そこには。
ベッドの上で体を起こしている、透子ちゃんの姿があった。
諦めるつもりは毛頭ないけれど、でも自分自身の疲労も凄まじくて、一旦氷室さんを下ろすことにした。
少しでも乱暴に扱ってしまえば、ガラス細工のように砕けてしまいそうな、そんな凍りついた身体。
慎重に床へと寝かせると余計に、そこに生気が感じられないことがわかってしまった。
元々白い肌は霜が降りて冷ややかで、体は骨まで凍りついたように軋んでいる。
なんとか真っ直ぐ寝かせることはできたけれど、それでも、少し気を抜けば砕けてしまいそうだ。
「…………」
静かに目を閉じている氷室さんは、意識を失っているだけなのか、はたまたもう二度と目を覚まさないのか。
普通に考えれば、どう見たって人が生きていられる状態ではなく、永遠の眠りのように思える。
でもこうして深く繋がっている私には、わかるんだ。わかる気がするんだ。
まだ、終わってはいないって。
そう思いたいだけだと言われれば、それまで。私にだって確信は持てない。
誰かにもうダメだよとは言われたら、そう納得しそうになるくらい、今の氷室さんは生気がない。
それでも受け入れたくなくて、認めたくなくて、許したくなくて。
まだなんとかなるって、自分に言い聞かせているんだ。
それでも、今どうすることが最善なのか、わからない。
一番なんとかできそうな私の力は、今は全く使えない。
向こうの世界に希望を持っても渡る手段が全くない。
世界の隔たりが不安定な今なら、魔法を使わなくても世界を移動できるかもしれないし、それに賭けてみるのもいいかもしれない。
ほんの僅かにでも可能性があるものは、全て試したい。最後の最後まで足掻き尽くしたい。
けれど、私の体も相当ガタがきていて、無茶をするのにも限界があるように思えた。
氷室さんを助けるためなら、自分なんてどうなっても構わないけれど。でも、私が倒れたら彼女を助けることができない。
一度はジャバウォックに屈した私の体は、混沌に蹂躙されていてボロボロで。
世界を破滅させる概念そのものである魔物を打倒するのに使った私の力は、文字通り全身全霊だった。
全てを賭した戦いを終えた今、私だってこうして動けることが嘘のように思える。
氷室さんを助けたいという一心で、限界を無理矢理越えているんだ。
「どうすれば、いいんだろう。どうすれば、あなたを助けられるんだろう。氷室さん……」
触れていられないくらいに冷たい、氷室さんの頬を撫でる。
閉じられた瞳は私を映してはくれなくて、ゆっくりと、でも確実にその体は凍結が進んでいる。
どんなに呼びかけても反応はなくて、物語にある奇跡のように、声に応えて目を覚ますこともない。
「…………あれ?」
どんどんと、果てしなく冷たくなっていく氷室さんを見つめていた時、私は今更ながら、自分の手の中のものに気がついた。
氷室さんのことで頭がいっぱいで、自分がこれをずっと握りしめていることに、今の今まで気づかなかった。
私の手には、刀身の折れた純白の剣が固く握られていた。
ジャバウォックを倒した時、これは私自身の力によって姿を変え、金色に輝いた。
けれど今は元々の『真理の剣』に戻っていて、砕けた姿もそもまま。
私の力が枯渇している今、あの時の剣もまた消えてしまったということだ。
ジャバウォックを打倒し得なかった、中途半端な力しか発揮できていなかった『真理の剣』。
でもそれは飽くまで、相反する強力な存在である混沌に押し負けただけであって、これはいつだって絶対的な能力を発揮してきた。
あらゆる魔法、魔力を有するものを破却して、幻想を打ち砕く力を持っていたんだ。
「────もしかして」
ハッと、思い至る。
『真理の剣』ならば、氷室さんのこの状況を打開することができるんじゃないかって。
魔法やそれに付随する現象、神秘を打ち消すこの剣ならば、氷室さんを蝕むものを砕くことができるんじゃないかって。
『魔女ウィルス』そのものをどうにかすることはできないと、今までの経験からもわかる。
それができたなら、これの力で全ての魔女を救うことができたはずだから。
アリアや千鳥ちゃんの反応から、今の氷室さんは魔力の過剰使用によって消耗し、そのせいで『魔女ウィルス』が体に害を与えている、といった感じだった。
本来の『魔女ウィルス』の侵食であれば、晴香の時のように体を激しく蝕んでいるはずだ。
でも今の氷室さんはそうではなく、過ぎた力のフィードバックを受けていることがメインで、ウィルスの侵食は副次的なもののように見える。
なら、その過剰な力の弊害を打ち砕くことができれば、完全に助けることはできなくても、状況を打開することができるんじゃないのかな。
「考えてる場合じゃない。やれることは、なんでもやるんだ……!」
正直、折れてしまったこの剣に、今までと同じような力を期待できるかはわからない。
けれどもはや、それすらも思案している場合じゃない。やってみてダメなら、また別の方法を考えるまでだ。
確証なんてなくても、氷室さんを助けられる可能性が一ミリでもあるんなら、全部やる。
私は短くなってしまった『真理の剣』を逆手に握りしめ、大きく掲げた。
大丈夫、きっと大丈夫だ。この剣は、体を貫かずに狙いの魔法だけを砕くことだってできる。
氷室さんを傷つけるような心配は、万に一つもありはしない。
そうわかってはいても、剣を突きつけるのは少し勇気が必要で。
でも躊躇っている余裕なんてないと、私は覚悟を決めた。
「お願い、氷室さん。帰って来て……!」
願いを込めて、折れた剣を振り下ろす。
なんの力も使えない今の私には、この剣に込められるものは気持ちしかない。
でも私は知っている。人を想う気持ちが、強い力を生み出すって。
だから、この心の全ての想いを、剣に込めた。
砕けた刀身の断面が氷室さんの胸に降りる。
それは何度か経験した時と同じように、肉体を無視してするりと中に沈んでいって。
半端な刃が、根本まで深く食い込んだ。
それだけで、『真理の剣』がその力をまだ有していることがわかった。
あとは、この力が氷室さんを救うになるものかどうかだけ────
「ッ…………!?」
パンッと、眩い光が氷室さんの胸元で弾けた。
それは明らかに、『真理の剣』がなんらかの魔法を打ち砕いた感触。
氷室さんの体を蝕んでいた魔法が、崩壊した霧散の輝きだった。
「氷室さん! 氷室さん……!」
成功したんだと、私は身を乗り出して呼びかけた。
この剣が氷室さんを苦しめているものを打ち消したのなら、彼女はこれ以上蝕まれなくなるかもしれない。
助かるかもしれない。息を吹き返すかもしれない。目を開いてくれるかもしれない。
私の呼びかけに、応えてくれるかもしれない。
剣を引き抜き、その体に縋りつきながら、何度も何度も名前を呼ぶ。
解けた魔法は赤い輝きを放って揺めき、小さな玉のような光が飛び出して、すぅっとどこかへいく。
霧散する魔法の輝きとは違うようなそれを、思わず目で追って。
けれど氷室さんの体が僅かにビクッと揺れたのを受けて、私は慌てて視線を下ろした。
「……! ねぇ、聞こえる!? 私だよ! お願い、返事をして……!」
今まで完全に止まってしまっていた氷室さんが、身を揺らした。
その現実に私は息が止まりそうになりながら、懸命に呼びかけた。
大丈夫、もう絶対大丈夫なんだと信じながら。
「お願い、私を一人にしないで! 返事をして! 目を覚ましてよぉ……!」
その胸に顔を埋めて、子供のように泣きつく。
何度も何度も、強く強く、心からの想いを込めて。
もう私には、そんなことしかできなかった。
「────アリスちゃん」
そして、私を呼ぶ声が一つ。
けれどそれは、氷室さんの口から溢れた言葉ではなかった。
声は、背後から。
混乱した頭で、恐る恐る振り返ると、そこには。
ベッドの上で体を起こしている、透子ちゃんの姿があった。
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