187 / 984
第4章 死が二人を分断つとも
25 真夜中の訪問
しおりを挟む
トントンという固い音が私の眠りを妨げた。
うっすらと目を開けてみると、まだまだ部屋の中は暗かった。
晴香は私の隣ですーすーと穏やかな寝息を立てている。
その無防備な姿が可愛らしいなと思いつつ、私はふと時計に目をやった。
私の部屋にかけてある時計は、暗い中でも文字盤がうっすらと光って時間が見られるようになっている。
時刻は二時過ぎ。十二時前に寝たから、まだ二時間ちょっとしか経っていなかった。
寝直そうと体勢を整えて目を瞑る。
けれど今見ていた夢の光景が脳裏をよぎった。
あれは、あの夢は晴香の記憶。そして私の知らない晴香の……。
トントンと、また同じ音がした。固くも軽い音が繰り返し。
この音には聞き覚えがあった。
その音は窓から聞こえてくる。二階の窓をノックされるというデンジャラスな経験を、残念ならが私はしたことがある。
嫌な予感、というと大袈裟だけれど、一抹の不安を胸にベッドから起き上がってカーテンを開いてみた。
するとそこには案の定、レイくんがにこやかな笑みを浮かべていた。
「やぁアリスちゃん。会いにきたよ」
そのまま見なかったことにしてカーテンを閉めてしまっても良かった。
深夜に女の子の部屋に窓から訪れるこの非常識者に、構ってあげる必要ないだろうと。
けれどだからといって無下にしても可哀想かと、私は窓を開けてしまった。
レイくんは相変わらずの人の良さそうなクールな顔で私に笑いかけてきた。
どうやら窓の外でぷかぷかと浮いているようだった。
人に見られたらどうするんだろう。
「レイくん。何か用?」
「冷たいなぁアリスちゃんは。用がなきゃ会いにきちゃダメかな?」
「うんまぁ、少なくともこの時間はね」
なんといっても深夜だから。常識で考えれば人の家を訪ねる時間じゃない。
電話だってそうだし、今時はメールすらも憚った方がいいと言う人がいるくらいだ。
まぁ用があったとしても迷惑なことには変わらないんだけど。
私は大分スパッとあしらったつもりだったけれど、レイくんはあんまり気にしていないようだった。
私に向かってその綺麗な顔でニコニコしている。
「つれないなぁ。またデートでもしようと思ったんだけどなぁ」
「そんなの、この間したでしょ」
「好きな子とのデートは何回したって楽しいものだよ?」
「…………」
あまりにもさらっと爽やかに言われてしまって、私は言い返す言葉が出てこなかった。
この人はこういうことを当たり前の顔をして言ってくるから困る。
「でも、今は……」
静かに眠る晴香の方を見やって私は口ごもった。
今は晴香と一緒にいる時間を少しでも大切にしたいし、何よりもし晴香が目を覚ました時に私がいなかったら心配するかもしれない。
レイくんとなんていつでも会えるし、今相手をする選択肢なんて……。
その時、私はふと思い出した。
レイくんはワルプルギスの魔女。その仲間であるアゲハさんと戦った時、彼女はなんと言っていたか。
────『魔女ウィルス』による死はもう克服してるの────
────私は一度死んで、それを克服して今がある────
それはつまり、ワルプルギスの魔女はその手段を知ってるということだ。
死を回避できなくても、それを乗り越える方法を。
あの夢の中での晴香の言葉を思い出す。
晴香は私に助けを求めるてる。
覚悟を決めたといっても、死を受け入れたといっても、だからって自ら望んで死にたいわけじゃない。
もし晴香を救える方法があるのなら、私はなんとしてもそれを知りたい。
「わかった。ちょっとだけなら、付き合ってあげる」
「嬉しいなぁ。じゃ、下で待ってるよ」
私の返答にレイくんは嬉しそうに微笑んで、ひょいと下へ降りていってしまった。
私はしっかりと窓とカーテンを閉めてコートを羽織った。
部屋を出る前に晴香の頭をそっと撫でる。
私が、晴香を守ってあげるんだ。
玄関を出ると、レイくんはニコニコと家の前で待っていた。
そういえば今回は全く入ってこようとしない。
「レイくん、どうしてここに来られたの? ここには氷室さんに結界を張っておいてもらってるんだけど」
「この手の結界は認識阻害だからね。元々この場所を知っていれば基本的には効果がないよ。まぁ彼女は大分警戒心が強いようだから制限を増しているみたいだけれど、僕にそれは効かないなぁ」
私の問いかけに軽く答えて手を差し出してくる。
私は仕方なくその手を取った。
しっかりと、でも優しく私の手を握ると、レイくんはどこへともなく歩き出した。
「まぁそれでも、結界の中にまでは入れなかったよ。彼女は僕の侵入を危惧していたみたいだね」
やれやれと肩をすくめるレイくん。
だから今日は入ってこようとしなかったのか。
前回やってきた時は、当たり前のように窓枠に腰掛けて部屋に入ってきたもん。
氷室さんにはお礼を言っておかないといけないかもしれない。
「それで? 本当に何の用もないわけじゃないでしょ?」
「流石はアリスちゃん。まぁでも、アリスちゃんとデートしたいっていうのも本音だよ?」
「そういうのいいから」
誤解されちゃ困るからね、と付け加えるレイくんに私はぴしゃりと言った。
会ったばかりの時はレイくんの言動にどぎまぎしたものだけれど、もう慣れてきてしまったし、何より今日まで色々あったからそれどころじゃない。
少し気持ちに余裕を持って対応できるようになってきた気がする。
「H1とH2に会っただろう? どんな話をしたのか、聞きたくてね」
「…………」
善子さんが二人の存在を確認していたんだから、レイくんも知っていて当然だ。
そして私の動向をチェックしているワルプルギスが、私と彼女たちの接触を知っているのもまた当然。
この話題の可能性は十分にあった。
「どうしてレイくんがそんなこと気にするの?」
「アリスちゃんも意地悪だなぁ。そんなこと聞かなくても君はもうわかっているだろう? 鍵のこと、聞いてないの?」
しらばっくれてみれば、レイくんは意外にもストレートに問いかけてきた。
五年前の戦いで、レイくんは二人から鍵を奪おうとしていた。
結果奪うことができなかったからこそ今があるわけだけれど、彼女たちが再びこの街を訪れたことで、鍵に対する動きを気にしているんだ。
「……五年前に何があったのかは、聞いたよ。でも、鍵の在り処は二人も知らないんだって」
嘘は言っていない。二人は知らない。
鍵の在り処を知っているのは私だけだ。
「私の封印を解く鍵。それをレイくんたちが奪おうとしたんでしょ?」
「もちろんじゃないか。我らが姫君の力を封じ込める魔法なんて見過ごせなかったからね」
「でもレイくんは前に、私には自然に取り戻してほしいって言ってた。だったら、鍵なんて必要ないんじゃないの?」
「そんなことはないよ。確かに僕は、君が自然にかつてを取り戻してくれることを望んでいるけれど、それはできても過去だけだからね。その先、深奥への扉を開くためには、やはり鍵は欠かせない」
レイくんは不敵に微笑んだ。
浮かべているのは確かに笑みなのに、その眼差しはどこか鋭い。
深奥。それはきっとあの私の心の奥底にある力の根源、彼女のことだ。
かつてお姫様と呼ばれた頃も、その力の全てを使いこなしていたわけじゃないらしいし。
記憶と力を封じられて、そこに干渉することを制限されている今の私でも、過去が切り離されたあの『お姫様』にほんの少しなら接触できた。
だから多分、何かきっかけや糸口があれば、そこまでなら自力で取り戻せるかもしれないってこと。
でもその先は、やっぱり鍵が必要なんだ。
「レイくんは、もし鍵が手に入ったら私を向こうに連れて行くの?」
「そうなるね。もちろん無理強いはしたくないから、飽くまで君の意思を尊重するけどね」
「私、もし記憶と力を取り戻しても、向こうになんて、行かないよ」
「それはわからなよ」
私のことなのに、レイくんは断言するように言った。
「記憶を取り戻せば、かつてを思い出せば君は帰りたくなると思うよ」
「どうしてそんなこと言い切れるの?」
「ワルプルギスの見解を言えば、君の中の力が目覚めれば、その力が帰還を望むだろうってとこ。僕個人の意見を言うと、君の過去の記憶には帰りたいと思うだけのものがある、ってとこかな」
はっきりしない物言い。
けれどそこは私の過去に関わることで、聞いたとしても結局理解できない部分だろうな。
「もちろん最後はその時のアリスちゃん自身の判断だ。僕はその判断と、その時の君の気持ちを大切にして欲しいのさ。だからできれば、君の解放は僕がしてあげたいと思うのさ」
レイくんは空いた方の手を伸ばして、私の頰を指先でツンと突っついた。
それがなんとなく気に障って顔をしかめると、そんな私を見てレイくんは笑った。
レイくんが信用できないわけではない。
友達という意味ではだけど。
けれどレイくんはワルプルギスの一員で、その立場での思惑は私にとって好ましいものとは言えない。
ワルプルギスは私に対しては一応静観をとってはいるけれど、ホワイト率いる彼女たちは基本的には過激な集団だ。
私の護送と鍵の封印をしたロード・ホーリーの一派と、それを奪おうとしたレイくんをはじめとするワルプルギス。
そのどちらが正しいかなんて、そんな判断は私にはできない。
今の私からしてみれば、この平穏な日常を過ごせるようにしてくれたことはありがたいけれど、かつての私にとって記憶と力を封じられることが良かったことなのかはわからない。
でも確かに言えることは。
今の私には帰るつもりはないということ。
今を守るために、友達や色んなものを守るためには記憶と力を取り戻さなきゃいけない。
でも、そこに何があったとしても、私は今を大事にしたいと思うから。
そういう意味ではやっぱり、レイくんよりもシオンさんたちの方が私の味方と言えるかもしれない。
「それでも私は、帰りたくないよ」
だから私は抗うようにそう答えた。
レイくんはただ、微笑んで頷いただけだった。
うっすらと目を開けてみると、まだまだ部屋の中は暗かった。
晴香は私の隣ですーすーと穏やかな寝息を立てている。
その無防備な姿が可愛らしいなと思いつつ、私はふと時計に目をやった。
私の部屋にかけてある時計は、暗い中でも文字盤がうっすらと光って時間が見られるようになっている。
時刻は二時過ぎ。十二時前に寝たから、まだ二時間ちょっとしか経っていなかった。
寝直そうと体勢を整えて目を瞑る。
けれど今見ていた夢の光景が脳裏をよぎった。
あれは、あの夢は晴香の記憶。そして私の知らない晴香の……。
トントンと、また同じ音がした。固くも軽い音が繰り返し。
この音には聞き覚えがあった。
その音は窓から聞こえてくる。二階の窓をノックされるというデンジャラスな経験を、残念ならが私はしたことがある。
嫌な予感、というと大袈裟だけれど、一抹の不安を胸にベッドから起き上がってカーテンを開いてみた。
するとそこには案の定、レイくんがにこやかな笑みを浮かべていた。
「やぁアリスちゃん。会いにきたよ」
そのまま見なかったことにしてカーテンを閉めてしまっても良かった。
深夜に女の子の部屋に窓から訪れるこの非常識者に、構ってあげる必要ないだろうと。
けれどだからといって無下にしても可哀想かと、私は窓を開けてしまった。
レイくんは相変わらずの人の良さそうなクールな顔で私に笑いかけてきた。
どうやら窓の外でぷかぷかと浮いているようだった。
人に見られたらどうするんだろう。
「レイくん。何か用?」
「冷たいなぁアリスちゃんは。用がなきゃ会いにきちゃダメかな?」
「うんまぁ、少なくともこの時間はね」
なんといっても深夜だから。常識で考えれば人の家を訪ねる時間じゃない。
電話だってそうだし、今時はメールすらも憚った方がいいと言う人がいるくらいだ。
まぁ用があったとしても迷惑なことには変わらないんだけど。
私は大分スパッとあしらったつもりだったけれど、レイくんはあんまり気にしていないようだった。
私に向かってその綺麗な顔でニコニコしている。
「つれないなぁ。またデートでもしようと思ったんだけどなぁ」
「そんなの、この間したでしょ」
「好きな子とのデートは何回したって楽しいものだよ?」
「…………」
あまりにもさらっと爽やかに言われてしまって、私は言い返す言葉が出てこなかった。
この人はこういうことを当たり前の顔をして言ってくるから困る。
「でも、今は……」
静かに眠る晴香の方を見やって私は口ごもった。
今は晴香と一緒にいる時間を少しでも大切にしたいし、何よりもし晴香が目を覚ました時に私がいなかったら心配するかもしれない。
レイくんとなんていつでも会えるし、今相手をする選択肢なんて……。
その時、私はふと思い出した。
レイくんはワルプルギスの魔女。その仲間であるアゲハさんと戦った時、彼女はなんと言っていたか。
────『魔女ウィルス』による死はもう克服してるの────
────私は一度死んで、それを克服して今がある────
それはつまり、ワルプルギスの魔女はその手段を知ってるということだ。
死を回避できなくても、それを乗り越える方法を。
あの夢の中での晴香の言葉を思い出す。
晴香は私に助けを求めるてる。
覚悟を決めたといっても、死を受け入れたといっても、だからって自ら望んで死にたいわけじゃない。
もし晴香を救える方法があるのなら、私はなんとしてもそれを知りたい。
「わかった。ちょっとだけなら、付き合ってあげる」
「嬉しいなぁ。じゃ、下で待ってるよ」
私の返答にレイくんは嬉しそうに微笑んで、ひょいと下へ降りていってしまった。
私はしっかりと窓とカーテンを閉めてコートを羽織った。
部屋を出る前に晴香の頭をそっと撫でる。
私が、晴香を守ってあげるんだ。
玄関を出ると、レイくんはニコニコと家の前で待っていた。
そういえば今回は全く入ってこようとしない。
「レイくん、どうしてここに来られたの? ここには氷室さんに結界を張っておいてもらってるんだけど」
「この手の結界は認識阻害だからね。元々この場所を知っていれば基本的には効果がないよ。まぁ彼女は大分警戒心が強いようだから制限を増しているみたいだけれど、僕にそれは効かないなぁ」
私の問いかけに軽く答えて手を差し出してくる。
私は仕方なくその手を取った。
しっかりと、でも優しく私の手を握ると、レイくんはどこへともなく歩き出した。
「まぁそれでも、結界の中にまでは入れなかったよ。彼女は僕の侵入を危惧していたみたいだね」
やれやれと肩をすくめるレイくん。
だから今日は入ってこようとしなかったのか。
前回やってきた時は、当たり前のように窓枠に腰掛けて部屋に入ってきたもん。
氷室さんにはお礼を言っておかないといけないかもしれない。
「それで? 本当に何の用もないわけじゃないでしょ?」
「流石はアリスちゃん。まぁでも、アリスちゃんとデートしたいっていうのも本音だよ?」
「そういうのいいから」
誤解されちゃ困るからね、と付け加えるレイくんに私はぴしゃりと言った。
会ったばかりの時はレイくんの言動にどぎまぎしたものだけれど、もう慣れてきてしまったし、何より今日まで色々あったからそれどころじゃない。
少し気持ちに余裕を持って対応できるようになってきた気がする。
「H1とH2に会っただろう? どんな話をしたのか、聞きたくてね」
「…………」
善子さんが二人の存在を確認していたんだから、レイくんも知っていて当然だ。
そして私の動向をチェックしているワルプルギスが、私と彼女たちの接触を知っているのもまた当然。
この話題の可能性は十分にあった。
「どうしてレイくんがそんなこと気にするの?」
「アリスちゃんも意地悪だなぁ。そんなこと聞かなくても君はもうわかっているだろう? 鍵のこと、聞いてないの?」
しらばっくれてみれば、レイくんは意外にもストレートに問いかけてきた。
五年前の戦いで、レイくんは二人から鍵を奪おうとしていた。
結果奪うことができなかったからこそ今があるわけだけれど、彼女たちが再びこの街を訪れたことで、鍵に対する動きを気にしているんだ。
「……五年前に何があったのかは、聞いたよ。でも、鍵の在り処は二人も知らないんだって」
嘘は言っていない。二人は知らない。
鍵の在り処を知っているのは私だけだ。
「私の封印を解く鍵。それをレイくんたちが奪おうとしたんでしょ?」
「もちろんじゃないか。我らが姫君の力を封じ込める魔法なんて見過ごせなかったからね」
「でもレイくんは前に、私には自然に取り戻してほしいって言ってた。だったら、鍵なんて必要ないんじゃないの?」
「そんなことはないよ。確かに僕は、君が自然にかつてを取り戻してくれることを望んでいるけれど、それはできても過去だけだからね。その先、深奥への扉を開くためには、やはり鍵は欠かせない」
レイくんは不敵に微笑んだ。
浮かべているのは確かに笑みなのに、その眼差しはどこか鋭い。
深奥。それはきっとあの私の心の奥底にある力の根源、彼女のことだ。
かつてお姫様と呼ばれた頃も、その力の全てを使いこなしていたわけじゃないらしいし。
記憶と力を封じられて、そこに干渉することを制限されている今の私でも、過去が切り離されたあの『お姫様』にほんの少しなら接触できた。
だから多分、何かきっかけや糸口があれば、そこまでなら自力で取り戻せるかもしれないってこと。
でもその先は、やっぱり鍵が必要なんだ。
「レイくんは、もし鍵が手に入ったら私を向こうに連れて行くの?」
「そうなるね。もちろん無理強いはしたくないから、飽くまで君の意思を尊重するけどね」
「私、もし記憶と力を取り戻しても、向こうになんて、行かないよ」
「それはわからなよ」
私のことなのに、レイくんは断言するように言った。
「記憶を取り戻せば、かつてを思い出せば君は帰りたくなると思うよ」
「どうしてそんなこと言い切れるの?」
「ワルプルギスの見解を言えば、君の中の力が目覚めれば、その力が帰還を望むだろうってとこ。僕個人の意見を言うと、君の過去の記憶には帰りたいと思うだけのものがある、ってとこかな」
はっきりしない物言い。
けれどそこは私の過去に関わることで、聞いたとしても結局理解できない部分だろうな。
「もちろん最後はその時のアリスちゃん自身の判断だ。僕はその判断と、その時の君の気持ちを大切にして欲しいのさ。だからできれば、君の解放は僕がしてあげたいと思うのさ」
レイくんは空いた方の手を伸ばして、私の頰を指先でツンと突っついた。
それがなんとなく気に障って顔をしかめると、そんな私を見てレイくんは笑った。
レイくんが信用できないわけではない。
友達という意味ではだけど。
けれどレイくんはワルプルギスの一員で、その立場での思惑は私にとって好ましいものとは言えない。
ワルプルギスは私に対しては一応静観をとってはいるけれど、ホワイト率いる彼女たちは基本的には過激な集団だ。
私の護送と鍵の封印をしたロード・ホーリーの一派と、それを奪おうとしたレイくんをはじめとするワルプルギス。
そのどちらが正しいかなんて、そんな判断は私にはできない。
今の私からしてみれば、この平穏な日常を過ごせるようにしてくれたことはありがたいけれど、かつての私にとって記憶と力を封じられることが良かったことなのかはわからない。
でも確かに言えることは。
今の私には帰るつもりはないということ。
今を守るために、友達や色んなものを守るためには記憶と力を取り戻さなきゃいけない。
でも、そこに何があったとしても、私は今を大事にしたいと思うから。
そういう意味ではやっぱり、レイくんよりもシオンさんたちの方が私の味方と言えるかもしれない。
「それでも私は、帰りたくないよ」
だから私は抗うようにそう答えた。
レイくんはただ、微笑んで頷いただけだった。
0
お気に入りに追加
99
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
美少女だらけの姫騎士学園に、俺だけ男。~神騎士LV99から始める強くてニューゲーム~
マナシロカナタ✨ラノベ作家✨子犬を助けた
ファンタジー
異世界💞推し活💞ファンタジー、開幕!
人気ソーシャルゲーム『ゴッド・オブ・ブレイビア』。
古参プレイヤー・加賀谷裕太(かがや・ゆうた)は、学校の階段を踏み外したと思ったら、なぜか大浴場にドボンし、ゲームに出てくるツンデレ美少女アリエッタ(俺の推し)の胸を鷲掴みしていた。
ふにょんっ♪
「ひあんっ!」
ふにょん♪ ふにょふにょん♪
「あんっ、んっ、ひゃん! って、いつまで胸を揉んでるのよこの変態!」
「ご、ごめん!」
「このっ、男子禁制の大浴場に忍び込むだけでなく、この私のむ、む、胸を! 胸を揉むだなんて!」
「ちょっと待って、俺も何が何だか分からなくて――」
「問答無用! もはやその行い、許し難し! かくなる上は、あなたに決闘を申し込むわ!」
ビシィッ!
どうやら俺はゲームの中に入り込んでしまったようで、ラッキースケベのせいでアリエッタと決闘することになってしまったのだが。
なんと俺は最高位職のLv99神騎士だったのだ!
この世界で俺は最強だ。
現実世界には未練もないし、俺はこの世界で推しの子アリエッタにリアル推し活をする!
婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜
平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。
だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。
流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!?
魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。
そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…?
完結済全6話
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。
彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。
そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。
洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。
さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。
持ち前のサバイバル能力で見敵必殺!
赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。
そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。
人々との出会い。
そして貴族や平民との格差社会。
ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。
牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。
うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい!
そんな人のための物語。
5/6_18:00完結!
復讐の慰術師
紅蓮の焔
ファンタジー
※鬱展開あるかもしれません…(鬱展開と鬱展開ではないのラインが分からないので)
1日更新です
後、言う事があるとすれば文章が物凄く稚拙です…
それでもよければお読みください
m(__)mペコリ
「危ないっ!」
歩いていた少年はそこで振り返った
ドスンッ!
気が付くとそこは…知らない場所だった
「あ?」
言葉を話すことすら不可能だった
この少し後で気が付いた
(転生…か)
それに気付いた時、少年は目を瞑った
(今度こそ…)
そう決意し、拳を握ろうとしたが力が入らない
(身体を鍛えよう)
今度はそう決意し、天井へ目を向けた
数年後…
夜中に突然盗賊が押し寄せ、金品を盗んで少年の母親を殺すと家に火を放ち、去っていった
それから更に数年後…
『今までありがとうございました
随分と身勝手ですが妹を宜しくお願いします』
燃えた家から助け出してくれた家の人への書き置きを残してそこから立ち去った
これは幸せを壊された少年の復讐の物語…
※復讐の場面に行くまで少し掛かります。それまではほのぼのとした空気が流れるかと思いますが何卒…
多分良くある話?だと思います
題名は仮の物なので何か提案がある方は教えてくれれば嬉しいです。気に入れば変更します
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる