主人公なんかに、なってほしくはなかった

君が、私を、目覚めさせた

ここは、やみのなか*

揺蕩う。何も無い。否、ただひたすらに、闇があった。

揺蕩う。何も無い。否、闇の中に、何かが──。

鈍く光る銀が走る。痛い。熱い。…苦しい。

「っ…。」

右腕はもう動かない。抑えても血が止まらない。けれど逃げてはいけない。絶対に。だって私が選んだのだから。

お前のせいだと叫ぶ声がする。男の声で。女の声で。大人の声で。子供の声で。何度も、何度も。

血が肘を伝って滴り落ちる。影が騒めき、ゆっくりとその黒が深くなっていく。声はどんどん多くなる。

お前せいだ。お前せいだ。お前のせいだ。お前のせいだ。お前のせいだ。お前のせいだ。お前のせいだ。お前のせいだ。お前のせいだ。お前のせいだ。お前のせいだ。お前のせいだ。お前のせいだ。お前のせいだ。お前のせいだ。

「分かってる。」


お前は違う。


絶叫のような言葉の渦の中で、ポツリと呟く声が聞こえた。 いつもと違う声。

私が思わず足を踏み出した瞬間、視界が黒に染まる。闇に引きずり落とされるような感覚に、一瞬息が止まる。

沈んでいく。深く深く。底に向かって、ただひたすらに。暗い闇に、沈んでいく。

















今の声は、誰？














揺蕩う。何も無い。否、ただひたすらに、闇があった。

揺蕩う。何も無い。否、闇の中に、何か、影が、人が、







人が居る。



闇の中、人が、こちらを見ている。




その瞳は、まるで、彼女のようで──────。