普通のJK、実は異世界最強のお姫様でした〜みんなが私を殺したいくらい大好きすぎる〜

セカイ

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第0章 Dormire

52 『にんげんの国』

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 イヴニングの予想通り、ホーリーによる旅の話は膨らみに膨らんだ。
 彼女は二年かけて『にんげんの国』の中を巡っていたようで、そこで見知った珍しい出来事や物について、目を輝かせて私たちに語った。

 神秘を持たない人間の国は、他の国のように摩訶不思議には満ちていない。
 それに、多少文化や生活習慣に違いがあれど、同じ種族のヒトたちがいるのだから、大きな差異はない。
 けれどそれでも、こんな国外れの田舎から見ると興味深いこともあった。

 思えば私は『にんげんの国』のことは何も知らなかった。
 人間という種族の基本的な生態や文化は、元からあった知識の中にあったけれども。
 でもこの森に閉じこもっていた私は、この国がどういう仕組みで成り立っているかを全く知らない。

 それも相まって、ホーリーが語るこの国様子は、思いの外興味深く聞くことができた。

 神秘を持たない人間は世界からの恩恵を受けられず、その発展と繁栄は目覚ましくない。
 しかしその劣勢を、持ち前の器用さと技術で補っている。それは私も知っている基礎的なこと。
 実際他の国を巡ってみて、造形物はどれも『にんげんの国』のものの方が優れていることが多かった。

 確か『どうぶつの国』の図書館に通っていた時、紙はほとんど『にんげんの国』からの輸入品だという話を聞いた。
『どうぶつの国』を始め、他の国ではそういう細かい製造作業など自体が難しいらしい。

 私が知る二人の町の様子を窺っただけでも、建築技術や農具などの道具類、衣服などは、明らかに人間のものの方が効率的で機能的だった。
 ホーリーの話によれば、国の中心に位置する王都に近くなればなるほど、豊かな人々が多くなり、持つ技術も向上していくようだ。

 確かに王都、つまり国の首都やその近くに人が集まるのは常だ。
 それを考えれば、秀でた人物が寄るのもまた必定で、技術や生活感の向上に繋がることにも納得できる。
 神秘を持たない人間の場合、技術で補っているのは種族全体での話で、実際の技術の有る無しは個人差になる。
 能力を持つ人間、或いはそれに通ずる人間が首都部に集い、そこを中心に栄えていっているんだろう。

 これは神秘を持つ他種族との、明確な違いの一つだ。
 他の種族は、基本的に皆同一の神秘を持ち、使いこなしに個人差はあれど、百とゼロのような極端な差は生まれない。
 しかし個人の能力値に左右される人間は、その有無によって貧富の差が生まれてしまうんだ。
 だからこそこの国外れは、『にんげんの国』の中でも貧しい部類の田舎なんだ。

 しかしホーリーは、あまり貧富の差を気にしてはいないようだった。
 身につけている衣服や装飾がいいものだったとか、自然を開拓した大きくて綺麗な街があったとか、そういう話はしていたけれど。
 主に彼女が楽しそうに語ったのは、絡繰仕掛けの道具や装置についてだったり、学問を学ぶ人たちのことだった。

 都市部の人間たちは、様々な絡繰仕掛けの物を作り、多くの作業を自動化、或いは効率化しているらしい。
 二人の町にも風車や水車のようなものはあるけれど、要はその延長のものようだ。
 木や石や鉄などを組み上げて、人力では及ばないことを可能にしたり、人がやるよりも早く多くをこなせる仕組みを持つ、大掛かりな道具を作るのだとか。

 ホーリー自身が詳しくを理解していなかったから、その話はやや要領を得なかったけれど。
 でも言わんとしていることは十分に伝わったから、人間の技術向上には驚かされた。
 ただ物を作り使うだけではなく、至らない部分を補い、また本来以上の成果を生むための仕組みを作っている。
 神秘を持たなくも、今日こんにちまで緩やかな繁栄を続けられたのも頷ける。
 ただ、それほど研鑽を積んでも神秘には及ばないのは、彼らとしては物悲しいところなのだろう。

 しかし人間は、比較的知能が高い方の種族だ。
 叡智の神秘を持つ竜ほど聡明でなくとも、そういった技術を生み出す頭脳を持っている。
 中でも優秀な者たちは、学者として様々なことを研究し、生み出しているらしい。

 ホーリー曰く、そういった人たちは主に王都にいて、日夜多くを学んでいるのだとか。
 技術を高め、生かすための研鑽はもちろんのこと、どうやら神秘に関することも研究しているらしい。
 神秘を持たないなりに世界に疑問を持ち、それを解明するための糸口を探しているのだろう。

 人間は本来、自ら神秘を拒んだという話だけれど。
 でも時が経ち時代が移ろえば、事情や思考も変わってくる。
 他の種族が神秘を持ち、この五千年間を世界と共に生きているところを見れば、それは尚更だ。
 しかし恐らく、その辺りの研究はあまり進歩していないんだろう。

 長くなるだろうと溜息をついていたイヴニングだったけれど、彼女はホーリーの話を前のめりになって聞いていた。
 彼女こそ世界の多くに興味を持ち、知識に飢えていたのだろうから仕方ない。
 けれどイヴニングの疑問の方が先行して、ホーリーで答えきれないことも多く、彼女は少しだけ不満そうだった。

 そうやって話を続けているうちに、やがて私の五年間の話になった。
 知識について貪欲になったイヴニングはもちろん、『にんげんの国』を見てきたからこそ、外にも興味を持ったホーリー。
 二人に世界のことを尋ねられ、仕方なく私は自分が見てきた多くのことを話して聞かせることにした。

 ついでに私自身のことについても、話してしまおうと思ったけれど。
 ただ、話したら長くなるし、それに二人は外の世界のことを理解するので精一杯そうだったから、今日のところはやめることにした。
 これからまたここで過ごすのならば、話す機会はいくらでもあるから。

 二人は私を受け入れてくれる。
 それはもう疑う余地はなく、だから私は自らについて知り得たことを全て話したいと思う。
 でも今は、小難しいことで頭を悩ませるのではなく、ただ未知と不思議を語りたい。

 それに、私の五年間の冒険だけでも、たった一日では語りきれないのだから。
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